2013
02.27

いつの間に変わったんですか

 この前気づいたのですが。。。



CKDのステージ分類が改訂されてたんですね!!!



 しかも去年(2012年)の6月…。

 ホントにこのところ時流に追いつけないのが悲しいです。ARDSの診断基準が変わったのもしばらく知らなかったし、そして今回の。。。このまま専門バカになってしまうのでしょうか。お恥ずかしいことです。

 ということで、ガイドライン(PDFで無料で見ることができます→コチラ)をちょろちょろっと眺めてみました。

 まずはCKDの定義。

・尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。特に蛋白尿の存在が重要。
・糸球体濾過量(GFR)<60mL/min/1.73m2
このいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する。

 となっています。普段の臨床では0.15g/gCr以上の蛋白尿とeGFR<60で診断することが現実的ですね。

 もともとCKDの分類はGFRのみで評価されてましたし、自分が精神科医になる前もそれに基づいて診ていました。ただ、蛋白尿の重要性はしきりに言われており、研修のローテで回った腎臓内科では「次は蛋白尿を入れたものになる」と教えられました。そこで今回の改訂。CGA分類(Cause, GFR, Albuminuria)という、原因、腎機能、蛋白尿(アルブミン尿)に基づいたもので評価されることになったようです。このステージのうち、ステージ3はGFR45でG3aとG3bの2つに分かれてます。

CKD.jpg
(『CKD診療ガイド2012』より)

 また、専門医への紹介は以下の時。

・尿蛋白0.50 g/gCr 以上 または検尿試験紙で尿蛋白2+ 以上
・蛋白尿と血尿がともに陽性(1+ 以上)
・GFRでは
40歳未満~GFR<60
40歳以上70歳未満~GFR<50
70歳以上~GFR<40


 血圧管理も結構ハッキリしており、CKD患者さんの目標は、診察室での血圧が130/80mmHg以下となりました。高齢者では140/90mmHgを目標にまず下げて、腎機能悪化や臓器の虚血症状が見られないことを確認してから130/80mmHg以下にしなさい、と言ってますね。降圧薬は、糖尿病合併例および蛋白尿0.15g/gCr以上(アルブミン尿30mg/gCr以上)ではRAS阻害薬(ACEIもしくはARB)が第一選択。ただし、尿蛋白正常の糖尿病非合併CKD患者では降圧薬の種類を問わない、ということになりました。ここが大きなポイントだと思います。

 血圧コントロールは自分も行うのでまだ勉強しています。なので少し長めに。

 ARBはお値段が高いですね。咳が出ないならACEIで行きたいところです(個人的には)。ONTARGET試験でもARBとACEIの有意差はなかったですし。製薬会社の口車に乗って勉強もせずにARBを出すなんてことはしたくない。高価な薬剤は売れば売るだけ製薬会社は儲かります。おエラいさん達が「ARBはACEIより良いよ~」と言えばそれだけ宣伝になりますし。そういうのにだまされずに適切に使いたいもんでございます。

 しかしやっぱり切れ味が一番なのはCa拮抗薬。アムロジピン(アムロジン)とかシルニジピン(アテレック)とかは良く使います。「臓器保護効果とか何とか言う前に、下げりゃあ良いんだろ!?」的な。ま、血圧を下げること自体が臓器保護になるので、やっぱりCa拮抗薬は素晴らしい。太ってない患者さんではアムロジピンが心血管を守ってくれるという報告がLancetに載っていましたしね(Effects of body size and hypertension treatments on cardiovascular event rates: subanalysis of the ACCOMPLISH randomised controlled trial. Lancet, 2013; 381: 537-45)。

 サイアザイド系利尿薬で使われているものは、各薬剤の個性が無視されてヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)ばっかりですね。エカードとかプレミネントなどの合剤で出てますが、どうかしらと思います。効かんよ!とする意見が大勢と思っていますが(Antihypertensive Efficacy of Hydrochlorothiazide as Evaluated by Ambulatory Blood Pressure Monitoring A Meta-Analysis of Randomized Trials. J Am Coll Cardiol, 2011; 57:590-600)。サイアザイドではクロルタリドンが確実な作用がありますが、日本では販売中止になりました。。。使うならインダパミド(ナトリックス)でしょう。自分が降圧治療をする時は、利尿薬ではインダパミドにしています。ヒドロクロロチアジドなんざ効かん効かん。

 補足(2013年3月24日):と思っていたら、クロルタリドンとヒドロクロロチアジドの有効性は高齢者の高血圧治療において同じという論文が発表されましたね。。。副作用はクロルタリドンの方が多かったとしています。ただ、追跡が最長5年で心不全・脳卒中・心筋梗塞による入院or死亡というのをプライマリアウトカムにしています。これをどうとらえるか?によって変わってくるでしょうか(Dhalla IA et al.Chlorthalidone Versus Hydrochlorothiazide for the Treatment of Hypertension in Older Adults: A Population-Based Cohort Study. Ann Intern Med. 2013;158(6):447-455)。

 病態によっても異なりますが、基本的にはCa拮抗薬を使ってACEIを使って、たまに釣藤散や八味丸も、というような感じにしています。あと、血圧は厳格に下げる必要はない、と思ってます。医者の中には120以下を厳守だ!という人もいますが、そんなにせんでもねぇ。なので今回のガイドラインで降圧目標が130/80mmHgと示されたのは良かったなと思います。

