2012
04.27

リチウムの血中濃度測定について

Category: ★精神科生活
 2012年4月に、PMDAから「医薬品適正使用のお願い(炭酸リチウムによる重篤なリチウム中毒と血中濃度測定遵守について)」というお知らせが出ました(http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201204_4.pdf)。

 リチウムは血中濃度を測らねばいけないお薬で、治療域が狭いというのも事実。ですが、双極性障害に対する気分安定薬の最古参でありながら治療効果が最も期待できるものでもあります。色々な薬剤が双極性障害に使われていますが、やっぱり頼りになるのはリチウム。双極性障害の治療をする上では欠くことが出来ませんし、うつ病の増強でも大きな効果を示してくれます。

 このPMDAのお知らせでは「維持療法期でも月に1回は血中濃度を測りなさい」となっています。しかし、この頻度は”適正”使用とは言いがたいものがあります。ほぼ毎回採血することになりますし、社会復帰という観点からすると非現実的。このお知らせに日本の精神科も俊敏に反応し、日本うつ病学会・日本生物学的精神医学会・日本臨床精神神経薬理学会・日本神経精神薬理学会の4学会が手を取り合って意見書を提出する事態となりました。

 世界的に見て、リチウムは維持療法期において、3-6ヶ月に一度の血中濃度の測定で良好なマネジメントが出来ます。NICE、CANMAT、ISBD、APAの各ガイドラインもほぼこの期間です。

 相互作用を持つ薬剤を使用している時(NSAIDs、ACE阻害薬など)、脱水時、腎機能低下時、中毒らしき症状発現時にはもちろん注意深い血中濃度測定が必要となります。頻回の測定もここでは大事でしょう。

 私たちは、患者さんがお薬を飲みながらも社会復帰して日常生活・社会生活が送れるということを目標としています。維持療法期における月に1回の採血という画一的な通達はそれに反し、3-6ヶ月の採血より優れている根拠もありません。臨床医は柔軟性を以て、血中濃度測定の間隔を設定すべきと思います。もちろん、それにはリチウムそのものについて熟知しておくことは言うまでもありません。

 ということで、4学会は以下の推奨を示しました。


”投与初期または用量を増量した時には1週間に1回程度をめどに測定する。維持療法中は、年2-4回をめどに測定する。再発時、相互作用が疑われる薬剤の併用開始時、身体疾患合併時、服薬不遵守が疑われる時、副作用発現時、中毒が疑われるときなどに適宜測定する”


 今回の”月に1回の血中濃度測定”に尻込みしてリチウムの使用頻度が低くなるということは避けねばなりません。PMDAも再考すべきでしょう。ただし、それ以前に、投与する側も治療域が狭い薬剤であるということ、血中濃度が変化する状況というのを知っておかねばなりません。知らずに使うのは以ての外。患者さんのために私たちは存在するのであって、患者さんのために自分が使う薬剤、特に安全域の狭いものについて知っておくというのは当然のことです。
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2012
04.24

キャラクターシリーズ:もふもふと里親

Category: ★精神科生活
 大日本住友製薬のMRさんにあるものをねだっておりました。覚えておいででしょうか??先日、それについて進展がありました。


「先生、こちらが例のモノです」

「うむ」


 そっと医局内で手渡される袋。その中には。。。

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ロナセンバード!


 ついに我が家に来てしまいました。比較対象はダンボーとシナモンちゃんです。

 結構大きめで、つぶらな瞳が吸い込まれそうです。赤のトサカで強調される5-HT2Aが非定型らしさを惹き立てていてナイス。

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 正面では、”おだいじに”が見えます。鳥なのにハンパない心遣い。生まれながらに医療従事者という宿命を背負った、大きな決意が見て取れます。




 この場を借りて無理な養子縁組を引き受けて下さった大日本住友製薬のMRさんにはお礼を。ありがとうございました。責任持ってこの子は私が育てます。
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2012
04.22

エビリファイの液剤はどこか間違っていると思う

Category: ★精神科生活
 以前、キャラクターシリーズにてアリピプラゾール(エビリファイ®)の項目でシナモロールを紹介しましたが(コチラ)、今回はエビリファイそのものについて。

 話は液剤についてです。錠剤に比べて値段は張りますが、飲み心地は良く(オレンジ味)、たぶん錠剤よりも多少鎮静的に働きます。これについてMRさんに聞いてみたら、「そういうお話はちらほら聞きます」とのこと。

 液剤は3mL、6mL、12mLの3種類がラインナップ。3mLは手元にないのですが、これが6mLです。片手にすっぽり収まる感じでちょうど良いですね。

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 そして、12mLがこちら。

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でかくないっすかね。。。



 ポケットとか鞄とか、入るでしょうけどちょっとジャマかも。大きさ比較するとこんなん。

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 ボールペン1本とほぼ同じ長さ。。。結構なもんです、これ。ヤンセンのリスパダール®液剤を見習ってほしいものです。あれは苦くて不味いですけどね。ちなみにアルツハイマー型認知症の薬剤であるガランタミン(レミニール®)もヤンセンが作っているので、その液剤のパッケージはリスパダールと同じです。

 この12mL液剤、使い方は飲むにとどまりません。

「はい注目~。プレゼン後の議論は5分ですよ~」

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 長いと便利?ま、それはそうとして、シナモロールのシナモンちゃんが持っている液剤は6mLのものです。豆知識。

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 苦くてまずいリスパダールは液が少量。甘くて美味しいエビリファイは液が多量。何でしょうね、味付けの段階で増えちゃったのかしら。リスパダールの苦さは患者さんにとってイヤだろうな、と思って聞いてみたら

「先生、あの苦さが薬っぽくて良いんですよ!」

 あ、そうなんですか。。。失礼しました…。結構そういう患者さん多いです。エビリファイとかジプレキサ®ザイディスは甘いから薬という感じがしないんだそうです。ま、確かに言われてみれば。


さらに続き→コチラ
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2012
04.20

熱するのみ

 皮せんべい。

 居酒屋での定番なメニューでございます。なぜか一念発起して、自分で作ってみることにしました。

 イオンに行き、鶏皮をゲット。お店にあったのは運が良い。

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 何か適当に切ってフライパンにペタペタっと乗せる。ウラの部分を下にします。鶏皮に脂が付いているので、あえて油は使いません。どうなるかしら?

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 中火で開始!お、汗かき始めてきましたよ。何だ何だ、目論見通りじゃございませんか。

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 あっち!油が跳ねる!!あっち!あっち!我慢しながら転がすと、随分油がじわじわと。結構跳ねるし鶏皮が踊るので、気をつけましょう。。。

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 しばらく転がして、今度は傾けて素揚げの状態に。よーしよしよし!この子はもう大丈夫ですね~(ムツゴロウさん風に)。こう出来るくらいに鶏から油が出てくるんです。すごいもんだ。

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 何か良い感じ!

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 全部で10分くらいフライパンの上に乗って頂きましたが、上手い具合に完成!!味付け?男は黙って塩コショウ。んで、今回のお供はキリンフリー。ちなみにビールだと”よなよなエール”がオススメ。美味しいっす。

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 接写。こんがり。

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 かような焼き具合。よし、早速食べよう食べよう。


んまい


 パリパリでございますよ。ビール(風飲料)も進む。

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 で、こんなに油が。新鮮な鶏のもので、これを利用しないテはない。

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 油があればする料理は?男ならば”野菜炒め”だ!これで鶏肉焼いたら何か可哀想よね。。。

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 第二弾。

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 うむ、んまい。

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 味付けは塩コショウ、ではなくクレイジーソルトでした。

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 ”皮せん”は簡単に作れますね!フライパンと鶏皮さえあればO.K.でして、おつまみに最適。ねぎ塩たれかけたらもっと美味しいだろうなぁ。

 ちょっと時間のある夜に、野菜炒めとセットになりそう。
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2012
04.19

レクサプロの力の入れどころ

Category: ★精神科生活
 エスシタロプラム(レクサプロ®)は2011年8月に発売されたSSRIです。今更SSRIか!と思ってしまう人もいるかも知れませんね。このレクサプロは、シタロプラム(セレクサ®:日本未発売)から、光学異性体のS体のみを抽出したもの。だから”エス-シタロプラム”。シタロプラムのR体は抗うつ効果を邪魔してしまうようです。

 純粋なSSRIという点で、他のSSRIと区別されます。パロキセチン(パキシル®)を代表とする他のSSRIは、ノルアドレナリンやドパミン系にも働きかけますが、レクサプロはそんなのには見向きもしない。ただただセロトニンだけを攻め続けるという、エスっ気たっぷりなS体。ちなみにブロナンセリン(ロナセン®)という抗精神病薬はD2と5-HT2A狙い撃ちでして、これもエスっ気あり。ロナセンバードちゃんはあんなに可愛い顔をしているのに、実はエスなんですね。。。

 ノルアドレナリンとドパミンを攻めないなんて力不足じゃない?と思うかもしれませんが、MANGA Studyでは一応攻守バランスの最も取れた抗うつ薬として評価されています(MANGA Studyは評価の仕方が少々怪しいので、決して盲信してはいけませんが)。Cochraneでも効果あるよと推されてもいる薬剤。ただ、発売されて間もないので14日処方という縛りが2012年9月まで?あります。

 添付文書では10mgから始めて20mgまでの使用となっています。CYPは2D6をわずかに阻害するレベルでPGPには関与しないため、これらを介した薬剤相互作用をほぼ持たないというのが魅力でございますね。色々他に薬剤を服用している患者さんに対しては優しいと言えます。

 副作用として注意したいのが、やっぱりQT延長。遺伝的にCYP2C19の活性が欠損している患者さん(poor metabolizer)では、血中濃度が上昇してQT延長が出やすいと言われます。日本人の約20%でCYP2C19が遺伝的に欠損しているので、少し注意したいところ。ただ、臨床的に重要なQT延長はほとんど見られないそうですが(持田製薬さんはここを強調しています)。。。自分はちょっとこのQT延長に過敏になっているので、リエゾン領域ではまだ使用経験なし。内科の先生にこの副作用を話すと


工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工


嫌がります。

 結局QT延長がもともとある患者さんには禁忌となりました。でもここで注意したいのが、三環系抗うつ薬はエスシタロプラムよりもはるかにQT時間を延ばすこと、そしてクエチアピン(セロクエル®)やオランザピン(ジプレキサ®)などの抗精神病薬もQT延長させやすいということです。ではなぜエスシタロプラムだけにこんな禁忌マークが付いたのかというと、2010年以降に発売された向精神薬はThorough QT/QTc試験というのを受けることになったからなんです。日本では今のところデュロキセチン(サインバルタ®)とこのエスシタロプラムの2剤だったでしょうか。その中で、治療用量を上回る30mg/dayの投与でQT時間が10msec延びたため”禁忌”が付いてしまいました。もし2010年以前に発売されたお薬もその試験を受けたら、もっとたくさんの向精神薬が禁忌になっていたと思われます。ちょっと不運だったでしょうかね。

 そんなエスシタロプラムは持田製薬さんと吉富薬品さんが手を組んで販売しておりまして、MRさんからは良く”レクサプロティッシュ”をもらいます。これはレクサプロそのものよりも力を入れているんじゃないか?と思われるくらいにしっかり・しっとりしたティッシュ。お金かけてるな~と感じます。他にもウェットティッシュをポケットタイプと卓上タイプで展開し、ティッシュへの熱い思いが伝わってきます。

 こちらがレクサプロティッシュ。ハタから見ると普通ですね。



 しかし、カラクリはここにあった!

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 3枚重ね!!


 しかも柔らかい。ホント、どこに力を入れているのか…?

