2011
12.31

年の瀬に分相応

Category: ★精神科生活
 12/31-1/1は、ある病院の日当直です。当直で新年を迎えるのも下っ端の宿命か。。。


 ここの病院のお昼ご飯で、何と年越しそばが出ました。お昼に食べるのは人生初めてだったりします。しかも麺はきちんと自分が来てから茹でてくれます。ちょっと本格的じゃない?

 こんな張り紙。茹でたてを食べることが出来るんです。小さな幸せ。

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 実際のお昼ご飯はこの様な感じ。

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 具は後乗せですがサクサクではありません。でも不思議、乗せるとそれなりに豪華に見えちゃいます。

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 食べてみると、甘口のおつゆが美味しい。麺は茹でたてにもかかわらずコシのないところがチープさを醸し出していて良いですね。駅にある立ち食いそばを彷彿とさせます。

 こういう安っぽいのもまた美味であります。お値段の高い所でおそばの香りを味わうのも1つの贅沢ですが、こんな感じのおそばも実に身近な感じで良いものです。襟を正さずに親しみを込めて。

 というか、年末に身の丈を実感しましたね。。。

 おそばも食べ、どっから新年が来ても準備万端でございます。





 皆様、今年一年ありがとうございました。記事作成段階では、後30分ほどで2012年です。
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2011
12.27

感染症診療 Starter & Booster:第7回~常在菌と市中感染原因菌との関連

目次→コチラ

 これまで”常在菌の大事さ”と”臨床的な視点からの細菌分類”を記事にしてきました。ここで、大野先生のテキスト(感染症入門レクチャーノーツ)を参考にして、代表的な常在菌と市中感染原因菌とを並べます。これまでの基本的なルールを覚えておくと、これらの関連も何となく分かってくるのではないでしょうか。今回は、この関連を知ってもらえると良いなと思います。

 以下の表を見ると、常在菌は

・皮膚:GPC~Group A, Group B StreptococciとStaphylococcus
・鼻咽頭:GPC~D群以外の連鎖球菌(S. pneumoniae含む)とStaphylococcus、GNR~H. influenzaeなど
・腸管:GPC~腸球菌、直腸には Group B Streptococci、GNR~腸内細菌科やE. coliなど


を筆頭とした勢力関係が見られるのが分かるかと思います(大雑把ですけどね)。女性生殖器の常在菌はCandidaや Group B Streptococci、lactobacillusなどがいるのですが、妊娠時や月経周期によって微妙に変わってきます。連鎖球菌のGroup AやGroup B(A群、B群)といった分類の説明はもう少し後するので、今はあまり気にしないでください。



 これら常在菌の雰囲気を掴んだ上で、各臓器の主な感染症15個の原因菌を見てみましょう。バリア破綻と閉塞の2つを考えると、常在と感染の立場が見えてくると思います。

★主な市中感染原因菌
(1)中枢神経-特に細菌性髄膜炎
GPC:Streptococcus pneumoniae
GNC:Neisseria meningitidis
GNR:Haemophilus influenzae など
 鼻咽頭に住む菌の勢いが強いと、髄膜にまで波及します。N. meningitidisは髄膜に感染を起こすのが大好きです。H. influenzaeは鼻咽頭に住んでいるGNRの代表。

(2)副鼻腔炎
GPC:Streptococcus pneumoniae, Staphylococcus aureus
GNR:Haemophilus influenzae
GNC:Moraxella catarrhalis など
 これも大体鼻咽頭に住んでいる菌が感染を起こします。Moraxellaは副鼻腔、中耳、肺に感染を起こすのが得意な菌。

(3)中耳炎・外耳炎
中耳炎
GPC:Streptococcus pneumoniae
GNR:Haemophilus influenzae
GNC:Moraxella catarrhalis など
外耳炎
GPC:Staphylococcus aureus
GNR:Pseudomonas aeruginosa
Fungi:Candida spp., Aspergillus など
 外耳炎は皮膚の感染なので、S. aureusが前面に出ます。鼓膜で仕切られ、その内側の中耳は気道となります。よって、肺や副鼻腔と同じ扱い。

(4)咽頭炎
GPC:Group A Streptococci(GAS:Streptococcus pyogenes
 咽頭炎はGroup A Streptococciがほとんどで、少数は他の鼻咽頭常在菌によります。GASは肺や副鼻腔に感染を起こすのは苦手で、ここを好みます。後は、性行為感染症としてNeisseria gonorrhoeaeも咽頭炎を起こすことがあります。