 補足(2013年3月24日):ちなみにですが、ADA(アメリカ糖尿病学会)は、糖尿病患者さんの降圧目標を130/80mmHgから140/80mmHgに緩和しました。日本では端野・壮瞥町研究が行われていて、130/80mmHgを目標としています。こればっかりは人種差もありますから何とも言えない。厳格すぎる降圧というのはイケナイというのが今のトレンド?ではあります。

 家庭で測る血圧ってのもちょっとどうかと思うところがあります。特に高齢女性は大変ですよ。自分は精神科ですから良く遭遇しますが、1日中血圧を測ってるんですもん。タイマーでも使ってるのかと言うくらい、1時間ごとの詳細な血圧のグラフを作っている人もいますし。QOL削ってまですることなかろうに。。。1回でも150を超えたら「高くなった!」と言って気分が悪くなる患者さん…。中にはそれで救急外来を受診する人もいます。高齢女性は心気的になりやすいところがありますから(全員じゃないですよ)、そういう患者さんに家庭用の血圧測定機なんてもうなんかすごいことになります。こんな患者さんの不安には加味帰脾湯が奏功することが多いですね。

 減塩も大事でしょうけど、いかんせん自分が減塩生活できる自信がなくてですね。。。おせんべい大好きです、料理の味も濃いめにして怒られます。自分が出来ないことを患者さんに勧めるのも気が引けて、ちょっと押しが弱い。ラーメンやおそばのおつゆは飲んじゃいけませんよというのは最低限言えます。あとはカリウムを使った減塩のお醤油とかお塩とかがありますよね。あれで高K血症になることがあるようなので、勧めはしますがそれでもあんまり使わないでねと言います。減塩のしすぎも良くないと言いますし、難しいもんです。

 と、最後は降圧治療のボヤキみたいになりましたが、こんな感じにCKDガイドラインの改訂部分を振り返ってみました。
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2013
02.25

向精神薬による薬物依存者数の増加

 エチゾラム(デパス®)、ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)、トリアゾラム(ハルシオン®)などに代表されるベンゾジアゼピン系は、安全性が高く効果発現も早いと言われており、安易に処方されすぎている薬剤です。

 このほど、国立精神・神経医療研究センターの調査により、薬物依存の原因として向精神薬が不名誉ながら大躍進し、有機溶剤を上回ってしまったそうです。1位は覚醒剤で、向精神薬は2位に。覚醒剤は53.8%で、向精神薬(恐らくベンゾジアゼピンでしょう)が17.7%、有機溶剤は8.3%だったとしています。

 ベンゾ系を出すのは精神科もそうですが、精神科以外の、それもクリニック(開業医さん)というのが結構多いんです。依存となってしまった患者さんは複数のクリニックを渡り歩いて何種類も何百錠も溜め込んでいることがあります。患者さん同士で「ここのクリニックは出してくれる」という情報網を持っていることも多いですね。。。たくさん処方してもらって、OD(overdose:過量服用)して救急車で運ばれる、というのはよく出会う不幸なパターンです。

 自分が勤務している病院に紹介されて来る患者さんもベンゾ依存になっている事が多く、まずそれを抜くことから始めます。中にはぼーっとしていたのがそれですっきり治ってしまうこともあり、まさに”医原性”ですね。ベンゾ漬けにするのは医者として糾弾されるべきだと思っています。”これ、1つの病院で出したのか!?”と思うくらいにベンゾ系が盛られていることもあり、そういう時はぎょっとしてしまいます。

 使ってはいけない、というワケではありません。緊張病のようになってしまった患者さんにはベンゾはほぼ必須と思っていますし、アルコールの離脱を図る時にもベンゾを使います。適切な量を適切な期間使うのが大事(そりゃそうだ)。

 あまたあるベンゾたちの中でも、特に依存しやすいのがデパスとハルシオン。これはいかんです。試しに飲んでみたことがありますが、デパスはすぐに効いて”ふわっ”とした感じになります。切れも早くて、ついもう1錠、もう1錠、となってしまいがち。精神科はあんまりデパス出さないですが、他科の開業医さんは好きですよね。自分はベンゾを極力出さないようにしていますが、患者さんが希望する時は、あくまでも一時的に処方すると伝え、依存を作ることを必ず言ってます。他の医者から引き継いだ患者さんの中にはベンゾが結構入っていることもあり、できるだけ服用回数を少なくするようにしています。イライラしたり不安になったり眠れなかったり、そういう問題には自分は漢方で対処することが多いですね。柴胡剤や竜骨・牡蛎の入ったものとか、酸棗仁の入ったものとか。でもなかなか切れない、という患者さんもいます、残念ながら。。。

 ベンゾの離脱をする時は、トラゾドン(レスリン®/デジレル®)による置換や長時間作用型ベンゾによる置換を行います。後者ではロフラゼプ(メイラックス®)を頻用しますね。結構うちの病院はそれ目的で入院してくる患者さんもいます。離脱の最中にイライラとかが出てくるようなら自分は漢方の抑肝散を頓用で出して凌いでもらいます。置換をしていても不眠になるなら、これも抑肝散や、または酸棗仁湯を6包/dayという多めを使います。これでほとんど眠れます、自分の経験上は。酸棗仁湯は、特に投与初期では多めに飲んでもらうのがポイント。3包/dayじゃあなかなか効きません。

