2012
10.28

求められる意外性

 当直した病院の朝ご飯。自分が当直をする病院は3つあるのですが、そのうち2つはご飯が出てきます。患者さんと一緒のご飯で、これは患者さんにとって味はどうだろうか?というのを考える”検食”というやつでございます。

 その日は納豆が出てきました。



 当然、お醤油をかけます。”職員用”と書かれてありますね。

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 お、こっちはソースか。

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 じゃあこっちがお醤油だ、っ、て、、、、え?

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両方ソース!!!!


 なんだこれ!

 もー朝からセロトニン出てこないわー。誰だよこんなイタズラ(?)したのー。いつものお醤油を出してくれー。

 でも結局お醤油は見つからず、ソースをトライしました。ほら、新しい発見ってやつがあるかもしれないでしょ?ナマコとかシュールストレミングを世界で最初に食べた人もこんな気持ちだったかもしれない。やってみなけりゃわからない。

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 まずいっす。

 せ、せっかくの朝ご飯が。。。

 やっぱり納豆にはお醤油ですね。ちなみにうちの母親は”お砂糖”をかけて食べております。。。
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2012
10.26

毎日いるところ

Category: ★精神科生活
 本日は診察室の物理的環境。自分が勤めているのは総合病院なので、精神科の診察室だからといって何か特殊な装置があるとか、そんなことはありません。むしろベッドとか血圧計とかがなく、あっさりとしております。精神分析をされる先生のクリニックですと様々な工夫が凝らしてありますが、ここは他の科と同じ仕様。家具とか絵画とかはないのでした。ちょっとカスタマイズしたくなります。

 診察室は大体こんな感じ。精神科10番診察室の風景です。

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 我々精神科医が気にするのは、患者さんとの”あいだ”です(木村敏的な意味合いでも)。そこはやっぱり精神科医にとって重要。これに配慮しない精神科医は皆無といっても過言ではありません。その”あいだ”を考えると、診察室の風景も大事な意味を持ってきます。

 まずは、患者さんとの距離。これについては、自分は1.5-2.0mくらい取るでしょうか。近いのもナンですし、遠すぎるのも。面接者によって適切な距離は異なると思いますし、もちろん面接する患者さんによっても微妙に距離を変えてはいます。

 そして、患者さんと向き合う時の角度。お見合いみたいに完全に向き合うと圧迫感があるので、いわゆる90度法に近い感じにしています。更に、2人の物理的境界となるようなものは間に挟みません。意図的に間にデスクを入れる先生もいますね。どちらが良い悪いというのはないと思いますし、スタイルの違い。

 後、自分は椅子の高さも調節しています。基本的には一番低い状態にして圧迫感を与えないようにしていますが、患者さんによっては少し高くします。椅子の高さは大事だと思っていて、圧迫感を使うか使わないかというのも考えます。椅子の高さといえば、チャップリンの”独裁者”を思い出しますね。

 椅子については、患者さんの椅子はあまり動かないようなもので、かつ背もたれのあるものを採用。背もたれは、座ってガチガチに緊張しないために、動かないようにしているのは、患者さんの心がふよふよと動いてしまわないように。ある程度のリラックスがあった状態で面接に集中してもらえるようにと思ってそうしてます。

 カルテ記載については、自分の主に勤めている病院は電子カルテなのでパソコンを使いますが、その画面はややこちら向きにしておいて、患者さんに説明する画面を出す時に向きを変えるようにしています。でも最初から患者さんに対してオープンにしている先生もいますね。そして、面接者はパソコンやキーボードを眺めないように、打っている時も患者さんの方を向くためブラインドタッチは必須の技術。ただ、分析的精神療法を行うのであれば電子カルテに打つのではなくてメモに最低限を書きながら面接に集中した方が好ましいと思います。

 目線は、ずーっと患者さんを見ているとさすがに威圧してしまうところもあるので、適度に画面に移したり少し上の壁に移してみたり。ここぞって時はじーっと患者さんの眼を見るときもありますが、そこは面接者によって異なるのでしょうね。

 で、なぜ10番診察室を例として出したかというと、この診察室と6番診察室は精神科には珍しく、”ベッド”があるからなんです!

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 自分が寝るわけじゃないですよ(寝たいですけど)。。。

 カウチの真似事をするということでもありません。

 自分は漢方屋でもあるので、”腹診”をするのでした。精神科でお腹を触るなんてのはちょっと患者さんも意外でしょうけど、予め断ってから。「あたしゃ漢方も使うもんでしてね、漢方はお腹を触った感じが結構大事なんですわ」と添えます。若い女性の場合は、おへその場所を教えてもらって服の上から触るようにはしています。見えないとなかなか精度は保てませんが。

 診察室の雰囲気は10人医者がいたら10通りのものがあるでしょうし、特に精神科医はそれにうるさい。診察室は患者さんと医者の2人の空間でもありますし、ともすると患者さんの内的世界を映し出す場にもなります。患者さんと我々との”あいだ”、患者さん自身の”あいだ”、そこで何が起こっているのか?出来るだけノイズを少なくしてそれをつかむように、精神科医は腐心するのでありました。そのスタイルも千差万別ですし、患者さんによってはフレキシブルに対応。今回出したのはあくまでも自分の基本スタイルでございました。
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2012
10.23

コメダじゃない・・・だと!?

