2012
07.31

コメダの装備

 名古屋の喫茶店といえばコメダ珈琲店。たまに利用しますが、ご存じの方も多い様に、ここでは豆菓子が付いてきます。

 この黄色い袋に入っています。居酒屋のお通しみたいなものですが、お金は取りません。無料です。元からその分の金額が飲み物に上乗せされている、と考えたらそうなのかもしれませんが、コメダさんに限ってそういうことはないと思いたいものです。太っ腹なコメダさん。

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 開けるとこんな感じ。良くあるやつです。気持ちまぶされているお塩がお豆の甘さを引き立ててくれます。これをぽりぽり食べて珈琲を飲む。

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 アメリカンコーヒー(380円)はこの器に入ってきます。お馴染み。

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 何と、有田焼だそうです。ホントに??

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 コメダさんにある飲み物の器は確か全てこの”有田焼byコメダ”という印が押してあるはずで、コップにもこだわりがある様です。”by”だと、この有田焼の器はコメダさんが作ったのかという感覚を持ってしまいます。焼物に使う前置詞は良く分かりませんが、高校で勉強が止まってさび付いた英語頭を捻るとそんな印象。

 それはそうと、コメダさんは関東にも進出して頑張っているみたいです。最近のカフェとは異なる、ちょっと懐かしい感じの喫茶店もあって良いんじゃないかしら、と思います。スタバもどんどん値上がりしてますしね。自分はショートアメリカーノが250円だった頃を覚えてますが、今はかなり高いですし。スタバで良く注文するのがショートソイラテですが、これは今390円ですもんね。そう考えると、コメダさんのブレンドコーヒー、アメリカンコーヒー、ミルクコーヒー、アイスコーヒーの380円というのはそんなに高くない気がします。朝11時までなら、他の喫茶店と比べると見劣りするとは言えモーニングになってトーストとゆで玉子付いてきますし(この時間帯はお客さん多いですね)。

 こんなタイプの喫茶店、回転は速くないでしょうが、ちょっと落ち着いて長居できるのが嬉しいもんです。
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2012
07.27

医者のお手本

Category: ★本のお話
『ドクターズルール425 医師の心得集』
『ドクターズルール238 医師の心得集 第2集』

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 こんな本があります。その名の通りで、医師の心得を集めたもの。テストには役立ちませんが、医師としての姿勢を見せてくれます。新書タイプの大きさなのでカバンにもすっと入りますし、暇な時にパラパラめくると意外な発見があって飽きません。

 どんな心得があるか?少しご紹介すると

優れた臨床医は自分が何を知らないのかを知っている。
The good clinician knows what he or she does not know.

可能ならすべての薬を中止せよ。それが不可能ならば、できるだけ多くの薬を中止せよ。
Stop all drugs if possible. If impossible, stop as many as possible.

患者の中には病人でなくてはならない者もいる。その必要性を否定しないこと。
Some patients have a need to be sick. Do not deny them that need.

 などなど。こんな感じで短文ながらも的を射たルールがたくさん載っています。素晴らしいものだらけで、ぜひ学生さんや研修医の先生には読んでもらいたいと思っています。

 ただ、残念ながら絶版でして、本当なら定価がどちらも1000円くらいなのですが、アマゾンさんではどっちも数倍以上の値段が付いてしまってます。。。本当に良い本なので、これは再販してほしいですな…。

 ということで、どこかの古本屋なんかで見つけたら(そして高くなければ)買ってやって下さい。そして、気が付いたらパラパラめくってみて下さい。医学生の時に眺めたその感覚と、研修医になった時に眺めたその感覚とは異なります。専門に進んだ後もたまにめくると、薄まりそうになっていた医師としての本分を、再び濃いものにしてくれる気がします。
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2012
07.24

いる注意、いらない注意

 Coolishというアイスがありまして、手軽に食べられる(飲める?)ので気に入っております。

 少し溶けた後にもう一回再冷凍すると入り口付近のアイスがかちかちになっていてなかなか出てこないという難点があり、力強く”ふんっ!”と圧力をかけると硬い部分が”ぽんっ”と飛んだ経験が3度ほど。しかし、美味しいから許せるものです。最近は夏と言うことでソーダ味が出てましたね。

 手っ取り早く糖分を摂取するには好都合ですね、アイスって。食事ではあまり糖分を摂らない様にしてるんですが、それだとちょっとハードな日は続かないことも。そういう時にアイスを食べて元気を出してます。

 このCoolish、何の気なしに裏面を見ると

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長時間持つと手が冷たくなります


 ま、そりゃ持つタイプのアイスですからね。。。当然っちゃ当然な気がします。苦情電話とかあったんでしょうか?

「ちょっと!持ってたら手が冷たくなったんだけど!どーしてくれんのよ!」

 そう言われても困っちゃいますが。。。

 そのうち


食べると口の中が冷たくなります


 とか出てくるんでしょうか・・・?
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2012
07.17

精神科を学ぶって何なんだろう??

Category: ★精神科生活
 精神科を目指す学生さんは、この科をどう見ているんでしょう??そんなことに絡めたのが今日の話題。DSMというのは聞いたことがあるかもしれませんが、それ以外にも大事なことがあります。

 病理学と聞くと、病巣となった臓器の組織を顕微鏡で眺めて病気の成り立ちを探す、、、と想像するかもしれません。その病理学という名前は何と精神科にもあり、”精神病理学”と言われています。恥ずかしながら自分は学生の頃、精神病理学は精神疾患の患者さんの脳組織を見て病態を探るものと思っていた時期がありました。。。シュナイダー先生の”臨床精神病理学”を書店でめくってびっくりした記憶があります。

 異論はあるにせよ、精神科は”心”を診る科という立場です。その心を観察するには顕微鏡というものを用いても詳細は出てきません。精神病理学というのは、患者さんの症状の背後にどんなことがうごめいているのか?もっと言うと、患者さんはどう生きてきて、どう生きるのかというところを探る学問であります。えらいビッグな感じがしますね。

 そんなこんなで、患者さんの生き方を考える精神病理学は、哲学や文学と近しい関係です。ヤスパースさんという先生が精神病理学というものを確固たるものとして打ち立てたのですが、彼は後に純粋な哲学者になってしまいました。他にも哲学チックな精神病理学者は、ミンコフスキーさんやビンスワンガーさん、ブランケンブルクさん、テレンバッハさんなんかがいらっしゃいます(さん付けだと殺されかねない勢いですが)。日本では中井久夫先生の文体が非常に文系を感じさせます。小説家というか文学者ですね、もはや。

 この哲学との親和性が、精神科が他の科と毛色を異にする1つの要因でもあり、他科の先生からは変な目で見られるのもこれが大きいのではないかと個人的に思っています。面白いことに、精神科には”安永浩著作集”とか”木村敏著作集”とか、本当に”著作集”というのがあり、また数十年前の本を読むことだってあります。非常に文学っぽい香りを出していますね。ただ、良いか悪いかは別にして、最近はDSMという操作診断が世界を席巻してしまい、精神病理学の中でも特にこういった人間学的な部分は随分と廃れてしまっています。

 そのDSMが登場する前の精神科は良かったのかというとそうでもなく、難波のあしは伊勢の浜おぎと申しましょうか、お国によって診断の幅が異なるという事態、そして同じ診断名でもその意味することが異なるという事態がありました。同じ患者さんを国籍の異なる10人の精神科医に診せるということが仮にあったとすれば、複数の診断名が付くこともあったでしょう。同じ国籍でも、医者が違えば診断も異なると言うこともありました。また、彼の言う精神分裂病(今で言うなら統合失調症)と自分の言う精神分裂病のイメージが異なると言うことも。。。フランス学派のいう”急性錯乱状態(boufeedelirant)”なんていう概念を例に出してみましょう。ドイツの精神科医にとっては、原発性の妄想気分や妄想知覚のある急性統合失調症や、クライスト先生の言う”挿間もうろう状態”というのが急性錯乱状態の下に一括されているので、なかなかフランスの方の”急性錯乱状態(boufeedelirant)”は理解できない部分があったでしょう。反対に、ドイツのいう統合失調症の”自閉”という概念はフランスの精神科にとっては理解しにくいものでした(ブロイラー先生の統合失調症という概念は、ミンコフスキーさんがしっかりと紹介するまでは全くフランスに受け入れられるものではありませんでした)。人間学的な部分まで入り込まずとも、これまでのいわゆる従来診断というのは”ローカルな印象”と”ローカルな口伝”的な部分が強かったと言わざるを得ません。

 「何やってんの精神科…」そう思われるでしょうが、それほどまでに診断が難しいというのも事実です。症状は患者さんの持つ根っこの部分を間接的に表すに過ぎず、疾患特異性が乏しいため、その背後まで見通さねば正式な診断は出来ないのであります。幻聴妄想があるから統合失調症!なんてことは口が裂けても言えません。そんな事態ですと、もちろん論文も困ります。急性躁状態の患者さん200人を集めてこれこれこういう研究をしました、といっても診断の地域色が濃いので、本当に真の急性躁状態かは不明です。