 そんなレクサプロティッシュは、自宅に18箱もあったりします(え"・・・)。
 
 定番のボールペンは三菱の開発した”JET STREAM”ボールペンをもらいました。実に書きやすいですね、このJET STREAMは。インクの減りが若干早いですが、なめらか。

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 でも自分はジェットストリームと聞くと、某ラジオ番組の城達也を思い浮かべてしまうラジオリスナーでもあります。
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2012
04.18

建築中

Category: ★精神科生活
 現在、外勤先の精神病院は改築中。2012年11月くらいには新病棟が完成するそうです。時を同じくして電子カルテも導入されるそうな。

 この病院は現在、血液検査も外部にお任せ、レントゲンも外部にお任せ、いわんやCTをや。出来る検査といえば12誘導と脳波くらい?なので、入院患者さんの頭部打撲や発熱などは臨床的な徴候をしっかりと見定めて”危ない”と感じたら近くの総合病院に転送します。だから研修医の時に救急に漬かっていて良かったなーと思っています。当時よりも呼吸数とかのバイタルサインに注意深くなってますし、時間軸の大切さも感じてます。上記の検査部門は建て替えで導入されるのかは不明。

 なので、研修医の頃は救急車を受け入れる立場でしたが、精神病院に勤めてからは内科・外科のemergencyにおいて救急車を送り出す状況。救急車が離れていくのを見送るのはすごく複雑な心境。もっと検査が揃っていれば、治療薬が揃っていれば、自分でも診ることが出来るのに。口惜しや。でも役割分担は大事なんですよね。

 さてさて、この改築ではいったいどんな感じになるんでしょう?

 ただ、精神病院はこれから減少すると予想され、経営という点では厳しくなるのかもしれません。統合失調症の新規発症は恐らく少なくなっていますし、現在入院している統合失調症の患者さんは高齢化してきています。薬剤も発展してきていて、笠原先生の仰る”外来統合失調症”患者さんも多いですね。

 今回の改築はどんな結末を産むのか…?潰れちゃ困りますけどね。。。


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2012
04.17

双極性障害のうつ症状にオランザピンの効果は乏しい(かもしれない)

Category: ★精神科生活
 イーライリリーの誇るオランザピン(ジプレキサ®)は優秀な薬剤で、統合失調症では他の薬剤で上手くいかない時、クロザピンをトライする前にジプレキサを使ってみることがモーズレイのガイドラインでも記載されています。陽性症状も陰性症状もバランス良く改善してくれて、良い感じの治り方に持って行ってくれますね。合わない患者さんは逆に悪化することもありますが。。。

 個人的なイメージとしてジプレキサは”重い薬剤”というか”複雑な絡み方をする薬剤”というのが漠然としてあるので、受容体的に敏感な発達障害に使うのは躊躇われます。クエチアピン(セロクエル®)も複雑な絡み方をしますが、受容体にはライトなくっつき方なのでマシかもしれないですね。発達障害にはアリピプラゾール(エビリファイ®)、ペロスピロン(ルーラン®)、ブロナンセリン(ロナセン®)辺りがフィットしやすい。ロナセン?と思うかもしれませんが、幻聴とかがなくても発達障害患者さんに使うと性格の拡がりというか、柔和になるようです(自分は使ったことないですよ)。でもロナセンは中盤で失速してしまって色々被せなきゃいかん時も。。。ロナセンの失速感はどうしたら良いんでしょう??

 このジプレキサ、副作用は有名なのが体重増加。この体重増加は”投与量に依存しない”らしいです。すなわち、5mgだろうが15mgだろうが20mgだろうが増える人は増えるし増加割合も一緒。でも臨床的にはやっぱり違う印象はありますね。。。ジプレキサが合っているけどこの体重増加を何とかしたい、そんな患者さんにはトピラマート(トピナ®)を併用することで何とか抑えられることも。ただトピナは精神症状にも影響する(良い方向にも悪い方向にも)ので、そこは注意。他の副作用としては、代謝系への作用と眠気も挙げられます。

 体重増加(食欲亢進)と眠気は、これを狙って処方しますし、他には制吐作用を持っているため、それを期待して処方もします。特に化学療法による悪心や嘔吐に使用することが多い。飲み込みづらくてもザイディス錠だと甘い上にすぐ口の中で溶けます。これらのことから、コンサルテーション・リエゾン領域での活躍も見られます。ただし糖尿病に使用が禁忌というのが何とも痛い。

 さてそんなジプレキサですが、2012年の2月、適応に”双極性障害のうつ症状”が加わりました。ですが、自分はかなり懐疑的。躁症状には確かに効果はありますし、統合失調症には文句なし。ただこの双極性障害のうつ症状にはどうも「????」としか思えず。同じ糖尿病禁忌の抗精神病薬ならクエチアピン(セロクエル®)の方が超優秀。

 双極性障害のうつ症状にも効くよ、という発端の論文は”Efficacy of Olanzapine and Olanzapine-Fluoxetine Combination in the Treatment of Bipolar I Depression. Arch Gen Psychiatry. 2003;60:1079-1088.”というものです。

 これを見ると、主要評価項目となっているMADRS(マドラスって言います)の総得点は治療開始8週時点でプラセボと有意差ありです。しかしP=0.02でしてちょっと悲しい。大事なのが項目別。P<0.001となっているのは睡眠減少と食欲減退のみ。これは上記の体重増加と眠気という副作用によるものですよね。いわゆるうつ症状をとらえている

”外見に表出される悲しみ(Apparent sadness)”
”言葉で表現された悲しみ(Reported sadness)”
”自殺念慮(Suicidal thorghts)”

なんかはそれぞれP=0.08、P=0.14、P=0.09でして、こんなのはお話になりません。

”感情の消失(Inability to feel)”
”倦怠感(Lassitude)”

は壮絶のP=0.90、P=0.99でして、差が認められません。

 うちの教授も良く注意を促していますが、この評価尺度であるMADRSとHAMDは、睡眠と食欲が改善するだけでも得点が改善します。ミルタザピン(リフレックス®)についても意地の悪い言い方をすれば、この2つで評価尺度上は改善させることが出来てしまいます。製薬会社はこういうところを熟知していて、睡眠誘発・食事摂取増加の作用を持つ薬剤についてはこの評価尺度を好んで用います。

 評価尺度はきちんと項目別に眺めなければいけません。今回のジプレキサは確かに得点上は改善(それも少しですけど)してますが、それは副作用で得たもの。中核である抑うつ気分や制止というところには大きくかかわっていないんです。こういう薬剤が”双極性障害のうつ症状”に適応を取ってしまって大宣伝されて、ほいほいっと使う精神科医が増えるというのは問題が大きいように思います。もちろん、有意差がないことは差がないことではありません。患者さんの中にはジプレキサがフィットしてくれる人もいるでしょう。しかし、処方する医者は「適応取ったから有効なんだな。何だジプレキサ万能じゃん!」と単純に考えるのではなく、この薬剤がどういう内容の試験でどのくらい有意差を出したのか、カラクリを知っておかねばなりません。

 自分は評価尺度が好きではないのでほとんど行わないのですが、そうであっても良いところ悪いところを知っておくべきでしょう。

 こういう臨床試験の論文を読んでると、性格悪くなりますね。。。粗探しをまずしてやろうと考えてしまいます。でも疑いのマナコでじっくり読むのが大切(特にFundingで製薬会社がついている時とか)。
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2012
04.15

SIRS~サイトカインの嵐として~

 SIRS(systemic inflammatory response syndrome)は外傷や感染症など様々な原因で生じる全身性の炎症で、高サイトカイン血症(hypercytokinemia)とも言えるかと思います。炎症性サイトカインと臓器・血管内皮細胞との相互作用により生じる多臓器不全について、名古屋大学の松田直之教授はAlert cellという概念を導入し説明しています。それを絡めて、SIRSのお話を。

 SIRSは程度が進行すればALI(急性肺障害:補足参照)や循環障害、AKI(急性腎障害)、さらにはDIC(播種性血管内凝固症候群)が引き起こされてしまいますが、これらには言うまでもなくサイトカインが大きく関与しています。DICに関してちょろっと付け加えると、凝固というものは本来生体防御として働くという理解はとっても重要。敗血症では、血小板、好中球、血管内皮細胞の相互作用により凝固が生じ、病原体の除去、そして病原体や炎症性メディエータの拡散を防いでいるんです。炎症と凝固は密接に関係しているという理解は必要。サイトカインストームによりこの炎症と凝固の相互作用の調節が利かなくなってしまったものがDICと言えるでしょう。“凝固=悪”という単純な考えは捨て去らねばいけません。炎症も凝固も、起こるからには何か必要があって起きています。それのタガが外れてしまってコントロール不能になったのがSIRS→DICという流れだと思います。

 さて、上記のような障害が起こることを知るには、Alert cellの存在する部位が重要になってきます。「なんでSIRSでは肺がやられてALI/ARDSになるんですか?」という疑問に答えが詰まる人には役立つ内容だと思います。

 一部の主要臓器や血管内皮細胞の細胞には、特殊な受容体を細胞膜上に発現し、炎症を感知する“警笛”、つまりAlert cellとして働くものがいます。この受容体にはTLRやTNF-R、IL-1Rなど多くのものがあるというのが分かっています。サイトカインが産生されれば炎症局所に留まらず主要臓器のAlert cellが活性化されます。病態が強い場合、non-Alert cellでも受容体発現が高まりAlert cellに変貌することが知られています。

 これで何となくさっきの疑問の答えが推測できそうですね。

 細かく話すと、炎症性リガンドとAlert cellの炎症性受容体との結合により転写因子の活性が上昇し、mRNAの産生亢進が起こり、炎症性サイトカインや血管拡張物質(NOやプロスタノイド)、ケモカイン、凝固活性化物質などが過剰産生されます。転写因子にはNF-κBやAP-1など多くのものがあって、特にNF-κBやAP-1は気管支上皮細胞やII型肺胞上皮細胞、右心房筋細胞、血管内皮細胞、尿細管上皮細胞、肝類洞細胞、腸管上皮細胞などのAlert cellで特に活性化されます。SIRS初期においてはALIや頻脈、心房細動などが生じやすいのですが、これは肺や右心房および動脈側の血管内皮細胞で強くNF-κBが活性化するためなんです。時間の経過に伴いNF-κB に代わり,AP-1が高まる傾向があります。臓器においても、時間が経過するとともに尿細管上皮細胞での活性化が強まってきます。

 AP-1 活性はアポトーシスも促進。Fas-associated death domain(FADD)を介して外因系アポトーシスが進行し、Alert cellの細胞死が早まるとされています。一方、NF-κB 活性はBcl-2やFLIPなどの抗アポトーシス因子の産生を介してアポトーシスを抑制しています。Alert cellのアポトーシス速度が細胞分裂速度を上回ると臓器障害が生じるとされます。

 SIRSの状態においては、Alert cellがサイトカインを大量に産生します。そのため、蛋白の需要が非常に高まってきます。この需要に対し、Alert cellはautophagyにより自らのアミノ酸を他の細胞に渡し、更にAlert cellや血管内皮細胞はサイトカイン活性変化によりアポトーシスを起こします。そして、何と血小板も貪食することで蛋白補充がなされてしまいます。

 また、SIRSの治療にステロイドを使用することがありますが、その限界性も指摘されています。ステロイドの抗炎症作用は主にグルココルチコイド受容体(Glucocorticoid Receptor:GR)との結合によるNF-κB 活性とAP-1の抑制作用を介するもの。ですが、GRは主要臓器や血管内皮のAlert cellに必ずしも発現しているものではなく、またマクロファージなどの白血球系の多くに発現しているわけでもありません。更に、SIRSが進行するとGRの発現が減少する傾向に。これらから、ステロイドによる治療には制限があることが分かるかと思います。これからは、炎症と凝固の過剰な相互作用という視点からSIRSの治療戦略を眺める必要があるでしょう。Alert cellに取り込まれるもの、血管内皮細胞を早期に保護するものが求められることになるのかもしれないと自分は勝手に思っています。炎症を消すのではなく、正常なレベルに持って行き、その炎症の力を借りていくのが未来のSIRS治療?だったりして。

 血管内皮細胞については、今でも輸液や栄養療法というテーマで色々と出ています。輸液もし過ぎると内皮細胞を傷つけてしまって、炎症と凝固の歯止めがかかりにくくなりますし、同じく栄養も過剰栄養(overfeeding)から同様のことが起こります。少し前までは「輸液は多く入れて循環血漿量減少を避けよう!」「栄養はしっかり摂ってもらって力をつけてもらおう!」という流れでしたが、レクチャーシリーズでお話ししているように、最近それを見直す段階に来ています。スタチンやトロンボモジュリンは血管内皮細胞を保護することが知られており、それを利用した薬剤が出来れば素晴らしいこと。