 以前の記事にも書きましたが、ベンゾの処方件数において日本は世界の中でダントツの1位です。医者の意識の低さが表れており、これは実に恥ずかしいことだと思います。患者さん側もしっかりと知る必要があり、これは国や精神科がきちんとコマーシャルしなければならないでしょう。

ベンゾ処方

 他には、個人的に思うことですが、処方薬の電子的な管理なんかも良いと思います。お薬手帳をコンピュータ管理にして全国の病院や薬局でその患者さんの処方薬を見ることができるようにする。データベース化ってやつでして、カナダはかなり進んでいるみたいですね。国に管理されると情報統制とか何とか言い出す人がいますが、国ぐるみで、かつ国民もこれは納得して進めなければならない事態だと思います。そうじゃないといろんな病院でたくさんベンゾをもらう人が跡を絶ちません。一方が出さない様に頑張っても他のクリニックに行ってすぐに出してもらっちゃうという事態も良くあることです。もちろん正規ではないルートからの購入というのもありますが、まずはできるところから。ちなみに、ベンゾ依存のことだけではなく、結構お年寄りの患者さんなんかは色々と病院を受診していて(悪気なく、ですよ)ちょこちょことお薬をもらっていることがあるため、それを知らないとお薬てんこ盛りになって副作用でぐでんぐでんになっている、なんてこともあります。そういうのを防ぐためにも、一括で管理してどこでも見られるようにしておくのは良いことだと思います。

 精神科というのは、残念ながら世間の評判がよろしくありません。今回の依存の調査で更に悪くなったでしょう。精神科を糾弾するような本もあり、それも良く売れていますね。。。そういう本はかなり極端で、それを信じられると何とも、、、と思うところもありますが、火のないところに煙は立たないという格言のとおりだと思います。これまでの精神科医療というのを真摯に反省して、能動的に薬の危険性を伝えていくことは必ずしなければなりません。製薬会社に乗せられることなく、真面目に勉強して、国民の皆様や他科の医者にもベンゾ系の危険性を伝える。これまで怠ってきた分、濃厚に行わねばならないでしょう。今後の精神科の使命だと考えています。
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2013
02.22

キャラクターシリーズ:ビーフ or ポーク?

Category: ★精神科生活
 ビーフリードは大塚製薬が作った輸液製剤で、アミノ酸が入っていることと、ビタミンB1が添加されていることがポイント。中心静脈栄養ではなく末梢で何とかカロリーを稼ぎたい時に用いる輸液の代表的な存在です。500mLあたり210kcalありまして、これと脂肪製剤を併せて使うことで何とかしのごうという作戦。

 ビーフリードっていう名前の由来は、ビタミンB1が添加されている輸液ということで”B+FLUID”から来ている様です。結構カッコいい名前、と個人的に思っています。なんだか”ジークフリート”を連想させましてですね。

 このビーフリードにもキャラクターがおるんですよ。はいどうぞ。

PA0_0533.jpg

 ボールペンのアタマにくっついています。名前は不明ですが、豚さんであることは明らか。アミノ酸が入っている輸液のキャラが豚っていうのも何ていうか。。。

 というか、ビーフリードなんですから、”ビーフ リード”で牛さんの方がイメージしやすいと思ったんですが。。。ま、”ポークリード”っていうのも何か変。鳴き声なら”ブー フリード”ですかね。

 結局、なぜ豚さんなのか、そしてこの子の名前は何なのかは不明のままですが、最近はこの豚さんを見かけないということを付記しておきましょう。
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2013
02.18

研修医のための皮膚科・創傷処置・軽症外傷テキスト

 皮膚科関連のお困りごとは結構どの科でも遭遇し、自分のいる精神科でも「ん?」と思うようなことがあります。分からないものは無理せずコンサルトしますが、しっぱなしで考えないのも何だか進歩がないので、どんなものくらいの予測はしてみたい。

 研修医の時、地域医療で開業医さんのところで学ぶ期間がありました。そこは呼吸器内科だったんですが、患者さんは色んな問題を持ってきます。専門じゃないけどちょっとこの先生に相談してみようか、というのは患者さんがその医者を信頼している傍証になるかもしれませんね(色々行くのが面倒だという理由もありましょうが…)。多いのが”整形外科的なもの”と”皮膚科的なもの”の2つ。腰が痛いとか、足が痒いとか。非専門医・研修医としては、見逃してはいけない疾患(腰痛なら悪性腫瘍転移とか!!)を除外して、コモンなものを治療することがまずもって大事です。

 皮膚科は見た目でパッと診断がつくものもあり、それはsnap diagnosisというやつですね。行き過ぎると”思い込み”と称されますが、決まりきった形は入れておいて損はないでしょう。個人的に思い入れのある経験は、上述の開業医さんでの研修の時に、ジベルばら色粃糠疹を診断できたこと。比較的コモンな疾患なのですが、それまで遭遇した事がなくてですね。でも典型的なクリスマスツリー様で、もしやっ!?と思い出せたのが良かったです。”ジベル”とか”ばら色”とか、何となく情緒がある雰囲気で、覚えやすい名前でございます。