 「こんなんじゃいけませんよ、きちんと国際的に通用する診断基準を作りましょう」として出てきたのがDSMです。「病前性格とか色々あるけど、そういう病因論を追求するようなことは棚上げして、患者さんの持っている症状をほぼ横断的に拾い上げてチェックリスト形式にして診断しましょう。これなら異なる医者でも診断は一致しやすくなるでしょう。統計取りや研究もしやすくなるでしょう」。このDSMはあっという間に拡がり、精神病理学を今や駆逐せんばかりの勢い。しかし、このDSMにも落とし穴があります。

 DSMは患者さんの症状にのみ注目し、これこれの症状が揃ったらこの疾患、と定義します。しかし、この症状は前述のように疾患非特異的。診断技法的には、非常に前時代的とも言えます。他の科であれば症状の他に検査、それも病理組織が取れるものならそれによって診断が確定します。しかし精神科、特にDSM導入後は症状のみで診断を付けています。これは診断ではなくその時の”判断”とも評されてしまいましょう。確かに精神科は検査がありません。しかし以前は症状以外に病因を突き詰めて考える傾向があり、それが検査のない部分を補佐しようとしていたのかもしれません。ただ、色々な人が色々なことを言って整合性が取れていませんでした。

 更に、DSMで定義された疾患は”症候群”的な意味合いが非常に強いと言えます。いにしえより盛んに分類されていた疾患を1つのグループにまとめ上げているため、本来なら異なる(と思われる)疾患群が消失しています。なので、盛んに行われているゲノムやバイオマーカーの研究も”DSMでこれこれと名がついた疾患”を根拠に行っていますが、この”DSMによる疾患名”というのは単一の疾患には本来的になっていないという、最初からのつまづきがある、ということは銘記しておかねばなりません。

 例えば、DSMによって”統合失調症”とされた疾患は”症候群”なのです。先達が築き上げた細かな分類を棚上げにしているので、色んな疾患がこの”統合失調症”に含まれております。”大うつ病性障害”もそうです。コテコテの”内因性うつ病”もあれば、”新型うつ””退却神経症”などと言われているものもとりあえず全部入れています。ゲノム研究では、この疾患の原因遺伝子を見つけた!という報告が相次いでいますが、決定的なものは見つかっていません。現在の疾患名が単一の疾患ではなく症候群であるため、様々な遺伝子が出てくるのは当然。しかも非特異的な遺伝子異常もありましょうから、なかなか難しい。

 確かに精神科の診断というのはDSMですっきりしたことはしたんですが、上述の他、細かい所での薬剤の効果なんかも臨床試験で反映されなくなっております。例えばカルバマゼピン(テグレトール®)は双極性障害に抜群の効果はないんじゃないかと言われています。しかし、満田久敏先生の提唱された”非定型精神病”、これはDSMにはありませんが、においては奏功することが多々あります(非定型精神病も症候群と考えるべきものですが)。

 この非定型精神病は何も日本独自のものではなく、ヨーロッパでも同じ様なことが言われています。代表格はレオンハルトさんでしょうか。ただ”てんかん”を含めたのは満田先生の炯眼と言えましょう。躁うつ病、統合失調症、てんかん。この3者の中間的な立ち位置として非定型精神病というものを満田先生は挙げられました。DSMにより消されてしまいましたが、明らかに中核的な統合失調症とは別の疾患。敢えてDSMで言うなら失調感情障害になるでしょうが、それともちょっと微妙に違うのでございます。

 更にDSMについて言うと、それは世界を支配したものの、用いる精神科医はDSMに忠実に従っているわけではないのであります。本当にDSM的に行うならば、SCID(Structured Clinical Interviews for DSM-IV)というものを全て1人の患者さんに行うべきでしょう。現在の精神科医は患者さんから横断的に話を聞いて、何となく「ここら辺の疾患かしら」とアタリを付けて、そこにあるDSMの疾患の診断基準に当てはめるということが多いと思います。大体はそれでもとりあえずの診断は上手く行きますが、たまにポカをやらかし、だからこそ双極性障害を大うつ病性障害と誤診することがあるのです(最近は双極性障害の過剰診断も言われていますが)。統合失調症を強迫性障害と間違うことだってあります。DSMもポケットに入る通称『mini-D』と言われるマニュアルがありますが、あれは「経験を積んだ医師が使うものですよ」と言う但し書きが付いています。初心者がアレを見て当てはめて診断をするなんてことのために作られてはいません。DSMの悪さが盛んに言われていますが、DSMの編者たちもきちんと「生活史とかを無視して診療するのはいけません」と言ってます。それをやったうえで、診断と統計のためのマニュアルとして使用するなら優れたもの。

 従来診断とDSMがごちゃごちゃになってしまい、中途半端になっているという問題があるのでございます。生活史などの病因をたどることもせず、深い探求をないがしろにして今の症状だけ眺めて、そこに該当するであろうDSMの項目をチェックする。しかも症状なんてのは誘導尋問すれば”Yes”と出てくるものもありますし、医師側の過剰な解釈により症状を大きくとらえてしまうことだってあります。従来診断の良さも失い、DSMの良さも失っている。こんなことでは、精神科そのものが衰退しかねません。現在の精神科はそこで藻掻き苦しんでおります。

 それを憂えているのが、やはり精神病理学者です。DSMが出てきたのは確かに必然性があったでしょう。それは恐らくほとんどの精神科医は納得し反省しているはずです。でももう少しきちんと症状以外の面も見ようではないか。木村敏先生の言葉を借りるならば”症状論的エポケー”の態度を持とうではないかということです。症状を軽視するわけではありません。まずは分かっている症状を横に置いておいて、その人の根源的な部分を見ようではないかということです。治療においても統合失調症は”出立の病”であり、うつ病は”合体の病”であることを忘れてはいけません。それになぞらえて治療をする。統合失調症患者さんに積極的な交流を促して、いわゆる健常人と全く同じようなコミュニティ参加をさせることが治療であり回復だと考えてはいけません。彼らの特性を踏まえて、やわらかに治療に持っていくことが肝要です。

 奥底をしっかりと観察していこうとするその姿勢が、ひいては患者さんとの日々の診察にも反映されてくるでしょう。ここには精神分析的な視線も必要になり、現在の患者さんと面接者の2者関係がどの様にして起こるのか、治療を進めるにはどうしたらいいのか、という考えの下敷きになります。お薬を出してハイお仕舞い、というのではなかなか難しい部分もやはりあります。

 なので、精神科医であるならば精神病理学や精神分析の知識は必須ではないかと思っています。特に私たちは日本語を母国語としているので、先述の木村敏先生や中井久夫先生、そして笠原嘉先生といった精神病理学の大家や土居健郎先生、松木邦裕先生といった精神分析のお歴々など、彼らを”原著で読める”というのはすばらしいことだと思います。

 ただ、それらだけにはまり込んでもいけないでしょう。きちんと現在の主流となっている生物学的な基盤を持ち、その上でこれらを学ぶ。複数のものの見方を中途半端ではなくしっかりと自分の中にインストールしなければなりません。言うは易く行うは難し、であることは重々承知しておりますが。

 DSMが出て以来、精神科はチェックリストで簡単じゃないかと思われている部分があるでしょうし、精神科医の中にもその様な考えの医者がいるでしょう。しかし、そんな生易しいものではないと思います(ここはDSMの本にもしっかり注意点として書かれています)。しっかり勉強しようとすれば時間がいくらあっても足りずに苦しむのが精神科であり、またそうしなければならないのでしょう。自分は精神病理学では木村敏先生、精神分析ではビオンの考えを分かりやすく教えてくれる松木邦裕先生の本を良く読んでいます。ただ、人間学的な部分にはまり込み過ぎると哲学の方へ飛んでいってしまいますし、分析の方に傾倒して盲目になってしまうとそれはそれで文学的になりすぎるので、精神科医になりたての頃に深入りするのは注意が必要かもしれません。自分も本の虫になりそうですが、机上のものでは決してあってはいけないと自戒してます。

 ちなみに、精神病理と生物学的な考え方の両者がほどよくブレンドされているのが、アンリ・エー(Henri Ey)だと思ってます。神経心理学にウェイトを置いた精神病理学を展開したエーさんの器質力動論は、精神疾患のとらえ方を納得させてくれます。あんだけ推してた木村敏じゃないのかよ!と思うかもしれませんが、木村敏先生の仰るIntra festumはエーさんの意識野の解体に重なる所がありますし、ante festumという機制は人格の解体に近いんじゃなかろうかと密かに思っています。更に言うと”器質-臨床的隔たり”という考え方をエーさんは持っていましたが、その隔たりの部分に精神病理学の要素が詰まっている気もします。

 ということで、精神科を目指そうとしてくれている学生さんは、今はまだ突っ込んだ勉強は必要ないと思いますが、精神科医になった暁には是非”古典”と言われる様な本を読んでみることをお薦めします。でも最初はDSM(2013年に最新のDSM-5が出ます)と適切な薬剤使用を学ぶ方が速やかに臨床に反映出来ると思うので、そっちを優先してその合間に病理とか分析とか。

