2012
03.31

フラッシュバックに対する神田橋処方

Category: ★精神科生活
 神田橋條治先生は、精神科医で知らない人はいない、と言うくらいに有名な先生。

 すごすぎて真似できない、真似をしたらヤケドをする、とも言われており、”オカルト”とも評されます(良い意味でも悪い意味でも)。患者さんをムムっと睨んでお薬とか処方量を決めるという、遠くの世界にいらっしゃる感じの先生。

 ”伝説”というのは語れば尽きないくらいにお持ちなんですが、自分のようなまだ玉子の殻がくっついたひよこ精神科医でも真似できるものも中にはあります。

 それが、PTSDのフラッシュバックに対する”神田橋処方”。

 先生の仰るPTSDはかなりの広義でDSM Basedではないことをまず前提としておきます。ある心理的な外傷体験の記憶再生に関連して生じる不安状態が、”今ここ”の精神活動に阻害的に働くこと。これ全てをPTSDと先生は考えています。そして、このフラッシュバック。これはどんな精神疾患の患者さんでも持つことがあります。例えば統合失調症の患者さん。抗精神病薬の投与で症状が大分取れてきても、どうしても残ってしまう幻聴が一部ある。こういうものの中にフラッシュバックは潜んでいるかも知れません。

 フラッシュバックがあるかどうか。問診では以下の様に聞いてみると良い、と仰います。



「思い出したくもない記憶や昔の気分が、突然吹き出してくることがありますか」



 ”Yes”であれば、これはフラッシュバックであろうと考えます。そこから、患者さんが苦しくなければ、どんな内容か少しずつ聞くように自分はしています。吹き出してくるなかなかきっかけというのは患者さん自身気づかないことがあるようです。

 神田橋処方は、漢方の合方。”四物湯”と”桂枝加芍薬湯”を1-2包ずつ飲んでもらいます。気虚もあるという人なら、四物湯を”十全大補湯”にしますし、桂枝加芍薬湯が飲みづらいなーという人なら”小健中湯”に変更(甘くて飲みやすい)。小健中湯を出す時は桂枝加芍薬湯の量の倍出した方が良いんでしょうね、成分的に。患者さんがやや対人恐怖的だったり悪夢が多かったりであれば、桂枝湯に抗不安効果を持つ竜骨と牡蛎を加えた”桂枝加竜骨牡蛎湯”に変更を考慮します。

 自分も1人フラッシュバックを持っている患者さんに処方して、2週間後には「そういえば楽になりました。少し思い出しても自分で抑えが効くようになって」と。効果抜群!

 自分は漢方をいつもの処方に少し加えることがあり、補佐的な役割を期待しています。中にはクリーンヒットすることもあり、なかなか馬鹿にできんぞ、と常々思っております。

 でも粉が苦手っていう人、多いですね。。。高齢の患者さんなら漢方の受け入れが上手く行くことが多いですが。。。幸いにも四物湯と桂枝加芍薬湯はクラシエから錠剤が出ています。6錠が1包換算なので、結構飲んでもらわなアカンですが(最低でも6錠+6錠の12錠)。でも錠剤の漢方って効くのか怪しい印象。粉だからこそ”漢方!”って感じで。ちなみに、神田橋処方の他には柴胡剤を使っても効果を感じることがありますよ。特に過覚醒が目立つようなら大柴胡湯をしっかり使うことが必要な患者さんも。もちろん柴胡そのものは身体を冷やして乾かすので、長期に使用すると肺を傷めることがあります。漢方も副作用があるので、それには注意せねばなりません。

 フラッシュバックには、ピモジド(オーラップ®)を0.25-0.5mg就寝前服用、もしくはアリピプラゾール(エビリファイ®)3-6mg朝食後服用も効くようです。自分はオーラップの使用経験が無いので何とも。。。粉がダメな患者さんにはこれらをトライしても良いかもしれませんね。でもオーラップは心電図でQT延長を有意に来たしますし、大量服薬で死んじゃうこともあるのでちょっと怖い。
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2012
03.31

高血圧患者の血圧左右差

 血圧は左右で測れ!とポリクリの時に(形式的に)教わった記憶がありますが、実際臨床の現場ではそうそう行うものではなく。そんなに大事なんかい?と疑問に思っておりました。

 この前のBMJに載った論文では、その左右差に意味はあるのか、を調べています。

The difference in blood pressure readings between arms and survival: primary care cohort study
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1327 (Published 20 March 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e1327

 高血圧の治療を受けている患者さん230人を対象とした試験で、両腕の血圧を測りながら心血管イベントと死亡を拾っています。フォローアップは9.8年。何とも地味な作業ですね。

 10mmHg以上の血圧左右差は24%に、15mmHg以上の差は9%に見られました。

 全原因死亡の補正ハザード比は以下の様に。

10mmHg: HR 3.6(95%Cl 2.0-6.5)
15mmHg: HR 3.1(95%Cl 1.6-6.0)

 心血管系疾患の既往の無い183名でもこうなりました。

10mmHg: HR 2.6(95%Cl 1.4-4.8)
15mmHg: HR 2.7(95%Cl 1.3-5.4)

無題

 上述のように地味ではありますが、こういう簡単に誰でもできる、かつお金がかからないことで色んな出来事を予測することが出来るというのは、実に大切なことだと思います。池田正行先生も意識障害患者さんの収縮期血圧が頭蓋内病変の予測に役立つという論文を出していましたが(Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study. BMJ. 2002 October 12; 325(7368): 800–802.)、こういう類のものこそが臨床研究!莫大なお金をかけて(しかも製薬会社が主導)大規模トライアルをするのも良いのかも知れませんが、やっぱりグラウンドを大事にしたいですよね。

 ちなみに、左右差をもたらす最大の原因は”動脈硬化”とどこぞで習った記憶があります。
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2012
03.30

栄養療法 Starter & Booster:第0回~目次

 さて、今回は栄養について。なかなか学生のうちは学ばない栄養。研修医になっていきなり必要に迫られて慌てて勉強する分野の1つかと思います。

 医食同源、という言葉がありますが、食事はとても大事。栄養摂れなくてヘロヘロになると傷の治りも遅くなるし褥瘡が出来やすくなるし感染症にも罹患しやすくなるし…。逆に多すぎるといわゆるメタボになっちゃいますし。適切な栄養というのは生活の基盤です。これは言い過ぎでは決してありません。入院患者さんにとっても、その患者さんに合った栄養というのを抜きにすることは出来ません。絶食の期間を可能な限り短くして早期に栄養を摂ることを開始してもらう。これが大事。軽視されがちですが、縁の下の力持ち的な存在です。栄養“療法”であることを意識しましょう。

 とは言っても、勉強していないと食事のオーダーも何となく言われたとおりにはいはいっと出してしまう。ちょっとやるか、と本を見ると病態ごとに注意点がたくさんある。。。血圧が高かったり心不全だったりなら塩分制限というのは分かるけれども、COPDの患者さんには炭水化物を抑えて脂肪を多くする…?脂肪って悪いんじゃないの?などなど。

 そして、経腸栄養の患者さんの栄養剤や、中心静脈栄養の製剤の種類に圧倒され。。。とにかくエンシュア®とかフルカリック®とかやっていれば良いのかな???とその場しのぎに。

 このように、分からないことがどんどん出てくるのが栄養療法。なにせ学生の頃はノータッチですからね。研修医になってからも積極的に勉強はしないし。更に、ちょっと興味が湧いて勉強しだすと、この栄養療法はまだまだ完成されたものではない!というのが嫌というくらい分かります。ガイドラインを見てもエビデンスレベルの低いものばかりが目立ちます。フロンティアなところが多いのが栄養の難しい所でもあり、面白い所でもあるのかしらと思います。だから自分がこれから言うことも、数年後にはひっくり返ってるかもしれません。

 特に最近は侵襲の大きな状況にあるCritically ill patientでは、現在の栄養療法では過剰栄養(overfeeding)になってしまって逆に良くないのでは???と言われています。彼らは体内で異化が起こり、それによりエネルギー供給がなされます。今まではその異化によるエネルギーを考慮せずにこちらが投与する栄養で必要カロリーをすべて賄うものと考えていました。また、そうすることで異化も最小限に喰い止められるとされていたんです。

 しかし残念ながら現実は甘くなく、いくら栄養療法を積極的に行なっても異化は抑制できず、かえって投与された栄養、特に糖が高血糖や栄養ストレスを与えてしまっているということが分かってきています。

 栄養療法が本当に”療法”になるためには、もう少し時間がかかるかも知れませんね。。。

 今回のレクチャーでは病態別までは入りません。あくまでも総論にさらっと触れて、後は急性期の患者さんの栄養療法について少しお話ししましょう。ただ、栄養療法の総論は誰が書いても大体似たような内容になってしまいますね。差別化を図るわけではありませんが、ここ数年注目されている急性期を重視して行こうと思います。本と違い、すぐ記事に出来るのがブログの利点かと。

 各項目について記事にしていきます(ここではリンクを貼っていきます)。
・栄養状態の評価→コチラ
・栄養投与経路の決定→コチラ
・必要エネルギー量の推定→コチラ
・栄養投与量の配分→コチラ
・栄養剤の分類概観→コチラ
・重症患者さんに対する栄養療法→コチラ
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2012
03.29

ハロペリドール予防投与???

 ICUでのせん妄でコンサルトを受けることが度々あります。状況が状況なだけに内服が出来ない患者さんが多いです。。。液剤のリスペリドン(リスパダール®内用液)やバルプロ酸のシロップ(デパケン®シロップ)が使えればそれを使っていますが、無理であればハロペリドール(セレネース®/リントン®)の注射薬の出番。EPSやQT延長に注意して使うことは言うまでもありません。点滴で落とすのと内服とではEPSの出現率が異なる印象がありますが(総量が同じでも点滴の方が出にくい?)、それがきちんと示されているかは不明。

 そんなこんなでICUのせん妄は困りもの。基礎疾患のコントロールが何よりも大事で、後は原因や増悪となりうる薬剤を出来るだけ止めてもらいます。Critical Care Medicineで、ハロペリドールを予防的に入れることで高齢者のせん妄が予防できないか?というアグレッシブな論文がありました。

Wang, Wei, et al.
Haloperidol prophylaxis decreases delirium incidence in elderly patients after noncardiac surgery: A randomized controlled trial
Crit Care Med. 2012 Mar;40(3):731-9.