 Alert cellや白血球などの貪食細胞に選択的に取り込まれるミサイル療法的な薬剤も出てきたら凄いですね。静注用のマクロライドはその傾向が強く、抗菌作用以外にもそれによる抗炎症作用が指摘されています。

 今後は血管内皮細胞に作用する薬剤と貪食細胞選択的な薬剤によって、炎症と凝固を抑え込むという視点よりも、安定させるinflammation-coagulation stabilizerといった考えの創薬がなされれば、SIRS治療もしやすくなるのではないでしょうか。急性期治療は大きな転換点にいるのではないかなと感じています。

☆参考文献
Systemic inflammatory response syndrome (SIRS) : Molcular pathophysiology and gene therapy. J Pharmacol Sci 2006; 101: 189-98
全身性炎症反応症候群とToll-like受容体シグナル-Alert Cell Strategy-. 循環制御25:276-284, 2004
炎症性警笛細胞と多臓器不全 Role of Inflammatory Alert Cell in Multiple Organ Failure:Anesthesia 21 Century Vol.12 No.2-37 2010


補足:ARDSの定義が新しくなりました。ALIという概念が無くなり、代わりにARDSがmild, moderate, severeという3段階の重症度に分かれましたね。
Acute Respiratory Distress SyndromeThe Berlin Definition. The ARDS Definition Task Force JAMA. 2012 doi:10.1001/JAMA.2012.5669

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2012
04.14

キャラクターシリーズ:飛べないメロペン

Category: ★精神科生活
 カルバペネムと言えば、ナウシカの巨神兵のごとく焼き払うイメージがありますね。こういうのは効く菌を覚えると大変なので、効かない菌を覚えるのがポイント。そして日本にはカルバペネム系がたくさんあってどれを使おうか迷うかもしれませんが、使うのはチエナム®とメロペン®だと思います。

 カルバペネムは細胞壁に作用するので、効かない菌はもちろん細胞内寄生菌。そして腸球菌にも効きません。イミペネム・シラスタチン(チエナム®)はE. faecalisにやや活性があると言われてはいますが、それを狙って使う薬では決してありませんし、特にバンコマイシン耐性のVREには無効です。MRSA、MRSE、他に真菌にもダメです。後は、偽膜性腸炎の原因菌であるClostridium difficileや日和見感染として出ることのあるStenotrophomonas maltophiliaにも活性を示しません。Burkholderia cepaciaという菌は、メロペネム(メロペン®)のみ効きます。

 緑膿菌や嫌気性菌に効くため、簡単に「熱が出た!よーしチエナム行っちゃえ」と選択してはいけないお薬。

・緑膿菌感染が疑われる時
・ESBL産生菌やAmpC型βラクタマーゼ産生菌の関与が疑われる時

 上記の事態はしっかりとした適応となります(必ずlocal factorを把握して、かつ検体を採ってから使いましょう)。投与する時は、まだ日本の添付文書はアテにせずPK-PDに則ることが大事。

 ドリペネム(フィニバックス®)は何と人工呼吸器関連肺炎(VAP)の治療でチエナムに負けてしまい、臨床試験が中止になりました。これを踏まえ、FDAは肺炎に適応がないことを改めて強調しています。アメリカでは、ドリペネムの適応は複雑性腹腔内感染と複雑性尿路感染だけです。

 日本でも売られているパニペネム(カルベニン®)は、緑膿菌が実は苦手。狙って出すものではありません。エルタペネム(日本未発売)は緑膿菌カバーをわざと?外しています。

 ざらっとカルバペネムの復習をしたところで、本日は大日本住友製薬の稼ぎ手、メロペン。このキャラクターは


メロペンギン


 ヒネリの気配すらないようなこの安直なネーミング。。。イワトビペンギンがモデルになっております。

 このメロペンギングッズ、自分はボールペンしか持っておりませんでして。そのペンにも何種類かあります。がさがさ探してとりあえず手元にあったのはこんなの↓

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 子どもがくっついてますね。そしてもう1つがこれ↓



 なにか持ってますね。タマゴ?いえいえ、これは何とですね、同じく大日本住友製薬が販売する抗真菌薬の


アムビゾーム®


 アムホテリシンBのリポソーム製剤。副作用がぐっと軽くなっていますが、お値段はぐっと重くなっています。会社のイメージするアムビゾームはこんなのらしいです↓

アムビゾーム

 メロペンとアムビゾームの組み合わせとはまた恐ろしい。。。患者さんの状態が思わしくないんだ、、、と想像させられてしまうこのボールペン。何か不吉ですな。タマゴだったら可愛らしかったのに…。
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2012
04.14

栄養療法 Starter & Booster:第6回~重症患者さんへの栄養

目次→コチラ

 今回が最終回ですが、敗血症を代表とするCritically ill patientへの栄養。これまでもちょこちょこと述べていましたが、ここでまとめてお話しします。

 Critically ill patientではストレスホルモンやサイトカインがばんばん出ています。これにより異化という内因性のエネルギー供給システムが作動します。これまでの栄養療法はこの異化を完全に無視して、外から与える栄養で全ての必要エネルギーを賄おうとしてきました。結果、過剰栄養(overfeeding)を産みだしてきたんです。過剰栄養では何が起こるのか?

 1つは高血糖。これによりミトコンドリアで酸化ストレスが生じ、また炎症反応に拍車もかかります。

 もう1つが栄養ストレスというもの。余った糖から脂肪が作られ、またインスリンが上昇、その調節のためにカテコラミンが放出。。。これらからREEが増加し、CO2産生も増えます。骨格筋の分解が進み、浮腫も増悪。感染も助長するんじゃないだろうかと言われています。

 こういったことが起こってしまうんです。良かれと思ってやっていた栄養療法がまさか患者さんを痛めつけることになろうとは。。。

 大事なポイントは、栄養療法によって外からエネルギーを与えても、この内因性エネルギー供給はなかなか抑えられん、ということ。この内因性のものはストレスホルモンとサイトカインによって行われるので、ここを調節しない限りは進んでしまうんです。侵襲が強ければ強いほど、内因性エネルギー供給は大きくなります。

 困りましたね。。。理論的には、内因性エネルギー供給(異化)と外因性エネルギー供給(栄養療法)との合計がちょうどREEになれば良いはず。しかし残念なことに、内因性エネルギーがどのくらいもたらされるのかが分からない!じゃあ急性期の栄養療法って一体何なんだ。。。そう思ってしまいます。

 急性期の極期には15kcal/kg/dayを上限とするのが良い、とする論文があります(Stapleton RD, Jones N, Heyland DK. Feeding critically ill patients: What is the optimal amount of energy? Crit Care Med 35:S535-S540, 2007.)。これを上限とするカロリーであれば、外因性エネルギー供給がREEを上回ることはないと思います。極期を過ぎたらもう少し上げていっても良いんでしょうね。

 こういった見解を元に、筑波大学の寺島先生は以下のような指針を出しています。

・急性期極期:6-9kcal/kg/dayから15kcal/kg/day
・一般的な急性期:6-9kcal/kg/dayから20-25kcal/kg/day
・回復期:25-30kcal/kg/day
・重症病態が慢性期に移行:6-9kcal/kg/dayから25(-30)kcal/kg/day

 炎症著しい患者さんでは、内因性エネルギー供給という視点を常に持ち、決して栄養療法による外因性エネルギー供給だけで必要エネルギーを賄おうとしてはいけません。上手く手を取り合って、過少栄養(underfeeding)と過剰栄養(overfeeding)を避けるというのが大事になって来ます。“過ぎたるは何たら”ということわざを前に述べましたが、これまでの栄養療法はまさに“過ぎていた”状態を作り出していたんですね。

 有名な試験にEPaNIC trialというものがあります。これは、ICUに入室したらすぐ経腸栄養に経静脈栄養を補助すべきとするヨーロッパ(ESPEN)と、8病日まで補助しない北米(ASPEN/SCCM)との争いに決着を出すために行われました(Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Adults. Michael P. Casaer et. al. N Engl. J Med. June 29, 2011.)。結果は、経静脈栄養の開始を遅らせると、低血糖発生件数はやや増えるものの、身体機能の悪化はなく、人工呼吸期間と腎代替療法実施期間が短くなり、ICU在室日数も短縮し、さらに医療費も削減になりました。

 これは純粋に経腸栄養が純粋に良いというものではなく、早めに必要なエネルギー量を外因性エネルギーのみで賄おうという立場のESPENが敗れたと解釈すべきでしょうね。経静脈栄養でも栄養を抑え気味で行っていたら、これほどまでの差は付かなかったと思います。経静脈栄養はダイレクトに身体の中に入りますから、入れた分がエネルギーになり過剰栄養になりやすいとされます。経腸栄養であれば、いらない分は消化されずに下痢などで出てきますし、より自然な形態といえます。

 更に、EDEN trialを見てみます(Initial trophic vs full enteral feeding in patients with acute lung injury: the EDEN randomized trial. JAMA. 2012 Feb 22;307(8):795-803. Epub 2012 Feb 5.)。早期に経腸栄養を開始するにしても、どのくらいの量が良いのかしら?というのを考えた論文。Trophic feedingのグループは最初の6日を約400kcal/dayの経腸栄養にセーブしてます。対してfull-feedingのグループは目標カロリーの80%である約1300kcal/dayを目指して攻め込んでます。結果、primary outcomeに設定された人工呼吸管理期間は有意差なし。60日死亡率や感染症の合併も変わりませんでした。特記事項としては、full-feedingのグループで蠕動促進薬が多く使われていたにも関わらず有意に嘔吐(2.2% vs. 1.7%)、胃管排液増加(4.9% vs. 2.2%)、便秘(3.1% vs. 2.1%)が多かったとしています。また、インスリン使用率と血糖もどちらもfull-feedingのグループで高かったそうです。

 このEDEN trialではBMIの低い患者さんは除外していることは付記しておきます(内因性エネルギー供給の力が弱い)。ですが、これだけ外因性のエネルギー供給を抑えても大丈夫なんですね。急性期の栄養管理というのは、やっと世の中が最近「今まで栄養やりすぎてたんじゃね?」と反省してきています。でもまだまだ重症患者さんにはどんどん栄養あげて元気にさせなきゃ!と思っている先生も多い(気持ちは十分すぎるほど分かりますが)。適切にカロリー設定が出来て内因性エネルギー供給の量も分かれば、よりスマートな栄養療法がなされることでしょう。「急性期だからたくさん栄養あげてなきゃダメなんだ」という考えから抜け出せれば、必要以上にインスリンをばんばか打つこともなくなるでしょうし。ただ、残念ながら現段階では内因性エネルギー供給によるカロリーを正確に知ることが出来ません。間接熱量計があれば、呼吸商を見ながら過剰栄養になってはいないかを確認するというのが1つの方法かも。手探り状態である、というのはもどかしいかもしれませんが、これから新しい知見がどんどん出てくるんでしょうね。

 これで栄養療法の総論的なレクチャーはお仕舞いですが、急性期を眺めることで、栄養療法の立ち位置が少し見えてきたかも知れません。全編通じて強調しているのは、栄養療法は未完成!ということ。完成されている分野なんてないでしょうけど、他の分野と比べても特に栄養療法は遅れていると思っています。最近のPermissive underfeeding(ここで言うunderfeedingは、外因性エネルギー供給のみで目標カロリーに達さないことを示しています)という考え方が、異化によるエネルギー供給を意識したもので、これにより大きな変化が生まれている真っ最中。ストレス下では、栄養どんどん増やして患者さん元気にしよう!という旧来の考えから、特にここ数年はもともと身体に備わっている供給システムを考慮して栄養をあげすぎないようにしよう、という考えにシフトしつつあります。1つ1つを分解して見るのではなく、全体の総和を生理的に見ていこうとするのが良いのかも知れませんね。

 大きなパラダイムシフトの中にいる栄養療法。根本を抑えて、かつ現在の流れを知るということが最も重要なところかと思います。
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2012
04.13

心電図は馬鹿にできん

 JAMAから、心電図異常は冠動脈心疾患の優秀な予測リスクになりますよ、という論文。

Association of Major and Minor ECG Abnormalities With Coronary Heart Disease Events
JAMA.2012;307(14):1497-1505.