 精神科医への世間の風当たりは非常に強いです。”精神科医はクズだ!”とか”製薬会社とグルになって患者を薬漬けにして儲けている!”という非難は雨あられの状態。その様な声を上げる人々を”何言ってんだこいつら…”と相手にしないのではいけません。火のないところに煙は立たないと言う格言の通り、なぜこんな声が出てきたのかという背景を、我々精神科医はしっかりと見つめなければならないのでしょう。

 精神科医になりたいという学生、研修医の人々も一定数いるとは思いますが、なるなら気合いが必要。患者さんの人生に深く関わるのが精神科。それを軽く考えて自分のQOLだけ重視して精神科になるという心づもりならば、世間からの非難は消えないでしょう。もちろんこれは我々精神科医への警鐘でもあります。楽だから精神科医になる、という理由でも構いませんが、精神科医になるのなら、他人の人生に触れ続ける仕事であるということを自分自身に刻みましょう。その覚悟を持ち続けていることが求められます。
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2012
07.16

袋叩きの膠質液

 膠質液は、デンプンを成分とするHESが主に用いられています。日本ではHES70/0.5というのが使われていますが、アメリカでは670/0.75なんてのがあったり、ヨーロッパでは200/0.5や最近は130/0.4が使われていたりします。この○○/○○という表し方ですが、スラッシュの左側が分子量を表し、右側が置換度というものを表しています。HES70/0.5なら、分子量70で置換度が0.5ということになります。

 この分子量は、大きいほど毛細血管から漏れ出にくいため、循環血液量を長時間維持できます。分子量が小さいと血管外に逃げたり腎臓から排泄されたりということがあり、投与しても短時間で効果がなくなります。じゃあ大きければ良いんじゃないかと思うかもしれませんが、大きいと第VIII因子/vWF複合体を減少させてしまい凝固能に影響を与えますし、尿細管上皮細胞に空胞変性を生じさせ腎機能も悪化させてしまいます。

 置換度はグルコース糖単位あたりのヒドロキシエチル化の割合を示し、0~1で示されます。置換度が高いと、血中のα-アミラーゼによる分解が遅くなるとのこと。投与したそのままの状態が続くと考えましょう。置換度が低いとHESの分子は投与後すぐに分解されます。となると、腎で排泄されやすく、血管外に漏出しやすくなりますね。しかし、分解されたことで分子の数そのものは増加するため、膠質浸透圧は上がるようです。置換度は分解速度を考慮に入れたもので、分子量とは別の視点をもたらすことになります。ただ、置換度が高いと巨大分子が蓄積されて凝固能に影響を与えて出血しやすくなると言われています。

 他にもC2/C6比というのがあり、高いほどα-アミラーゼによる分解が遅く、粘度が高いとされます。高い程血管内にがっちり留まりやすいと考えます。

 日本で使われているHES70/0.5は、分子量が小さく置換度は低い部類。ということは、投与後すぐに分解されるため分子数は増加し、膠質浸透圧上昇。ですが、分子量が小さいのもあって作用は長時間持続しません。裏を返せば凝固機能や腎機能に与える影響は小さいでしょうね。

 最新のHESは、ヨーロッパで開発されたHES130/0.4というもの。投与すると60kDくらいの分子量に分解されますが、その後はあまり分解されずにこの値を保つそうです。そしてこの60kDはアルブミンと同じような分子量で生理的なもの。これを重症敗血症で用いるとどうなるか?という研究結果が2012年に出ました(Hydroxyethyl Starch 130/0.4 versus Ringer's Acetate in Severe Sepsis; N Engl J Med 2012.DOI: 10.1056/NEJMoa1204242)。そこでは、90日時点において死亡リスクが高く、晶質液よりも腎代替療法を要する結果になりました。残念ながら最新のHESをもってしても敗血症の輸液蘇生に良い結果となりませんでした。。。

 ただ、レクチャーシリーズでも少しお話しましたが、膠質液全部をダメだとして使わないというのはやりすぎ感があります。晶質液と膠質液をうまく使い分けて行く必要があるのでしょう。今回のNEJMの試験は重症敗血症という特殊病態への使用でしたし、しかもこれまでの輸液はどんな病態であれ多すぎたという反省が生まれています。EGDTですら多めではないかとの指摘もあり、少し抑えめが良いと言われます。そのためには膠質液を良いタイミングで併用することも選択肢の1つとして大事なんじゃないかしらと思っています。何でも晶質液1本で!HESはエビデンスないからダメ!と目くじらを立てず、ほどよいブレンドというのを今後は見ていくべき。この“ほどよい”というのがどこかという問題点もありますが。。。
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2012
07.15

せん妄はイヤなもんです

Category: ★精神科生活
 せん妄の対処は、精神科医が他科のドクターや患者さんと接する最も多い機会かもしれません。やっぱり高齢者が多く、お見舞いに来ていたり付き添いに来ていたりするご家族も相当なショックを受けます。

「うちのじーちゃん、入院してボケちゃった」
「いきなり大声出して怖い」

などは良く聞かれます。精神科医はご家族にせん妄というのを説明して、また可逆的なものであることをお話します。ただ、最近は長期化したせん妄がその後の認知機能低下のリスクファクターになるという意見が多く出てきており、何かしらの爪痕を残してしまうのではとも言われています。

 他科の先生にも是非せん妄の対処法は知っておいてもらいたいところ。コンサルトを受けて我々精神科医が注意するのは服用薬。これをまずチェックします。そうすると、平然とガスター®やデパス®が使われています。。。H2ブロッカーやベンゾジアゼピンはせん妄の発症増悪因子になるので、ばっさり切らねばいけません(離脱症状を考えるとすぐゼロに出来ないこともありますが)。それなのに「せん妄で夜寝られてないから、しっかり寝てもらおう」とレンドルミン®とかユーロジン®を出しちゃう先生がいます。。。せん妄をあおってどうする!!!ま、振戦せん妄ならベンゾジアゼピンが治療的ですが。他にはオピオイドやステロイドがせん妄の原因薬剤として有名ですが、なかなか減量したり中止にしたりするのは難しいですね。。。

 せん妄の対処法は全科必須の知識と考えてもらいたいところがあります。もちろん一番大事なのが基礎疾患の改善!これがダメだと精神科医もちょっと困ります。後は日中の覚醒維持ですよね。良く分かってる病棟だと、日中は患者さんにナースステーションで過ごしてもらったりして刺激を与えてくれます。コレは本当にありがたい。看護師さんの意識が高いと実に助かります。

 いずれにしろ、予防・早期の抑え込みというのが大事。

 まず予防としては、以下が挙げられましょう。

低酸素:適切な酸素投与。
感染:早期治療、いらないルート類は外す。
認知機能低下:部屋の明るさ、具体的な事柄(日時や場所など)を入れる、家族関係の面会。
脱水:適切な血管内容量を保つ。
便秘:しっかり出してやる(漢方は役立ちますね!)。
不動化:早期の離床。
疼痛:適切なマネジメント。非言語的な部分での評価が重要。
感覚障害:眼鏡、補聴器など。
睡眠障害:物音を必要最低限に、睡眠中の処置は避ける。ベンゾや抗ヒスタミン薬以外での睡眠。
多剤併用:思わぬ相互作用あり。シンプルに。
低栄養:適切な栄養療法を。

 薬物での予防と言うのはなかなか難しいようです。まずは上記の事柄をしっかりと実践するのが大事。

 でもせん妄になってしまう人ももちろんいます。精神科医はある程度の武器(薬剤)を持っており、自分が使うものには以下のものがあります。

★抑肝散
 3包分3で使ったり、夕食後に1包と就寝前に2包にしてもらったり。これで治まれば儲けもの。臨床的には良く使われていますね。欠点と言えば、漢方は経鼻胃管を詰まらせるので、それが入ってる患者さんだと看護師さんからちょっと言われることも。胃腸が弱ければ抑肝散加陳皮半夏にしましょう。

 これはもともと子ども用の漢方でした。母子同服という、素晴らしい方法で感心したものです。精神科的に、この母子同服というのは漢方の深遠さを垣間見る一つの風景です。そんな抑肝散はアルツハイマー型認知症BPSDへの効果が認められてから、一気に高齢者に使用され売上もニョキニョキ。何か認知症といえばとりあえずビール的な雰囲気で出されていますね。。。脳血管性の認知症であれば、進行を和らげる手段として釣藤散も良い選択肢ですよ。他にも、八味地黄丸や牛車腎気丸も高齢者の腰・膝・尿・神経の問題などに有用ですし、真武湯と人参湯の合方(茯苓四逆湯に近づきます)も最期まで元気に過ごしたい高齢者に良く飲んでもらってます。何でもかんでも抑肝散というのでは芸がない。しかも、高齢者に3包分3で処方すると、中長期使用では低カリウム血症(偽性アルドステロン血症)を起こすことがあります。芍薬甘草湯や甘麦大棗湯が有名ですが、それ以外でも甘草が含まれていれば起こるので注意しましょう。漢方も副作用があるということをしっかりと認識することが大切です。低カリウム血症は言うに及ばず、肝機能障害と間質性肺炎も抑えるべし。あと、黄芩の入っている漢方も肝機能障害を来たすことがあるのでご注意を。なぜか女性に多いです。