 診断するっていうのは大事なことです。患者さんにとって「分からない」というのは不安以外の何物でもありません。身体にばばばっと赤いのが出てきたらそりゃびっくりします。それに名前を付けてあげるというのは、混沌としたところから意味を切り出すという作業(言語の分節性なんて言われます)。「こういう疾患で、こういう経過を辿りますよ」と言う事には、やはり安心を与える意味が大きいものです。経過が良好ならそれでO.K.ですし、経過が良くない場合は、それ以降にも出てくる不安をしっかりと我々は受け止めてしかるべき。疾患名を告げるという事は、それだけで治療的なロードマップの一歩にもなりますし、我々のコンテイナー(患者さんをしっかりと受け止める役割)としての仕事が始まることをも意味します。

 話がずれてしまいましたが、皮膚科的なものは結構遭遇します。診断には様々な検査がありましょうが、非専門医としては”見た目で探していく”というのが王道。そして、治療できるものは治療していく。こらあかんわ、と思ったら引っ張らずにさっさとコンサルトする。そんなのが望まれるでしょうか。

 自分の外来で皮膚科の相談といえば、手荒れが多いですね。。。手荒れはワセリンをたっぷりと使います。それでも少し治りが悪いようなら亜鉛ですよね、やっぱり。病院で出す亜鉛製剤は、プロマック®という胃薬。1錠に亜鉛が17mg入っています。ちなみに、うつ病の増強にも亜鉛はたまに使われます。女性患者さんに詳しく聞くと手荒れは産後や生理前なんかに悪くなる事があるので、そういう時は漢方の加味逍遥散を数ヶ月間気長に内服してもらうと、気がついた頃には良くなっているかも。乾燥が強ければ四物湯を併せて使います。ただ、スッと良くなるものではないので、ワセリンやアルメタ®軟膏などの外用もしっかりと行います。

 お年寄りは皮膚が乾燥して粉を吹いてることが多々あります。それで痒いんですよね。皮脂欠乏性湿疹と言われています。それにもワセリン攻めです。湿潤に持って行くことが何よりも大事。それにプラスして当帰飲子をしっかりと飲んでもらう。痒みがすごく強かったら黄連解毒湯を少しだけ併用しましょう。

 ま、それはそうとして、非専門医や研修医にとって皮膚科はどう勉強しようか、というところ。テキストの紹介ですが、やはりこれが良いのではないかと思います。

内科で出会う 見ためで探す皮膚疾患アトラス内科で出会う 見ためで探す皮膚疾患アトラス
(2012/04/02)
出光 俊郎

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 きわめて実践的。その名の通り”見ため”で探します。小難しいことは抜きにして、現実的に”使える”テキストが重要ですよね。そういった意味でこの本は割り切り感が素晴らしい。この本を作られた先生は、本当によく非専門医のことを分かってらっしゃるんだなーと実感しました。

 ただ、皮膚科志望の研修医にとっては不足気味かもしれませんから、そういう人はしっかりした本で専門医を見据えて勉強するのが良いと思います。今回紹介したのはあくまでも皮膚科を生業としない医者というのを前提としています。

 他には、ヤケドや切り傷も非常に多いです。特に精神科ではEPSとして歩きがぎこちない患者さんも多く、病棟では結構な頻度で転倒が生じます。眉間を打って縫合を…というのもマレではありません。研修医の時に縫合は練習しておいて良かったなーと実感。そういった創傷や熱傷の処置のために参考となるテキストは、この2冊。

ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tipsドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
(2007/05)
夏井 睦

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ドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tipsドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
(2011/03/15)
夏井 睦

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 夏井睦先生の本。ちょっと過激な発言も多い先生ですが、豊富な臨床経験と確かな実績に裏打ちされたものと言えましょう。湿潤療法は研修医のうちに知っておきたい治療法です。

 救急外来での軽症外傷というのも1つのトピックでしょうか。軽んじずにきちんと対処したいところですね。そういう点では、ここらへんを紹介。

手・足・腰診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (4))手・足・腰診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (4))
(2004/07/15)
仲田 和正

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(2010/08/26)
太田凡

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救急・当直で必ず役立つ!骨折の画像診断―全身の骨折分類のシェーマと症例写真でわかる読影のポ救急・当直で必ず役立つ!骨折の画像診断―全身の骨折分類のシェーマと症例写真でわかる読影のポ
(2008/12/01)
不明

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 仲田先生の本は学生さんも是非。整形外科で重要な問診・診察が詰め込まれています。軽症外傷って骨折なのかそうでないのかっていうのがお悩みポイント。レントゲンじゃ分からない事も多いですが、撮るからには所見を理解しておきたいところ。全部CTというのも能がないですよね。骨折かどうか、とりあえず帰して良いか。そのためにこの3冊は役に立つ気がします。最近出た本に関しては目を通していないのでちょっと分からないです。。。