 名古屋といえば喫茶店。特にモーニングという、コーヒーの値段でトーストやゆで卵などが付いてくる朝限定のセットが有名です。中にはモーニングを一日中提供している喫茶店もあるようで、モーニングという名称が全くしっくりこないところも。

 チェーン展開で最も有名で、自分もたまに利用させてもらっているのが


コメダ珈琲店


 でございます。飲みもの自体はそんなに高くなくて(今のスタバと同じくらい?)、長く座っていられるのがポイント。

 そのコメダは、こんな感じの看板です。

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 黒地に橙で記された独特な字体。「バックが黒でオレンジの字」が遠くから見えたら名古屋の人たちは『コメダ』とのみ認識する。そう言って過言ではないと思います。

 さて、以前にSepsis forumという講演会を聞きに行った際、伏見駅の近くにこんな喫茶店を見つけました。

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 この看板…。ここにもコメダがっ!!!

 と思ったのも束の間。良く見ると…

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オカダ珈琲店

 なんと。

 これってパクリなのかしら…?あからさま過ぎて何ともかんとも、、、。しかもシロノワールも売ってるし!これって良いの?

 と不安になって調べてみたら、このお店はもともとコメダさんだったんですって。”何らかの事情”によりオカダさんに変わったようで…?(ここ怖い)

 使っている珈琲豆もコメダさんのものらしく、だからコメダの提携店みたいなものなんでしょうね。すっごく安心しました。でも、コメダさんにはない”あんかけスパゲティ”もメニューにあるようで、多少の独自路線も用意してある模様です。

 一人で不安になって一人で安心して。ずいぶんと心配させるオカダ珈琲店さんでした。
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2012
10.20

秋の夜長に紛れ込み

 当直していたら、病棟でこんな可愛らしいヒトを見つけました。

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 ヤモリさんです、ヤモリさん。

 木曜の当直、夜10時の回診時にうろちょろと徘徊しているのを発見。看護師さんがコップを持ってきてくれて確保いたしました。

 こんなに小さい。

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 まだ子どもなのかしら?でもやはり上からしげしげと眺めると、”ザ・爬虫類”でございますね。脚が何ともキュート。

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 飼うわけにもいかず、病院敷地内の芝生に釈放しました。達者で暮らせよ。

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 夜の病院は、色んなヒト達に出会うものです。いちばん会いたくないのはゴキブリさんですが。。。
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2012
10.14

ちょっとだけ贅沢できる様なお金がほしい

 何かものすごくストレートなタイトルになってますね。。。俗世に生きる様子がありありと想像できることでしょう。

 こんなことを書いたのもですね、先日イオン千種店でパート募集の張り紙を見たからなんです。鮮魚部門とかお寿司部門とか色々あって、大体時給が1000円前後でした。

 その中で薬剤師さんはやはり強い。17〜22時という遅めの時間帯でしたが、時給はなんと


2500円/hr〜


 さすが、さすがとしか言えない破格の値段。しかも2500円”から”ですよ。最低で2500円。羨ましいの一言です。そんなことを言っていると


何いってんだよ、お前医者なんだからもっともらってるんじゃねぇか


 というお声が聞こえてきそうですが、なかなか世の中つらいものでして。自分が主に行っている病院のお給料ですが、時給で換算すると


1483円/hr


 となっております。。。この83円というのが妙なリアリティを醸しだしてますね。イオンの薬剤師さんに敗北を喫する状態でして、これは勤務先にお給料アップを懇願したいところです。自分の地位も低いから仕方ないんでしょうが。。。

 とあるサイトで、勤務医の平均時給というのが発表されていましたが、そこでは


2643円/hr


 でした。お、イオンの薬剤師さんをかろうじて上回りましたよ。しっかし、平均よりも1000円以上安いんですな、自分は。。。勤務医の中でも最も高給なのが民間病院。逆に最もお安いのは想像に難くなく、大学病院でした。。。

 何を言いたいかというと、医者といっても勤務医はそんなにボロ儲けしている訳ではありませんよ(特に大学病院…)ということでございます。世間一般のイメージとは随分異なるのでしょうが、こと勤務医に関しては労働の内容・時間・責任の割にお給料が低いのでした。あんまりお金のことを言うのも良くないですが、自分も養わなければいけない家族がいますし奨学金も返さなければならないので、なかなか今のお給料では厳しいと言わざるをえない。大体は土日のうちどちらかは当直などのバイトをしなければ辛い部分も相当あるのでございました。土日両方休みというのはあんまり経験しておりません。