★ラメルテオン(ロゼレム®)
 4-8mgを就寝前に使います。おまじない的な存在で、自分は抑肝散と併せて使ってます。ロゼレムでせん妄治療をしたという症例報告がちらほらありますが、コンサルトを受けるようなせん妄をこれだけで凌ぐ自信はありません。予防に向きますね。

 普通の不眠にこれを出すと、8mg(これが1錠)で意外に持ち越すことがあります。「効かん効かんと思っとったけど、何や仕事してたんやなぁ」と感心。ちなみに自分はコレを飲んでも全く変化なしでした。4mgで出すことがままあるので、タケダ薬品には是非このロゼレムに割線を付けてもらいたいです。副作用に頭痛があることは意外に知られていません(添付文書に書いてますけどね)。

★バルプロ酸のシロップ(デパケン®シロップ)
 2-8mLを就寝前に。あの赤い色が何とも不評ですね。。。後発品のシロップには色が付いてないのに。ですが結構効果はあります。肝機能が悪いとさすがに使えませんが、そうでなければちょっと候補に挙がります。抗精神病薬は血栓のリスクになったり死亡率が上がったりという報告がなされているので、デパケンで上手く行けばそれに越したことはありません。

 このデパケンは頭部外傷後にちょっと荒っぽくなった患者さんにも用いることが多いです。脳内の嵐(こう書くと全く科学的でないですね…)を鎮めてくれるイメージを持つと、デパケンは使用するタイミングが分かるかもしれません。催奇形性と体重増加が欠点で、女性には嫌われます。また、この徐放製剤のデパケンR(100mg錠、200mg錠)は結構大きくて飲むのが大変。おなじバルプロ酸の徐放製剤であるセレニカRには400mg錠というのがあり、これまた大きい!

★ミアンセリン(テトラミド®)
 20-60mgを就寝前に。がっつり寝かせるお薬。副作用が高齢者に出やすいので自分は第一選択とはしていません。あんまり使わないですが、おとなしいタイプのせん妄にはまだ現役。QTの延長している患者さんには使いたくない。

 抗うつ薬としては残念ながら力不足な薬剤です。

★トラゾドン(レスリン®/デジレル®)
 12.5-50mgを就寝前に。テトラミドと同じ使い方。テトラミドより半減期が短い(6時間くらい)ので、持ち越しが少ないです。

 この薬剤は抗うつ薬ながら抗うつ作用をカケラほどしか持たないという残念な薬剤。ですが、鎮静作用は強く、睡眠薬として頻用されます。

★ペロスピロン(ルーラン®)
 2-4mgを就寝前に。効く時は効きますが、全く反応しないことも。。。ちょっと不思議なお薬ですね。暴れ過ぎないせん妄なら使ってみても良いかもしれません。4mgを超えて使う気にはなれず、この量で制御が効かなければ他の薬剤に切り替えます。高齢者に4mgをずっと出していると忘れた頃に錐体外路症状が出ることも。

 代謝物(ID-15036)に抗不安作用があるので、就寝前に少量使うと日中の不安が和らぐこともあります。この利点を生かしてコンサルテーション・リエゾンで自分は1mgとかを使うことがあります。そんなに成功例は多くないですが。。。

★リスペリドン(リスパダール®)
 0.25-1mgを就寝前に。多くは液剤を使いますが、たまにOD錠。このリスパダールは大活躍してくれますし、糖尿病でもO.K.なところが嬉しい。ただし、後述するクエチアピンよりも有意にEPSを生じやすいのと、高齢者には少量でも重い薬剤であることは認識しておくべきと思います。肝機能が悪いとなかなか分解されず、腎機能が悪いと排泄が上手くいかないので、用量に注意をしましょう。

 リスパダールは使い勝手がいいのですが、非定型の中では定型寄りのもの。EPSが出やすいのは先述のとおりで、高プロラクチン血症も意外に来たします。1mgしか使ってないのにPRLが90以上になったことも経験します。リスパダールが良く効いていて変更したくないけどPRLが高くて、、、という患者さんには、アリピプラゾール(エビリファイ®)を1.5mgくらい使ってみましょう。下垂体のD2受容体にリスパダールよりもがっちりくっついてくれて、しかも完全なアンタゴニストではないという利点から、PRLを下げてくれますよ。

★クエチアピン(セロクエル®)
 12.5-50mgを就寝前に。これはライトな抗精神病薬でして、少量を睡眠薬として使用することもあります。自分はリスパダールよりもセロクエルを使うことが多いのですが、残念ながら糖尿病には禁忌でして、これが大きな縛り。起立性低血圧に注意しましょう。トイレに患者さんが起きてフラフラっとして転んで骨折したら目も当てられません。有意にQTを延長させるので、注意!

 α2受容体遮断作用を持つことと、代謝物(ノルクエチアピン)がNETの阻害をすることからも分かるように、ちょびっと抗うつ効果を持ちます。なので、コンサルテーション・リエゾンでは不眠を訴えるちょっと元気の無い患者さんに使うことがあります。そういう患者さんで糖尿病を持っていたらセロクエルが使えません。その時はミルタザピン(リフレックス®)を7.5mgくらい使うと奏功することも(特に高齢者)。元気出てくれます。

★オランザピン(ジプレキサ®)
 1.25-5mgを就寝前に。極めて優れた抗精神病薬。糖尿病には禁忌というのが残念ですが。。。せん妄への対処ならジプレキサを使うことはあまりなく、セロクエルの方が半減期も短くて良いかと思っています(ジプレキサの半減期は20時間くらい、セロクエルは6時間くらい)。ただし、セロクエルと異なりQT延長のリスクがやや低いかも? というのがポイント(ただし、抗精神病薬は全てQTを延長させると考えましょう)。

 コンサルテーション・リエゾンでは、このお薬は食欲増進と制吐作用をも持つので、良い方向に働くことも。リエゾンで診ていてずっと抗うつ薬を使っていた患者さんが、がっくり落ち込んで食べられないし吐いてしまうという状況で、このジプレキサを1mgというごく少量を使ったら3日目くらいから改善を示して、主科の先生に「ジプレキサ効きますねー」と感心されたことがあります。その患者さんにはaugmentationとしての役割もあったんでしょうね。

★ハロペリドール(セレネース®/リントン®)
 2.5-5mgを頓用で(定期で使うなら0.75-5mg)。最もせん妄対処の歴史の長い薬剤。暴れて経口摂取が不可能という時に注射薬を用います。ただしEPSが出ますし、QT延長のリスクになります。自分の勤めている病院では、どうしようもないせん妄には”リントン1A(5mg)とロヒプノール®1A(2mg)を生食100mLに混ぜて100mL/hrで落として寝たら即止める!呼吸状態のモニター忘れずに”という方法を用います。ベンゾジアゼピンは単体で使用するのはまずいのですが、抗精神病薬との併用であればせん妄を増悪させることはおそらく無いのではないかと言われており、こうやって併用することで1+1が2ではなく2.7くらいになってくれる印象です。ロヒプノールは呼吸抑制を起こすので、これはきちんとモニターしてもらいましょう。また、全量入れるのではなく、寝たら滴下をストップさせることも必要。必要以上に入れるとリントンはEPSがどうしても起きてしまいます。

 緩和ケア領域では麻薬導入の際に制吐剤(CTZのD2遮断)として0.75-1.5mgくらい処方する先生もいるようです。自分はジプレキサの方が使い慣れているので、そっちを出すことが多いです。



 こんな感じ。用量は年齢や肝腎機能などに注意して適宜増減しましょう。せん妄には他にもゾテピン(ロドピン®)やチアプリド(グラマリール®)を使うこともあるようですが、自分は使用経験ありません。同じくクロルプロマジン(コントミン®)やレボメプロマジン(ヒルナミン®)も使わないです。大体は抑肝散、デパケンシロップ、セロクエル、リスパダールあたりで何とかなっています。ある程度バランスよく複数の受容体を攻めるのがいいかと思います。基本的にこれらの薬剤は頓用ではなく定期で毎日使ってもらっています。その上でせん妄が生じた際の頓用では抗精神病薬を用い、経口摂取不可能になればリントンの出番。他には、コリンエステラーゼ阻害薬が病態上期待されていましたが、リバスチグミン(リバスタッチ®/イクセロンパッチ®)はかえって死亡率を高めてしまって沈没。ドネペジル(アリセプト®)もあまり効果なし。NMDA受容体阻害薬のメマンチン(メマリー®)は症例報告で効果があると言われていますね。アリピプラゾールも使われることがあるようでおとなしいタイプのせん妄に特に効きが良いようですが、結構な量が必要みたいです(18mg前後とか)。シチコリン(ニコリン®)の1000mg注射なんてのはまさに現場の知恵と言えましょう。漢方では、自分は抑肝散しかせん妄に対して使ったことはないのですが、恐らくは黄連解毒湯や桃核承気湯といったものも効果はあるでしょうね。ただ抑肝散の方が患者さんを比較的選ばずに使用できるというメリットはあるかと思います。

 自分は使ってない薬剤の中で、コントミンはハロペリドールと同等の効果を示すと言われます。使うなら5-25mgを就寝前に。コントミンは1952年に発見された、世界で最初の抗精神病薬。こんなに古い薬ですが、精神科ではまだまだ現役で働いています。

 さて、このせん妄は先程も述べたように、その後の認知機能低下につながると言われています。最近のNEJMでもそのような論文がありました。

Cognitive Trajectories after Postoperative Delirium; N Engl J Med 2012;367:30-9.