(5)肺炎
GPC:Streptococcus pneumoniae
GNR:Haemophilus influenzae, Legionella pneumophila
GNC:Moraxella catarrhalis など
その他:Chlamydophila pneumoniae, Mycoplasma pneumoniae など
 鼻咽頭の菌が肺に移って感染を起こします。これまでを見て分かるように、鼻咽頭に常在する菌でもStaphylococcusや肺炎球菌以外の連鎖球菌は副鼻腔・中耳・肺・咽頭へ感染を起こすのを大の苦手としています。GASは咽頭炎を起こすのは得意ですが、これは例外的。彼らがこの範囲の感染原因菌となる場合は、COPDやインフルエンザなど、何らかの足がかりが必要となります。外部から侵入する菌では、LegionellaChlamydophila pneumoniaeなどなど。Legionellaは50歳以降の男性に多く、異様に熱が上がったりNaが下がったり肝酵素が上がったり、何とも不思議な振る舞いをします。

(6)感染性心内膜炎
GPC:Staphylococcus aureus, Viridans streptococci, Enterococci など
 心内膜にはGPCが血流に乗って感染を起こすことが多いです。GNRは少しここが苦手。”発熱+心雑音”では、常にこの疾患を念頭に置きましょう。雰囲気は”悪性腫瘍+膠原病”的でして、症状や検査値に現れます。不明熱の代表格で、関節痛や腰痛があったり、RFが上がったり補体が下がったり。GPCが血液培養ボトルからバンバン検出されたらこの疾患とカテ感染を考慮します。

(7)腸管内感染症
GNR:Vibrio parahaemolyticus, V. cholera, ETEC, Campylobacter jejuni, Salmonella enteritidis, Yersinia enterocolitica, Shigella sonnei, EHEC など
 外部から来るGNRが感染を起こします。細菌性腸炎というやつですね。市中感染と言うより院内感染で見かける偽膜性腸炎は、多くは抗菌薬投与と接触感染とが原因となって病棟で問題になり、Clostridium difficileが原因菌。不明熱の原因にもなります。今はClostridium difficile関連下痢症(CDAD)と言うらしいですね。偽膜性腸炎による下痢は独特な臭いがするので、経験的には病室に入った時の臭いで分かることもあります(確たるエビデンスは無いですが)。この偽膜性腸炎、何とPPI(プロトンポンプインヒビター:オメプラゾールやランソプラゾールなど)がリスク因子になるとFDAが2012年2月に発表しています。具体的には、PPI使用時の、改善しない下痢。この時に偽膜性腸炎を疑いなさい、と助言しています。

(8)腹腔内感染症
GPC:Enterococci
GNR:”Enterobacteriaceae”~E. coli, Proteus, Klebsiella, Enterobacter など
Anaerobes:Bacteroides fragilis など
 多くは腸管に住んでいるGNRと嫌気性菌によるもの。”閉塞”が起点になるんでしたね。ただし腸球菌がどの位腹腔内感染に関与しているかは謎らしいです。

(9)尿路感染症・腎盂腎炎
GPC:Enterococci, Staphylococcus saprophyticus
GNR:”Enterobacteriaceae”~E. coli, Proteus, Klebsiella など
 これも腸管にいるGNRが”閉塞により”感染します。嫌気性菌の出番は少ないですが。性的にactiveな女性の尿路感染において、グラム染色でGPCが出たら腸球菌ではなくてStaphylococcus saprophyticusです。高齢者なら腸球菌を疑いましょう。糖尿病患者では重篤な腎盂腎炎でも平気な顔しているので、見た目に騙されないように。

(10)骨盤内炎症性疾患(PID)
GPC:Group B Streptococci(GBS:Streptococcus agalactiae
GPR:Gardnerella vaginalis
GNC:Neisseria gonorrheae
GNR:”Enterobacteriaceae”~E. coli, Proteus, Klebsiella など
Anaerobes:Peptostreptococcus, Bacteroides fragilis
その他:Chlamydia trachomatis など
 同じく腸管にいるGNRと嫌気性菌が”閉塞”により感染します。Streptococcus agalactiae は消化管や女性の膣内に常在する菌。STDを起こすNeisseria gonorrhoeaeChlamydia trachomatisも感染に参加します。

(11)前立腺炎
GPC:Enterococci
GNR:”Enterobacteriaceae”~E. coli, Proteus, Klebsiella など
STDとしてなら
GNC:Neisseria gonorrheae
その他:Chlamydia trachomatis
 同じく腸管にいるGNRと嫌気性菌が”閉塞”により感染します。STDを起こすNeisseira gonorrhoeaeChlamydia trachomatisも参加します。この疾患を疑ったら、躊躇せず直腸診で前立腺を触れて熱感と圧痛を確認です。

(12)肛門周囲膿瘍
GPC:Enterococci
GNR:”Enterobacteriaceae”~E. coli, Proteus, Klebsiella, Enterobacter など
Anaerobes:Bacteroides fragilis など
 同じく腸管にいるGNRと嫌気性菌が”閉塞”により感染します。診察をおろそかにすると見逃されやすいので、発熱の原因がわからない患者さんでは、必ずうつ伏せにして背部とお尻を見ましょう。