 外傷とかそんなのに関わらずマイナーな救急全般では、これに絶対的な信頼を寄せています。

マイナーエマージェンシーマイナーエマージェンシー
(2009/08)
Philip Buttaravoli

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 救急外来に1冊は置いておきたい。自分が研修していた名大病院の救急外来にもありまして、良く使わせてもらいました。これはまさにマイナーエマジェンシーズの大事典。心強いですよ。原著は2012年に改訂されて第3版になっていますが、和訳は2版のもの。第3版が和訳されるのはまだ先でしょうね。初版、2版、3版すべてにおいて、表紙が”虫が入ってイヤーって感じのおねーちゃん”です。何なんでしょう、このこだわり。

 ちなみにまた漢方ですが、うちみですとか捻挫ですとか、そういうのには治打撲一方という、まさにその名の通りというのがあります。ロキソニンと湿布と冷やして挙上だけではスッと退いていかない事も多いのですが、この治打撲一方を使うと不思議と治りがはやいです。結構どかんと量は多めに処方すると良いですね(下痢するくらい←ここ大事)。通導散も良いですが、治打撲一方の方が使いやすい。お勤めの病院に採用があれば患者さんにどんどん出してやって下さい。

 とまあ、テキスト紹介なのか漢方の使用法なのか判然としない記事になりましたが、主眼は前者。救急外来は目玉疾患ばかりではなく、大半はマイナーなもの。そこをどう短時間でかつ出来るだけ正確に切り抜けられるか。そのために今回紹介したテキストは役に立ってくれるような気がします。
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2013
02.14

日常診療に”寒”を導入してみよう

 中医学には”寒証”という概念があります。西洋医学には欠けている概念で、これを考えて診療すると実に多くの症候が寒によるものと分かりますし、新たな治療の切り口になります。漢方は胡散臭いなーと思っている先生方も、この寒に狙いを絞って使ってみると良いことがあるかも?

 寒証は2種類あり、経絡の寒証である表寒証と、内臓の寒証である裏寒証に別れます。経絡というのは身体の表面。皮膚、筋肉、関節、骨、神経などを指します。寒証の多くは陽虚証の人が寒冷刺激で発生し、”気虚+寒”の形を取ります。陽虚というのは陽が虚している、言い換えればエネルギー代謝の衰えている状態と言えますね。熱であり火でもある陽が虚すると陰陽バランスが乱れて、陰証を呈して寒の症状が現れます。こういう説明が胡散臭いと言われる所以かもしれませんが。。。

 冷たい飲み物や身体(特に下肢)を寒い環境に置いておくことはよろしくありません。良く子供の頃は「お腹を冷やすでしょ」と注意されたものです。最近はクーラーがやっぱり寒の病態に一役買ってしまっていますね。キンキンに冷えてやがるっ…!!と言うのはビールのみに留まりません。

 腰や頭の痛み、そして四肢のしびれ。腹痛や下痢もですね。こういうものが寒い環境や冷たい飲食物で強くなる。そして温めると軽くなるのなら、それは寒によるものの可能性が高いです。患者さんは自らそれを訴えることは少ないので、医者側からclosedで聞く必要があります。「どうだか分からない」と患者さんが答えたら、お家で実践してもらうのが一番ですね。

 寒証の診断には、以下のものを参考にします(ここからは山本巌先生のテキストから)。

・全身的/局所的に寒気や寒冷を自覚する
・寒いと症状増悪、暖めると軽快
・肌の血色がよろしくない
・脈が遅い
・口の中は湿潤していて口渇はない
・尿量が多く、色は薄い
・寒いと無色透明の鼻水、くしゃみ、薄くて多量の痰が出る(肺の寒証)
・唾液が多い(脾胃の寒証)
・泥状便、水様便が多く、臭いはきつくない

 こういうのが見られたら、ははぁこの人は寒証だな、、、と考えます。

 で、寒証と判断したら、それ用の漢方薬を使います。温経・温裏・補気に努めましょう。

 温経の作用のある生薬は、当帰や川芎など。他に桂枝、麻黄、細辛、附子を用います。代表的な漢方薬には、当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、苓姜朮甘湯、五積散など。全部が経絡のみというわけでなく、内臓にも効果があります。

 当帰芍薬散は芍薬が入っているので平滑筋の痙攣を抑えて腹痛にも効果がありますし、白朮と茯苓と沢瀉は水を排出するので浮腫を除く作用があります。痛みを狙い撃ちというよりは体質改善なイメージですが。

 当帰四逆加呉茱萸生姜湯は吴茱萸と生姜と大棗によってお腹を温めて腹痛や嘔吐を治す作用も持ちます。芍薬と甘草も入っているので、鎮痙鎮痛作用あり。北里大学の花輪壽彦先生は「冷え性・女性・polysurgeryなどの腹痛には当帰四逆加呉茱萸生姜湯を使う」とおっしゃっています。同じく、頚やら腰やらといった経絡の痛みには桂枝湯と麻黄附子細辛湯の合方(桂姜棗草黄辛附湯に近くなります)を使用すると良いというお話も。桂枝は他の生薬の効果を表面に巡らせる作用を持ちます。