 これは冠動脈バイパス術や弁置換術予定の60歳以上の患者さんを対象としています。術後にMMSEを評価して、せん妄を発症した患者さんは非発症の患者さんに比べ、術後1カ月および1年時点の認知機能が有意に低かったとしています(Fig.2 A,B,C)。

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 他、アルツハイマー病の患者さんを対象に、入院とせん妄に関連する転帰を前向きコホートで調査した論文もあります。

Adverse Outcomes After Hospitalization and Delirium in Persons With Alzheimer Disease; Ann Intern Med. 2012;156:848-856.

 これにおいては、入院患者さんにおける認知機能低下の21%、施設入所の15%、死亡の6%がせん妄に関連したという結果(Table3)。

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 さらにさらに、脳萎縮との関連性を調べた論文も。

The association between brain volumes, delirium duration, and cognitive outcomes in intensive care unit survivors: The VISIONS cohort magnetic resonance imaging study
Crit Care Med 2012;40:2022–2032

 この論文は、せん妄期間、脳容積、長期認知障害の関連性を前向きコホートで調べたもの。せん妄が長期におよんだ場合、退院時のMRIで脳萎縮が強く、3ヶ月目のフォローアップにおいても同じ結果だったとしています。また、長期のせん妄は退院時の前頭葉の容積、海馬の容積と関連していたようです。更に、3ヶ月時の強い脳萎縮は、12ヶ月時の認知パフォーマンスの悪化に関連しており、3ヶ月時の前頭葉、視床、小脳容積が小さいものでは、12ヶ月時の実行機能および視覚的注意の悪化に関連していたとしています。結論として、長期のせん妄は脳容積の小ささに関連しており、この脳容積の小ささはさらに12ヶ月時の認知機能障害と関連していたとしています。しかし、もともと小さい脳容積がこれらを説明できるものかどうかは除外できなかったとも記載されていました。

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 こういったことを考えると、せん妄は予防、そして早期の抑え込みというのが最も大事になってきますね。認知機能や生命予後にも関わってくる病態なので、精神科医の介入が重要視される分野だと思います。

 ですが、繰り返しですがまずは基礎疾患のコントロールが一番大事。これは主科の先生に頑張ってもらうところ。更に原因or増悪要因となっている薬剤を弾く。そして、病棟にもご家族にも協力してもらって生活リズムと適度な刺激。これなくてはせん妄のコントロールは難しいです。精神科が薬剤で押さえても、対症的。根っこの部分でのサポートが必要です。
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2012
07.10

”あんまき”を食べてみる

 愛知県には、知立(ちりゅう)という市があります。そこの名物が”あんまき”と称される食べ物。スティックタイプのどら焼きみたいなものと考えていただければ良いかと思います。始まりは江戸時代のようで、知立神社への参拝客へ出されたものが原型らしいです。

 それを出すお店でメジャーなものは2つあり、1つは藤田屋、そしてもう1つが小松屋本家となっています。本家本元は小松屋のようでして、手作りでお店も1つ。後に藤田屋が参戦し、こちらが大量生産型で店舗も多くあります。金山駅でもちらほら販売所を見かけますね。

 ”あんまき”というものがあるらしい、と知った自分。せっかく愛知県に住んでいるので食べてみますか、ということで少し前に行ってきました。この時点では小松屋さんの存在を知らなかったので、必然的に藤田屋さんに行くことになります。

 知立駅にある藤田屋さんの派出所。藤田屋さんの出す”あんまき”は”大あんまき(おおあんまき)”という名称。

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 色々種類があり、その中から3個買いました。普通の黒あんまきと、カスタードあんまき、チーズあんまき。こんな箱に入ってます。

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 開けてみるとこんな感じ。寄り添っています。アンコがはみ出さんばかりの勢いでぎっしりと(というか、はみ出している・・・)。

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 1つの大きさがこれくらい。結構大きいですね。

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 これがスタンダードな黒(160円)。
 
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 こっちはカスタードも入ってます(190円)。

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 これはチーズ(190円)。

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 他には何故かあんまきを天ぷらにしてしまったものも売っておりました。何故揚げたんでしょう??

 肝心のお味は、皮がもちっとしていて、不思議とあんが甘すぎない。これだけ入っていたらくどくなるかな?と思っていたんですが、このあっさりな甘さは意外でした。食べた3つの中ではチーズあんまきがベストでして、ちょっと塩気のあるチーズクリームがあんの甘さと良く馴染んでいます。朝食として3つとも食べてしまいました(さすがにちょっと多かった)。

 この透明感のある甘さが謎でして。。。どうしてだろう?と思っておりましたが解決するはずもなく。しかし、食べ終わって空になった箱をゴミ箱に入れた時、事態は急転します。

 なんと、ウラに原材料が書かれてました。

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サッカリン!


 犯人はこいつか!すごく納得しました。サッカリンやアスパルテームを代表とする人工甘味料は、奥行きのない甘さが特徴です。これのせいであんの甘さがしつこすぎず食べられたのね。ただ、いまどきサッカリン使ってる食べ物は久々に見ました。業務用スーパーのお漬け物くらいでしょうか??歯磨き粉には良く使われていますが。昔は駄菓子に使われてましたね、懐かしい。。。

 サッカリンは発がん性があるのでは?と言われていましたが、それは現在否定されているようです。でもサッカリンて聞くとさすがに食べる気がちょっと。。。保存料としてソルビン酸が使われているのは大量生産の影かもしれませんね。この2つが使われてなければまた食べたいのですが、、、。知らぬが仏とはまさにこのこと。

 後になって、小松屋さんの存在を知り、かつこちらは本家本元でありかつ手作りとな。ということで、少し調べてみるとJR名古屋の高島屋にて銘菓百選で木曜と日曜に入荷すると知りました。ちょうど調べたその日が日曜だったので、夕方頃にのそっと出かけて買ってきました。

 焼き印が押されてあります。小松屋さんは冒険せず、赤(普通のあん)と白(白あん)の2種のみの販売。赤2本と白1本でいくらだったっけ?480円くらいだった気がします。

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 同じく1本はこんな大きさ。

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 赤がこんな感じ。

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 こっちが白。

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 実際食べてみると、ちょっとモソっとした感じでした。藤田屋さんよりもモチッと感が少ないですね。あんは重厚。こっちは原材料に変な甘味料を使用していないので、あんの甘さはお砂糖だなと分かります。

 このもそもそ感が少し残念だなーと総括しようとしていたら、、、


「小松屋本家で直接買うと、結構出来たてに近い状態のものを食べられる時が多い」


 との有益情報をいただきました。なんと、これは行かねば。デパートでしかも夕方にあるようなものでは確かに正当な評価はできまい。

 ということで、行ってみました。何故か”鉄砲”の看板があったりお店では釣具を売っていたり。。。何屋さん??