 457人の患者数。65歳以上で非心臓外科の手術後にICUに入室した患者さんを対象としてます。ハロペリドールを0.5mg静注して、その後は0.1mg/hrで12時間持続投与する群(n = 229)もしくはプラセボを投与する群(n = 228)に分けて開始。プライマリアウトカムは術後初期7日間でのせん妄発症。セカンダリアウトカムはせん妄発症の時期、せん妄を起こしていない日数、ICU在室日数、全死因28日死亡率、副反応。せん妄はICUにおいてthe confusion assessment method(いわゆるCAMってやつです)を用いて評価。このCAMは非常に優れた質問法なので、目を通しておくことをお勧めします。
 
 さて結果ですが、術後初期7日間でのせん妄は、ハロペリドール群で15.3%、プラセボ群で23.2%でした(p=0.031)。せん妄発症までの平均期間とせん妄を起こさない日数は有意にハロペリドール群で長く、そのためICU在室日数はハロペリドール群で有意に短かったとしています。全死因による28日死亡率には差が無かったとのこと。ハロペリドールによる副反応は見られなかったようです。

 この論文の結論としては、非心臓外科手術後の高齢患者さんがICUに入る時、短い間だけ低用量のハロペリドールを流すのは有意に術後せん妄の発症を減らす、というもの。

 全員にもう入れちゃおうという発想が「攻め」を感じます。総量は1.7mgですよね、ハロペリドールが。確かに量は少なめ。ただこれを流したからと言って全身コントロールを疎かにして言い訳ではないので、するにしてもやっぱり補佐としてという考え方がいちばん(この論文でも35人は発症してる訳ですから)。

 この論文だけで「じゃあ持続で行こうぜ!」とはなりにくいかもしれませんが、こういう試みは面白いものだと思います。
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2012
03.25

感染症の本

Category: ★本のお話
 感染症診療はどの科に行っても必要になってきます。研修医でローテートするどの先々でもついて回るのが感染症。救急外来でも感染症。

 そして重要ポイントは、感染症の診方を知っているということは、感染症以外の発熱疾患の発見にもつながります。熱が出る疾患はたくさんあります。その中で感染症と非感染症とを見分けられる能力、これが大事。そのためにも感染症はしっかり勉強せねばならないのです。”風邪にフロモックス®”なんて処方を見ると「あぁ、残念な人だな…」と思ってしまいます。

 かつ、感染症の診療をしっかり行うには、きちんとした筋道、ロジックが必要になります。そして、そのロジックは鑑別一般にも還元可能。優れた感染症医は優れた内科医でもあるんです。

 最近は研修医向けでも感染症の優れた本が、良い意味で乱発されています。どれを読もうか迷ってしまいますが、どの本も総じて良質。その中で、自分が読んで良いなと思ったものを紹介したいと思います。たくさん挙げろと言われたらいくらでも挙げられますが、ある程度絞って。。。

 まずは、机の上にこれ。紹介するまでもないですが、『レジデントのための感染症診療マニュアル』です。”レジデントのための”と銘打ってはいますが、”医師のための”というレベル。通読するものではありませんが、困ったときには必ず紐解くもので、そして買ったら総論部分は早めに読んでおきましょう。青木先生は日本感染症診療の礎を築いてくれた方です。
 そして2015年3月23日には何と第3版が出ますよ! 深く考えずに第三世代セフェムとか経口カルバペネムとかを出すような医者に読んでほしいんですが、そういう人たちはこの本を開くようなことすらしないんでしょう…。残念。

レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版
(2015/03/23)
青木 眞

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 次は、大曲先生の『感染症診療のロジック』です。これはイチオシ!青木先生の総論部分をより詳細に説明してくれて、プラスして代表的な症候へのアプローチも付いています。このロジックは早めに頭に叩きこんでおきましょう。必読本!何度も何度も読むべし(薄いですし)。

感染症診療のロジック感染症診療のロジック
(2010/04/01)
大曲 貴夫

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 がちっと総論を学んだら、微生物の臨床的な知識を入れるために大野博司先生の『感染症入門レクチャーノーツ』をパラパラと。GPCルールやGNBルールなど、細菌がどういう振る舞いをするのかということを教えてくれます。細菌の性格を知っておくことは、各感染症原因菌のアタリを付けるために大事な知識です。これは学生さんにもオススメ。大学で学ぶ微生物学は重要ですが臨床に直結しているわけではないので、それと臨床との橋渡しとしての役目を担ってくれます。

感染症入門レクチャーノーツ感染症入門レクチャーノーツ
(2006/09)
大野 博司

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 次に抗菌薬についても学びましょう。『レクチャーノーツ』でもひと通り説明はされてますが、抗菌薬なら矢野晴美先生の『絶対わかる抗菌薬はじめの一歩』が研修医には分かりやすい。岩田健太郎先生の『抗菌薬の考え方・使い方』と見比べて自分にフィットした方を選んでみましょう。岩田先生の本は2012年3月末に改訂されて第3版となっています。自分は第2版までしか読んでいないので、第3版の評価はできません。。。矢野先生の本と岩田先生の本とでは細かい違いがあり、第2版までで言うと、例えば第4世代のキノロン(モキシフロキサシン)は嫌気性菌のカバーをしているんですが、矢野先生はそのまま「カバーしてますよ」と。岩田先生は「カバーしてるけど嫌気性菌をこれで叩きに行くのは少し自信がない」と書いてます(うろ覚えですが…)。第3版ではどういう記載になるのか分かりませんが、岩田先生はエビデンスの他に経験的な部分も取り入れて記載しています。あとは、矢野先生はけっこうアメリカ色が強い。岩田先生は日本の実情を加味している印象があります。

絶対わかる抗菌薬はじめの一歩―一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター絶対わかる抗菌薬はじめの一歩―一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター
(2010/03)
矢野 晴美

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抗菌薬の考え方、使い方Ver.3抗菌薬の考え方、使い方Ver.3
(2012/03/30)
岩田 健太郎、宮入 烈 他

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 矢野先生は他にも『感染症まるごとこの一冊』という本を出していて、抗菌薬以外にも細菌の知識や検体やワクチンのことなどに触れています。こっちでも良いですよ。

 また、矢野邦夫先生の書かれた『ねころんで読める抗菌薬』『もっとねころんで読める抗菌薬』という本が2014-2015年にかけて出まして、現時点では抗菌薬の入門としてこの2冊がとても優れていると思います。

 総論と各論を以上で学んだら、あとはマニュアル。『サンフォード』は持っておくとして、他に必要なのが大曲先生編集の『がん患者の感染症診療マニュアル』です。”がん患者の”と枕詞が付いていますが、一般感染症にも応用可能。そして、患者背景についてはマニュアル以上のものがあるので、これは持っていて損はないと思います(2012年10月に第2版が出ましたね)。

がん患者の感染症診療マニュアルがん患者の感染症診療マニュアル
(2012/10)
倉井華子、冲中敬二 他

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 この他にマニュアル本としてはちょろっと前に紹介した亀田総合病院の『総合診療・感染症科マニュアル(亀マニュ)』や藤本先生の『感染症レジデントマニュアル』も良いでしょう。大曲先生がWeb上で公開していた”手引き”が『新訂版 感染症診療の手引き』として出版されましたし、マニュアル系は充実してきましたね。

 外来を行うのであれば、岩田先生の”『感染症外来の帰還』や大曲先生編集の『見逃したら怖い外来で診る感染症』は読んでおいて損なし。救急外来の感染症診療に強くなれます。ただ、後者では膀胱炎にアモキシシリン投与となっていますが、これは個人的にですがオススメをしません(耐性が多すぎて…)。かと言ってキノロンは使いたくないですしね。ST合剤かホスホマイシンを自分は使っています(これが良いかは別問題ですが…)。

感染症外来の帰還感染症外来の帰還
(2010/04/01)
岩田 健太郎、豊浦 麻記子 他

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見逃したら怖い外来で診る感染症見逃したら怖い外来で診る感染症
(2010/04)
大曲 貴夫

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 まずはこんなところでしょうか。グラム染色を重視した症例集としては『感染症ケースファイル』が面白い。喜舎場先生が監修しています。

感染症ケースファイル―ここまで活かせるグラム染色・血液培養感染症ケースファイル―ここまで活かせるグラム染色・血液培養
(2011/04/01)
谷口 智宏

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 アトラス的なものとしては『ひと目でわかる微生物検査アトラス』と『Direct smear Atlas』と『感染症診断に役立つグラム染色』が良いと思います。

第2版 感染症診断に役立つグラム染色―実践永田邦昭のグラム染色カラーアトラス第2版 感染症診断に役立つグラム染色―実践永田邦昭のグラム染色カラーアトラス
(2014/10/22)
永田邦昭

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 学生さんは大野先生の『レクチャーノーツ』以外にも、『感染症診療スタンダードマニュアル』や『抗菌薬マスター戦略-非問題解決型アプローチ-』で勉強するのもアリです。両者とも訳本で、前者は”マニュアル”と訳されていますが、全くそういうことはありません。英語は難しくないので、原著(Infectious Diseases: A Clinical Short Course)で学んでも良いですよ。自分は国試が終わってから研修に入るまでの間で原著を読みました。後者は訳者である岩田先生の注釈が適度に付いているので、訳の方が良いかなと思います。いずれにしても、国試受かることが最優先というのは言うまでもないですが、ちょっとした臨床勉強にオススメですし、国試と研修開始との空白期間に2冊勉強してしまうのもGoodです。

 結局いつものように紹介する本が多くなってしまいましたが、実際に手にとって自分にあったものを買って勉強しましょう。総論と各論とマニュアル本。そのすべてが大事です。そしてしつこいですが、感染症診療は全ての科で必要。すべての医者が非専門医のスタンダードレベルを求められると考えても良いでしょう。血培取らないとか取っても1セットだけとか、はたまたカルバペネム(しかも投与量と投与回数が少ない)で果てしなくゴリ押しするとか。。。そういうことをしないためにも、研修医の時からしっかりと土台を学ぶ必要があります。感染症をロジックに則ってうんうん唸って考えていると、内科診療そのものの考え方もレベルアップしますから、いいことずくめです。ただ、勉強すればするほど抗菌薬どれ使おうか、、、と悩みが深くなりますが。。。「勉強したはずなのに分からなくなる」というのは感染症の勉強において正しい経過です。これを我慢して勉強を続ければ状態も改善してきますよ。



追記:矢野邦夫先生と矢野晴美先生について、記事の中に間違いがあり修正いたしました。ご指摘くださったかた、ありがとうございます(2015年3月26日)。
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2012
03.22

キャラクターシリーズ:エビとシナモン

Category: ★精神科生活
 以前に製薬会社のキャラクターのお話をしましたが、今回はその時にちらっと言ったシナモロールについて。

 大塚製薬は精神科領域ではアリピプラゾール(エビリファイ®)という名前のお薬を作ったことで有名です。このエビリファイはコテコテのEPS(錐体外路症状)が出にくく、鎮静もかからず体重や代謝にも影響しづらいと言われるので長期的な使用も他の薬剤に比べて安全性が高いのでは?と言われます。比較的出やすい副作用は不眠と吐き気とアカシジア(静座不能)というEPSです。不眠という副作用のため、服用は基本的に朝食後。このアカシジアは身体がそわそわして座ってられなくなってうろうろしてしまう状態。これを症状の増悪と勘違いしてしまうことがあると言われます。「身体とこころ、どっちの方がそわそわ強いですか?」と自分は聞くようにしていて、どちらかと言うとアカシジアは身体の方ががそわそわ、症状増悪はこころの方がそわそわ。