 五積散は17種類もの生薬が含まれています。平胃散、二陳湯、桂枝湯、桂枝加芍薬湯、苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯、当帰芍薬散、続命湯などなど、様々な処方の複合とも考えられます。これをうまく加減するとかなり使い勝手が良いようですが、エキス剤だと加えることしか出来んですね。これに色々合わせることで、胃炎とか風邪とかにだって使えてしまう。使用目標は”冷えのぼせ”と言われます。ちなみに冷えによる腰痛にはこれがファーストチョイス。

 温裏作用のある生薬は乾姜と甘草がメイン。漢方薬は3種類に分類するのが良いでしょう。上焦(肺~呼吸器)の冷えを治すものに小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯など。中焦(胃腸)の冷えを治すものに人参湯、大建中湯、呉茱萸湯、安中散など。下焦(腰~足)の冷えを治すものに苓姜朮甘湯や四逆湯など。

 人参湯は人参、乾姜、甘草、白朮が成分になっています。人参で心下の痞えを緩め、白朮で胃内停水を軽くします。この人参湯を使うような下痢はベタベタしたものが多く、尿量は結構多め。四肢が冷えていれば附子を加えて附子理中湯とすることが多いです。真武湯との鑑別点は、便の状態と尿量。水様性の下痢で尿が少なくなっているのなら、多めの白朮と茯苓とを含む真武湯を選びます。

 呉茱萸湯は偏頭痛に良く用いられる漢方薬として有名です。吴茱萸、人参、生姜、大棗を含み、胃が冷えて起こる頭痛やその他にも腹痛、嘔吐、吃逆などに用います。吴茱萸という生薬は結構作用が多くて、制吐、温中、利水、降気といったものが挙げられます。

 寒という視点を入れてこれらの漢方薬をうまく使っていけば、患者さんの状態も改善してくるかもしれませんね。今回挙げた漢方薬はごく一部。生薬を見てこれは寒証用だな、というものは結構多いものです(例えば桂枝加朮附湯など)。

 今回はこの寒証用の漢方薬を使って腹痛が軽減した患者さんをご紹介。プライバシーもあるのである程度改変しています。

 その患者さんは、とある疾患により激しい生理痛がありました。それとは別に精神疾患があり、そっちを自分が診ていて、腹痛の方は産婦人科で。精神疾患の方は少しお薬を乗せることでうまく患者さん自身でコントロールできていましたが、痛みが何とも。産婦人科ではNSAIDsと低用量ピルが出されていたのですが、それでも痛みはあんまり良くならず本当に苦しいとのこと。それ以上はなかなか難しいと言われ、NSAIDsの種類を変えていた程度でした。痛みというのは、実は精神科でも重要視します。精神疾患とも相互作用しますから、痛みが楽になればもっと患者さんは快適に過ごせるはず。そこで自分もこの患者さんの痛みを何とかしたくなりました。

 精神科で”痛み”と言えばデュロキセチン(サインバルタ®)やアミトリプチリン(トリプタノール®)やプレガバリン(リリカ®)なんかが頻用されますが、この患者さんの場合、SNRIやSSRIはあまり相性がよろしくなさそうで、盲目的に「はい、サインバルタね」と使うのは躊躇われます。三環系も副作用がどうかなーと思ってしまう。ちょっと耐えられなさそう。リリカもこのタイプの痛みはちょっと苦手なイメージ。となると少し柔らかめなマプロチリン(ルジオミール®)とか漢方でも使おうか、と考えます。

 この患者さんは、強い冷えが特徴でした。夏でも手は冷たい。お布団も何枚も重ねていて、北海道に行ったら悶絶しそうな印象です。お腹の痛みはホットパックなどで温めると少し良くなるとのこと。

 ということは”寒証”と扱って良いでしょう。当帰芍薬散の合いそうな顔と体型だったので、まずはとりあえずビール的に当帰芍薬散をしばらく飲んでもらいましたが、不変。ピクリともしません。。。量を倍に増やし(3→6包/day)、生理痛時の頓用として芍薬甘草湯に附子を少し加えて出してみるもあまり改善せず。ならばと生理の時に合わせて当帰建中湯を重ねてみましたが、これもしっくり来ず。一時期は大建中湯も使ってみるもダメ。この辺りから若干敗色が濃くなってきます。。。寒証で間違いないはずなんだが、うーん。。。

 悪戦苦闘しているうち、少し経ってから、患者さんから”痛すぎる時は吐き気がしちゃうんですよ”との言葉。



ほぅ、吐き気ですか



 これを導きの糸として、呉茱萸を盛ってみることにしました。ベースを当帰四逆加呉茱萸生姜湯(3包/day)に変更して、生理痛時の頓用に呉茱萸湯をチョイス。

 これが何とうまく当たりまして、生理痛がだいぶ軽くなったと言ってくれました。特に呉茱萸湯を痛くなり出した早期に飲むと効果抜群だそうです。いやー、やっとか…。というか何で吐き気をこちらから問診しなかったんだ!忘れとった。ただし冷え自体は少し改善という程度でございましたが。