 心電図は広く行われ、安くて、安全。3拍子揃った検査です。従来のリスク評価(the Framingham coronary heart disease prediction scores)では、高齢者のリスクをうまく評価できませんでした。

 この論文では70-79歳の心血管系に異常のない人たちを対象に12誘導心電図を取り、更に4年後にもう一度。その2回の記録で異常があるかどうかを見ています。平均フォローアップ期間は6.4年。

 この異常にはMajorとMinorの2つを定義しています(MC:Minnesota Codeの略)。

☆Criteria for major prevalent ECG abnormalities
・Q-QS wave abnormalities (MC 1-1 to 1-2-8)
・left ventricular hypertrophy (MC 3-1)
・Wolff-Parkinson-White syndrome (MC 6-4-1 or 6-4-2)
・complete bundle branch block or intraventricular block (MC 7-1-1, 7-2-1, 7-4, or 7-8)
・atrial fibrillation or atrial flutter (MC 8-3)
・major ST-T changes (MC 4-1, 4-2, 5-1, and 5-2).

☆Criteria for minor prevalent ECG abnormalities
・minor ST-T changes (MC 4-3, 4-4, 5-3, and 5-4)

 参加者は正常、ベースラインのみ異常、4年後に出現した異常、ベースラインに異常があり4年後も続く異常、の4つに分類されました。

 ベースラインで異常のある参加者は、冠疾患になるリスクが高いとされました(Fig.1,2)。

ecg.jpg

 4年後に新たに異常が出現、異常が持続するという参加者はこれまた冠疾患のリスクが高まりました(Table4)。死亡率についてはあんまり有意差は出てないですね。

table4.jpg

 心電図は上述のように3拍子揃った検査です。特に高齢者においては、従来のリスク評価が上手く使えないという欠点があるため、心電図異常というものに目を光らせましょう、というのを教えてくれる論文でした。安価で非侵襲的っていうのがポイント高いですよね。




☆心電図についてちょっと一言
 QRSとSTっていうのは心室の電気の走り具合を見るためには丁度良いと思います。V1-6までQRSが滑らかなら「お、いい感じに電気走ってるな」と感じますし、V1-3でRが立ち上がってこないと「前壁さん元気ないのかしら」と思います。QRSがちょっとギザッてなってたら「ん?少し伝導路が傷ついてるのかな?」という印象を持ちます。V1-2でSが元気良すぎてV5-6でRの元気が良すぎる、かつST変化があると「左心室の力が強すぎるかな?」という感じ。ST部分も上昇や低下というのがあると「ちょっと心室内での流れが乱れているのかしら?」と漠然と考えます。こんな感じで心電図を見ながら電気の流れる様子をイメージできると何となくスクリーニングになりますね。

 ちなみに、右房拡大とか左房拡大を心電図のP波で判定するのは全くもって無駄です。心室肥大もQRSだけで判断すると過剰診断。必ずST変化を伴っているかを見ます。心電図で心臓の形を判断しようというのは、エコーのない時代の残滓と思っても過言ではないでしょうね。形を知りたければやっぱりエコー。電気の走りに関しては心電図は大きな武器で、これがないと始まらない。
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2012
04.13

双極性障害患者さんへの心理教育

Category: ★精神科生活
 どんな精神疾患でも心理教育というのは大事でして、双極性障害も例外ではありません。心理教育でどれだけ違うんだ?というのを調べた論文が、2003年のArchives of general psychiatryという雑誌に出ています。

A randomized trial on the efficacy of group psychoeducation in the prophylaxis of recurrences in bipolar patients whose disease is in remission.
Arch Gen Psychiatry. 2003 Apr;60(4):402-7.

 そこでは、双極性障害I型とII型の両方の患者さんに対してグループでの心理教育を行いました。すると、再発防止に著しく効果が認められたのです。以下、図。

心理教育
 
 もちろん、教育を行う側の質も重要なファクターでしょうし、忙しい外来ではなかなか十分な時間をかけてというのが難しいのも事実。しかし、医療者として心理教育の重要性を理解するのは非常に有用で、少しずつでも患者さんに教えていくことは決してマイナスになりません。

 心理教育のマニュアルとしては、洋書で”Psychoeducation Manual for Bipolar Disorder”というのがあります。日本語では1冊でしっかりしたものがなかったのですが、うちの教授がこの本の監訳者となって”双極性障害の心理教育マニュアル”として医学書院から出しました。訳者による補足も適度に付いていますので、単なる翻訳ではありません。「安くしときまっせ」と教授が言ってました通り、3000円台。立ち読みして、良ければお買い求めください。訳書の方がさわやかな青空を思わせる表紙。原著は凄くオシャレですね。

 ちなみに、宣伝はしているものの私には1銭たりとも入ってきません。純粋に”良いマニュアル”として紹介していますので(教授の権力で強制されたとかいう事実もありませんよ)。

双極性障害の心理教育マニュアル: 患者に何を,どう伝えるか双極性障害の心理教育マニュアル: 患者に何を,どう伝えるか
(2012/04/13)
フランセスク コロン、エドゥアルド ヴィエタ 他

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Psychoeducation Manual for Bipolar DisorderPsychoeducation Manual for Bipolar Disorder
(2006/10/05)
Francesc Colom、Eduard Vieta 他

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2012
04.13

GAFをつける

Category: ★精神科生活
 現在の精神科では、診断と統計のための基準であるDSMというものを用います。あれこれと批判を浴びてはいる基準ですが、モノサシとして共通のものはあった方が良いかとは思っていますし、読む論文も診断基準をこれに則っております。DSM自身も「経験を積んだ精神科医がこの基準を使ってね。当てはめて疾患認定してお薬で治療なんてのはやめてね」と言ってますし。

 今はDSM-IV-TRといって第4版のマイナーチェンジ版です(2013年にはDSM-5になります)。このDSM-IVでは重症度判定というものをしまして、GAF(Global Assessment of Functioning)と言われます。機能の全体的な評価のことで、”精神症状”と”社会機能”の2つの領域があります。身体的・環境的制約を考慮しないのが特徴。2つの領域のうち、悪い方をその点数とします。平成22年度から病棟の保険点数に、入院時のGAF点数が影響するようになったので、正確につけることが大事。

 うちの教授は「以下のようにつけなさい」と仰います。

無題

 チェックの付く一番下の段がその患者さんの点数。

 自分はなかなかGAFが覚えられなくてですね。。。今でもこのシートを白衣のポケットに入れて眺めながら点数をつけています(恥…)。今回アップしたのも、シートを紛失してもここを見ると大丈夫、という意味でございました。

 まだ確認しながらGAFを付けているなんて教授にばれたらぶっ飛ばされそうですね。。。

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追記:GAFの改変版があることを遅まきながら知りました…(コチラ)。
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2012
04.10

栄養療法 Starter & Booster:第5回~栄養剤の種類

目次→コチラ

 さて、前回は長々と述べましたが、ここでざざっと中心静脈栄養の流れを復習。

・栄養評価をして栄養療法の適応と判断
・投与経路の決定
・必要エネルギー量のアタリを付ける
・アミノ酸投与量の決定
・脂質投与量の決定
・残りのカロリーを糖で賄う
・NPC/N比を確認して微調整
・必要水分量の決定
・必要電解質量の決定
・ビタミン、微量元素を添加
・キット製剤とにらみ合い

 このような順番で考えてみましょう。繰り返しですが、重症患者さんにおいては、内因性エネルギー供給としての異化を既存の予測式では考慮していない(できない)ということは要注意です。

 ここで、製剤について少し。

 中心静脈用のキット製剤はいくつかあります。糖質がグルコース以外のものが入っていたり、アミノ酸の成分が異なっていたり、電解質のバランスが少し違っていたり。ちょろちょろっと違うのがあれこれと出ているので、何が良いのか困ってしまいます。院内に採用されているキット製剤を勉強するのが一番手っ取り早い。

 キットには糖質、アミノ酸、電解質は含まれています。ここにビタミンと脂肪乳剤、微量元素を加えるのですが、キットによってはそれらがあらかじめ含まれているものも。

・脂肪乳剤が入ったのがミキシッド®
・ビタミンが入ったのがフルカリック®、ネオパレン®
・ビタミンと微量元素が入ったのがエルネオパ®

 色々なものが入っている出来合いのものというのはありがたいですが、逆に「これいらんなー」というものを抜くことも出来ません。こちらの自由度が低くなってしまいますね。

 ある程度こちらが電解質やアミノ酸などをオリジナルに設定する必要性が出てくることも多いのです。そういう時は、ハイカリック®RFというのを使うことも考慮。これにはKとPが入っておらず、NaとClも少なめ。更にアミノ酸が入っていません。肝不全や腎不全の患者さんには、これに病態用のアミノ酸製剤を加えて使うことが多いです(肝不全では低芳香族アミノ酸、腎不全では低アルギニンのものなど)。

 末梢静脈栄養ではアミノ酸製剤と脂肪乳剤で何とかしのぐ。その間に患者さんの状態を改善させ、経口摂取もしくは経腸栄養に繋げて行きましょう。末梢静脈では浸透圧の関係上、どうしてもブドウ糖を多く入れられないため、投与できるエネルギーは少なくなってしまいます。

 経腸栄養剤についても述べますが、基本的には上述の流れを踏襲。第4回でも脇道でお話ししましたが、分類としては成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤というのがあります。ほとんどの経腸栄養剤は半消化態。

 経腸栄養剤は何を選ぶか、ですが、患者さんの消化吸収がどうかをまず考えます。経腸栄養は出来るけれどもちょっと消化管の動きが、、、と言う患者さんには成分栄養剤や消化態栄養剤を。もうばっちりですよ、という患者さんには半消化態栄養剤を選択。製剤によってたんぱく含有量が異なってくるので、第4回でお話ししたアミノ酸、脂質、糖質の分配の考え方がここでも生きてきます。次に、病態別栄養剤の適応かどうか、です。

 病態別栄養剤には、糖尿病、腎疾患、肝疾患、呼吸不全など各病態に対応したものや免疫を高めるもの、さらにたんぱく質、食物繊維、ビタミン、微量元素などを強化したもの、脂質の組成をいじっているものなど、これも様々出されています。

 選択が終わったら、水分!一般的に経腸栄養剤は80%が水分という換算をします。あまり水分負荷したくないな、という患者さんには、mL当たりのカロリーが多いものを選択(そりゃそうだ)。他には塩分にも気を配りましょう。栄養剤の塩分は少ないので、適宜補う必要があります。

 後はですよね。。。自分はエンシュア®とラコール®を飲んでみたことがありますが、ラコール®はめちゃくちゃ不味い。エンシュア®も甘くて甘くて恐ろしいですが(特にバニラ味)、ラコール®の不味さは何とも言えないものがありますし、特に子どもはそれで吐いちゃうことも。それとラコール®とツインライン®は何故かビタミンKが多くてワーファリンを飲んでいる患者さんは避けるべきでしたが、どちらもビタミンKを減量したNF製剤というのが出て、これまでの無印ラコールと無印ツインラインが製造中止となりました。一安心ですね(ただ、静脈栄養の脂肪乳剤はビタミンK多いので注意を)。

 そして、経腸栄養といえば下痢嘔吐、というくらいに下痢と嘔吐は多くなります。下痢の原因には様々あり、全てが栄養剤のせいではないというのがまずは大事な視点。栄養剤によるものですと、浸透圧や注入速度というのが大きな原因になります。他には自分がそうなのですが、乳糖不耐症。これで下痢します。嘔吐の原因は匂いや味がやっぱり眼に付きますが、他にはほぼ液体という点や、NGチューブの位置、注入速度など。嘔吐対策には、栄養剤にトロミを付けてあげると意外に良い感じになります。NGチューブの位置ですが、特にICUに入る様な患者さんの急性期では胃が動いていないので、出来るだけ小腸の方へ持って行くのが大切。漢方的には、下痢に五苓散や真武湯、半夏瀉心湯を、嘔吐にも半夏瀉心湯や六君子湯を混ぜて注入するとだいぶ違う印象があります。

 ただ、この下痢に関して一言。腸管浮腫のあるような患者さんに経腸栄養剤を投与すると、小腸から余分な水分を引っ張り出してこの浮腫を改善させることが出来ます。それにより便の水分が多くなり下痢に。なので、下痢は全て悪ではなく、この時のものはある程度許容しましょう。
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2012
04.08