 アカシジアを止めるには、プロメタジン(ピレチア®)やプロプラノロール(インデラル®)やミルタザピン(リフレックス®/レメロン®)が有効。抗コリン薬のビペリデン(アキネトン®)よりも良いですよ。ちなみに、リチウム(リーマス®)の副作用である振戦に対しても、インデラルが有効。アキネトン使っても大した効果ありません。

 吐き気は、エビリファイの強力なD2受容体結合能によりメトクロプラミド(プリンペラン®)がなかなか効きづらいです。そこで、使用するのが少量のオランザピン(ジプレキサ®)。セロトニンの方をがっちり抑えることで、制吐作用を持ちます。オランザピンは化学療法による嘔気嘔吐にも有効。

 統合失調症では、エビリファイは合う合わないという患者さんがいます。とある先生は「健康そうな肌なら合う、白くて日光に当たっていないような肌なら合わない」と言っていたような。

 そんなこんなでエビリファイは統合失調症と双極性障害の躁症状に適応を持っています。少量(日本人なら3-6mg)であれば、うつ病治療にaugmentation(付加療法・増強療法)として良好な成績を残しています。2012年3月段階ではうつ病に対してまだ適応はありませんが、いずれ取れると思います。双極性障害のうつ症状には治験が失敗して効果が無いと言うことになっていますが、少量だと結果は違ったかも知れませんね。神田橋先生は、フラッシュバック(神田橋先生の言うフラッシュバックです)にもエビリファイ3-6mgは有効と仰ってます。自閉症を代表とする発達障害の感情安定にも少量使用は効果的(FDAの承認も取ってますし)ですが、強迫が少し強くなる患者さんもいます。

 そんなエビリファイは新たにOD錠(水なしで飲める口腔内崩壊錠)を発売。24mg錠が出ますが、明らかに躁症状を意識していますね。細粒と錠剤、液剤、OD錠。ラインナップが揃って参りました。

これが液剤(6mL)。液剤の方が錠剤よりもスッとしてやや鎮静的に働いてくれます(経験的に)。

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 そこでシナモロール。キティちゃんで有名なサンリオのキャラクターで、お茶犬に対抗する目的で作られたそうです。エビリファイのシンボルキャラクターになっていまして、ボールペン、うちわ、プラスチックカップ、ティッシュケース、付箋、ぬいぐるみなどなど。

 自分の持っているものをご紹介。

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 こんな感じ。シナモンちゃんのぬいぐるみが小さめで可愛い。

 製薬会社も色々とキャラクターを考えたり、既存のものと手を組んだり。大変なんですね。でもキャラクターが可愛ければウケは良い。




 どうでも良いことですが、この前まで「シナモロール」を「シナモンロール」だと思ってました。。。


続き→コチラ
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2012
03.20

総論、各論、マニュアル本。

Category: ★本のお話
 研修医の使う本には大まかに以下の様に分けられます。

・総論~いわゆる診断学や、各科の基礎的な解剖生理学的事項。
・各論~各種疾患/病態の診断・治療的知識。これで鑑別疾患の違いを細かく意識できます。
・マニュアル~とりあえず実践でどう動くか。表層をさらっていく感じ。

 研修医が研修医としてきちんと働くには、この3つのバランスが必要です。

 総論は大事。自分が最も重視しているところです。これがあるから各論とマニュアルも生きてくる、がっしりとした土台と思ってもらえると良いかと思います。でも、これだけ学んでも、それぞれの疾患についてどう診断と治療をしたら良いのか分かりません。

 各論があって初めて、自分の向き合っている病態や疾患への対処法がカスタマイズされます。しかし、総論がないと1本の共通するスジみたいなものが見えてこないので、知識がバラバラになりがち。

 マニュアルは大変便利で、臨床では最も使うかと思います。マニュアルを否定する医者はものすごく頭が良いんでしょうけど、それを他の人に求めるのは酷かも知れません。ただし、マニュアルはスポット的な知識。ちょっと捻られると対応できない部分もあります。前提として総論と各論の知識が必要になるんでしょうね。

 イメージとしては、総論が土台としてしっかり。次に各論で該当する病態や疾患について枠組みを作っていきます。最後にマニュアルを置いて臨床の閾値に到達。土台をしっかり作らずにグズグズな地盤の上に各論とマニュアルを組み立てても、ちょっと揺れたらパタッと倒れてしまいます。

無題

 なので、勉強する時もそれぞれをバランス良く配合しましょう。

 総論としての診断学の本は少なめで、読んだからといってすぐ実力アップにならないので敬遠されがち。でも大事ですよ。

 ”誰も教えてくれなかった診断学”が研修医に親切な作りで読みやすいです。難しめですが読んで納得なのは”Learning Clinical Reasoning”でしょうか(岩田先生訳で”クリニカル・リーズニング・ラーニング”として出ましたが、訳でも難しいです)。

誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか
(2008/04/01)
野口 善令、福原 俊一 他

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Learning Clinical ReasoningLearning Clinical Reasoning
(2009/09/11)
Jerome P. Kassirer、John B. Wong 他

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 問診技術としてはTierney先生監修の”The Patient History(訳:聞く技術)”、診察含めるならMcGee先生の”Evidence Based Physical Diagnosis(訳:マクギーの身体診断学)”やJAMAの”Rational Clinical Examination(訳:JAMA版 論理的診察の技術)”など。尤度比含めて診断への道筋を練習するなら”考える技術(原著:Symptom To Diagnosis)”が会心の出来。

The Patient History: Evidence-Based Approach (Lange Medical Books)The Patient History: Evidence-Based Approach (Lange Medical Books)
(2004/12/16)
Lawrence Tierney、Mark Henderson 他

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Evidence-Based Physical Diagnosis: Expert Consult - Online and Print, 3eEvidence-Based Physical Diagnosis: Expert Consult - Online and Print, 3e
(2012/04/02)
Steven McGee

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The Rational Clinical Examination: Evidence-Based Clinical Diagnosis (Jama & Archives Journals)The Rational Clinical Examination: Evidence-Based Clinical Diagnosis (Jama & Archives Journals)
(2008/08/25)
David Simel、Drummond Rennie 他

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考える技術 臨床的思考を分析する 第2版考える技術 臨床的思考を分析する 第2版
(2011/06/23)
Scott D. C. Stern、Adam S. Cifu 他

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 ”The Patient History”は原著の方が良いかなと思います。”考える技術”に関しては、原著よりも訳の方が丁寧でお勧め。あと”Evidence Based Physical Diagnosis”は原著の第3版が2012年4月に出るので、それを待って買うのが良いでしょう(英語難しくないので大丈夫です)。

 診断学はこれくらいで勉強して、自分なりに解釈して頭に根付かせましょう。各科の総論というのは、多くはどのテキストにも最初の方に書かれてある事項。腎臓内科であれば、糸球体や尿細管や電解質バランスなどなどなど、疾患を知る上で重要な一般解剖生理学的知識。病態別になる前の部分ですね。

 各論とマニュアルの例を腎臓内科で出してみましょう。CKDならちょっと古いですがこの本が硬派で論理的。

保存期腎不全の診かた -慢性腎臓病(CKD)のマネジメント保存期腎不全の診かた -慢性腎臓病(CKD)のマネジメント
(2006/06)
柴垣 有吾

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 電解質だと、和書の中で最も優れているのは”より理解を深める!体液電解質異常と輸液”(入門用ではないですが)。分かりやすくて臨床を意識しているのは”酸塩基平衡、水・電解質が好きになる”です。

より理解を深める!体液電解質異常と輸液 3版より理解を深める!体液電解質異常と輸液 3版
(2007/04)
柴垣 有吾

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酸塩基平衡、水・電解質が好きになる―簡単なルールと演習問題で輸液をマスター酸塩基平衡、水・電解質が好きになる―簡単なルールと演習問題で輸液をマスター
(2007/03)
今井 裕一

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 こういうので勉強して、マニュアルを持ちましょう。
腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第6版腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第6版
(2012/06/01)
今井 圓裕

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レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版
(2012/01/13)
深川 雅史

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 こんな感じ。総論・各論・マニュアルを積み重ねて勉強するというのが必要だと思います。特に将来専門とする科の研修であれば、マニュアルだけだと物寂しい。

 総論は一度勉強して、少し寝かせるのがポイント。各論やマニュアルで日々の診療を行って、ふとした時にもう一回読み直すと「あ、なるほどな」と新たな理解が生まれます。総論は全科共通の知識。各論とマニュアルに比べて軽視されがちで、もう研修をある程度済ませた先生は「いまさらなー」と思うかも知れませんが、総論の読み直し・学び直しは臨床能力の根幹を作ってくれるものと思います。是非勉強してみてください。
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2012
03.16

研修医のための心電図・循環器治療薬のテキスト

Category: ★本のお話
 循環器用のお薬は、どの科に行っても使うと思います。代表としては高血圧。これくらいは全科の医師が治療出来なければ行けないと考えています。せっかくスーパーローテート制なんですから、糖尿病には及び腰になっても、高血圧や脂質異常症はきちんとした治療を行いたいですね。

 他に、救急外来に目を向けるとやはり循環系薬剤は知っておかねば行けません。どこから専門医に任せるかというのは難しいですが、そして無理は禁物ではありますが、血行動態の安定している不整脈への薬剤の知識くらいは欲しい。これは上級医も研修医も同じ。

 そして心電図。こればかりは読めなければ医師として成り立たないと言っても過言ではないでしょう。自分のいる精神科という、身体からは最も離れていて何やってるか良く分からないと思われている科でも、心電図を取ります。そして、正しい解釈も必要です。

 循環器薬剤と心電図。この知識は研修医のうちに身につけておくべきもの。そのための本を紹介。前回は循環器内科ローテート時のマニュアルを紹介しましたが(”循環器内科ゴールデンハンドブック”)、今回はきちんと勉強するための本。

 まずは心電図。これは、学生時代に各波の成り立ちを知っているものとして、実際の読み方に関する本を。もしまだ機序とかが分からん、と言う人は、”図解心電図テキスト”などで勉強しましょう。

図解心電図テキスト―Dr.Dubin式はやわかり心電図読解メソッド図解心電図テキスト―Dr.Dubin式はやわかり心電図読解メソッド
(2007/01)
デイル デュービン