 ということで、タイトルの通り、ちょっとでいいから贅沢したいのでした。豚肉じゃなくて牛肉を食べたい、1丁200円以上するお豆腐を食べてみたい、回転寿司でも良いから月に1回くらいは行きたい、たまにはデパートのレストランで食事してみたい、もやしは美味しいけれどもさすがに飽きてきた、イオンで買うお刺身も半額シールのついてないものを躊躇いなくカートに入れてみたい、ローソンのおでんも70円均一じゃない時に買ってみたい、などなど。。。

 でも一番良いのは、当直を今の半分くらいにしたいですね。お給料減らされることなく。休日にゆっくり休む時間がほしいものです。こんなことを書いている現在も当直中でございまして、ちなみに昨日も当直でした。医者も体力勝負なところがありますな。医者を志す若者たち、身体を鍛えておきたまへよ。

 今回はお金がらみの汚い話になってしまいましたが、ご了承ください(ちょっと吐露したかったのでした)。
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2012
10.10

治療抵抗性統合失調症の薬剤治療はどうするか?

Category: ★精神科生活
 統合失調症は現在も精神科で最も重要な疾患(正確には症候群)です。使用出来る薬剤もだいぶ広がりを見せてきていますが、breakthroughは残念ながら起きていない状況。かなり研究はされていますが。。。

 脳の部位によるドパミンのアンバランスというのが現時点では攻める対象となっています。例えば、中脳辺縁系ではドパミンが亢進して前頭前野では低下している、と言う事態が起きています。ただ前頭前野でのドパミン低下は統合失調症に限らず多くの精神疾患に幅広く見られます。他にはグルタミン酸シグナルの変化、抑制性ニューロンの活動低下、ニコチン性アセチルコリン受容体の機能低下などを考えることが重要ではないかと言われます。

 薬剤を使用してもなかなか改善しない患者さんもいます。治療抵抗性統合失調症という言葉があり、それは6週の間に連続する2つの抗精神病薬を適切な用量で試みたものの有意な症状改善の兆候がないということを示します。それに対してどう薬剤治療を組むか????それが頭を悩ませる事態となっています。

 まずすることは何でしょうか?それはですね、、、


診断の見直し!!!!


 これが最重要。強調してもし足りないくらいに大切なこと。今自分が悩んでいる統合失調症の患者さんは、本当に統合失調症なのか?過剰診断していないか?実は早期発症のFTD(前頭側頭葉型認知症)ではないか?SLEなど他の器質性疾患ではないか?ということを見つめなおしましょう。治療に抵抗性なのか、治療が症状を作り出しているのか(医原性なのか)、それをしっかり見極めないと患者さんの人生を狂わしてしまうかもしれません。

 それを除外して初めて治療抵抗性。これはどんな精神疾患でも言えます。治療抵抗性の強迫性障害は本当に強迫性障害なのか?治療抵抗性のうつ病は本当にうつ病なのか?薬による副作用を病気の症状と勘違いして更に薬を乗せてしまう。。。最初に診断をミスしてその後も訂正がされないと収拾がつかなくなります。ま、治療抵抗性っていう言葉は便利ですよね。精神療法的な接近に失敗しても「治療抵抗性だ!」と言い張れてしまう。向精神薬偏重は視野を狭くします。薬剤だけでなく環境や生活というものへの視点を常にもたねばなりません。

 それはそうとして、他疾患も除外して、薬剤以外の駒を動かしてもうんともすんとも。ということは、この患者さんは治療抵抗性の統合失調症と考えて良いだろう。そうなって初めて更なる治療に進みます。この順番は間違えないこと!!!!!!

 ちなみに精神病理学の大家であるシュナイダーさんは、統合失調症の診断に極めて慎重でありました。一級症状があるからと言ってすぐ統合失調症というわけでなく、他の一級症状を起こしうる精神病(主に器質性ですが)がない時に、初めて”控えめに”統合失調症を考えろ!こう指摘しています。

 この記事では、現時点でのエビデンス(精神科にエビデンスはあんまり馴染まない気もしますが…)を参考にしつつ、経験的な部分も見ながら治療抵抗性統合失調症への薬剤治療を考えてみたいと思います。

 あんまりたくさん文献を見てもまとまりきらないので、1つだけここでは挙げておきましょう。

Treatment-resistant Schizophrenia: Evidence-based Strategies
Mens Sana Monogr. 2012 Jan-Dec; 10(1): 20–32.

 さて、まず最も(唯一?)証左のあるものは何と言ってもクロザピン(クロザリル®)です。2012年現在、日本ではまだ使える施設が限られていますが、世界的には使ってみるべき薬剤としての地位を確固たるものとしています。ただ、それでも40%ほどの患者さんは部分寛解状態にとどまるとされ、機能的に完全に回復するのはもっと少ないと言われます。

 クロザピンでもダメ、もしくはクロザピンを使えないところでは、抗精神病薬の併用(combination)か他のクラスの薬剤による増強(augmentation)になります。