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 意を決してお店にいたおばあちゃんに声をかけて、2本購入(どちらも赤。160円)。袋越しに、手に温かさが伝わってきます。ちょっとドキドキ。

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 お店の外に出てぶらぶらしながら食べると、やはり違いました。モソッと感が無く、少しモチッとしていて、あんも温かくて軟らかい甘さで。。。同じ食べ物とは思えませんでした。やっぱり”手作り+出来たて”は最強コンボでございます。

 食べながらお散歩をして、知立神社をチラ見してきました。画像に写ってるあんまきは2本目。

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 寄った時は、花しょうぶ祭の最中だったようです(毎年5月25日から6月20日まで)。

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 綾波さんが駅前交番の裏で待っててくれるそうです。待ち合わせの場所としてはいかがなものかと。

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 さて、あんまき比較の結果ですが、このスライドに集約されるでしょう。

無題

 最強コンボを目の前にしては、藤田屋さんもやや劣勢。しかし、大量生産の良さはここからで、時間が経過しても風味の劣化幅が狭いというのがポイント。かたや小松屋さんにおいては時間経過が大敵。美味しさがクロスするその時間は今後の検討課題ですが、恐らく個人間で異なるのでしょうね。

 そんなこんなで、短期間のうちに5本のあんまきを食べた自分は、しばらく手にしなくても大丈夫でしょう。でもこの前は大判焼き食べたけどね。。。
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2012
07.06

痛みに対する向精神薬

Category: ★精神科生活
 どんな性質のものであれ、痛みというのはやってられないものです。自分は慢性的な頭痛を抱えているので、イブプロフェンが手放せません。頭が痛いと動けないし、QOLがガタ落ちです。

 その痛みについてはNSAIDsに代表されるCOX阻害薬やオピオイドが使われますが、精神科で処方する薬剤にも有効なものがあります。代表的なお薬は、抗うつ薬です。なぜ抗うつ薬が鎮痛薬として働くのか?これの説明に”Antidepressants and pain; Trends in Pharmacological Sciences, Volume 27, Issue 7, 348-354, 1 July 2006”という論文の図を引用してみます。

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 これによると、モノアミン再取り込み阻害が下降性の抑制ニューロンを助けることで痛みを抑えているのが分かります。他に、大脳で痛みの感覚や情動の部分にも働いていますね。モノアミン再取り込み以外にも、内因性オピオイドシステムの活性化にも抗うつ薬は一役買っています。最近は”痛みを抑える抗うつ薬=デュロキセチン(サインバルタ®)”と判で押したように覚えられていますが、別にサインバルタでなくてもSNRI、SSRI、NaSSA、三環系含めて、抗うつ薬全般に程度の差こそあれ疼痛抑制効果はあります。SSRIだから痛みに対して無力ということは決してありません。ただし、効果と忍容性というのを考えるとサインバルタはやはり有用性が高いように見えます。

 効果のみで考えれば、サインバルタなんか目じゃないのが三環系抗うつ薬。昔ながらのお薬ですね。特にアミトリプチリン(トリプタノール®)は切れ味鋭いです。三環系抗うつ薬はモノアミン取り込み阻害以外にも様々な作用が知られており、上記のオピオイド活性以外にも例えばNaチャネルの阻害、Kチャネルの活性化、Caイオン取り込み阻害、アデノシン受容体の活性化やアデノシン放出作用、NMDA受容体の抑制、GABA-B受容体の機能活性化、サブスタンスP産生抑制、P2X受容体の末梢での阻害、プロスタグランジンE2様活性の抑制、NO放出抑制、マクロファージの遊走抑制、TNFαの産生低下などがあるとされています。こういう奥行きが三環系の魅力。SSRI以降の新規抗うつ薬の効かないうつ病患者さんにはこの三環系をトライすることも重要です(抗炎症の視点を含めて)。以下の図は”Antidepressants for the Treatment of Chronic Pain; Drugs 2008; 68 (18): 2611-2632”から抜粋してます。

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(クリックでほんの少し拡大)

 ATP受容体については、三環系以外の新規抗うつ薬も作用します。パロキセチン(パキシル®)はP2X4受容体の最強の阻害薬として働きます。サインバルタはノルアドレナリン再取り込み阻害によりβ1/2受容体を刺激します。それがPKA活性を強めて、P2Y12受容体刺激により発現されるp38の働きを阻害します。要は間接的にP2Y12受容体の働きをブロック。これらのATP受容体は、脊髄後角の活性化ミクログリアにあり、受容体が刺激されることで炎症性サイトカインをばんばん出してしまって痛みを慢性化すると言われます。P2Y12受容体と言えば抗血小板薬のクロピドグレル(プラビックス®)がその阻害薬ですね。ひょっとしたら効くかも?

 抗うつ薬以外にも、カルバマゼピン(テグレトール®)などの抗てんかん薬、その中でもガバペンチン(ガバペン®)やその発展系とも言えるプレガバリン(リリカ®)が疼痛に有効と言われています。Caチャネルにα2δリガンドとして結合し、神経細胞内にCaが流入するのを抑え、グルタミン酸などの神経伝達物質の放出を妨げることで疼痛を抑制すると言われています。更に、機序は不明ですが脳内のGABA濃度を上昇させるようです。ただし、糖尿病性末梢神経障害の疼痛に関する試験とHIVによる神経障害性疼痛に関する試験の2つにおいて、リリカは効果を認めなかったとする報告がされており、ちょっと現場は「??」と思っております。でも痛みを持つ患者さんに処方している身としては、効く印象が強いですけどね。もちろん全員ではないですし、リリカよりもサインバルタの方が効く気がします。選択肢の1つとしてリリカをとらえましょう。副作用はめまいや傾眠が有名ですが、浮腫や心不全もありますから要注意。

 線維筋痛症に対してサインバルタ、トレドミン®、リリカの3つを比べた下の図では、サインバルタの方が有効性が高く出ています(Comparative Efficacy and Harms of Duloxetine, Milnacipran, and Pregabalin in Fibromyalgia Syndrome; The Journal of Pain, Vol 11, No 6 (June), 2010: pp 505-521)。ただし、リリカは疲労感や不安、強迫にも効果があると言われており、その部分の増強治療としての方法もあります。

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(クリックでほんの少し拡大)

 リリカに関する論文は自分も数多く読んだとは決して言えないので、先の神経障害性疼痛に効果がないとする報告は無視できないと思います。ですが、疼痛に対する色々な角度からの戦法という意味で、リリカは知っておいて損はないでしょう。リリカ礼賛、ではなくしっかりと批判的な意見も考えて使うべきでしょうね。使用する際は、腎機能正常の患者さんにおいて150mg/dayから開始すると添付文書に記載があります。ですが、結構副作用でます、この量から始めると。傾眠、ふらつき、複視など。。。なので、自分は50mg/dayや、高齢者では25mg/dayから始めることにしています。注意力が散漫になるので、車の運転はしちゃいけませんと伝えておくことを忘れずに。

 最近はトピラマート(トピナ®)も疼痛に効果があるのでは?と言われます。トピナは色んなメカニズムを有するので、定型的な治療が効かなかった時には使ってみる価値はあると思います。衝動性を抑える方向に向くので、それのある患者さんには向くかも。ただ、確実に認知機能は落としますね。。。頭痛もあるし精神症状は良い方向にも悪い方向にも振れる。ちょっと展開が読めないです。使うなら25mg/day以下からゆっくりと増やすのが良いかと思います。

 他には漢方も疼痛に対して用いることがあります。自分は冷えで憎悪するような痛みには桂枝加苓朮附湯を処方することが比較的多いです。”冷えるとダメ/温めると楽”つまりは寒証というのがポイントですが、附子が入っているためでしょう。でもこの附子には注意しておきましょう。いくら減毒化しているとはいえ、安易に増量したり使いすぎたりするのはちょっと怖いですね。また、痛みであってもその背景に”怒り”が感じられるようなら、言い換えれば怒りの身体化ではないかと感じられたら、抑肝散を用いることも1つの方法です。これで腰痛が良くなることもままあります。他、精神的なものから来る腰とか頚とかの痛みには桂枝湯と麻黄附子細辛湯の合方(桂姜棗草黄辛附湯になります)が奏功することも。女性の下腹部の痛みにはまず当期芍薬散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯を使ってみます。大建中湯を使う時も当期芍薬散と合わせることが個人的には多いです。これらも寒証向き。これらの多くは利水の作用があります。天気が悪くなると悪化するなんて患者さんにも向きますね。こういうのが強い患者さんでは五苓散を更に足してみても良いでしょう。

 サインバルタも使った、リリカも使った、トピナだって試した、トラムセット®(トラマドールとアセトアミノフェンの合剤)も使った、でもあと一押しほしい!という時に漢方は打開策になってくれます。

 ということで、精神科の処方する薬剤には疼痛に効果のある薬剤があるのでした。更に、慢性疼痛はうつ病のリスクにもなりますし、痛みを軽減することはうつ病の改善にもつながることが示されています。軽んじずにしっかりと治療しましょう。
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2012
07.03

赤ちゃん、お大事に。

Category: ★精神科生活
 妊婦さんに投与できる薬剤、できない薬剤というのは頭を悩ませるところで、FDAはその基準(薬剤胎児危険度分類基準)を出しています。これは“A、B、C、D、X”の5段階。大雑把に言うと、AとBはとりあえず安全かもしれないという扱いで、Cは有益性が勝る時に使う、DとXはダメ、ということになります。

 さて、日本では何と公的な胎児危険度分類が存在しません。添付文書を参考にした山下の分類というのがあり、これが一応の目安にされており、授乳婦についても加味されています。この分類は“A、B、C、E、E、E+、F、-”にカテゴライズされており、Aが投与禁となっておりFDAとは異なるのでご注意を。これも大まかに言うと、AとBがダメで、Cが授乳禁、Eが有益性を考えて使用、Eは妊娠3ヶ月以内と妊娠後期においては特に有益性を考えて使用、E+は使うなら可能な限り単独で、Fが慎重投与、-が注意なしという感じ。一言付け足すなら、“注意なし=絶対安全”という訳ではありません。

 自分の備忘録的に向精神薬の安全性基準を以下にざざっと記しておきますが、ご利用になる際は必ず他のもので確認して下さい(責任は負いかねます)。今回、FDAでカテゴライズされていない薬剤には“?”と記しておきました。なお、全薬剤を記してはいません。