敗血症性ショックへの輸液

Fluid resuscitation in septic shock: A positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality
Critical Care Medicine: February 2011 - Volume 39 - Issue 2 - pp 259-265

 敗血症性ショックに対する輸液量は、少なすぎてもダメですが、多すぎても患者さんにとって良くありません。EGDTで言われる“中心静脈圧(CVP)を8-12 mmHgにしろ”というのも、ちょっとどうなの?と最近は疑問符を投げかけられています。

 今回は、敗血症性ショックへの輸液はどのくらいが良いだろうか?という上記論文をちょろちょろっと紹介します。

 この論文の前にも、SOAP studyという試験があり、敗血症性ショックの患者さんでは水分出納がプラスになると死亡率が上昇したと結論付けられています(Sepsis in European intensive care units: Results of the SOAP study. Crit Care Med 2006; 34: 344–353)。更に、ALI(急性肺障害)の患者さんを対象とした論文では、水分出納がプラスになることで人工呼吸期間が延長し、死亡率が上昇する傾向にあるとされました(Comparison of two fluid-management strategies in acute lung injury. N Engl J Med 2006; 354:2564–2575)。現在、金科玉条のように謳われている2008年のSurviving Sepsis Guidelineでは、中心静脈圧が8-12mmHgに達するまで輸液をガンガン行い、心室充満不良/人工呼吸中の場合は目標値を12-15mmHgに上げなさい、としています。にもかかわらず、輸液の“減らし時”や“止め時”のタイミングについては、こうしろという明確なものは出されていません。

 著者らは、敗血症性ショックの患者さんへの輸液にはまだ分からない点があることを踏まえ、VASST(VAsopressin in Septic Shock Trial) Studyをretrospectiveに眺めました。細かい設定を抜いてざっくり言うと、以下を検討。

・治療開始から12時間そしてその後の4日間の水分出納がプラスなら、28日後死亡率が上昇するか?
・中心静脈圧がその期間で水分出納と関連しているか?

 中心静脈圧についてはSurviving Sepsis Guidelineに従い、推奨されている群(8-12mmHg)、8mmHg未満の群、12mmHgを超える群の三つに分類。推奨群が他の群より生存率が高いかどうかを解析した。また、水分出納量によって患者さんを四等分しています。Quartile1がもっともdry、2,3と続きQuartile 4がもっともwetという分類。

 水分出納量について見てみると。。。水分出納量が増大するほど死亡率が高くなりました(Figure 2)。

fig2.jpg

 中心静脈圧はどうでしょう(Figure 4)。治療開始12時間経過した時点では、中心静脈圧が8mmHg未満の群が最も生存率が高く、次に推奨群、最後に12mmHgを超える群となりました。第1日から第4日までの間では、中心静脈圧の差による生存率の有意差は認められませんでした。

fig4.jpg

 これらから、治療開始12時間経過した時点では、中心静脈圧と水分出納量の両方が死亡率と関連するということが判明しました。興味深いところは、治療開始12時間後では水分出納量プラスの度合いが少ないほど死亡率は低かったのですが、中心静脈圧が8mmHg未満の群では逆で、水分出納量が多いほど死亡率が低かったというところ。

 EGDTの目玉は、中心静脈圧が8-12mmHgとなるように輸液を行うこと。ですが、SOAP studyではそれとは異なる結果となっており、水分出納量がプラスなら死亡率が上昇してしまいました。今回のVASST studyでも同様の結果。この試験では、治療開始12時間後における水分出納量が約プラス3Lの時に、最も生存率が高いのではないかという結果になりました。そして、敗血症性ショックの発症から12時間以上経過すると、中心静脈圧は輸液反応性の予測に役立たず、水分出納量のマーカーにもならないとされました。

 水分出納量が多いほどand/or中心静脈圧が高いほど死亡率が高いということがこれまでもいくつかの試験で言われ、今回もそれを裏付けるものでした。輸液量が多すぎると肺がずぶ濡れになりますし、腎機能も悪化することが言われています(Fluid accumulation, survival and recovery of kidney function in critically ill patients with acute kidney injury. Kidney Int 2009; 76: 422–427)。

 この論文のlimitationとして著者らは、以下を述べています。

・試験そのものがretrospective
・輸液製剤の種類が分からない

 そして、前向きできちんと制限輸液と大量輸液を比較しましょう、と結んでいます。2012年中にはSurviving Sepsis Guidelineが改訂される予定です。ScvO2で評価というのはどうなの?とも言われており、CVPやこの辺りの数値設定がちょっと変わってくるかもしれませんね。
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2012
04.07

栄養療法 Starter & Booster:第4回~栄養の投与配分

目次→コチラ

 前回までで、投与するエネルギー量が決まりました。ここで実際にどんな栄養をどのくらい入れるのかを考えてみましょう。普通のご飯をたべることが出来る人なら良いんですが、そうでない人はこちらが栄養メニューを考えて提供します。色々と脇道に逸れながらお話しするので、何回か見返してみてください。。。基本的に、中心静脈栄養のメニューを組むというのを前提としてお話しします。

 いわゆる3大栄養素と言われる炭水化物、たんぱく質、脂質。カロリーはこの3つのバランスで成されます。それぞれ1gが4kcal、4kcal、9kcalというのは覚えておきましょう。電解質だって大事。他に重要なのは、微量元素とビタミンですね。3大栄養素・電解質・微量元素・ビタミン。これらを考えながら、患者さんへの栄養を作っていきます。

 微量元素は生きていくために欠かせない元素のうち体内に備蓄されている量が比較的少ない元素のこと。長期となりがちな中心静脈栄養では常に考えます。微量元素には鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、モリブデン、セレン、クロム、コバルトが含まれ、亜鉛とセレンは欠乏しやすいことが知られています。亜鉛は早ければ2週間、セレンは1ヶ月くらいで欠乏してくると言われます。微量元素を補うエレメンミック®やミネラリン®などが静脈栄養用の製剤としてありますが、謎なことにモリブデン、セレン、クロム、コバルトが入ってません。何でなんでしょうね???だから長期の中心静脈栄養では微量元素の欠乏が問題になりやすいのです。中心静脈栄養を始めたと同時に、微量元素切れのタイマーが始動すると言っても良いでしょう。皮肉なことに、全てをカバーする微量元素製剤が無いと言うことは、経腸栄養の重要性を知らしめてくれるものですね。。。

 ビタミン欠乏も怖いところ。歴史的にはB1欠乏の脚気やC欠乏の壊血症がありました。頻度は高くないですが、B12欠乏によるWernicke脳症は入院がん患者さんの意識障害の原因として鑑別に挙げておく必要があります。ただ、ビタミンというのはたっぷりあげれば良いというわけではありません。水溶性でもそれは同じ。抗酸化物質(アンチオキシダント)と酸化促進物質(プロオキシダント)はコインの裏表、この言葉を忘れずに。安全の代表格であるビタミンCですら、500mg/dayで酸化促進に働くのでは?と言われています(The nature of prooxidant activity of vitamin C. Life Sci. 1999;64(23):PL 273-8)。

 さて、これらを前提として、患者さんにどんな分配で栄養素を届ければ良いのでしょう。普通の食事は炭水化物60%、たんぱく質15%、脂質25%の比率のようです。じゃあこれに則って考えれば良いんじゃないか?と思うかも知れませんが、入院患者さんで食事の取れない人は、色んなストレスがかかっています。それによって、たんぱく質(アミノ酸)の投与量を変える必要がある、とされています。更に、この3大栄養素は全部大事ではありますが、身体の材料として最も重要なのがたんぱく質なのです。なので、最初に考えるのはたんぱく質!

 たんぱく質、これからはアミノ酸と言いますが、このアミノ酸の補給量は、以下を目安として決められています。

・ストレスなし(0.6-1.0g/kg/day)
・軽度ストレス(1.0-1.2g/kg/day)
・中等度ストレス(1.2-1.5g/kg/day)
・高度ストレス(1.5-2.0g/kg/day)

 これが絶対的に正しいのかと言われると難しいところ。。。前に述べたことを持ちだすと、高度ストレスのかかるCritically ill patientでは、たんぱくの投与量を増やしても異化を防ぐことは出来ません。ただし、たんぱくを作る上で、その基質を供給するのは大事なこと。それを考慮に入れると、重症患者さんにおける初期補給量は1.0-1.5g/kg/dayが望ましく、それ以上は多すぎるという意見があります(Optimal protein requirements during the first 2 weeks after the onset of critical illness. Crit Care Med 26:1529–1535, 1998.)。なので、この“高度ストレス”での投与量は適切ではないかも知れません(個人的には、不適切だと思っています)。

 もちろん急性肝不全では肝性昏睡を防ぐために少なめにしますし、腎不全では窒素代謝物の排泄が低下するので、必要最低限の必須アミノ酸の投与にしておきます(透析してない時)。

 少し後で述べますが、アミノ酸が効率良くたんぱく質になってくれるかを見るには、NPC/N比というややこしいものを見なければいけません。十分なエネルギーの投与がないと、いくらアミノ酸を入れてもそれが使われてしまうだけなんです。アミノ酸をガンガン入れればそれだけ筋肉になるわけではないんですね。NPC/N比は、投与したアミノ酸以外の栄養素、つまりは糖質と脂肪によるエネルギー量を、投与したアミノ酸に含まれる窒素量(g)で割った比のこと。

 そして、日々の栄養できちんとたんぱく質が適切な量になっているかな?とチェックするには、窒素バランスというものを用いることがあります。成人では±0が正常ですが、重症患者さんの回復期や子どもなどは正の値を、病態の勢いが強くて蛋白が消耗されていたり摂取エネルギー不足だったりしたら、負の値を示します。アミノ酸は大体16%の窒素を含んでいるので、投与したアミノ酸に入っている窒素量(g)は,アミノ酸投与量(g)×0.16(あるいは÷6.25)で出てきます。

 ということで、窒素バランスの式は以下になります。

窒素バランス
アミノ酸投与量(g/day)×0.16-尿中尿素窒素(g/day)×1.25

 筋肉がきちんと作られているのか、それとも筋肉を削ってエネルギーを作らざるを得ない状況なのか、これを考えていきましょう。

 アミノ酸の中で注目されているのはアルギニンとグルタミン。アルギニンには免疫強化や創傷治癒促進という作用があります。ただし、Critically ill patientでは、NO過剰産生により炎症を促進してしまうことが指摘されています。あまり投与しない方が良いでしょう。グルタミンは小腸粘膜の重要な栄養素でして、腸管免疫を賦活してくれます。また骨格筋や肝臓での代謝のためにも働きます。

 そして、静脈栄養のアミノ酸製剤はたくさんあり、ビーフリード®、アミカリック®、アミノフリード®、プラスアミノ®などなどなど。また経腸栄養剤は含まれている窒素源として使われているのがたんぱく質(半消化態栄養剤)かペプチド(消化態栄養剤)かアミノ酸(成分栄養剤)かで分類できますが、これは消化のしやすさを考慮に入れたもの。腸に優しいのが、消化する必要のない成分栄養剤で、腸の機能が低下している患者さんは最初にこれを使うというのが定番になっています。

・半消化態栄養剤:経腸栄養剤の多くはこちら。エンシュア®、ラコール®などなど。
・消化態栄養剤:ツインライン®、ペプチーノ®、エンテルード®
・成分栄養剤:エレンタール®、へパン®ED、アミノレバン®EN

 別枠として誤嚥防止のための半固形栄養剤というのがあり、他の経腸栄養剤は液体ですが、これは名前の示すようなもの。短時間で投与することができ、また一般の食事(固形)に近いためより生理的と言えます。液体の経腸栄養剤は24時間持続で流すことがありますが、やっぱり起きている時に栄養が入って、寝ている時は入らない、というのが一番自然だと思います。それに近いのがこの半固形栄養剤。ハイネゼリー®、テルミール®PGソフト、カームソリッド®などがあります。腸はもちろん、胃がきちんと使える患者さんが対象。