 基本的に抗精神病薬の併用は治療抵抗性の陽性症状/陰性症状を抑えるために用います。抗うつ薬や気分安定薬や研究途中の薬剤などは情動の部分や認知機能低下、強迫症状、治療による副作用といったところに。ベンゾジアゼピンは主に急性のエピソード(不安、焦燥、攻撃性)に用います。これらはあくまでも基本で、抗うつ薬でも陽性症状や陰性症状が軽くなることはあります。ミルタザピン(リフレックス®/レメロン®)なんかはそうですね。ただし、統合失調症患者さんに抗うつ薬を使うことにしっかりしたエビデンスはありません。

 抗精神病薬を複数種類使うことで治療成績がどうなるかというのは明らかになってはいません。日本は多剤併用しすぎと言われてはいますが、外国に目を向けても半数くらいの外来統合失調症患者さんは複数種類の抗精神病薬を服用していると言われます。「多剤併用=悪、単剤治療=善」というバッサリな考え方はどうかとは思いますし、抗精神病薬同士も相性があるため、相性の良い物同士を組むということはそれなりに良い結果を出してくれるような気もします。

 クロザピンとオランザピン(ジプレキサ®)は他の抗精神病薬とはかなり色合いが異なり、D2受容体にくっつく力が強くありません。その代わりと言ってはナンですが、中枢性のα1アドレナリン受容体、M1ムスカリン受容体、H1ヒスタミン受容体、5-HT2Aセロトニン受容体、5-HT2Cセロトニン受容体などにペタペタくっつきます。この2つの抗精神病薬は他の抗精神病薬との併用(combination)によく用いられ、かつ研究されています。例えば、ドパミン受容体にあまりくっつかない部分を、amisulpride(アミスルプリド:2012年時点で日本未発売)やスルピリド(ドグマチール®)なんかで補うことが良く行なわれています。アリピプラゾール(エビリファイ®)はD2受容体と5-HT1A受容体のパーシャルアゴニストで、これはクロザピンとの併用が研究されており、有効性が示唆されています。クロザピンに併用するものとして最も研究されているのがリスペリドン(リスパダール®)ですが、なかなかコレといった結果は出ていない様子。肯定的なものも否定的なものもありますね。。。ただ、コンスタという持続性の筋注製剤の併用だとアドヒアランスや再入院率が改善するかもしれないと言われています。Ziprasidone(ジプラシドン:2012年時点で日本未発売)もクロザピンとの併用で割と良好な結果。

 クロザピンとオランザピン以外の非定型抗精神病薬同士の併用も報告があります。例えばリスペリドンやクエチアピン(セロクエル®)単剤で不十分な時にamisulprideを付加したり、他にはアリピプラゾールが様々な抗精神病薬との併用で症状改善に一役買ったりするのではと言われてはいます。

 こういった併用はやってみなきゃ分からない!という部分が強いかもしれません。個人的にはアリピプラゾールにクエチアピンやペロスピロン(ルーラン®)の付加を良く行います。他にはブロナンセリン(ロナセン®)にもこの2剤のいずれかを付加する時があります。オランザピンへのスルピリド付加は行ったことがないので何とも??やってみる価値はあると思いますが。

 さて、陰性症状や感情の制御不全も非常に重要な治療目標です。というか、統合失調症の中核的な部分は陰性症状にこそあると思っています。5%以上の統合失調症患者さんが自殺してしまうことを考えると、感情の部分にはきちんとスポットライトを当てるべきでしょう。そういった観点から、抗うつ薬や気分安定薬が増強として選択される場合があります。ただ、これらはエビデンスとしてはっきりしないものばかりであることは付記しておきます。注意したいのは、陰性症状と言われるものの中には薬剤の副作用による”陰性症状”が多く含まれると言う点。「頑張るよ!」という意欲を出すドパミンを抑える薬剤を使うのですから、量が多くなったり占拠されるドパミン受容体が多くなったりすれば、それは陰性症状とも言えるでしょう。同じく抑うつもそうですね。薬の副作用で抑うつになる、つまりは”無動うつ”になることもあります。他には激しい症状の出た後は脳が疲れるため、それによる抑うつもあります。これは休息期と捉えて休ませることが大事で、抗うつ薬でハッパをかけるのはいかんです。希死念慮がばりばり強くなってしまったら抗うつ薬をちょろっと使うのもありなのかもしれませんが、なかなか効果の程は難しい。抗精神病薬の副作用による見かけの陰性症状には抗うつ薬や気分安定薬は使うものではなく、抗精神病薬の調整をすべき。そうではない真の陰性症状に注意しながら使うことがたまにある薬剤として、抗うつ薬や気分安定薬があります。まずは抗うつ薬から。