 そんなこんなで正解にたどり着くまで回り道をしてしまい格好の良くない治療でしたが、無事に患者さんの症状改善が出来て、なんちゃって漢方医冥利に尽きる、といったところでしょうか。本業以上に(?)勉強時間をとっているとはいえ、自分は漢方専門医ではなくて師匠もおらず独学ですから、やっぱり打率は良くないですね。。。1回でピタっと当たることは少ないです…。あとは、エキス剤だと1日3包というのが効く量ではないことが往々にしてあります。3包で効かないからと言って撤退するのは勿体ない。山本巌先生は常用量(3包)の2-3倍使用するとおっしゃいますし。

 うまくいく患者さんばかりではないですね、やっぱり。。。今も頭を抱えている難題(自分にとって)がたくさん。面白いことに(?)夢の中でこれを使おうとかこれってどうだろうとかが出てきます。漢方薬然り向精神薬然り。夢でも仕事というのが良いのか悪いのかは分かりませんが。。。

 今回使った漢方薬の呉茱萸湯がコチラの31番と記載されているもの。偏頭痛と言えばまずはコレを出してみると言うくらいに処方されまして、自分も頭痛の時に試しに飲んでみたんですが、全く効果なしでした。寒証で嘔気、冷たいものを食べ飲みした後の痛み、というのが使用目標になります。自分は寒いのが苦ではありませんし、頭痛も緊張性頭痛で吐き気はないので、それで効かなかったんでしょうね。偏頭痛に限らず上記の条件がある様な痛みなら使ってみて良いかと思います。頓用で使う時は1包じゃなくて2-3包を一気に行った方が効果が高いですね。前述のようにエキス剤は量が少なめなので。安中散なんてのは胃薬として有名ですが、それ以外に生理痛にも使えます。特に冷えから来るものには効くことが多いですね。

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 自分は、患者さんに処方する漢方をまずは試し飲みします。そうすると味が何となくわかるので、患者さんに「こんな味しますよ」と言えますし、そこからたまに「先生も飲むんですか~」となり、話が膨らむことも。次に来てもらった時に味を確認しますが、自分の感覚と患者さんの感覚とで若干ズレることもあります。良く漢方の世界では「合わない漢方はまずくて飲めず、合う漢方は何とか飲める」というまことしやかな情報がありまして(本当なのかっ!?)。。。ただ、排膿散及湯は絶対的に不味いですね…。アレを飲んでもらって「これ飲みやすいですねー」といった患者さんを誰一人として見たことがありませんし、自分も苦痛でこれを続けては飲めませんでした。。。今回紹介した呉茱萸湯は”苦い”ことで有名。前もって覚悟をして飲んだためか自分はそれほど感じませんでしたが、本当に苦虫をかみつぶしたような顔をする患者さんもいます。そういう人には無理に勧めません。さすがに可哀相ですね。。。
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2013
02.08

統合失調症の生物学的研究

Category: ★精神科生活
 統合失調症について、以前は精神病理学的に見てみましたが、今回は生物学的な方向からのまとめ。現在、画像研究や死後脳研究をもとに、遺伝子研究と遺伝子改変マウスを用いた仮説の検証が行われています。

 画像研究により、統合失調症患者さんでは側脳室の拡大、大脳灰白質体積の減少、海馬・扁桃体体積の減少、基底核体積の増加などが見られるということが分かっています。死後脳研究からは、細胞レベルの変化としてグリオーシスを伴わない錐体細胞のサイズ/樹状突起棘密度の減少、GABA作動性ニューロン数の減少などが報告されています。よって、脳内の微細な神経発達の障害が最終的に統合失調症特有の神経回路の異常となり、発症に導くというのが有力です(神経発達障害仮説)。

 統合失調症において、線条体のドパミン神経が過活動になっていることはご存知だと思います。前頭前野におけるドパミン神経活動低下についてはデータ不一致も多いようで、統合失調症に特異的なものではない、と言われます。うつ病患者さんでも前頭前野の機能低下は良く話題になりますね。治療する側としてはここのドパミンを増やしてあげたいな、と思うところ。

 ニューロンの話題では、特に皮質の抑制性ニューロンの活動低下が最終的に線条体ドパミン神経の過活動に結びついているのではないか?と言われています。死後脳研究では抑制性ニューロンの減少とGABA遺伝子発現低下が繰り返し確認されてきており、抑制性ニューロンにおけるNMDA受容体からのグルタミン酸シグナルやα7ニコチン性アセチルコリン受容体などの機能低下も関連性が示唆されています。

 ということで、統合失調症においては線条体ドパミン神経の異常、グルタミン酸シグナルの変化、抑制性ニューロンの活動低下、ニコチン性アセチルコリン受容体の機能低下など、さまざまな起点から最終的に線条体におけるドパミン神経過活動に辿り着き、精神病症状を呈すると考えられています。現在の抗精神病薬は、基本的には一番最後のところを抑えているだけなので、根っこの部分をカバーできるお薬も欲しい。そういった意味を込めて、抗てんかん薬や高用量のメマンチンを補助として併用することもあります(メマンチンはあんまり効かないですが、投与量を多くすると何とかという報告も)。

 これらの異常には、遺伝因子が強く関与していることが明らかになってきました。最近はこれまで検出できなかったCNV(Copy Number Variation)が検出できるようになり、稀なCNVや弱い効果を持つありふれたCNVが関与していることが示されています。次世代シークエンサーの開発により、CNVではない稀な変異の同定も進むことが期待されています(INDELsなど)。