 経腸栄養剤は病態別にも分類できます。肝不全用、糖尿病用、腎不全用、腸管リハビリ用などなど。まずは窒素源による分類をして、その後に病態別に考えるのが筋道。

 話を戻して、アミノ酸の投与量が決まったら、次は脂質になります。脂質は何と言っても1gで9kcalも稼げるのが魅力。少ない量で多くのカロリーを生み出せます。静脈栄養のための脂肪乳剤としてイントラリピッド®やイントラリポス®などがあり、10%製剤と20%製剤がありますが、20%製剤では感染を起こしやすいかも?と言われてはいます。10%の脂肪乳剤には0.1g/mLの脂肪が入っていて、計算すると0.9kcal/mLになるんですけど、大体どれも約1.0kcal/mLに調節されているみたい。

 投与量ですが、大体1日に投与するカロリーの20%くらいを脂肪で賄うのが良いのではとされています。1g/kg/dayというのが目安。最大では2.5g/kg/dayくらいまで上げることが出来ますが、過量投与は免疫機能や呼吸機能に異常を来すかもしれないとも指摘されています。

 脂肪乳剤は投与速度も大事でして、0.1g/kg/hrが日本人では適切となっています。HDLにあるアポリポ蛋白と結合するためにはこの速度が良いとのこと。自分には何やら仕組みがさっぱりですが。。。諸外国に眼を向けるとESPENでは0.03-0.125g/kg/hr、ASPENは0.125g/kg/hrを推奨しています。

 脂肪の中でもω-3脂肪酸は抗炎症作用があるため、つい最近までSIRS患者さんには積極的にこれを強化していこうという流れがありました。しかし、2011年JAMAに掲載されたOMEGA studyという、ALI(急性肺障害)の患者さんにω-3脂肪酸を強化した群としない群とに分けて行われた試験では、意外なことに強化群の方の敗北。人工呼吸管理日数が長くなり、死亡率も高くなってしまいました(Enteral Omega-3 Fatty Acid, γ-Linolenic Acid and Antioxidant Supplementation in Acute Lung Injury. JAMA. Published online October 5, 2011.)。あれれ、鳴り物入りで参入してきたオキシーパTMちゃん…?(´・ω・`)

 でもこの試験だけで白黒はつかないと思います。これまでの試験との違いとして、投与方法やコントロール群の製剤の組成などがあるので。オキシーパTM(ω-3を多く含みます)は良いかもしれないけど少し待っておこうか、くらいの立場にしておきましょうか。

 ちなみに、ω-3脂肪酸を薬剤にしたのがEPA製剤のエパデール®です。これは心血管疾患を既往に持つ患者さんでは心血管イベントの2次予防に有効という結果が出たJELIS試験が有名。ですが、この試験はPROBE法というデザインで行っています。PROBE法ではエンドポイントに介入行為を入れないというのが約束(情報バイアスがかかります)。ですが、この試験ではそれが破られていて、介入群に有利になりやすい。困ったものです。そうしたら、2012年4月にJELIS試験の結果をひっくり返すような論文が出ました(Efficacy of Omega-3 Fatty Acid Supplements (Eicosapentaenoic Acid and Docosahexaenoic Acid) in the Secondary Prevention of Cardiovascular Disease. A Meta-analysis of Randomized, Double-blind, Placebo-Controlled Trials. Arch Intern Med. Published online April 9, 2012.)。2次予防の効果は不充分、とのこと。更に、女性においてはω-3脂肪酸をたくさん摂ると”がんリスク”に!という論文も(B Vitamin and/or -3 Fatty Acid Supplementation and Cancer. Arch Intern Med. 2012;172(7):540-547.)。これらの結果は急性期とは事情が異なるため一概にω-3脂肪酸を全患者に用いてはいけないとは言えないと思いますが、健康な人がサプリメントとして摂るのは推奨できません。というか、サプリメント自体に否定的です、自分は。普通に食べてれば必要ないですわ。

 さて、脂肪酸の中でも、ω-6脂肪酸は炎症反応を惹起し、免疫能を低下させると言われています。これを多く含むのがプルモケア®という製剤。オキシーパやプルモケアという経腸栄養財は呼吸商を考慮して脂質を多く含んでおり、CO2を貯めず肺に優しいのではないかと言われています。だからプルモ(肺)をケアしてくれる、という名称。しかしプルモケアはω-6脂肪酸を多く含むため、いくら肺に優しいとはいえALIになってしまっているような患者さんに用いると炎症を助長してしまい良くありません。

 ビタミンもアミノ酸もそうでしたが、過ぎたるは何たらというやつでしょうか。。。栄養関連の研究では、これ良いんじゃね?って言われたものをドカンと強化して良い結果→他でやり直したらやっぱり駄目だったということを繰り返していますが、結局は“ほどほど”に落ち着くような気がしてならないですね。。。

 さてさて、アミノ酸と脂肪を入れたら、残りのカロリーを糖質で賄います。ブドウ糖液というのを使いますが、含有率でいくつかに分かれています。上述のように、ブドウ糖はたんぱく質と同じように1gが4kcalです。なので、50%ブドウ糖液は0.5 g/mLのブドウ糖、ということは2 kcal/mLで計算。20%、10%、5%のブドウ糖液も同様にして計算しましょう。

・50%ブドウ糖液:2kcal/mL
・20%ブドウ糖液:0.8kcal/mL
・10%ブドウ糖液:0.4kcal/mL
・5%ブドウ糖液:0.2kcal/mL

 ブドウ糖と言えば血糖値。ICUに入るような重症患者さんでは、その血糖値をどこに置くか、がポイントです。血糖値が高いと好中球の機能が低下して、ミトコンドリアも傷ついてしまいます。一時期は強化インスリン療法によるタイトな血糖コントロールが流行しましたが、今はそれほど厳格でなくても良いだろうと言われています。インスリンを外から打って血糖値を下げても、多くの糖は筋肉内に押し込まれるだけ。こんなことされたら筋肉の変性が進んでしまいます。ただし、血糖値が200を上回るとさすがにやばいと言われているので、それよりも下、140-200くらいにしましょう、となっています(Use of Intensive Insulin Therapy for the Management of Glycemic Control in Hospitalized Patients: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2011 Feb 15;154(4):260-267.)。血糖値の変動も重要でして、重症患者さんでは変動幅と死亡率が関連するとも言われています(Glucose variability is associated with intensive care unit mortality. Crit Care Med. 2010 Mar;38(3):838-42.)。速効型インスリン皮下注によるスライディングスケールだとガッタンガッタン血糖値が上下し、変動幅が大きいと血管内皮細胞が障害され、アポトーシスが進むようです。なのでスライディングスケールは用いず、持続静注を上手く使うのがクール。

 これで3大栄養素の配分が決まりました。ここで、NPC/N比をもう一度お話。NPC/N比は、投与したアミノ酸以外の栄養素、つまりは糖質と脂肪によるエネルギー量を、投与したアミノ酸に含まれる窒素量(g)で割った比のことでした。この窒素量は、投与したアミノ酸に0.16をかける(6.25で割る)と出てきます。これを見ることで、アミノ酸がキチンとたんぱく質の材料になるかを確認します。通常は、適切なNPC/N比は静脈栄養で150-200、経腸栄養で120-150と言われます。敗血症や大手術後など、ストレスの大きい患者さんでは体内でのたんぱく分解が進むので、栄養でもたんぱくを多めに補うのが良いとされています。その際のNPC/N比は100くらいまで下げる方が適切かも知れないと言われています。腎不全があると逆にNPC/N比を上げねばなりません。

 結局投与カロリーを最初に決めても、NPC/N比を考慮する段階で少し計算を修正しなければならないんですね。

 NPC/N比も考慮した3大栄養素の配分が決まったら、他に水分を考えます。もちろん、配分を決める前に水分量を設定しても大丈夫。どちらでも良いと思います(水分量を先に決める人が多いですね)。人間、生きていくには水分が必要不可欠でして、適切な量を投与するのが大事。その適切量を探るのが難しいんですけどね…。

 必要な水分量は、以下の4つの方法で決められます。

・30mL×体重(kg)
・1mL×栄養摂取量(kcal)
・1500mL×BSA(m2)
・尿量(予想尿量1mL×体重(kg)×24hrs)+600mL

 どれが優れているかは不明。。。これに嘔吐下痢ですとかドレーン排液などを考慮に入れて、1日水分量を決めます。経腸栄養剤ですと、投与量の80%が水分という構成。大事なのは、一度水分量を決めてもほったらかしにしないで毎日考えることです。1回でクリーンヒットすることはまずないでしょう。大きく外さないことが重要で、そこから軌道修正を何回も何回もかけて理想に近づけていくことが大事。これは次の電解質についても言えますし、窮極を言ってしまえば全ての医療に共通すること。

 水分も決まったら、お次は電解質です。1日に必要な電解質は?

Na:60-80mEq
K:30-60mEq
Cl:80-100mEq
Ca:4-10mEq
Mg:8-20mEq
P:12-20mmol

 これを基準にすることが多いです。多くの製剤には、最初から必要量が含まれていますね。患者さんによっては、例えば腎不全でKを嫌う時はもちろんこれを含まないように作りますし、SIADHで低Na血症になっている患者さんに漫然とこの量のNaを投与していたらいかんですよ。

 残りは前に述べたビタミンと微量元素。これを追加して栄養メニューは終了になります。随分と長い旅でした。

 こうして、うんうんと考え抜いて作った自分オリジナルの中心静脈用の栄養剤。この努力の結晶が、出来合いのキット製剤と酷似していることはままあることです。その時のショックはなかなか忘れられないのですが、一度自分で最初から考えてみることが大事かなと思います。それがキットとどう似ているのか、どう違うのか、答え合わせではないですが、見てみると良いですよ。

 次回は栄養剤について少しだけ触れて、その次に急性期極期の患者さんへの栄養についてお話して、栄養療法のレクチャーを終了したいと思います。
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2012
04.06

飲まねばやってられん時もある

 タイトルの通りで、たまにはお酒の力を借りたいこともあるものです。

 で、そんな時、必要なのがオツマミ、換言すれば酒の肴というやつでございます。

 あたりめとかチーズ鱈も美味しいですが、自分が好きなのは


”鮭とば”(゜Д゜)ウマー


です。鮭とばは鮭の燻製。あんまり硬すぎるのは顎に響くので、少し軟らかめのものが良いですね。噛めば噛むほどに鮭の熟成されたふくよかな味わいが広がっていきます。

 そんな鮭とばに合うのが


”クリームチーズ”(゜Д゜)ウマー(゜Д゜)ウマー


なんです。KiriでもPhiladelphiaでも雪印でも、しっとりとした脂質成分と酸味が、鮭とばと良くマッチします。値段では雪印、味のバランスではKiriがオススメ。カマンベールとかモッツァレラとか色々試してみましたが、クリームチーズが一番。

 この2者に最適なお酒は


”ほろよいワインサワー”(゜Д゜)ウマー(゜Д゜)ウマー(゜Д゜)ウマー


です。自分はお酒に弱く、遺伝的にたどれば養命酒で2日酔いになって寝こむという男性を父親に持ちます。なので本格的なアルコール類を日常的に飲むのは身体に堪えます。この”ほろよい”でも1缶全部飲むと真っ赤になってしまい、頭が痛くなる脆弱さ。以前に焼酎とか日本酒をほんの少し紹介しましたが、かなりチビチビ飲んでます、ああいうのは。

 で、このワインサワーは薄いぶどうジュースに毛の生えたような飲み物。少しだけワインの味がして、それが良い感じです。甘みとワインの香り、そして微炭酸が、燻製の持つ熟成感&クリームチーズの脂質と酸味、これらに非常に調和してくれます。

 冬なんかはコタツに入ってこんなのを嗜んで、眠くなって寝るみたいな、廃人のような生活を送る時もありました。でもこういうのも1日くらいたまに挟まないと、良い息抜きにならないんじゃないかしらと思います。

 鮭とば&クリームチーズ&ほろよいワインサワー。この組み合わせは良い線いってると思います。ぜひぜひ。燻製が苦手でチーズとワインなら、チーズはパルミジャーノ・レッジャーノが良いかと思います。結構深みのある味わい。

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2012
04.04

キャラクターシリーズ:胃粘膜を守るおサルさん

Category: ★精神科生活
 大塚製薬が開発したレバミピド、商品名は有名な”ムコスタ®”です。胃粘膜を守る、胃薬。何で有名かというと、ロキソニン®との併せ技で処方されてまして”ロキムコ”だなんて呼ばれてます。ロキソニンを代表とするNSAIDsはCOX-1を阻害することで胃粘膜を荒らしてしまいまして、ひどいと”NSAIDs潰瘍”という胃潰瘍を作ってしまいます。こりゃ大変。

 その予防のためにムコスタを一緒に処方するのですが、残念ながらその併せ技は効果が薄いようです。でも経験的に何となく処方してしまっている先生も。中には効く患者さんもいるのかもしれませんしね。

 そんな実力不明のムコスタですが、ピンクのおサルさんがキャラクター、その名も”ムコさる”くん。前回の大建中湯ヒツジのような鮮烈なヒネリがあまり感じられませんが、結構可愛いです。

 ボールペンの頭にくっついています。

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 結構愛らしいキャラだなと思っていますが、皆さんどうでしょう?ボールペンにはいくつかバリエーションがあり、家の中をごそごそ探したら他に2タイプ出てきました。お湯に浸かっていますが、出汁が出ているとしか思えないですね。

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 磁石にもなっています。これはほんの1つで、他にも種類があります。

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 こちらファイル。かわいい。このファイルを見て眼に止まったんですが、しっぽが星の形ですね。まさかムコ『スター』とか・・・?いやまさか、そんなベタな。。。ねぇ。

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 カレンダーだって毎年出ています。2013年用のをもらいました。ヘビに乗っているムコさるくん。ヘビさんに飲み込まれないか心配です。

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  ”ムコさる”くんには様々な製品があり、商品化を狙っているのか!?と思わせるくらいの充実ぶり。でもやっぱり可愛らしいのがぬいぐるみ。これくらいの大きさで、縫製も意外としっかりしています。このぬいぐるみのしっぽを見返してみたら星の形でした。。。細けぇ…。

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 今回しげしげ眺めて、意外な事実に気づきました。

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 お腹のピンク色の毛のない地肌の部分、ここも胃の形か!!!