 Citalopram(シタロプラム:2012年時点で日本未発売)、デュロキセチン(サインバルタ®)、reboxetine(レボキセチン:2012年時点で日本未発売)、venlafaxine(ベンラファキシン:2012年時点で日本未発売→2015年にイフェクサー®として発売)と言った抗うつ薬は統合失調症の抑うつ症状を改善させると言われています。三環系抗うつ薬は精神病症状を悪化させる可能性があるかもしれないため、使用するならSSRI以降の新規抗うつ薬が望ましい様です。薬剤相互作用には十分気をつけましょう。日本では睡眠薬代わりに良く使われるトラゾドン(レスリン®/デジレル®)も陰性症状に効果ありや?という報告もあります。現時点で最もオススメできるのがミルタザピン。陰性症状と認知機能の改善が指摘されています。陽性症状に対しては肯定的なものもあれば否定的なものもありますね。ノルアドレナリンとドパミンの再取り込み阻害薬であるBupropion(ブプロピオン:2012年時点で日本未発売。ただし数年中に発売されます)は精神病症状を増悪させるのではと以前は考えられていて使用が控えられていましたが、最近は陰性症状や認知機能を改善する可能性が指摘されています。

 抗うつ薬を付加することについては色んな事が言われており、現時点では投与に諸手を挙げて大賛成とはなかなか行きません。個人的にはやっぱり使うのは躊躇われます。。。

 また、抗うつ薬の上乗せについては、患者さんがFTDであった場合は爆発することがあります。ミルタザピンを15mg追加したらその夜中に大不穏になってしまった、、、と言うのが好例。そうなった場合は、この患者さんはひょっとしたら統合失調症ではなくFTDではないか?と考えましょう。もちろん統合失調症の患者さんでも合わない人もいて、ミルタザピンが興奮を産むことがたまにあります。

 気分安定薬も統合失調症治療に欠かせない重要な地位を占めるものです。ここではいつもの記事と異なり、気分安定薬をリチウム(リーマス®)、バルプロ酸(デパケン®/セレニカ®)、カルバマゼピン(テグレトール®)、ガバペンチン(ガバペン®)、ラモトリギン(ラミクタール®)、プレガバリン(リリカ®)、トピラマート(トピナ®)の7種類ということにします。いつもは後2者を外してクロナゼパム(リボトリール®/ランドセン®)を入れていますが。気分安定薬はエビデンスという点では全体的に弱いとされているものの、経験的にはやはり使いたくなりますね。

 リチウム付加は旧来より行なわれています。感情レベルでの波立ちを大人しくしてくれる印象はありますが、質の高いRCTが必要だろうと言われます。この薬剤は面白いもので、アルツハイマーやパーキンソン病、MSAといった変性疾患に対する有効性が最近どんどん論文化されています。理由の一つにオートファジー(自食作用)の促進が言われており、長いコースで使用することで価値が出るかもしれませんね。カルバマゼピンは大暴れを防いでくれます。たまーにバチッと当たる患者さんがいて、これのお陰で処方がシンプルになることも。特に満田先生のおっしゃる非定型精神病には効果が高いです。ただ、これも質の高いRCTがなんたらかんたら。後は血液系に対する副作用があるので、同じような副作用を持つクロザピンとの併用は好ましくありません。ラモトリギンはクロザピン抵抗の患者さんに上乗せすることで利益があるのではと言われます。他の抗精神病薬に上乗せしても目立った改善はないとされますが、経験的に効く人は本当に効きます。プレガバリンは患者さんの不安感(統合失調症では不安感というのが実に強いことがあります)に実に切れ味良く効いてくれます。試す価値あり。ただし、150mg/dayから使用するとふらつきがかなり出るので、最初は25-50mg/dayから使ってちょろちょろ増量というのが安全。トピラマートは明らかに認知機能を落としますし、陽性症状や感情面でもどう転ぶか予測がつかないので、安易に使うのはよろしくないでしょう。過食や衝動性をパシっと止めてくれるのは有難いですが。バルプロ酸は非常に使いやすく、攻撃性や遅発性ジスキネジアに対して良い働きをしてくれます。急性精神病エピソードの際に抗精神病薬へ付加することも行なわれますが、プラセボに対する優位性が今のところ示されていません(意外)。

 その他の薬剤としては、COX-2阻害薬であるセレコキシブ(セレコックス®)やω-3脂肪酸(日本ではエパデール®)やミノサイクリン(ミノマイシン®)が使われます。統合失調症における炎症部分を抑えようという発想。後はPDE-5阻害薬のシルデナフィル(バイアグラ®/レバチオ®)もあるにはありますが、なかなか…と言った感じです。ちょっと前は”カルボニルストレス性統合失調症”というのが話題になりましたね。疾患概念として確立されれば活性型ビタミンB6が良い治療薬になるのかも?また、陰性症状にビタミンB12と葉酸の併せ技が効いたというのもあります。


c.f. 閉経後の女性患者さんであれば、ラロキシフェン(エビスタ®)の付加が有効であったとする報告も(Usall J, et al. Raloxifene as an Adjunctive Treatment for Postmenopausal Women With Schizophrenia: A 24-Week Double-Blind, Randomized, Parallel, Placebo-Controlled Trial. Schizophr Bull. 2015 Nov 20. pii: sbv149. [Epub ahead of print])。エストロゲンは抗炎症作用を有しているので、それを狙ったもの。(2016年1月8日追加)