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 心電図のメカニズムは知っているけど、実際読むことになったらナカナカ上手く行かない、、、自信がない、、、という研修医の先生。是非この本を。

3秒で心電図を読む本3秒で心電図を読む本
(2010/03/25)
山下 武志

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 ”3秒で心電図を読む本”です!これは素晴らしいとしか言いようがありません。実際に3秒で読めなくても良いですが、実際の臨床でどの点に着目して読めばいいか、ということが書かれています。洋書にもこんな良い本ありません。

 更にコチラ。

あなたが心電図を読めない本当の理由(わけ)あなたが心電図を読めない本当の理由(わけ)
(2008/10)
村川 裕二

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 これも白眉の出来。”続””続々”とありますが、まずは最初のこの本を。これも臨床で割り切った読み方をするための本。この2冊を是非読んで下さい。これで良いのかと肩の荷が降ります。

・心電図は症状と必ず併せて評価すること。
・心電図は心臓の形態を知るには不適。右房拡大とか左室肥大とか、そういうのはエコーの出番。心電図で評価するものではありません。
・心電図の得意分野は不整脈。虚血の大まかな予測にも使えます。裏を返せば、それ以外は苦手。
・心電図は読むと言うより”見る”もの。定性的な評価の意識を持ちましょう。
・ぱっと見て「この心臓元気そうだな」とか「何か前壁あたり元気なさそう」とかが分かると良い。
・電気的には、右室は紙みたいなもの!ぺらぺらなことを意識。

 自分はそう思っています。で、この2冊で読み方(見方)を学んだら、実践。

判読ER心電図: 実際の症例で鍛える Ⅱ 応用編判読ER心電図: 実際の症例で鍛える Ⅱ 応用編
(2011/06/30)
A. マトゥー、W. ブラディ 他

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 基本編と応用編とがあります。基本編はAmazonでNO IMAGEだったので、画像のある応用編を載せました。まずは基本編を使って、実際に”3秒で心電図を読む本”と”あなたが心電図を読めない本当の理由(わけ)”で学んだやり方で試合をしてみましょう。そうやって勉強していくと、ぐんぐん分かってきます。

 特に”3秒で心電図を読む本”は眼からウロコが落ちまくりなので、初期研修医の皆さんは早めに読みましょう。心電図の理解について、肩の荷が降りてくれますよ。

 次に循環器薬剤ですが、何と第2版が出ました。

循環器治療薬ファイル -薬物治療のセンスを身につける- 第2版循環器治療薬ファイル -薬物治療のセンスを身につける- 第2版
(2012/03/15)
村川裕二

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 上手い、の一言。説明が上手すぎます。分からないことを分からないと言えるのは、すごく大事なこと。濁さずに臨床に即して書かれてあります。エビデンスも十分量記載されてますが、何よりも村川先生が臨床で頭を悩ませながら頑張っている姿が眼に浮かんでくるようで。。。素晴らしい出来で唸ってしまいます。

 そして、不整脈ではコチラ。

不整脈治療薬ファイル ―抗不整脈薬治療のセンスを身につける―不整脈治療薬ファイル ―抗不整脈薬治療のセンスを身につける―
(2010/09/01)
村川裕二

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 これも村川先生ですが、割り切って不整脈治療薬を使うにはどうすれば良いか、が書かれてあります。この2冊は、満点を狙うための本ではなく、外さないための本。悪くない選択を実際にするための、非常にプラクティカルな本。内科へ進もうと思っている研修医の皆さんは是非。

 まずはこの2冊。それで外さない治療が出来るようになることが最も大事です。最新のエビデンスを追い求めるのは良いですが、エビデンスは簡単にひっくり返ります。しっかり地に足を付けて、持っている薬剤でどう上手く立ち向かうか、それが重要です。

 ICUでも循環器に作用する薬剤は必須。その観点からは大野先生の”ICU/CCUの薬の考え方、使い方”が秀逸。これはICUを廻る研修医の必読本と言いたいくらい。

ICU/CCUの薬の考え方、使い方ICU/CCUの薬の考え方、使い方
(2011/03)
大野 博司

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 他、循環器の病態を掴む本を以下に列挙します。

不整脈で困ったら不整脈で困ったら
(2009/03/25)
山下武志

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Revolution 心房細動に出会ったらRevolution 心房細動に出会ったら
(2011/03/25)
山下 武志

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循環器病態学ファイル―循環器臨床のセンスを身につける循環器病態学ファイル―循環器臨床のセンスを身につける
(2007/03)
村川 裕二、岩崎 雄樹 他

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 山下先生と村川先生の本ばっかりになってしまいましたが、このお2人が最も研修医や非専門医のことを考えた教科書作りをしてくれている気がします。現在の治療の有用性と限界性の両方をしっかりと教えてくれるんじゃないかな、と考えてます。
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2012
03.15

キャラクターシリーズ:くちばしはドパミン

Category: ★精神科生活
 我々は製薬会社さんから色々とボールペンをもらいます。引き出しの中はペンで溢れかえる始末。医者になってからペン買ったことありません。

 ですが、単なるペンではなく、そこにはしっかりとその会社のロゴとか製品名とかが書かれてあり。

 例えばシオノギさんやイーライリリーさんなら、その名前とサインバルタ®という製品名がペンに書かれています。ペンの他にはファイルとかメモとか付箋とか。そんなのももらえます。

 中にはキャラクターがきちんといまして、ムコスタ®なら『ムコさる』君というピンクの可愛らしいおサルさんがいます。以前にヌイグルミをもらいました。大塚製薬さんはお金があるのか(?)サンリオの『シナモロール』が良く出てきます。自分は結構持ってまして、今度その子がプリントされたものをアップしようと思います。

 他には、ヤンセンファーマがキティちゃん。けどタケダからもらったカレンダーにもキティちゃん出ていたような。一般にも人気が高いキャラは色々と提携しているようですね。

 自分が好きなのは、大日本住友製薬が開発した”ブロナンセリン(ロナセン®)”と言う名前の抗精神病薬のキャラクターである『ロナセンバード』。本名かどうかは定かではありませんが、鳥なので自分は勝手にそう呼んでます(補:MRさんに確認したら”ロナセンバード”で間違いないとのことです)。兄弟がいまして、同じ会社から出ている”ペロスピロン(ルーラン®)”のルーランバード、”ハロペリドール(セレネース®)”のセレネースバード。みんな可愛い。

 そのキャラクターが付いたボールペンがコチラ↓

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 ぐぐっと近づいてみると。。。

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 何とも可愛らしい。それぞれ接写。上からロナセンバード、セレネースバード、ルーランバードです。

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 ロナセンバードに双子がいる件。ちょっと色違いです。

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 他には磁石やファイルもあります。磁石をご紹介↓

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 小物リールももらっちゃいました。可愛いねぇ。

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 自分のではないのが口惜しいですが、印鑑も!!!!

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 結構大きめですよね。欲しいなぁ。。。

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 さて、実はこれ、クチバシとかトサカとかニクスイとか、受容体への結合能を表しているんですよ。クチバシがドパミンのD2受容体、赤茶色のトサカがセロトニンの5-HT2A受容体、ルーランバードにだけ付いている黄土色のトサカは5-HT1A受容体、ルーランバードとセレネースバードにあるニクスイはアドレナリンのα1受容体(たぶん)なんです!自分で気づいた時は世紀の大発見かと思いました。ただ、ルーランバードにだけあるピンクのギザギザトサカは何か分からないんですよね。。。D1受容体とかH1受容体とかでしょうか。。。まとめると下記のよう。

ロナセンなど

 このように、キャラを見るだけでそのお薬の大まかな受容体プロフィールが分かるというのは、大日本住友製薬さんは考えたなと思います。ロナセンバードのくちばしがどーんと大きいのを見ると、ロナセンがいかに5-HT2AよりもD2に強くくっつくか分かりますね。

 ロナセンやルーランは抗精神病薬の中ではライトな感じなので、発達障害など器質的な要素の強い疾患に有効性が高いですね。特にルーランについて、自分は1-4mgという少量を就寝前に使うことが多いです。強迫的な部分や不安の強い患者さんは大分楽になってくれます。オランザピン(ジプレキサ®)は色んな受容体にくっついて”重い”感じがします。純粋な内因性の統合失調症には非常に効果が高くて良いお薬ですが、受容体の過敏な患者さんには少しどっしりとしてしまう。セレネースも重い印象を持たれるかもしれませんが、作用する受容体的にはシンプルな方。少量を使うのであれば、器質的な疾患でも効果はあるように思います。

 で、このつぶらな瞳のロナセンバードちゃんには、何とヌイグルミがあるんです。。。それがこれ↓

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 めっちゃかわええ。。。勤めている病院の外来にたたずんでいたので、静かな当直帯にパシャリと撮りました。この子欲しいんですよね-。

 そして欲しさが日々高まり、ついに先日、医局の近くにいたMRさんに聞いてしまいました。

「すいません、ちょっとお願いが。。。」 と恐る恐る聞いてみます。

『はいっ、何でしょう!?』 バッとメモを取り出すMRさん。

「あ、いえ。そんなメモするようなことじゃないんですけど…」

 で、意を決して。

「恥ずかしいんですけど、ロナセンの鳥のヌイグルミありますよね。アレってもらえますか…?」

『ヌ、ヌイグルミですか!?』 ちょっと呆気に取られるMRさん。ですよねー。

『アレは少し前にお配りしていたので、今在庫があるかどうか。。。』

「あー、そうなんですか。。。そうでしたか。。。」 抑うつ気分です。

『でも当たってみますので!いくつくらいご希望ですか!?』

「あ、1個で良いです。1個で十分ですので。ありがとうございます」

 ということで、頼み込んで参りました。変なお願いしてすいません。

 もらえるかどうかは分かりませんが、とりあえずやるだけのことはやって何かスッキリ。
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2012
03.14

悲哀の表情

 近くのイオンにて。

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 アタックも25周年ですか。アタック25ってやつですね(ちょっと違う)。

 それはそうと、顔文字が気になります。アップ。

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 なぜショボン…?



 こっちじゃね?↓
(`・ω・´)
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2012
03.13

研修医のためのマニュアル本はどれが良い?