★抗精神病薬
~フェノチアジン系~
クロルプロマジン(コントミン®、ウィンタミン®):C
ペルフェナジン(PZC®、トリラホン®):C
レボメプロマジン(ヒルナミン®、レボトミン®):C
フルフェナジン(フルメジン®、フルデカシン®):C
プロペリシアジン(ニューレプチル®):?
 日本の山下分類では、フルデカシンが妊婦にはAで授乳婦にはCになっており、ニューレプチルが妊婦にはBと授乳婦には-となっています。フルデカシンとフルメジンとでは異なっていて、フルメジンは妊婦にB、授乳婦に-でした。これは筋注と経口とで差があったためでしょう。コントミン/ウィンタミンは日本では妊婦にも授乳婦にもB扱いです。

~ブチロフェノン系~
ハロペリドール(セレネース®、リントン®):C
ピモジド(オーラップ®):C
ブロムペリドール(インプロメン®):?
ピパンペロン(プロピタン®):?
チミペロン(トロペロン®):?
スピペロン(スピロピタン®):?
 FDAではセレネースがCでまだ使えるのですが、日本では残念ながら禁忌扱い。他はインプロメンもトロペロンも妊婦にA、授乳婦にCで、プロピタンとスピロピタンがどちらにもBです。日本において、ブチロフェノン系の中ではオーラップが最も縛りが緩く、妊婦にも授乳婦にも“治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与”という扱い。

~その他~
モサプラミン(クレミン®):?
クロカプラミン(クロフェクトン®):?
スルピリド(アビリット®、ドグマチール®、ミラドール®):?
スルトプリド(バルネチール®):?
ネモナプリド(エミレース®):?
ゾテピン(ロドピン®):?
リスペリドン(リスパダール®):C
パリペリドン(インヴェガ®):C
ペロスピロン(ルーラン®):?
クエチアピン(セロクエル®):C
オランザピン(ジプレキサ®):C
アリピプラゾール(エビリファイ®):C
ブロナンセリン(ロナセン®):?
クロザピン(クロザリル®):B
 ブチロフェノン系同様、結構アメリカで使われていない薬剤が多いですね。日本では、基本的にそれらを含めてこのグループの薬剤は妊婦にE、授乳婦にCとなっています。その中ではクレミンが妊婦にA、ロドピンが妊婦にB、クロフェクトンが妊婦にBにランクしておりほぼ禁忌扱い。クロフェクトンは授乳婦への投与について記載が無く-となります。ドグマチールは特に母乳移行が多いとされ、またクロザリルは母乳によって乳児に鎮静や無顆粒球症を来すことがあるようです。総じて、日本の添付文書ではオーラップ以外の定型抗精神病薬は非常に使いづらい状況になっています。

★抗うつ薬
~三環系~
イミプラミン(トフラニール®):D
クロミプラミン(アナフラニール®):D
アミトリプチリン(トリプタノール®):D
ノルトリプチリン(ノリトレン®):D
ロフェプラミン(アンプリット®):?
アモキサピン(アモキサン®):C
ドスレピン(プロチアデン®):C
 三環系において、FDA的にはアモキサンとプロチアデン以外はほぼ禁忌と考えましょう。日本ではトフラニールとアナフラニールが妊婦にB、他が妊婦にEです。授乳婦には、ノリトレンとアンプリットが-でアモキサンがEとなっており、その他はほぼCです。

~四環系~
マプロチリン(ルジオミール®):B
ミアンセリン(テトラミド®):?
セチプチリン(テシプール®):?
 ルジオミールはFDAではBとされており許容範囲内的な雰囲気ですが、日本では妊婦に同じBでもこっちは投与禁希望のBです。テトラミドは妊婦にEで、どっちも授乳婦にCです。テシプールは日本では授乳婦にB,Cで妊婦にEです。

~非三環非四環系~
トラゾドン(レスリン®、デジレル®):C
 レスリンはCになっています。日本では妊婦にEという扱いで、授乳婦にはB,Cという判定。

~SSRI~
フルボキサミン(ルボックス®、デプロメール®):C
パロキセチン(パキシル®):D
サートラリン(ジェイゾロフト®):C
エスシタロプラム(レクサプロ®):C
 FDAではパキシルがDになっており、胎児には他のSSRIに比してよろしくないという扱い。ただそれに反駁するような内容の研究が出ており、見解は一致していません。日本ではルボックス/デプロメールがBで投与禁希望という扱い。後はEです。授乳婦には全てB,Cとなっています。中でもレクサプロは母乳への移行は多いと言われます。最近、妊娠後期にSSRIを投与すると胎児の肺高血圧リスクが高まるとの論文が発表されました(Selective serotonin reuptake inhibitors during pregnancy and risk of persistent pulmonary hypertension in the newborn: population based cohort study from the five Nordic countries; BMJ. 2012 Jan 12;344:d8012.)。抗うつ薬の使用は本当に何とも言えない状況かと思います。。。

~SNRI~
ミルナシプラン(トレドミン®):C
デュロキセチン(サインバルタ®):C
 日本ではどちらも妊婦にはE、授乳婦にB,Cです。

~NaSSA~
ミルタザピン(リフレックス、レメロン®):C
 日本では妊婦にE、授乳婦にB,Cです。

★気分安定薬
リチウム(リーマス®):D
バルプロ酸(デパケン®、セレニカ®):D
カルバマゼピン(テグレトール®):D
クロナゼパム(リボトリール®、ランドセン®):D
ラモトリギン(ラミクタール®):C
 リボトリールを気分安定薬に入れているのは個人的な趣味です。FDAでは妊婦に使用できるのはラミクタールのみと考えて良いと思います。ちなみに妊婦への使用に対してはオーストラリア分類というのもありまして、そこではラミクタールはBからDに格下げされてしまいました(絶対禁忌ではなく、必要に迫られ、注意して処方されることが有り得るというもの)。日本では、リチウムは妊婦に使用禁忌のA、授乳婦にはCとなっています。バルプロ酸も妊婦に原則Aで授乳婦にC、テグレトールは妊婦にE+で授乳婦にEです。リボトリールとラミクタールは妊婦にEで授乳婦にCに。

★精神刺激薬
メチルフェニデート(リタリン®、コンサータ®):C
アトモキセチン(ストラテラ®):C
 リタリン/コンサータは日本では妊婦にB、授乳婦にはCです。ストラテラは妊婦に対してEで、授乳婦にはCです。

★抗不安薬・睡眠薬
~ベンゾジアゼピン系~
 ベンゾはジアゼパム(セルシン®、ホリゾン®)やロラゼパム(ワイパックス®)など数多ありますが、基本的に妊婦には使わないという方針です。FDAではほとんどがDにランクされており、その中でも特にエスタゾラム(ユーロジン®)とフルラゼパム(ベノジール®、ダルメート®)とトリアゾラム(ハルシオン®)とクアゼパム(ドラール®)がXに分類されています。いわゆるZ系であるゾピクロン(アモバン®)とその光学異性体であるエスゾピクロン(ルネスタ®)とゾルピデム(マイスリー®)がCに入っているので、使わなければいけない状況であればこれらが選択されます。ただし、最近の臨床試験ではベンゾジアゼピン系の催奇形性は否定されつつある状況で、これをFDAが将来的にどう採るのかは注目すべき状況と思います。ただ妊娠末期は胎児に影響(floppy infantや離脱症状)がほぼ確実にあります。日本の山下分類ではほとんどが妊婦に対してEかEであり、授乳婦にはB,Cという扱いです。

~バルビツレート系~
アモバルビタール(イソミタール®):D
ペントバルビタール(ラボナ®):D
 バルビツレートは全部Dにランク。山下分類ではイソミタールが妊婦にF(慎重投与)で、授乳婦には-となっており、ラボナが妊婦にE(分娩前の連用がB)、授乳婦にはB,Cです。

~その他~
ヒドロキシジン(アタラックスP®):C
タンドスピロン(セディール®):?
ブロムワレリル尿素(ブロバリン®):D
ラメルテオン(ロゼレム®):C
 アタPはFDAではCなのですが、日本では残念ながら妊婦にも授乳婦にも使用禁忌でAにランクされています。セディールは日本と中国でしか販売されていないのでFDAの情報はありませんが、山下分類では妊婦にE、授乳婦にB,Cです。ブロバリンは日本で妊婦にB、授乳婦には-となっており、ロゼレムは妊婦にE、授乳婦にB,Cです。

★抗コリン薬
ビペリデン(アキネトン®):C
トリヘキシフェニジル(アーテン®):C
プロメタジン(ピレチア®、ヒベルナ®):C
 これらは山下分類で妊婦にB、授乳婦にはBやB,Cとなっています。ピレチア/ヒベルナだけ授乳婦に-の記載でして、添付文書に授乳婦への注意書きが存在しません。