 統合失調症の発症には複数の遺伝子が関与しているため単純には行かないものの、これら遺伝子変異が実際に疾患を発症させるのか、マウスの遺伝子を改変して検証を行います。また、遺伝子改変マウスでは遺伝子変異がどのように発症につながる変化を起こすのか、メカニズムを明らかにできるかもしれません。

 また、統合失調症の病態にグリア細胞、特にミエリン形成に重要なオリゴデンドロサイトが関与していることも明らかになってきています。ミエリン形成はシナプスの神経伝達に重要な役割を果たし、注意、記憶と学習などの認知既往に関わっています。更にこれらの障害がドパミンやグルタミン酸回路の変化に重要であることも示されています。ミクログリアもLPSやIFN-γなどによって異常に活性化され、TNF-αやIL-6などのサイトカインやNOなどのフリーラジカルの産生を高め、それらがモノアミンやグルタミン酸の神経伝達、糖質コルチコイド受容体や海馬の神経新生などに影響を与えてしまうことが分かってきました。

 そうなると、薬剤的にはモノアミンだけ動かしていても不十分ですよね。現在ある薬剤では抗てんかん薬はグルタミン酸経路に作用するのでやっぱり使う価値はあるかと思います。神経保護作用を持つ薬剤もあるにはありますが(亜鉛とかミノサイクリンとかリチウムとか)、もう少し作用のはっきりしたものがほしいところ。全体的にはまだまだ開発途上の感は否めません。

 精神疾患の研究で難しいのは、標的臓器の生体試料の入手が困難なことです。死後脳にももちろん限界があり、嗅上皮細胞やiPS細胞などの利用も検討されています。実際、iPS細胞による研究も始まっています。一例を出しますと、Brennandらは、統合失調症患者さんの細胞から作製したiPS細胞を3種類のニューロンに分化させました。それにおいて神経突起の成長、シナプスたんぱく質であるPSD-95、グルタミン酸受容体発現の全てのレベルが低下し、ニューロン接合能に欠陥があること、そしてcAMPとWNTシグナル伝達経路に関わる遺伝子群の発現が乱れていることを明らかにしました。更に、抗精神病薬による細胞形態及び遺伝子発現レベルの変化についても指摘しており、様々な治療薬から患者さんに最も効果的な薬を選び出すなど、治療の改善につながるのでは?とされています(Brennand KJ, et al. Modelling schizophrenia using human induced pluripotent stem cells. Nature. 2011; 473(7346): 221-5.)。

 他には、精神疾患の診断そのものの不確かさというのがあるでしょう。肺の小細胞癌とか腎臓ではIgA腎症とか、こういったのは確たる証拠があって診断が付きますが、残念ながら現在の精神科、特にDSMでは”症状”を集めて一定の数をそろえればこの疾患、という診断体系になっています。およそ身体科の診断体系とは似ても似つかないもので、診断と言っていいのか判断と言うべきか。。。そういったグルーピングなので、いくら統合失調症といっても本来ならば様々な疾患が含まれているはずです。つまり、以前の記事でも何度か挙げたように”統合失調症”は”統合失調症候群”ということですね。”大うつ病性障害”も同様のことが言えましょう。これらは単一の疾患でないため、そこでバイオマーカーとか遺伝子とかを調べたとしても共通性のあるものは出てきにくいんじゃないかな、、、と思います。そこを生物学的精神医学はどう解決するのか、それとも頓挫するのか(頓挫することはないでしょうけど)。
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2013
02.03

潰れたらひしゃげる

 中国のおみやげ、ジャイアントパンダのクッキー。

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 ”大熊猫曲奇餅干” と書かれています。小生意気なことに、大きな箱にこんな小箱がいくつか入っているという、中国にしては珍しい過剰包装。日本向けのおみやげとして作ったのか?と思ってしまいます。

 餅干というのは、字からして確かにビスケットとかおせんべいとか、そんな感じを受けますね。問題は”曲奇”でございます。



曲奇  きょくき  きょくきー  きょっきー  くょっきー  くっきー



確かにクッキーだ!! (そうか?)



 中国では曲を”きょく”とは読まないんでしょうけどね。。。また、中国は広大なため地方によって発音も別言語か!?ってくらいに異なりますから、一言で中国語と言っても発音は多種多様。それにより書き言葉が発達していったのでしょう、歴史的に。

 そういえば以前、シャンプーのLux(ラックス)が中国では 『力士』 という当て字になっている記事を書きましたが、それよりはマシかな…。力士がラックスを使ってサラッサラの髷になっていたら何ともかんとも。

 さて、この箱にはにこやかなパンダクッキーの写真が掲載されているので、拡大すると。。。

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 ふむ、大国としての余裕に溢れておりますね。

 しかし、マクドナルドよろしく商品の写真と実物とでは大きな乖離があるというのも事実。往々にして実物というのはちゃちいものです。ということで、実際にクッキーを箱から取り出しましょう!そのお顔は…

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え???



 何このタイガー・ジェット・シンばりの悪役レスラーっぷりは…。




 性格は奇っ怪なほど曲がっているんでしょうか。だから曲奇、という字も納得??
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