 なんでしょうね、デザイナーさんは、胃の形を何か利用しなければ済まされないという強迫観念でも沸くのでしょうか…?



☆追記(2013年8月2日)
 今度はこんなボールペン。キャンディを持っておりますね。色んなバリエーションあるなぁ…。

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2012
04.03

キャラクターシリーズ:腸と羊と胃と6つ

Category: ★精神科生活
 漢方は精神科領域でも非常にお世話になっております。特に柴胡剤は重要な立場ですね。

 さて、大建中湯は漢方の中で処方量ダントツの1位。小腸に働きかけて、良く動かしてくれる漢方なんです。外科の先生は腸閉塞の予防などに使われることが多いですね。このお薬、山椒と人参と生姜と水飴で出来ていまして、温める漢方なので、炎症の強い患者さんには使わない様にしています(たぶん、使うと有害)。腸の調子が悪いなら何でも大建中湯、と言うわけには行かないはず。

 そんな大建中湯ですが、大手であるツムラのMRさんがくれたボールペンとティッシュにキャラクターがあしらっておりました。ボールペンには大建中湯(100番)のキャラクターである羊さん。ティッシュにはその羊さんと六君子湯(43番)のキャラクターである「りっくん」が載っています。

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 この羊さん。なぜ羊が大建中湯のキャラかというところですが、この身体。これが


小腸です


工エエェェ(´д`)ェェエエ工

 そこから羊というのをつなげたというその発想力に脱帽。。。

 次の絵は、消化管のもの(Wikipedia先生より)。

消化管2

 これにちょっと細工。

消化管3

 界王拳100倍くらいの想像力で眺めると、何となく似てる、かしら????

 さて、ティッシュに写っている「りっくん」ですが、拡大するとこんなキャラ。

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 ”胃の迷路”というぶっ飛んだものはスルーしまして。。。この子の身体は


です


工工エエエエエェェ(´д`)ェェエエエエエ工工

 この顔の独創的な形は、六君子湯の“六”→“6”から。

 シュールな形は、シュールな才能から生み出されるのでした。



c.f.”りっくん”のボールペンはこちら。やっぱりシュール。
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2012
04.03

栄養療法 Starter & Booster:第3回~必要なエネルギー量って?

目次→コチラ

 第2回までで、栄養が必要かどうかを評価して投与経路も考えた。では、実際に栄養のエネルギー必要量を設定してみましょう。

 まずは基礎エネルギー消費量(BMR)というもの。私たちはボーッとベッドの上に横になっていてもエネルギーを使っています。その超省エネ状態において、生命維持のためにどのくらい必要か?というのがBMR。

 1日の生活をする上で、どれくらいエネルギーが必要か。このエネルギーの求め方には、広く使われているものに3つあります。

 1つは聞いたことがあるかもしれませんが、Harris-Benedict(ハリス・ベネディクト)の式です。ちょっと見てみましょう。

基礎代謝量(kcal/day)
男性:66.47 + 13.75×体重+5.0×身長-6.75×年齢 
女性:655.1 + 9.56×体重+1.85×身長-4.68×年齢 

 基礎代謝量(BEE)は基礎エネルギー量(BMR)と同じ意味と考えて下さって良いです。が、この数値は何なんでしょうね。。。

 このBEEに活動係数(AI)とストレス係数(SI)をかけると1日のその人のエネルギー必要量が分かるという仕組み。

エネルギー必要量(kcal/day)
BEE×AI×SI

 AIは寝たきりやベッド上安静などで異なります。意識低下状態での寝たきりでは1.0、覚醒状態での寝たきりでは1.1、ベッド上安静では1.2、ベッド外活動では1.3-1.4、一般職業従事者なら1.5-1.7となります。

 SIは飢餓状態で0.6-0.9、小手術なら1.2、大手術なら1.3-1.5、他には多発外傷や敗血症、熱傷などでもそれぞれ数値がありまして、侵襲が大きくなればSIも高くなる設定になっています。

 しかし、大きな問題点として、このハリス・ベネディクトの式は本当に正しいのかよく分からない(何と!)というのがあります。こんなに訳分からないかけ算をして結局出てきた数字の妥当性が問われるとは…。かつ、このAIやSIも科学的な裏付けは全くなく、本や論文でも数値が微妙に異なります。

 しかも、大きな侵襲の下では“異化”という名の下に内因性のエネルギー供給が行われます。ストレスホルモンとサイトカインによりなされるこの内因性のエネルギー供給は、筋たんぱくの分解でできたアミノ酸を使った糖新生と脂肪組織からの脂肪酸放出が原動力。この異化は栄養療法(外因性エネルギー供給)によって抑制することが出来ません。なので、異化を無視して栄養療法で全てを賄おうとすると、もしくは抑えられないはずの異化を抑えようとしてたくさん栄養をあげると、異化分のエネルギーが余ってしまい、過剰栄養(overfeeding)となってしまうことが指摘されています。

 また、SIというのは侵襲が大きくなるにつれて高い数値に設定されますが、ICUに入る様ないわゆるCritically ill patientの状況ではこの高くなるSIという考え方は非常に怪しいもので、異化を考慮していないのです。このところは“Permissive underfeeding”という概念が広まり、サイトカインの嵐の真っ只中にあり異化が亢進している患者さんにおいては栄養投与量を少なくしようという動きになっています。SIとは逆の方向になっているのは知っておきましょう。ハリス・ベネディクトも特に重症患者さんでは用いない方が良いと言われます。

 何だかハリス・ベネディクトがめった打ちにされている感じがありますね。。。最初の一歩ですら“何となく”感がものすごく強いこの栄養療法。。。こんなこともまだまだ明確化できないというのが現状なんです。

 先ほど、エネルギー必要量の求め方には3つある、と言いました。残りの2つを見てみましょう。

 1つは、簡易法と呼ばれるもの。これは至ってシンプルで、以下の式です。

エネルギー必要量(kcal/day)
25-30kcal/day×体重

 これだけ。本によっては係数を“25-35kcal/day”としているのもあります(35はちょっとやり過ぎだと思います)。ずいぶんとハリス・ベネディクトから削いだ感じがしますね。この簡易法もエビデンス無しですし、先ほどのCritically ill patientの異化を考慮してないため、注意が必要。ハリス・ベネディクトとどちらが優れているかも不明とされています。。。

 更に大きな問題として、簡易法にしろハリス・ベネディクトにしろ、計算式に代入する体重の数値を理想体重にするか実測体重にするか、というものがあります。同じ身長170cmでも、体重が120kgや45kgでは随分と違います。彼らの必要エネルギー量をいきなり理想体重で求めて良いのか?過少栄養(underfeeding)や過剰栄養(overfeeding)になりはしないか?と言う問題があります。こんなのも科学的根拠が無く、実測体重が理想体重よりも大きく(これもどのくらい大きくなのか…)異なれば、実測を用いておこうと言う人もいます。しかし、肥満患者さんにおいて馬鹿正直に25kcal/kg(実測)/dayで行くか、となると恐ろしいエネルギーを投与しなければならなくなってしまいます。肥満はサイトカインの嵐とは言わないまでも雨の中にいるような状態ですから、投与する量は絞った方が良いんでしょうね。アメリカさんなんかはBMI30超えの患者さんの議論をしてますから、日本の肥満は可愛いものかも知れませんが。。。痩せも著しいと、後述のRefeeding syndromeを発症する危険性があります。

 必要エネルギーの予測式すらアテにならない。本当に分からないことだらけなのが栄養療法なんです。最近の流れとして、特に重症患者さんにはこれまでは過剰栄養でやってきてしまったなという反省が見えてきています。上の2つの式をそのまま重症患者さんに当てはめないことが重要。

 さて、最後の1つは“間接熱量計”と呼ばれる機械を使って算出するもの(間接熱量測定法)。安静時エネルギー消費量(REE)を酸素消費量と二酸化炭素産生量とを用いて算出するという、Wierの簡便式を示します。

Wierの簡便式
安静時エネルギー消費量REE
{3.941×酸素消費量(mL/min)+1.106×二酸化炭素産生量(mL/min)}×1.44

 栄養素の代謝過程では、酸素が消費され消費して二酸化炭素と水、熱が産生されます。間接熱量測定法ではこの原理に基づいてエネルギー消費量を算出する、らしいです。

 酸素消費量と二酸化炭素産生量は、呼気ガス分析装置を用いて測定。ちなみに、REEはBEE×SIなので、エネルギー必要量を求める時にはREEにAIをかけることになります。

 間接熱量測定を施行する際には、条件があります。1つとして、8時間以上の絶食。これは、食事による代謝の影響を除くためと言われます。姿勢なども決まりがあり、仰臥位か半座位として、測定中はテレビとか読書とかは避けてもらいます。測定する時は息が漏れたり過呼吸にならないように注意。

 色々と難しそうな間接熱量測定ですが、呼吸商(RQ)が出るというのが強みでもあります。呼吸商、懐かしい用語。。。脂肪、たんぱく質、糖の呼吸商はそれぞれ0.7、0.8、1.0でしたね。呼気ガス分析装置で測定した呼吸商が1に近ければ糖を多く使った代謝だと分かりますし、0.7に近ければ脂質の燃焼や代謝が栄養のメインになっているんだなと分かります。すなわち、1を超えたら糖質が脂質合成に使われており、0.7以下なら脂肪からの糖新生が生じていると評価。呼吸商が脂肪に傾いているのが分かると、エネルギー摂取不足や異化亢進状態であるなと判断できるわけです。1を超えたら逆にエネルギー余剰状態。こんなことに呼吸商が利用できるとは、高校生の時は考えもしませんでした。

 こういった方法で、患者さんの必要なエネルギー量というのを決めていきます。間接熱量計が最も正しそうに見えてきますが、大きな問題としては、どこの病院にもポンポン置いてあるわけではない、というもの。基本的には簡易法などで求めて、患者さんの状態の推移をしっかり眺めるというのがスタンスになります。しかもICUに入る急性期の患者さんでは、“異化”ということを考慮するとこの3つの方法全てが不正確になってしまうと言われます。間接熱量計が推奨されていますが、それを用いても過剰栄養(overfeeding)になりがち。この異化についてはまた後で少しお話しします。

 最後に1つ注意点ですが、慢性的な低栄養状態にある患者さんに対しては実測体重にしろ理想体重にしろ、普通の患者さんと同じように栄養療法を開始するとRefeeding syndromeという病態に陥ってともすると命を落としてしまいかねません。

 Refeeding syndromeは、慢性低栄養患者さんにブドウ糖をドカンと投与した時に生じる代謝性合併症。ヘロヘロな患者さんでは代謝が異化(内因性のエネルギー供給)になっており、エネルギー源が脂肪とたんぱく質になっています。脳はグルコースが使えなくなっているのでケトン体を燃やしてエネルギーにします。肝臓では筋蛋白の消費を最低限にするため糖新生が抑制。そうなると細胞内のミネラルがどんどんと消費されてしまいます。そこに糖が急激に入ってくると、インスリンの上昇とグルカゴンの減少が生じ、糖質・たんぱく質・脂質は全て分解される方向にシフトします。この時、KとかMgが細胞内に取り込まれて低K血症やMg血症になり不整脈へ。さらにATP産生のためPが使われて、低P血症となって貧血、痙攣、横紋筋融解が起こって呼吸機能低下へ。ビタミンB1も大事で、慢性低栄養患者さんはビタミンB1が不足しています。栄養の投与で糖代謝がガンガン回って、そのためビタミンB1が消費されます。

 Refeeding syndromeは色んなものが一気に枯渇してしまうため、非常に怖い病態です。命取りとなってしまうので、神経性無食欲症や他の理由で食べられないことがずっと続いている患者さんでは、常にこれを頭に置いておきましょう。ルーチンの採血の他にMgやPをモニタリング!そして栄養投与はゆっくりと!最初は5-10kcal/kg/dayくらいから開始して、一週間程度かけて15-20kcal/kg/dayまで増やしていきましょうと言われています。栄養投与により上記のものの値が下がってくるので、適宜補うことが大事になります。慎重に行きましょう。
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2012
04.02

栄養療法 Starter & Booster:第2回~栄養の投与経路は?