★抗てんかん薬
フェニトイン(アレビアチン®、ヒダントール®):D
フェノバルビタール(フェノバール®):D
プリミドン(プリミドン®):D
トリメタジオン(ミノアレ®):D
エトスクシミド(ザロンチン®):C
ゾニサミド(エクセグラン®):C
クロバザム(マイスタン®):C
ガバペンチン(ガバペン®):C
プレガバリン(リリカ®):C
トピラマート(トピナ®):C
レベチラセタム(イーケプラ®):C
 日本ではミノアレのみ妊婦に使用禁忌のAで、あとはEやE+となっています。授乳婦に対してはアレビアチン、プリミドン、ミノアレが-で注意なし(繰り返しですが、絶対安全というわけではありません)となっており、それ以外はB,CやCとなっています。

★漢方薬
 FDAによるカテゴリーは当然のことながら存在しません。牡丹皮は早流産の危険性があり、これには加味帰脾湯や加味逍遥散などが含まれます。半夏や厚朴も同じく早流産のリスクに(この2つは何とも言えませんが…)。また大黄も早流産の危険性と、更に母乳への移行により乳児に下痢を起こすことがあります。その他にも桃仁や紅花、牛膝、芒硝、牽牛子も同様に早流産の可能性は必ずしもゼロとは言えません。麻黄や附子も胎児の循環に影響すると言われます。なので少なくともこれらを含む漢方薬は、時期によっては避けた方が良いと思います(厳密にいつだ、とはなかなか…)。人参や黄耆、芍薬は安全に使用出来るのではないかとされています。
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2012
07.01

補足:血液培養のグラム染色でブドウ球菌を見る

 S. aureusとS. epidermidisに代表されるCNSとの鑑別は重要です。患者背景も加味する必要がありますが、グラム染色で目星をつけられたら非常に大きな武器になることでしょう。以前、感染症のレクチャーシリーズではその2つの見え方として“CNSの方が丸々としていて少し大きいかな?”的なことをお話していましたが、これは培養をかけずに検体を直接染めたものからの経験を教えてもらった内容でした。

 今回は、血液培養ボトルの血液検体をグラム染色した時の見え方。コレが何と好気ボトルではS. aureusの方が大きく見えるということで、恥ずかしながらそれを知りませんでした。。。血液培養検体と非培養検体とでは見え方が異なるのか、それとも非培養検体の“CNSの方がちょっと大きく見える”というのが実は違っていたのかは分かりませんが、このままでは自分の記事を読んだ方々が間違って覚えてしまうかも。そうなると大変なので、ここで1つ記事を作ると同時に、以前の記事を少し修正しておきました。

 血液培養は機械を使って行いますが、主にBacT/ALERTシステムとBACTECシステムの2つがあります。このシステムの違いで少し見え方は異なってくるようです。まずはBacT/ALERTの方から。

Rapid identification of Staphylococcus aureus from BacT/ALERT blood culture bottles by direct Gram stain Characteristics; J Clin Pathol 2004;57:199–201.

 参考文献は上記。ここではこの様な基準を設けました。

みわけ1

 見え方はこんな感じ。

みわけ2

 確かに嫌気ボトルではS. aureusは劣勢という印象がありますね。この基準で行くと、何とほぼ正確にS. aureusをCNSから鑑別できるそうです。感度89%、特異度98%とのこと。凄いですね。。。

 そして次はBACTECの方です。参考文献は以下のもの。

血液培養液中のブドウ球菌属の塗抹グラム染色による形態学的鑑別; 感染症学雑誌第82巻第6 号

 ここではこんな基準。似たような感じですね。

みわけ3

 見え方はかように。

みわけ4

 BACTECシステムにこの基準を用いると陽性尤度比11.4と出ているようです。これもナイスな数字ですね。

 これらの2つ基準は似たようなものですが、互換性はないとのこと。Bact/ALERTで培養されたブドウ球菌にBACTECの基準を用いても駄目であると参考文献では記されています。

 ただし、この基準を盲信は出来ないんでしょうね。Rule outにはやや弱いか、という印象です。いずれにしてもmecA遺伝子同定とPCRをかけることは必要と思います。




追補:S. epidermidisを最近までS. epidermisと勘違いしていました。。。レクチャーシリーズでもずっとepidermisと記載しておりました。失礼いたしました。

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2012
07.01

キャラクターシリーズ:キティちゃんの腹黒い複数契約

Category: ★精神科生活
 キティちゃんは日本のみならず世界各国で人気者。口がないのか見えないのか、眼と鼻のみで物事を語るキャラ。南国少年パプワくん(漫画版)を思わせますね。。。製薬会社が目をつけないはずはなく、自分の知る限りでは旭化成ファーマ、タケダ製薬、大日本住友製薬、ヤンセンファーマ、持田製薬がライセンス契約をしています。むむ、こんなに手を結びおって。。。仕事を選びませんな。何でもかんでもコラボしまくりです。

 持田製薬はノルエチステロン/エチニルエストラジオール(オーソ®)というピルの販売をしており、そのメモ帳にキティちゃんが出演しています。しかし、自分はそのメモ帳を持っておらず写真も撮っていないため、アップできません。。。なので、最初はトレドミン®からご紹介しましょう。これは一般名ミルナシプランでして、フランス出身。日本では初のSNRIでセロトニンよりもノルアドレナリンに強く作用します。相互作用が殆どなく、かつ"Tolerance is Dominant(忍容性に優れている)"という名前の由来が示すように、忍容性はかなり良いです。た・だ・し、用量が100mgまでという少なさでして、思うような効果が出ないまま終了してしまうという憂き目にあっている抗うつ薬。自分はトレドミンをファーストで選ぶことは残念ながら…。SNRIがSSRIよりも疼痛に効果があるという論文がバンバン出てきており、その中でサインバルタ®とともにその作用が注目されて来てはいます(効果という点で最も大きいのは三環系抗うつ薬ですが)。アメリカでは抗うつ薬として見向きもされず、2009年に線維筋痛症への疼痛改善効果ありとのことで疼痛治療薬として承認されました。日本では製造発売元が旭化成ファーマで、販売元がヤンセンファーマです。だからこのキティちゃんの”トレドミンメモ帳”は旭化成のものかヤンセンのものか分からず。

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 お次はタケダ薬品さんの出番。200年以上も続く、日本の誇る製薬会社でもありますね。精神科にはあまり入り込んでおらず、かろうじてラメルテオン(ロゼレム®)くらい?やっぱりタケダといえば生活習慣病。降圧薬や血糖降下薬が有名ですね。他には胃潰瘍や逆流性食道炎の治療薬であるPPIのタケプロン®もよく使われます。ちょっと脇道に逸れますが、日本の糖尿病治療は世界から見ると異常なんですよ。日本以外ではまずビグアナイド系であるメトホルミン(メトグルコ®/メルビン®/グリコラン®)という薬剤を最初に使います。その上で、それでうまくいかない時はどれを上乗せするかということを前提に進んでいます。しかし、日本ではグリニド系やチアゾリジン系、特に最近ではDPP-IV阻害薬が最初に選択されることが多いです。医者は製薬会社に踊らされやすいですが、日本はその傾向著しく、特にこの血糖降下薬はそれが見て取れます。ビグアナイド系はめちゃくちゃ安くて製薬会社があまり儲からないんですが、それ以外は結構なお値段。製薬会社が良いように試験を組み立てて良いように解釈して優位性をアピールして、医者に売り込んで。それを盲信して処方、というのは決してしてはいけないことです。製薬会社主導の試験やMRさんの言うことは話半分と言わず話1/5くらいにして聞きましょう。持っているキティちゃんグッズは、メモ帳とボールペン。

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 その次は大日本住友製薬が製造し、そことMeiji Seika ファルマが販売しているエバスチン(エバステル®)です。1日1回投与で良い持続性抗ヒスタミン薬で、花粉症やアレルギー性鼻炎に使います。1日1回では最新のものがザイザル®で、他にはクラリチン®やアレジオン®などがあります(ジルテック®もそうですが、ザイザルがその強化版ですね)。エバステルはちょっと他の薬剤の影に隠れている印象で、自分は実は処方したことが無いんです。。。その印象の弱さを挽回すべく?キティちゃんがサポートしてくれています。付箋ですが、これまた随分と可愛い!かなり凝っていると言わざるを得ません。これでエバステルを使うようになるかは疑問ですが、キティちゃん好きな医者がこれをもらったらとりあえずエバステルという名前はインプットされそうです。

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 ヤンセンは抗精神病薬では知らない医者はいないくらいに有名。リスペリドン(リスパダール®)やパリペリドン徐放剤(インヴェガ®)を産み出した会社です。リスパダールについてはもう説明が要らないくらいですよね。。。インヴェガはゴーストピルになって出てくるという記事を書いた覚えがあります。そんなこんなで、ティッシュとファイルとペン立てが手元に。しかしなぜファイルはリスの格好してるんだ?と思ったら、ふと気付きました。。。


”リス”パダールだからだねっ!!!


 アイヤー。。。推測ですが、多分あたってる推測ですよコレ…。

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