Category: ★本のお話
 4月からは研修医生活が始まりますね。臨床現場に出たら医学生だった頃とは視点がかなり異なってきます。そして、登場してくるのがマニュアル本。いくら教科書で勉強しても、膨大な知識を全て詰め込むことは出来ないので、ポケットにマニュアルを忍ばせておくのはお守り的な意味でも重要。どの様に日常診療をこなしていくか。テキパキと、かつ正しい診療をするには、上質なマニュアルは欠かせません。旧ブログでは何度か扱ったことがありますが、ここでも少し紹介してみようと思います。

☆総合診療・感染症
 『総合診療・感染症科マニュアル』が断トツで優れています。いわゆる『亀マニュ』ですが、実に良い本だと思います。内科関連では『Washington Manual』とMGHの『Pocket Medicine』が双璧をなしていますが、この亀マニュは、コンパクトで分かりやすい。頼もしいオーベンの様な存在です。

 亀マニュが出たことで『内科レジデントマニュアル』の影が薄くなった気がします。もともと自分は内科レジデントマニュアル好きじゃないですけど。。。誰かがこの本を「あって困らず、なくても困らず」と評していましたが、まさにそんな感じ(聖路加に悪意はありません)。

 『Washington Manual』(ワシントンマニュアル)は大きくて分厚い(何か年々分厚くなってきてますね…)。どちらかというと自分は『Pocket Medicine』(内科ポケットリファレンス)が好きですが、両者とも日本の実情と異なる部分もどうしてもあります。あとは、マニュアルなので早く分かるためには日本語の方が正直なところ有り難い。どちらも和訳されていますが、ちと読みづらい。自分は学生時代含め、青→赤→緑の三世代を使わせてもらいました(2013年版は紫なんですね)。原著はリング型になっているので、メモした紙に穴を開けて挟むことも可能。『Pocket Medicine』は『Washington Manual』をぎゅーっと凝縮したものと言えば分かりやすいかも。これぞマニュアルのお手本。ただし日本との違いには熟知しておきましょう。『Washington Manual』は確かにすごいのですが、分厚くなりすぎてしまった感があり、ちゃちゃっと動くということと診療の質の両方を良いバランスで兼ね備えたものとして、亀マニュはすばらしいと思います。研修医が終わった先生も、自分の専門以外を診る時はこれを活用できます。マニュアルは厚すぎたらマイナスに働くと思ってます。ある程度の薄さ(コンパクトさ)は維持して貰いたいところ。

総合診療・感染症科マニュアル総合診療・感染症科マニュアル
(2011/08/31)
不明

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 個人的に好きなTarasconシリーズも。胸ポケットに入るのが大きな特徴です。『Tarascon Hospital Medicine Pocketbook』は内科全般に渡って色んな事が書いてあります。フローチャートと様々なスコアリングがあり、読んでいて意外に楽しい。熟読するものではないのですが、寝っ転がりながら「へー、ほー」と読むのもO.K.

Tarascon Hospital Medicine PocketbookTarascon Hospital Medicine Pocketbook
(2009/12/29)
Joseph Esherick

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 感染症のマニュアルと言えば藤本卓司先生の『感染症レジデントマニュアル』。2013年12月24日に、何と9年ぶりに改訂されて第2版になりました! 感染症は亀マニュ以外にもやっぱりこれは読んでおきたい。

 他には、患者背景を詳しく説明してあるマニュアルとしては大曲先生編集の『がん患者の感染症診療マニュアル』が良いです(2012年10月に改訂されました)。感染症をしっかり診たいならこの本は是非。”がん患者さんの”と銘打ってはいますが、感染症一般のマニュアルとしても非常に優れています。後は同じく大曲先生がWeb上で公開している『感染症診療の手引き』がポケットマニュアルになりました(2013年12月に第2版が発売)。これもちゃちゃっと見るには良い。良いのが多くて困っちゃいますね。。。

がん患者の感染症診療マニュアルがん患者の感染症診療マニュアル
(2012/10)
倉井華子、冲中敬二 他

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 後は、お決まりですが『サンフォード』でしょうか。これを絶対視する気はさらさらありませんが、初期治療や腎機能での調整を考えると確かに持っていた方が時間の短縮。これは原著ではなく日本語訳の方が良いと思います。サンフォードから学ぶことは”初期の抗菌薬選択と投与量”です。隅々まで見ると結構「おっ」と思うような記載もありますが、それは他書でも書いてあること。深くて大きなものは期待してませんし、長い文章もありませんから、英語にする必要はありません。日本語でスピーディーにぱぱっと調べるのが一番。製薬会社のMRさんからもらえるので、買わずに待つのがベター。既出の『感染症診療の手引き』はサンフォードに臨床状況をプラスした印象があり、より実践的。

☆救急医学
 救急外来でも前述の亀マニュがかなり役立ちますが、自分の好みから言うと『診察エッセンシャルズ』を推します。これで自分の臨床力が育ったところもありますし、検査以前である問診と診察の技術の大切さを教えてくれるところも推薦ポイント。個人的に思い入れのある本で、初版からのファンです。これで見逃してはいけない疾患をきちんと鑑別しましょう!どっちかって言うと初版の方が好みではありましたが。

診察エッセンシャルズ 新訂版 ー 症状をみる 危険なサインを読む診察エッセンシャルズ 新訂版 ー 症状をみる 危険なサインを読む
(2009/07/27)
酒見英太 、Lawrence M. Tierney、Jr. 他11名 他

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 『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』も唸ってしまうくらいの出来。出色ですね。後述の田中和豊先生の『問題解決型救急初期診療』のフローチャートを使いながら、丁寧に鑑別を挙げてくれています。ホントに素晴らしい。

ジェネラリストのための内科外来マニュアルジェネラリストのための内科外来マニュアル
(2013/02/08)
金城 光代、 他

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 他は、田中和豊先生の『問題解決型救急初期診療第2版』と『問題解決型救急初期検査』の2冊も良いと思います。ただし、前者は抗菌薬の使い方が滅茶苦茶なので、そこは自分でしっかりと勉強。自分が指導医なら怒っているような処方例を出しています。。。後者は検査値の解釈。検査値の本なら他にも良いのがありますが、救急全般が1冊にまとまっているので。

問題解決型救急初期診療 第2版問題解決型救急初期診療 第2版
(2011/10/08)
田中 和豊

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問題解決型救急初期検査問題解決型救急初期検査
(2008/02)
田中 和豊

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 他にはまた登場するTarascon。この表紙の痛々しさが何とも。こんな人運ばれてきたら何とも困ってしまいますね。。。これも様々なスコアリングが掲載されており、覚えきれない部分を補ってくれます。ちょこちょこっと読めるのが良いですよ。2014年に改訂予定。

Tarascon Adult Emergency PocketbookTarascon Adult Emergency Pocketbook
(2008/07/30)
Steven G. Rothrock

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 見逃してはいけない疾患がどんなプレゼンテーションをするのか??困ったときは、そういうのを集めた良書『帰してはいけない外来患者』を読みましょう。マニュアルではないですが。救急外来ではこういう患者さんを上手く掬い上げる必要があります。

帰してはいけない外来患者帰してはいけない外来患者
(2012/02/03)
不明

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 ということで、今自分が「救急外来やれ!」と言われたら、鑑別については『診察エッセンシャルズ』『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』『帰してはいけない外来患者』の3冊で臨むと思います。後は研修医時代に色々まとめたノートを持参、かな?

 手技は何か1冊持っていても損はありません。誰かが買って救急外来に置いておけば良いかも。『ビジュアル救急必須手技ポケットマニュアル』辺りが良いでしょうか。2012年の改訂ですし。

ビジュアル救急必須手技ポケットマニュアル 第2版ビジュアル救急必須手技ポケットマニュアル 第2版
(2012/02)
不明

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 ICUのマニュアルなら『ICU実践ハンドブック』が良いです。羊土社はマニュアル作るの上手いですね。。。ICUの読み物ならMarino先生の『ICU Book』に適うものは存在しませんが(しかし、後述の大野先生の本が2015年12月に改訂されてすごいことになりましたね…)、手速く動くことを重点にするなら実践ハンドブック。

ICU実践ハンドブック―病態ごとの治療・管理の進め方ICU実践ハンドブック―病態ごとの治療・管理の進め方
(2009/08)
清水 敬樹

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 マニュアルではないですが、ICU関連の薬剤をどう使うかなら、大野先生の『ICU/CCUの薬の考え方、使い方』がイチオシ。色んな薬剤について、よくもまあこれだけの理論を駆使しながら説明したなぁ、と尊敬してしまう本。さすが大野先生としか言いようがありません。必ず読みたい本です。ICUのみならず、どの科でも投与してすぐ効果の出る注射薬は頻用するので(利尿薬、抗圧薬、抗凝固薬などなど)、それについて学ぶ際にも有用。。。専門医には内容が簡単すぎるかもしれませんが、研修医にとっては珠玉の1冊(誉めすぎ?)。

ICU/CCUの薬の考え方、使い方ICU/CCUの薬の考え方、使い方
(2011/03)
大野 博司

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☆外傷・熱傷
 これを忘れていました。特に小外科的な外傷・熱傷は非常に多く診ますね。これをクリアするには、以下の2冊をオススメします。

ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tipsドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
(2007/05)
夏井 睦

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ドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tipsドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
(2011/03/15)
夏井 睦

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 湿潤治療の大御所、夏井睦先生の本です。夏井先生のホームページには過激なことも書かれていますが、実臨床で培った湿潤療法の正当性があればこそ、と言えるかもしれません。この2冊で大半の外傷・熱傷はクリアできます。ただ、救急外来での一時的な処置だと経過をフォローできないのが残念ですね。湿潤療法で治していきたいな、と自分では思ってもまた救急外来に来てもらうわけにいかず。皮膚の怪我だと後日皮膚科を受診してもらうことになりますが、コテコテの消毒をされていたり…なんてこともあります。そういえば自分の1つ上の先輩が患者さんの褥創を皮膚科にコンサルトしたら、毎回毎回ゲーベンを創部に埋め込まれて、治らないどころか悪化してしまったというのがありました。業を煮やした先輩が自身で湿潤療法に切り替えて治しちゃった、なんて言う伝説(?)も残っています。その先輩は朝研修医室から出る前に夏井先生のホームページにある症例の治療経過を見て行くという習性があったとのこと。

☆麻酔科
 1冊選べと言われたら『麻酔科研修チェックノート』を推します。自分はそんなに使いませんでしたが。。。他のと比べたら詳しいですし、見やすいですし、みんな持ってるし。お守り的な意味合いでこの1冊。

麻酔科研修チェックノート 改訂第3版―書き込み式で研修到達目標が確実に身につく!麻酔科研修チェックノート 改訂第3版―書き込み式で研修到達目標が確実に身につく!
(2010/03)
讃岐 美智義

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☆腎臓内科
 腎臓内科は絶対的に大事!これは別に1冊持っておきましょう。腎臓を理解することは内科外科問わず人間の循環動態を理解することに繋がります。マニュアルならば『腎臓内科レジデントマニュアル』の右に出るものはありません。研修医が終わっても使える詳しい1冊。これは是非。


腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第6版腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第6版
(2012/06/01)
今井 圓裕