 統合失調症の症状では、やはり認知機能低下にも注意が必要です。認知機能はコリン系が関与しており、そのコリンの中ではM1ムスカリン受容体やニコチン受容体のαサブユニットがその大部を担っています。コリンが足りなくなるとやばい、という感じ。そういった点から、コリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル(アリセプト®)やガランタミン(レミニール®)がアルツハイマー型認知症やDLBに対する薬剤としてあるわけです(保険適応上は2012年時点でアルツハイマー型のみですが、DLBにも少量使うことで効果が出ます→2015年にドネペジルはDLBにも適応が通りました)。しかし、残念ながら統合失調症の認知機能低下に対してコリンエステラーゼ阻害薬は無力!ということが示されています。。。抗がん剤による嘔吐に用いるトロピセトロン(ナバボン®)がα7ニコチン受容体に結合(パーシャルアゴニスト)することで効果を示すのでは?と言われてはいますが、さらなる研究が必要です。このα7ニコチン受容体が認知機能に果たす役割というのが知られており、それを狙った薬剤の開発が急がれています。

 コリンが関与、ということは抗精神病薬の副作用である錐体外路症状を防ぐために用いるビペリデン(アキネトン®)やトリヘキシフェニジル(アーテン®)などは認知機能を落としてしまいます。副作用出たからといってホイホイこれらの抗コリン薬を入れるのはあまりよろしくありません。

 ワーキングメモリや遂行機能、注意、学習といった機能に関しては、NMDA受容体などを介するグルタミン酸の調節が重要と言われます。グリシン、D-セリン、D-シクロセリン、サルコシン(グリシントランスポーター阻害薬)などがNMDA受容体アゴニストとして働き認知機能改善に役立つとされます。先述したミノサイクリン(ミノマイシン®)がグルタミン酸システムの調節をし、陰性症状や遂行機能の改善をもたらすことが分かっています。その一方で、NMDA受容体アンタゴニストであるメマンチン(メマリー®)は効果がなかなか上がりません。個人的にはラモトリギンはある程度の認知機能改善を示す印象を持っています(もちろん症状悪化になることもあるので全例で問題なく使用できるわけではありません)。

 ドパミン仮説では前頭前野におけるドパミン機能不全が認知機能低下、特に遂行機能低下に関連していると言われます。そのためプラミペキソール(ビ・シフロール®)といったドパミンアゴニストが使用されることもありますが、その評価は定まっていません。ここまでくるとドパミンを下げたいのか上げたいのかちょっとぐちゃぐちゃな印象ですね。何をしたいんだ?と思ってしまいます。ブプロピオンは前述のとおりです。もうちょっと研究が必要。上手く前頭前野のみでドパミンを上げる薬剤があれば良いのですが。。。

 上記の神経伝達システム以外では、5-HT1A受容体・5-HT2A受容体・5-HT6受容体の刺激や5-HT1-4受容体サブタイプの調節が学習機能を改善します。そうなると5-HT1A受容体パーシャルアゴニストのbuspirone(ブスピロン:2012年時点で日本未発売)や5-HT3受容体アンタゴニストであるオンダンセトロン(ゾフラン®)、5-HT2A/2C受容体アンタゴニストのritanserin(リタンセリン:2012年時点で日本未発売)の有用性が示唆されています。日本だとペロスピロンやタンドスピロン(セディール®)がひょっとしたらひょっとするかもしれません。

 他に可能性のある薬剤としてはメチルフェニデート(リタリン®/コンサータ®)やアトモキセチン(ストラテラ®)、モダフィニル(モディオダール®)、エストラジオール(ジュリナ®)、アロプリノール(アロシトール®/ザイロリック®)、N-アセチルシステイン(ムコフィリン®)、セレギリン(エフピー®)、イチョウなどなどなど…。どれも推奨できるレベルではありません。アロプリノールは陽性症状に対する増強としても用いられることがあるにはありますが、それにしても力不足な感じです。

 統合失調症で問題となる症状の1つに強迫症状があります。ですが、最近はこの症状が抗精神病薬の抗セロトニンによるものではないかと言われています。しかも時間依存性であり用量依存性らしいです。改善するには、増強や併用をかけることでメインの抗精神病薬の量を減らすのが適切とのこと(プレガバリン、スルピリド、アリピプラゾールなどなど)。これについては自分は本当に意外で、初発が強迫症状で後に統合失調症というのが明らかになることもあるため、全部が全部薬剤の副作用とは言えない気がします。どうなんでしょうね???