目次→コチラ

 前回は患者さんの栄養状態の評価についてお話ししました。実際に栄養療法をしよう!となった場合、栄養の投与経路というものを考えましょう。点滴で入れればダイレクトに行き渡るから、やっぱ点滴と考えるかもしれませんが、ここで大原則。

“食べられる人には食べさせよう!腸が使えるなら腸を使おう!”

 何事も生理的なものに一番近いというのが身体に良いので、あえてそのシステムに歯向かうこともなかろうということです。ただ、食欲がわかないという患者さんもいます。原因は多岐にわたるので、一度マニュアルなどで食欲不振の項目を見ておくことをお勧めします。何か食欲が上がらないなぁという人には、食欲を上げるお薬を使うこともあり、ミルタザピン(リフレックス®/レメロン®)、オランザピン(ジプレキサ®)が代表選手(両者とも睡眠誘発、制吐作用を併せ持ちます)。漢方では六君子湯や人参湯が例として挙げられます。場合によってはこういうものも使いながら、食べさせていきましょう。人参湯は少し甘くて美味しい。

 胃腸は栄養が入っても大丈夫な状態だけど、ちょっと食べられんなぁという患者さんには、経腸栄養となります。6週間というのを目安にして、6週間未満で経口摂取に戻れると予想できればNGチューブ、それ以上かかりそうなら胃瘻(胃と腹壁の間に瘻孔をつくって胃の中に直接栄養を入れる)や腸瘻(胃瘻の腸バージョン)を原則として選択します。そもそも胃腸もちょっと使えない、例えば腸閉塞や吻合がちょっと怪しいのでそっとしておいた方が良い術後患者さんの一部などでは、経静脈栄養となります。ここでは2週間を目安にして、それ未満で経腸に戻れそうなら末梢静脈栄養、無理なら中心静脈栄養を原則として選択。

 腸を使おう腸を使おうと言うには訳があり、いろんな所で理由として挙げられているのがBacterial Translocationです。人間が腸を使わず放置していたら、腸は動かなくなり微生物の異常増殖と細菌叢の変化が生じます。分泌型IgAの不足が起こり、GALTやMALTといった腸管免疫システムが維持できなくなり、炎症があれば腸管浮腫や腸粘膜細胞の脱落、更に腸管にいる細菌や毒素が体内に侵入してしまいます。これは避けたい。他にも、腸を使わなければ胆嚢が働かず胆汁うっ滞になったり、はたまた静脈栄養でのリスク(刺入部からの感染や著しい高血糖など)になったりも。

 ということで、やっぱり腸を使うのは大事。とは言うもののNGチューブも胃瘻も100%安全というわけには行かず、それなりに侵襲がある方法。NGチューブでは嚥下困難になったり、喉頭に浮腫が起こったり、肺へ入れてしまうという手技の失敗、副鼻腔炎や中耳炎の発症、何より違和感抜群です。経腸栄養といえば胃瘻ですが、これにも感染や気腫とか胃潰瘍などなど、危険性はもちろんあります。更に誤解もあるのですが、胃瘻をしただけでは誤嚥性肺炎の完璧な予防にならないということなんです。これも意外なのが、腸瘻でも安心できる予防にならないこと。入れる栄養剤の速度を落としたり、栄養剤を液体からちょっと固体にしてみたり、患者さんの上半身を挙げてみたり、いろいろしているんですが決定的な予防は難しい。こちらが管理しやすいから胃瘻にするというのはもちろんいけません。こちらの提供できる客観的なデータ、そして患者さんとご家族の意見、きちんと議論の場を設けてこれらを加味しながら栄養ルートを考えるべきなんでしょうね。というようなことを述べるにとどめておきます。この問題は深すぎて。。。

 静脈を使った栄養では、絶えず感染のリスクが付きまといます。末梢静脈では栄養剤の浸透圧の関係から投与できるカロリーに上限がありますが、それでも大きな武器。後で述べますが、水分制限の必要のない患者さんであれば、アミノ酸製剤と脂肪乳剤を使った末梢静脈での栄養で1000kcal/day以上稼げるんですよ。侮りがたし、末梢静脈。しかし静脈炎や血管痛が起きることもあり、なかなか難しい。抹梢静脈から投与可能な輸液の浸透圧は700mOsm/kg程度が限界。ブドウ糖濃度だと10-12%ですが、多くの患者さんは10%でも厳しい。ビーフリード®などのアミノ酸製剤のブドウ糖濃度は7.5%になっているものが多いですが、これでも痛くて無理!という人も多く、末梢静脈栄養の限界が見えてきます。それよりも何よりも経静脈栄養は生理的でないというのがやっぱりデメリットですね。

 栄養療法を開始するのであれば、腸が使えるなら腸を使い、また最終的には経口摂取に持っていきたいなという気持ちを忘れずに行うことが重要です。
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2012
04.01

栄養療法 Starter & Booster:第1回~栄養状態を評価してみよう

目次→コチラ

 さて、栄養療法について何回かに分けてお話ししていこうと思います。1回目の今回は、目の前の患者さんがどういう栄養状態なのか??これを知るところから始めましょう。

 栄養状態の評価には、主観的包括的評価(SGA: subjective global assessment)と客観的栄養評価(ODA: objective data assessment)、そして高齢者の評価に適していると言われる簡易栄養状態評価表(MNA: mini nutrition assessment)やGNRI(geriatric nutritional risk index)などなどがあります。

 SGAは“主観的”というくらいですから、ちょろちょろっとお話を聞いて身体計測して何となく評価するもの。

・体重変化(いつからどのくらい変化?)
・食物摂取変化((いつからどのくらい変化?)
・消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢)
・機能状態(ADLの確認)
・疾患と身体状況の評価(基礎疾患やバイタルなどなど)

 これらを確認して、身体所見。どんな所見かと言うと、上腕三頭筋の皮下脂肪の厚さ(TSF)を測ったり、上腕周囲の長さ(AC)を測ったり。これで脂肪や筋肉の消失具合を見ます。他には浮腫(踝部と仙骨部)や胸水・腹水の有無を評価。最終的にA-Dの4段階でSGAグレードを決めます。

 これはかなり主観的ですが、練習練習。身体所見は計測する人によってバラツキがあるので、同じ人が測って変化を見るのが勧められています。この中ではやっぱり体重は基本ですけど一番大事。常に変化を見ましょう。

 でも、SGAの問診項目って、普段やってることですよね。何気なく毎日の診療で行っていることに、栄養という視点を持ち込めば、SGAは出来たも同然。

 ODAには検査値が入ってきます。アルブミン、コリンエステラーゼ、コレステロール、rapid turnover protein(トランスフェリン、プレアルブミン、レチノール結合蛋白)、窒素バランス、総リンパ球数などなど。各項目について見てみます。

 血清アルブミン値は低ければ低栄養で基準値なら安全、というわけには行きません。低い例を出しましょう。アルブミンは肝臓で作られるので、肝臓がヘタっていれば値は低くなりますし、あとは尿や下痢などで出ていくことも。ネフローゼ症候群なんて蛋白尿がすごいですよね。腎臓のフィルター機能が落ちているので、アルブミンがどんどん尿に出て行ってしまいます。他には、甲状腺機能亢進症で代謝が活発になっている時や、感染症の勢いが強くて消費される時も値は低くなります。また、溢水になって血液が薄まっていたら見かけ上低くなりますね。基準値内でも安心出来ない例を挙げてみます。アルブミンは半減期が21日くらいなので、その期間内に低栄養になってもリアルタイムに反映されません。他にも、血液濃縮で見かけ上の値が高くなることもあります。脱水でヘロヘロの痩せたおじいちゃんのアルブミンが3.8で意外と保たれていた。へーっと思いながら輸液で補正して、翌日採血してみるとあらびっくり。。。というのは日常茶飯事です。

 他の検査値では、肝機能が正常であれば、タンパク代謝能としてコリンエステラーゼ、脂肪の合成能として総コレステロールが使えます。また急性衰弱の評価には、rapid turnover proteinとして半減期約7-10日のトランスフェリン、半減期約3-4日のプレアルブミン、半減期約12-16時間のレチノール結合蛋白(LBP)が使えます。ただ、これらのrapid turnover proteinはコストがかかることと、自分の勤めている病院では外注なので、結果が返ってくるまでやたら日にちがかかります。。。すぐ知りたい時になかなか。。。他には尿中の尿素窒素量を測定することで、窒素バランス(アミノ酸投与量(g/day)÷6.25-尿中尿素窒素(g/day)×1.25)が負であれば蛋白異化の亢進、正であれば蛋白同化が優位と言えます。あと面白いことに、リンパ球の数も栄養の指標になるんですよ。2000以下を軽度、800-1200を中等度、800未満を高度の栄養障害を示唆するものとなります。

 このように、検査値もちょっと見方を変えれば栄養の指標となってくれます。漫然と眺めずに、利用できるものは利用しましょう。

 ただし、ICUに入るような患者さんにおいては、サイトカインストームの中で様々な反応が起こります。そのためこれらの指標は栄養状態と相関しないようです。間接熱量計というものを使うのが良いのではないかと言われてはいますが、それもどうかなーという意見もあり。この状況の患者さんでは適切な評価が実に難しくなります。。。こういう超急性期については、機会を改めてまたお話しようかと思います。

 GNRIはアルブミン値と実測体重と理想体重を用いるだけで算出できるので簡便です。高齢者用ですが、透析患者さんにも有用性が高いのでは?と言われています。

 式は以下のように求められます。

GNRI=14.89×血清アルブミン値(g/dL)+41.7×(実測体重/理想体重)

 この式では、実測体重のほうが理想体重よりも大きければ、実測体重/理想体重=1とします。そして、理想体重はLorentz equationsの式で求めるか、BMI=22となる体重としています。

Lorentz equationsの式
男性:理想体重=身長-100-{(身長-150)/4}
女性:理想体重=身長-100-{(身長-150)/2.5}

 高齢者の場合、寝たきりで身長が測れない患者さんもいます。こういう時、GNRIでは膝高を用います。

男性:身長(cm)={2.02×膝高(cm)}-(0.04×年齢)+64.19
女性:身長(cm)={1.83×膝高(cm)}-(0.24×年齢)+84.88

 これは大きいポイントかと思います。

 このGNRI、原法でのカットオフはこのようになっています。

82>:重度栄養リスク
82-91:中等度栄養リスク
92-98:軽度栄養リスク
98<:リスクなし

 透析患者さん用には、日本では以下にカットオフが設定されています。

91≧:栄養障害リスクあり
92≦:リスクなし

 MNAはスクリーニングとしてShort Formが用いられています。参考に載せておきましょう。

mna nestle
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