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 他には、マニュアルと銘打っていますが、腎臓内科の理解のためには『レジデントのための腎臓病診療マニュアル第2版』が読み物として実に優れています。これは熟読の価値あり。この本とレジデントマニュアルの2冊があれば、腎臓内科の研修は実りあるものとなってくれると思います。内科全般にも強くなれるので、読んでみて下さい。後は宣伝ですが、初期研修では腎臓内科をきちんと廻ることをオススメします。どの科に行くにしても、循環管理のためには腎臓をゼッタイに意識します。腎臓を知るためには、内科を知るためには、腎臓内科に浸かっておくことが有利に働きます。

レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版
(2012/01/13)
深川 雅史

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☆他科
 一気に”他科”となってしまって申し訳ないのですが、他の科に関しては亀マニュでごり押ししても良いのではないでしょうか。自分がその専門に進むのなら話は別ですが、そうでないのなら新たにマニュアルを買う必要は無いのかもしれません。というか、自分は興味のわかない科を勉強することがあんまりなく…(悪いところです)。買うなら『レジデントマニュアル』シリーズか『ゴールデンハンドブック』シリーズを見比べて、となるでしょうし、実際買ってもあんまり使わない。。。

 ただし、循環器内科に関しては、やる気があってローテートするならこの1冊でしょうか。名大病院循環器内科の先生もオススメしており、自分も読んで確かにローテートには必要十分と思いました。研修医ならまずはこれでしのげるかと(循環器特有の検査についてもポイントが上手く書かれています)。2013年3月に改訂されました(結構厚くなりましたね!)。循環器楽しい!と思ったらより詳細な本を読みましょう。あくまでも循環器を無難にローテして凌いで終わりたいというレジデント向けです。

循環器内科ゴールデンハンドブック循環器内科ゴールデンハンドブック
(2013/03)
半田 俊之介

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☆精神科
 最後に、自分の専門科として申し訳程度にこの科を。。。精神科に関しては、ぶっちゃけて言えばマニュアルなんて必要ないです。DSMのポケット版(mini-Dと言います)はどこかに転がってるでしょうし。研修医は精神科にお金を使うよりも、内科とか救急とかに使った方が良いと思います。実習に来るポリクリ学生さんとか研修医にも「しっかり内科勉強しときぃ。精神科は休養みたいなもんやから」と言ってます。お金が余ってるとか、やる気があるとかなら、横浜市立大学の作った『精神科レジデントマニュアル』が良いかもしれません。無難にまとまっています。

精神科レジデントマニュアル精神科レジデントマニュアル
(2009/06)
不明

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 話の聞き方を中心に勉強したいなと言う方は『精神科面接マニュアル』や『読むだけでコツがつかめる 問診力トレーニング』など。前者は特に良い本だと思いますし、2013年に改訂版が和訳されて、訳注でDSM-5にも触れられています。

精神科面接マニュアル 第3版精神科面接マニュアル 第3版
(2013/10/31)
張 賢徳、 他

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読むだけでコツがつかめる 問診力トレーニング読むだけでコツがつかめる 問診力トレーニング
(2010/05)
アルバート・マイケル

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 救急も考慮すると、精神疾患患者さんの救急対応は知っておきたいところ。精神科の患者さんが救急外来に来たら、どんな主訴であれ「はい、精神科にどうぞー」と思考停止になりがちなので、それを戒める一冊。精神科医は少なくとも持っておく必要はあるでしょう。研修医だったら、誰か1人持って使い回せば十分かと。

精神障害のある救急患者対応マニュアル-必須薬10と治療パターン40精神障害のある救急患者対応マニュアル-必須薬10と治療パターン40
(2007/09)
上條 吉人

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 ホントにちなみにですが、自分がポケットに入れている精神科のマニュアルは、MGHとMcLeanとが協力して作った『Residency Handbook of Psychiatry』です。マニュアルでは恐らくこれが一級品。知りたいことがコンパクトに詰まっていて、使い勝手が良いです。ただ、精神科は急いで調べて何かしなきゃいけないと言うことも少ないため、マニュアルは相性が良くないかもしれません。。。自分の机に戻って本開いて調べる、という時間があるのが精神科。

The Massachusetts General Hospital/McLean Hospital Residency Handbook of PsychiatryThe Massachusetts General Hospital/McLean Hospital Residency Handbook of Psychiatry
(2009/06/03)
Massachusetts General Hospital and McLean Hospital Residents and Faculties

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 なんだか結局精神科の本の紹介が多くなってしまいました。。。自分の科と言うこともあり、ついつい…。


=====
 以上でマニュアルの紹介はお仕舞いですが、実際に必要とするのはマニュアル本ではなく、盤石な理論。各科全体に響き渡る、1本のスジのような総論的知識が必要になってきます。マニュアルで済ますことも出来てしまいますが、それは応急処置としてのパッチを貼るくらいの意味のもので、マニュアルはあくまでもマニュアルです。各論的知識の表層部分と言っても良いかもしれません。しっかりとしたテキストで総論と各論の深い意味合いを勉強する必要があるのは、いくら強調してもし過ぎることはありません。

 また、このブログでは各科(と言っても数は限られてますが)での必要と思われる研修医用のテキストも紹介してますので、良かったら見てやって下さい。研修で大事な感染症とか輸液とかの総論をまとめた『こうすればうまくいく! 臨床研修はじめの一歩』という本もあるので、こちらも良ければ…。

 研修は大変でしょうけど、だからこそ実りあるものになります。特に救急外来というのは研修医が最前線で頑張る場。あなたの対応が患者さんの人生にともすると深く関わっていくことにもなります。そのためには、研修医は医者であるということを忘れずにいましょう。そして、患者さんの人生を支えることが出来るように、しっかりと学んでいきましょう。その姿勢を忘れなければ、研修はどこの病院で行なっても素晴らしいものになるでしょう。
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2012
03.11

ベンゾジアゼピンについて

 抗不安薬や睡眠薬として頻用されているベンゾジアゼピン。効果発現が速く使い勝手が非常に良いのですが、依存を形成してしまうことは覚えておきましょう。安易な処方と濫用は問題だと思います。研修医の先生向けに少しまとめたので、ご覧ください。

c.f. ベンゾを減量中止したい、という患者さんはこちらの記事の方が良いかと思います(→コチラ



 ベンゾジアゼピンはそれ用の受容体にくっ付いて、お隣のGABA-A受容体を活性化します。そしてCl-イオンの細胞内流入をすばやく増やし、抑制性の効果を産みます。それにより主に以下の4つの作用を示します。

・抗けいれん作用
・催眠鎮静作用
・抗不安作用
・筋弛緩作用

 あまたあるベンゾはそれぞれ4つの作用のどれが強いかが微妙に異なりますが、臨床的に期待する作用は抗不安作用催眠鎮静作用の2つではないでしょうか。そして使用する際に覚えておくべきものは半減期と筋弛緩作用。半減期が短いものはやめづらいと言われ、筋弛緩作用が強いと“転倒”が非常に怖いところ。また、奇異反応というものもあります。これは大脳皮質により抑制されている情動機構の抑制が解除され、不安や興奮を産んでしまうことがあるというもの。これに関してはお酒と同じだと思ってみると良いかもしれません。パーソナリティが未熟でコンテイナーとしてのこころが悲哀を能動的に排出してしまうような水準の患者さんでは、特にこの奇異反応が起きやすいと言われます。

 抗不安として用いるのはエチゾラム(デパス®)、ロラゼパム(ワイパックス®)、アルプラゾラム(ソラナックス®/コンスタン®)、ブロマゼパム(レキソタン®)、ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)、クロナゼパム(リボトリール®/ランドセン®)、ロフラゼパム(メイラックス®)、クロキサゾラム(セパゾン®)などなど。図で見てみましょう。

スライド1

 催眠鎮静として用いるのはゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)、トリアゾラム(ハルシオン®)、ブロチゾラム(レンドルミン®)、リルマザホン(リスミー®)、ロルメタゼパム(エバミール®/ロラメット®)、ニトラゼパム(ベンザリン®/ネルボン®)、エスタゾラム(ユーロジン®)、フルニトラゼパム(ロヒプノール®/サイレース®)、クアゼパム(ドラール®)などなど、これもたくさん種類がありますね。半減期でこのように分けられます。

スライド2

 マイスリーとアモバンは正確に言うと非ベンゾジアゼピン(Z系)で催眠鎮静作用以外をほとんど持たないのですが(注意参照!)、メカニズムは似たようなものなので一緒にしました。ドラールも主な作用は催眠鎮静のみ。催眠鎮静系のベンゾの中ではロヒプノールが海外では麻薬扱いになっているところもあり、日本からの持ち込み禁止、もしくは英文での処方箋が必要となることもあるのでご注意を。ちなみにセルシンやリボトリールは催眠鎮静として使用されることもあります。

 また、ベンゾは多くが肝代謝ですが、ワイパックスエバミールは珍しく主な代謝が肝臓ではないので、肝障害の患者さんに使うのならこの2つが安全。

 さて、これらのベンゾジアゼピン系薬剤は精神科の専売特許ではありません。精神科以外で処方されるベンゾも非常に多く、何故かデパスやソラナックスは人気が高く、特にデパスは本当に多いですね。レキソタンやセパゾン、ベンザリンなんかは精神科っぽいイメージ。これらを他の科で出されているのを見ると「おっ」と少し意外に思います。

 ベンゾで言うとやっぱり処方の問題が挙がります。この図を見ると分かるように、ベンゾの処方は日本がダントツの1位!ゆゆしき問題です。多いのは内科での処方でして、ぽんぽん出し過ぎではないかと思います。精神科も他人のこと言えませんが。。。

ベンゾ処方

 自分のいる病院に紹介されてくる患者さんの中にもベンゾがてんこ盛りの、いわゆる“ベンゾ漬け”の方々が結構います。デパス、レキソタン、ユーロジン、ロヒプノール、レンドルミンなどなど。1人の患者さんに4-5種類(それ以上も!)のベンゾが入っているのを見ることもあります。こういう患者さんはたいてい抗精神病薬や抗うつ薬も複数入っていて、、、。なので入院したらまずすることは薬剤の減量でして、これだけで症状が良くなっちゃう患者さんもいるんですから、幸か不幸か。。。依存性があるので患者さんがベンゾを強く求めることもあり、医者だけを責められないところはあるかもしれませんが…。離脱は難しいので、長期的に焦らず行うのが大事。自分の上司(教授)はtrazodone置換といって、ベンゾをトラゾドン(レスリン®/デジレル®)に置き換えて退いていくという方法を推奨しています。結構なレスリンの量使いますけどね。他にはclonazepam置換といって、クロナゼパム(リボトリール)に他のベンゾを置換して、そこから退いていく方法も。

 神田橋先生は、患者さんが「不安だ」と言った時の頓用として使うのは抗精神病薬のレボメプロマジン(ヒルナミン®)の5mg錠の1/4-1/2かクエチアピン(セロクエル®)の25mg錠の1/2が良いとおっしゃってますね。