 ここからは全部が経験的なものですが、日本には漢方があります。統合失調症は瘀血と考えられるので、通導散などの駆瘀血剤を使うことが多少のスパイスになってくれる可能性はあります。


c.f.抑肝散は興奮を改善してくれることが示されています(Miyaoka T, et al. Efficacy and safety of yokukansan in treatment-resistant schizophrenia: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial (a Positive and Negative Syndrome Scale, five-factor analysis). Psychopharmacology (Berl). 2015 Jan;232(1):155-64.)。個人的には、顔を真赤にして怒鳴り散らすような患者さんには抑肝散は効かないように感じており、その時は黄連や黄芩を含んだ黄連解毒湯や、もう少し広く構えた竜胆瀉肝湯(コタローさんの)が良いのではないかと思っています。(2016年1月8日)


 ここでは薬剤治療について述べましたが、もちろんそれ以外の精神療法的関わりが重要になってきます。幻聴については、それの誘因/憎悪因子として≪不安・不眠・過労・孤立≫というものがあります。日常診療の面接では、この4要素に焦点を当てて、どうそれらを解決していくかというのがポイントになってきます。ここは原田誠一先生の著書に詳しい(『統合失調症の治療―理解・援助・予防の新たな視点』)。そして陰性症状についてもは、中核症状と言ったものの、患者さんを守ってくれる作用があります。無理に陰性症状を解こうとすると大爆発になることがあるので、ここは神田橋條治先生の仰る“自閉”の利用を勧めるのが良いでしょうね。相手との距離を保って、自分を守りながら交流を、というスタンスは統合失調症患者さんに対する姿勢で常に必要なものだと思います。だから抗うつ薬もホイホイ使うものではなく、患者さんを守るベールをひょっとしたら無理に剥ごうとしているのかもしれないという認識を持つことが大事かと考えます。

 一時期、EE(Expressed Emotion)という言葉が流行しました。主に家族の感情が患者さんの病気の状態に影響を与えるという考えから来ていて、批判的であったりまきこまれたりなど、感情的な状態がHigh EE、外界のストレスから本人を守るような状態がLow EEと言われます。これについては、とらえようによっては「家族が原因だ!家族が悪化させてる張本人だ!」という間違った認識が生まれてしまわないかちょっと不安です。例えばデイケアや作業所でも場合によっては本人にとってHigh EEであることもあるでしょうし、今の世の中すべてがHigh EE的な状況であることを考えねばなりません。EEの概念は重要で、薬剤以外の治療を考えるには「何が患者さんからゆとりを奪っているのか」を調べねばなりません。ですが、それを全て家族のせいにするのは間違いでしょう。EEは家族に対してだけでなく、広く環境一般に適応するものと思います。
 
 中井久夫先生は、こちらをはっとさせることをおっしゃっています。”分裂病の治療には数年後に効果が現れるという場合がありますから、安定期でも手抜きしていいわけではないのです。改善の努力が今目に見えて現れないからといって治療が無効だとか治療抵抗性だとレッテルを貼って治療者が悲観してしまうのは間違っているということです。その時は、穏やかに現状維持に努めて自然回復力が働いてくるのを待つ時期といいましょうか。「待ちの治療」も重要なのです。「攻めの治療」より重要であるかもしれません。実は「待ちの治療」のほうが気が抜けないものです、第三者には見えないでしょうが”

 この記事の最初の方に、精神科にエビデンスはあんまり馴染まない…などと記載しました。それは、現在の診断基準が正確ではないことが理由にあります。DSMで括られる”統合失調症”は”統合失調症候群”とでも言うべきもので、決して単一の疾患ではありません。”大うつ病性障害”もそうですね。なので、統合失調症にこの薬剤が効くか?と言うことで臨床試験を組んでも、実は色んな疾患が混じっているため、RCTによって平均・確率を出されると特性が消えてしまうことがあります。代表例はカルバマゼピンで、内因性の真の統合失調症にはあまり効果はないのでしょうが、暴れだすと保護室を使わざるをえない様な、例えば繰り返しになりますが満田先生の提唱された非定型精神病の様なタイプなら奏功することが非常に多いのです。そして、内因性の中にも器質性の色合いが強ければ、抗てんかん薬の効果が非常に高くなっていくでしょう。こういう患者さんにはバルプロ酸やラモトリギンは期待できます。精神科の診断というのはかなり雑に括っている、と考えた方が良いと思います。非常に前近代的。そうとらえることで、使う薬剤にも幅が出てきますよ。頼りない診断だなぁと思うかもしれませんが、これが現代精神医学の限界。精神科医もそれをしっかりと意識しましょう。「精神科の診断なんてDSMに当てはめてやりゃあ良いんだろ?」という不届きな考えは持っちゃいけません。従来診断を崇拝するのも良くないですが、先達の方々が100年以上考えぬいて識別していった歴史をDSMの名の下に捨て去るのはもったいない。もちろん、DSMそのものにも「チェックリスト的に使わないで!」と記載されています。

 ということで、治療抵抗性統合失調症に対する薬物治療(Evidence & Experience)でした。薬物以外の関わりも大事でございますよ。特に急性期の患者さんは焦っていてゆとりがありません。その時に治療者がわざとらしいことをせずにそばにいるという姿勢が肝要です。また、症状は患者さん自身の回復力を含むということも忘れてはいけません。
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2012
10.07

やっぱり名前も大事

Category: ★本のお話
 漢方もケーススタディが大事。理論を学ぶだけではなかなか実践でのアウトプットがなされません。特に漢方医学はこれまでずっと学んできた西洋医学とは別の理論体系ですから、頭の切り替えが難しくなります。

 診療の考え方としてはいくつかあります。分かりやすいものが、症候である程度の鑑別処方を思い浮かべて、陰陽と気血水で絞っていく、というものでしょうか。五臓はなかなか難しい。。。

 漢方のケーススタディで学びやすいのが三浦忠道先生の書かれた『はじめての漢方診療 症例演習』でしょうか。

PA0_0367.jpg

 しかし、この帯に書かれてあるのがちょっと。。。

PA0_0366.jpg

 はじめての漢方診療、略して ”はじ漢” で,す、が、、、


恥漢??


 恥を晒してる漢(おとこ)みたいでちょっとナンセンス。

 誰だこの略称考えたのは…。




 内容自体はすごく良いので、みなさん是非是非。帯は付いていたら捨てましょうか。。。

はじめての漢方診療症例演習はじめての漢方診療症例演習
(2011/04/01)
三潴 忠道

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2012
10.03

精神疾患と炎症の関係性

Category: ★精神科生活
 うつ病、不安障害、統合失調症、はては発達障害といった精神疾患の病態生理に”炎症(免疫異常)”がある程度関与しているのでは?というのが最近研究でも示唆されています。つまりは、炎症が神経損傷の要素として認識されているとも言えます。まじ?と思うかもしれませんが、大まじめに研究されているトピックなんですよ。

 炎症といえばサイトカインストームですね。そのサイトカインは中枢神経系にも作用することが知られています。1つはミクログリアとの関係。ミクログリアは神経細胞と密に連絡を取り合っており、脳の発達や傷害の際に生じるシナプス形成や神経細胞死のバランスに関わっています。とっても大事な屋台骨でもあり、同時に大工さんとしての働きもしてくれると考えて良いかと思います。決して単なる支持組織ではない。

 その連絡が乱れるとどうなるのか?

 LPSやIFN-γなどによって異常に活性化されたミクログリアがTNF-αやIL-6などのサイトカインやNOなどのフリーラジカルの産生を高め、それらがモノアミンやグルタミン酸の神経伝達、糖質コルチコイド受容体や海馬の神経新生などに影響を与えてしまうことが分かって来ました。

 以下の表は統合失調症をモデルとしています。

schiz???

 他の疾患でも類似のことが起きているのではと言われています。うつ病モデルがこちら。

?????

 この様に炎症・免疫と精神疾患という一見ベツモノと思われる状態の関連性を考えると、当然のことながら炎症の生じる身体疾患と精神疾患の関連も研究されてきています。

 身体疾患において抑うつ症状が見られることは臨床上非常に多く経験し、精神科医がコンサルテーション・リエゾンで介入をする分野でもあります。特に自己免疫の絡んだ病態で抑うつ症状は多いというのが分かっており、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患などでは大うつ病性障害と診断のつくものが15%前後もあります。他にも程度は高くないものの炎症の存在する身体疾患、それはがんであったり脳卒中であったり冠動脈疾患であったり、においても大うつ病性障害は多く、関連性が示唆されているのです。

 また、身体疾患そのものの炎症とは別に、サイトカインを疾患の治療に用いることもありますね。代表的なものはC型肝炎に対するIFN-αかと思います。その副作用で抑うつ症状というのは有名ですが、大うつ病性障害の診断がつくものは30%前後にも上る!と言われます。ここからも、サイトカイン、ひいては炎症が精神状態に揺さぶりをかけるということが示されます。

 COX-2阻害薬のcelecoxib(セレコキシブ:セレコックス)やω-3脂肪酸(日本ではエパデール)がうつ病/統合失調症の増強療法としてある程度の効果を示しているのも、それらの抗炎症効果が一役買っている可能性が示されていいます。ミノサイクリン(ミノマイシン)による増強というのも一時期話題になりましたが、これも免疫系を調節して神経保護に働くからと指摘されています。冠動脈疾患に対するスタチン治療でうつ病発症リスクが減少するというのも言われており、これはひょっとしたら近年注目されているスタチンの抗炎症作用がどこかで働いているかも?しれません(これは穿った見方?)。

 でも、もちろんこれらの療法が全く効果を示さない例もとても多く、炎症で精神疾患すべてを語れるものではありません。プライマリーなところではないのでしょうが、セカンダリーな部分で頭に入れておくべき病態かと思います。


☆参考文献
Depression: an inflammatory illness?; J Neurol Neurosurg Psychiatry 2012;83:495e502.
Inflammation in neurological and psychiatric diseases; Inflammopharmacol 2012; 20:103–107
Rett syndrome and other autism spectrum disorders—brain diseases of immune malfunction? Molecular Psychiatry (2010) 15, 355–363
Cytokines and schizophrenia: Microglia hypothesis of schizophrenia; Psychiatry and Clinical Neurosciences 2009; 63: 257–265
Statin Use and Risk of Depression in Patients With Coronary Heart Disease: Longitudinal Data From the Heart and Soul Study; J Clin Psychiatry 73:5, May 2012
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