 上司は睡眠を期待して薬剤を使うなら、様々な受容体を考慮に入れるように宣います。睡眠に関与する受容体は、主にベンゾジアゼピン受容体、メラトニン受容体、H1受容体、5-HT2A受容体。ベンゾだけで押しても芸がないので、これらに作用する薬剤をバランス良く。合理的に考えましょう。

 ベンゾ系であれば、マイスリーやドラール(とアモバン)は催眠鎮静以外の作用がほとんどないので、優先的に使用(注意参照!)。寝つけないのであればマイスリーかアモバン(ただしアモバンは起きた時に口の中が苦い)。途中に何度も起きたり早く目が覚めてしまったりするならドラール。ドラールの半減期は長いのですが、ひどい持ち越しはあまり経験しません。何にせよ最悪なのが筋弛緩作用。これと鎮静催眠を併せ持つベンゾならふらふら→転倒となりかねません。しかも高齢者であればそれで骨折→臥床生活というシナリオは避けたい。なので、筋弛緩作用には注意です。

スライド3

 メラトニンを攻めるものはラメルテオン(ロゼレム®)というお薬。ベンゾのような即効性はあんまり期待できませんが、飲んでると何となく眠れてきます。しかも安全なお薬。

 結構キーとなるのはヒスタミン(H1)とセロトニン(5-HT2A)です。それを狙ってトラゾドン(レスリン)、ミルタザピン(リフレックス®/レメロン®)、クエチアピン(セロクエル®)などを使用すると幅が出てきますね。しかもこれらは睡眠の質を良くしてくれます。ちなみに市販薬でドリエル®という睡眠薬がありますが、それはヒスタミン受容体狙いです。

 図にするとこのような感じ。

スライド4
 薬剤治療の方向性をまとめるとこう。

スライド5

 ただ、リフレックスは半減期が20-30時間で、眠前に使った場合でも翌日への持ち越しが生じる欠点があります。セロクエルやレスリンは半減期が6時間ほどなので持ち越しにくいという利点があります。セロクエルを25mgから始めると結構持ち越す患者さんがいるので、図の処方量はちょっと多めかなと思います。自分は最近安全志向で5mgとか6mgとかから始めるようになりました。。。

 睡眠の質の向上で言うと、ベンゾですがリボトリールもその効果があります。筋弛緩作用があるので、少しだけ使用。

 ベンゾは必要最小限にとどめることが必要です。使うときも、患者さんにしっかり説明。悪い薬では決してありませんから、使い方次第では非常に助かるお薬です。しかし、方法を誤ると患者さんのためになりません。奇異反応のところでお酒と同じという例えをしましたが、まさにベンゾは“慢性酔っ払い”状態を作ってしまいます。お薬で症状を悪くしてはならないのです。そして双極性障害では、ベンゾを使うことで再発率が上がるかもしれないということが言われています(Benzodiazepine Use and Risk of Recurrence in Bipolar Disorder: A STEP-BD Report. J Clin Psychiatry 71,2 p194-200,2010)。無駄に出さないようにしましょう。

 不眠(二次的ではないもの)に関して言えば、安易に薬剤というよりは、少し時間がかかりますが生活の改善が何より第一。今は認知行動療法が勧められており、本も何冊か出版されています。医療従事者も一度は目を通しておくべきでしょう。「自分でできる不眠克服ワークブック」というのがお勧めです。


自分でできる「不眠」克服ワークブック :短期睡眠行動療法自習帳自分でできる「不眠」克服ワークブック :短期睡眠行動療法自習帳
(2011/08/10)
渡辺 範雄

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★☆注意☆★
2012年11月22日追加記載

 下記の論文で、マイスリーが何と独立した転倒リスクになるという報告がなされていました!方方で話題になっています。

Zolpidem is independently associated with increased risk of inpatient falls
J Hosp Med Publihed Online 19 Nov 2012

 後向きコホートですが、”マイスリーの処方が発行されてかつ薬剤を受け取った患者さんの転倒発生 率”が”処方が発行されたものの受け取っていない患者さん”に比べて高率ということでした(n = 4962 vs. n = 11358 転倒発生率~3.04% vs 0.71%; P < 0.001)。

 マイスリーと言えば安全安心と思っていのに、あらびっくり。。。でございます。
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2012
03.07

救急外来で使用する検査項目~インフルエンザ迅速診断キット

目次→コチラ

 冬はインフルエンザのシーズンです。症状と身体診察ではなかなか特異的なものがなく、除外も診断も難しいのが実情。有名なJAMAのRational Clinical Examinationを引っ張り出してみましょう(1)。そこでは、陽性尤度比の高い所見はなく、陰性尤度比だと

発熱:LR-0.4
咳嗽:LR-0.42
鼻閉:LR-0.49

という程度。あまり役立ちません。60歳以上の患者に限定すると、発熱と咳嗽と急性発症の3点セットで陽性尤度比5.4、発熱と咳嗽のセットで陽性尤度比5.0となるので、まぁまぁ役立ちます。

 これもインフルエンザ関連では参考文献として良く出される別のシステマティックレビューでは、rigor(たぶん、いつもより症状がひどい・辛いという意味)の陽性尤度比が7.16となっており有用(2)。でもこんなものです。

 一言で言うと、難しい。。。季節(インフルエンザ流行期)と患者さん周囲の状況(曝露歴)で事前確率を決めざるを得ないのが実情でしょうか。Rigorに関連した経験では、救急外来の待合いのソファでたまらずぐたっと横になっていたり、崩れ落ちそうな感じで待っていたり、となっている患者さんを見ると「お、インフルかな」とシーズン中は思っていました(意外と当たる)。

 そんなこんなでとりあえずインフルエンザの検査、となりますが、キットの力はどのくらいあるのか見てみましょう。

 2012年のAnnals of Internal Medicineに掲載されたメタ解析を参考にします(3)。そこでは159の研究を解析しており、それらでは26のrapid influenza diagnostic tests (RIDTs:迅速インフルエンザ検査)が評価され、35%はH1N1パンデミック中に施行されています。これら研究を総合的に解釈すると、感度と特異度、尤度比は以下のようになりました。

感度62.3% (95% CI, 57.9%-66.6%)
特異度98.2% (CI, 97.5%-98.7%)
陽性尤度比34.5 (CI, 23.8-45.2)
陰性尤度比0.38 (CI, 0.34-0.43)

 陽性であればほぼRule inですが、陰性の時は自信を持ってRule outできないという結果。大事なのは、患者の年齢とインフルエンザのタイプによって感度が異なっていること。成人では低感度 (53.9% [CI, 47.9%-59.8%])で小児(<18歳)では少し高感度 (66.6% [CI, 61.6%- 71.7%])となり、インフルエンザAに対して高感度 (64.6% [CI, 59.0%-70.1%)とインフルエンザBに対する低感度 (52.2% [CI, 45.0%-59.3%)となりました。

 不十分なデータながらも、検体の違いでは正確性に差は無かったとしています(ただし、鼻咽頭から採取することが多くのガイドラインで勧められています)。サブグループ解析の結果は以下のようになりました。

Nasopharyngeal aspirate:感度66.6%、特異度97.8%
Nasopharyngeal swab:感度61.6%、特異度99.1%
Nasopharyngeal wash:感度50.7%、特異度98.1%
Nasal swab:感度65.9%、特異度99.2%
Throat swab:感度54.9%、特異度90.0%

 検体を採取する時間は、発症から24-48時間がもっとも検査に適しているとされました。発症初日では感度がだだ下がりなところは周知の通りですね。

スライド1


☆参考文献
(1) Does This Patient Have Influenza? JAMA.2005;293(8):987-997.
(2) A systematic review of the history and physical examination to diagnose influenza. J Am Board Fam Pract. 2004 Jan-Feb;17(1):1-5.
(3) Review: Accuracy of Rapid Influenza Diagnostic Tests: A Meta-analysis. Ann Int Med. February 21, 2012, 156 (4)

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☆インフルエンザの診断に光?

 この項目は検査所見ではないですが、インフルエンザ診断に有用そうなのでここに追加で記載します。

 上述のように、インフルエンザの診断に有用な症状や診察所見は乏しく、なかなか難しい。。。ですが、日本プライマリケア連合学会の英文誌(日本の論文雑誌だけど英語)に掲載された下の論文がちょっと話題になっています。

Posterior Pharyngeal Wall Follicles as Early Diagnostic Marker for Seasonal and Novel Influenza
General Medicine 2011; 12: p.51-60 .

 インフルエンザでは、喉の奥にイクラが張り付いている、というのです。そのイクラとは、咽頭後壁に出現するリンパ濾胞でして、名前がinfluenza follicleと付けられています。

 何とそれは、新型インフルエンザに対する感度100%、特異度97%という、眼を疑うような数字。季節性インフルエンザ(A/H3N2、A/H1N1、B)については2003年から2009年のものをretrospectiveに調べ、感度95.46%、特異度98.42%と、これも素晴らしいですね。

 しかもinfluenza follicleは発症早期から認められる様でして、ほとんどが初診時(発症から7.8±5.3時間)に認められたそうです(新型インフルエンザの初診時にのみ限定すると、感度95.2%、特異度91.3%)。迅速診断キットの初診時感度がこの論文では80%だったそうですから、いかにこの咽頭所見が早期に出るかが分かりますね。

 しかし、リンパ濾胞があれば良いと言う訳でなく、特異的なものと非特異的なものとがあるようです。論文では3タイプ挙げられています(論文中に画像があるので、是非見て下さい)。

1) Definitive influenza follicles
 半球状で、それぞれが孤立しており境界明瞭。直径1-2mmでサイズは殆ど同じ。Yamada/Fukutomiの胃ポリープ分類のII型のような形。濾胞は赤紫(マゼンダ)色でイクラのよう。インフルエンザ感染の初期に見られる。

2) Probable influenza follicles
 濾胞は時に癒合し、細長い感じ。Y/F分類のI型に相当。見た目は半透明で、3日間ほど続く。周囲の咽頭後壁粘膜よりも赤みが強い。濾胞は時に癒合する。これらの濾胞はインフルエンザ感染の中期(発症から数日後)に観察できる。

3) Non-specific follicles
 濾胞はしばしば互いに癒合し、大きくなって多形性を示す。Y/F分類ではII型からI型に変化すると言える。濾胞は境界明瞭で周囲がくびれていて白みがかった赤で、赤紫色から白に変化する。インフルエンザ感染の後期にみられることがあるが、特異的ではない。

 周囲よりも赤くて形が同じようなもので癒合に乏しい、というのがポイントの様です。要は、イクラっぽければインフル。時間が経つと赤みが消えてきて癒合し平坦気味になる、と言えそうです。観察には明るさ控えめLEDの白色光がオススメとのこと。

 気になる点としては、そんなに咽頭所見を上手く見極められるかしら??というのと、ゴールドスタンダードを迅速検査陽性→PCRで確定としているため、迅速検査の偽陰性があるかもしれない点(感度が下がる?)、そして、この論文の対象になった患者さんは多くが若者で高齢者がいなかったため、この所見が高齢者でも出るかどうか、というところでしょうか。後は母集団が少ないと言うのもありますね。

 でもインフルエンザの診察項目で有用なものがない現在、これはかなり期待して良い、というか期待してしまう所見。咽喉を見るのは大切なんですね。改めて教えられました。

 インフルエンザ、と診断する際は、”見逃してはいけない疾患”をRule outする考えを捨てずにいましょう。インフルエンザ流行期は完全に思考が停止してしまいます。何でもインフルエンザに見えてしまいますし、インフルエンザという診断で済ませてしまいたくもなります。

 c,f, 論文から引っ張って来ましたが、典型的なfollicleはこんな感じのものらしいです↓
nodo.jpg

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2012
03.06

鵜呑みにしない

 双極性障害の維持としてはリチウムが長らく使われていましたが、最近はバルプロ酸の処方が増えています。また、単剤で再燃予防できない時は二剤併用とすることもありますが、エビデンスは乏しいです。

 そこで、2010年にBALANCE試験という、二剤併用と単剤とでは、双極性障害I型の再燃予防に違いが出るのかというスタディの結果がLancetに発表されました。

Lithium plus valproate combination therapy versus monotherapy for relapse prevention in bipolar I disorder (BALANCE): a randomised open-label trial
The Lancet, Volume 375, Issue 9712, Pages 385 - 395, 30 January 2010

 2年間のフォローアップ期間中での再発は以下のようになりました。

・併用群で54%
・リチウム単剤群で59%
・バルプロ酸単剤群で69%

 併用群およびリチウム単剤群においてバルプロ酸単剤群より再発率が低く、併用群と炭酸リチウム単剤群の間の再発率の有意差はない、とのこと。

 そーかそーか、やっぱりリチウムは偉大。と考えたくなりますが、この試験、注意が必要です。

・2年という期間
・双極性障害”I型”
・割り付け前に、4-8週間で忍容性を確認した後に本試験を開始

 2年という期間は、少し短め。もう少し長く見てほしいというところ。そして、この試験では患者さんが双極性障害の中でもI型に限られています。II型ではどうなのかは分かりません。

 最も大事なのは忍容性を確認した後に試験を始めたという点。リチウムに耐えられる患者さんしか試験に乗せていないということ。古い試験でかつ母集団が少ないのですが、リチウムとバルプロ酸の躁病相急性期治療の治療中断理由として、薬剤に耐えられないという患者さんはリチウムで11%、バルプロ酸で6%でした。

Efficacy of divalproex vs lithium and placebo in the treatment of mania. The Depakote Mania Study Group.
JAMA. 1994 Mar 23-30;271(12):918-24

 治療中断理由も、リチウムは深刻・重篤なものが多いとされています。

A 12-week, open, randomized trial comparing sodium valproate to lithium in patients with bipolar I disorder suffering from a manic episode.
Int Clin Psychopharmacol. 2008 Sep;23(5):254-62

 これらから考えるに、BALANCE試験は試験の入りのところで、リチウムに耐えられない患者さんを弾いていることが分かります。ここを差し引いて評価すべきでしょう。

 また、自殺については、リチウムとバルプロ酸とでは有意差がないとの結果が2011年に出ています。バルプロ酸にも自殺予防効果があることを示した画期的な論文。これが絶対ではないでしょうが…。

Treatment of suicide attempters with bipolar disorder: a randomized clinical trial comparing lithium and valproate in the prevention of suicidal behavior
Am J Psychiatry 168,10 p1050-6,2011

 ということで、BALANCE試験は試験の入り方に問題のある論文でした。わざわざ忍容性を確かめずに行った方が、より臨床の現場に近い結果になったかと思います。
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2012
03.03

遠赤外線の治療効果

Category: ★精神科生活
 この前、同期のさきっちょ先生と雑談をしていたら、何の連想か、彼がかのようなことを言いました。

「この前ケーズデ○キ行ったら、店員がこのヒーターで芋焼いてたんだよ」

 なんと。ヒーターでお芋を焼くとは。しかも電器屋さんで。

 少し説明を。我々精神科レジデントの控え室は、昔の入院病棟を再利用しています(ちなみに251号室という8人床)。エアコンが付いてはいるものの、冬は寒く末梢が冷えておりました。そこで、我らが親分先生が医局と交渉してヒーターを3台獲得したのであります。さすがレジデント間での児童の権威。そのヒーターと同じものがケ○ズデンキで販売されており、何故かそこで焼き芋を実演していたそうな。それだけ暖まりますよという具体例として出ていたんでしょうね。

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 セラムヒートという、ダイキンが販売しているヒーター(ステマではありませんよ)。結構強力で、この上に缶コーヒーとか置いてたら熱々になります。

 さて、親分先生の活躍で冬の暖を得た我々。そこで冒頭に戻ります。さきっちょ先生曰く

「作ってみない?」



うむ



 こういう実験良いですね。さきっちょ先生は少し前まで抑うつ気分が強く認められていましたが、ここのところ回復。やや軽躁状態。

 早速ネットで調べてみると、結構有名?なようで、実践されている方々がいらっしゃいました。彼ら先人の知恵を借り、さきっちょ先生が東奔西走。100円ショップで金属のカゴを、そして近くのイオンでサツマイモを購入し、残る作業は実践。

 ではまず、カゴを、こんな感じでヒーターに掛けます。

PA0_0114.jpg

 そして、サツマイモを入れて、ヒーターの遠赤外線で焼いていきます。一応、強さは最大の1100Wに。

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 少し経ったら体交して、まんべんなく。控え室に入ってくる同期は皆「良いニオイする」と。焼き芋のニオイは心を平和にしてくれます。そして待つことおよそ1-1.5時間後。。。

PA0_0117.jpg

 良い感じ♪ 串を刺すと、すっと入っていきます。これは完成ですね!

 手に取るとかなり熱いです。カゴも熱くなっているので少し注意しましょう。これを吉富薬品のMRさんからもらった厚手のレクサプロティッシュで包み、割ります。すると・・・

PA0_0115.jpg

 お!めっちゃ良い感じじゃありませんか。そして食べると



んまい



 ホロッとして甘くて美味しい。当日のお昼ご飯となりました。皆で食べて大満足です。

 こんなにきちんと焼けるなんてちょっと感動モノ。となると、今度は次に何を焼くかということに話題が移ります。

 イモつながりでジャガイモとか、後はニオイを気にしなければイカなんてのも焼くと美味しそう、ソーセージも良いかも、などなど。親分先生は、2段のカゴの上段に日本酒、下段にイカを提案。完全に飲み屋です、それ。

 色々と連想が絶えませんでしたが、後日二匹目のどじょうさんを狙いに行くことになりました。

 焼き芋を作るためだけにこのヒーターを買うのはお勧めしませんが、これに限らず強力なヒーターを持っていたら実験するのは良いことだと思います。

 その日の夜は、ひっそりと自分で”うるめ”を焼きました。これまた美味しかった。

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===========================
 続編ではないですが。。。

 他にも色々焼いてみました。

PA0_0123.jpg

 おつまみばっかり!!

 先鋒、蒲焼さん太郎。

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 少し焦がして食べてみました。ニオイは最高。しかし、焼いてみるとぱりぱり感が乏しく、逆に噛み切れない状況に。。。焼き時間の工夫が必要??個人的には、”蒲焼さん太郎は冷凍庫で凍らせて食べる”のがベストです。パキッとパキパキっと食べられて、実に爽快。是非お試しあれ。

 次鋒、かわはぎ。

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 実に、実に味わい深い。表面ぱりっと、中はしっとり。これはオススメです。ただ、焼く前に口に入れやすいサイズに千切るか、もしくはプチかわはぎを買うかにした方が良いです。大きいのを焼いてそのまま食べると、噛みきる前にヤケド。。。

 副将、スルメソーメン。

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 これはヒーターの上に。スルメソーメン知らない人がいたんですが、メジャーですよね…?スルメを素麺のように細く切って、少し味付けしてあるものです。美味しいですよ。この子は焼いて少し経ったらグニャグニャと。

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 変形!イカは熱を通すと曲がるので、その影響。スルメソーメンは曲がってからもしばらく熱を通すことで、少し軟らかくなって食べやすくなりました。美味美味。ちなみに函館人はイカの塩辛をご飯の上に乗せて、お茶とかお湯とかをかけますが、その時も熱によるタンパクの変性のため生きているかのようにぐにゃらぐにゃらとうごめきます。

 大将、あたりめ。

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 焼く前から勝負は分かっていた。。。

 不味くなるはずがない。まんま美味しかったです。まさに居酒屋!

 この後も派生してカントリーマァムとかも焼いたんですが、これまた美味しかった。サクッと、中はトロッと。美味しいだろうなという予想が見事に的中。ま、冒険していないというのもありますが。。。

 魔法のヒーターでございます。寒いから点けて暖まっているのか、それとも焼きたいから点けてるのか分からなくなってきているのはみんな知っててみんな黙ってます。

 蒲焼さん太郎は残念な結果でしたが、それ以外は満足。皆さんは是非、蒲焼さん太郎を冷凍庫に入れて食べてみて下さい。

=====
 まだだ、まだ終わらんよ。

 季節的にも今回がラスト。”鮭とば”と”マシュマロ”です。鮭とばって知らない人が多かったんですが、そんなにメジャーじゃないんでしょうかね…?鮭の燻製と思っていただければ良いかと思います。

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 そのまま食べても実においしい。これを乗せる。

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 ちょっと周りを焦がしていただきます。画像じゃ分からないんですが、脂がうっすらと浮き出て美味。ご飯が欲しくなりますね。。。
 
 ラストがマシュマロ!これは同期が「バーベキューする時とか焼くんだよ」と。へー、初めて知りました。バーベキューってのが本州だなーと実感(地元の北海道では、ジンギスカンです。ラム肉ウマー)。

 同期がご丁寧に竹串に刺して焼いてくれました。

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 溶けないのか…?と心配しましたが、そんな憂いは無用。キレイな焼き目が付きました。

PA0_0124.jpg

同期:「はいどうぞ。熱いから気をつけてね」

自分:「はーい」

 何か子どもに戻った気分。。。

 焼きマシュマロなんて初めてなので恐る恐る食べてみましたが。。。


ウマい!(てーれってれー)

註:往年のケミカル菓子”ねるねるねるね”のCMの魔女風に。



 サクとろじゃないっすか。こんなに美味しいとは露知らず。最後を飾るにふさわしい食材でありました。
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