(13)皮膚感染症
GPC:Staphylococcus aureus, Streptococi(GAS, GBS etc)
血流障害を伴うと
GPC:Staphylococcus aureus, Streptococi(GAS, GBS etc), Enterococci
GNR:”Enterobacteriaceae”~E. coli, Proteus, Klebsiella, Enterobacter など
Anaerobes:Bacteroides fragilis など
 皮膚の感染は表皮にいるGPCの出番。血流障害があると話は違ってきますが。

(14)骨髄炎、関節炎
化膿性関節炎
GPC:Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus agalactiae, Staphylococcus pneumoniae
淋菌性関節炎
GNC:Neisseria gonorrheae
 表皮の常在菌が多いですが、敗血症の一表現としての関節炎もあります。Neisseria gonorrheaeも関節炎を起こすことは知っておきましょう。診断は関節穿刺によってなされます。仙骨部の骨髄炎は上記の菌の他、肛門が近いのでGNRやB. fragilisも原因菌として浮上します。

(15)末梢・中心ライン感染
GPC:Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Enterococci
GNR:Pseudomonas aeruginosa, ”Enterobacteriaceae”~E. coli, Klebsiella など
Fungi:Candida albicans, non-albicans など
 市中感染というよりも院内感染ですが、重要。表皮の常在菌の他に、P. aeruginosaをはじめとするGNRも考えなければいけません。カテ感染は、疑ったら原則抜去。

 以上が常在菌と主な感染症の原因菌についてです。何となく関連性が分かってきたでしょうか??常在菌を大づかみに覚えて、後はバリア破綻と閉塞というキーワードから各感染症の原因菌を理解していく。これが第一歩になります。
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2011
12.20

診断推論 Starter & Booster:第7回~診察前確率を知る

目次→コチラ

 病歴前確率では、鑑別診断を主訴から導き出す際に有病率、緊急性、年齢、個別性といった要素を取り入れることが大事ということを学びました。これで患者さんからある程度は犯人の特徴を引っ張り出せます。しかし、それだけでは不十分。容疑者は複数人残っています。その絞り込みには次のステップである現病歴を使いましょう。

 今回は診察前確率。病歴前確率に現病歴をプラスして出される確率です。現病歴は、医学のこれまでの歴史が詰め込まれている印象がありますね。これの持つ情報の量と価値は甚大で、ただ聞くだけでなく、こちらから聞き出していくというのが大切(積極的問診)。これらが相まって、病歴が生かされてきます。最近は医療面接って言われてますけど、やっぱり”問診”ていう言葉は捨てがたいなーと思ってます。”問う”という意識を持つのも大事ですよね。

 さて、病歴前の段階で容疑者はある程度分かってくるものの、患者さんから聞き出した経過から描かれる犯人の似顔絵と、鑑別疾患群の典型的/非典型的な経過からこちらが知っている容疑者の似顔絵、この2つを見比べることが非常に大切になってきます。この照合部が多いほどその疾患の診察前確率が高くなる、照合部が少ないほどその疾患の診察前確率が低くなるという考えを持ちましょう。大事なことは、ただ聞いておしまいではなく、聞いている最中にもこちらの頭の中では鑑別の順位が目まぐるしく変動すること。犯人の顔を聞きながら、複数人いる容疑者の顔と絶えず照らし合わせをして順位付けをしていきます。予想外の病歴が出たら、新たな容疑者を引っ張り出さねばいけないこともあり、そうなったらまたその容疑者と犯人の顔が似ているかどうかを照らし合わせ。私たちの頭の中は結構忙しく働いているんです。

 病歴では、こちらの想定する容疑者たちの犯人らしさがどれくらい強まるか弱まるか、ということを意識します。が、漠然と聞くだけでは必要な情報が漏れてしまいそう。研修医のうちは、いわゆる”痛みのOPQRST”に沿って問診を取ってみましょう。これは痛み系の主訴を持っている患者さん、特に腹痛患者さんで頻用されるゴロでして、人によって多少要素は異なりますが、以下から成っています。

O:Onset
P:Palliative/Provocative(/Past)
Q:Quality
R:Region
S:associated Symptoms
T:Time course


 OPQRSTの他にも色々と覚え方があるので、これにこだわらなくても大丈夫です。覚えやすいもので良いですが、自分はこれで問診項目を覚えたので、紹介しました。この中ではOとTという時間に関する問診項目の2つが主な情報で、その他はそれらを補強してくれる情報というのが大まかな原則です。痛みについて、まずはさらさらっと各項目を見てみましょう。特に腹痛を思い浮かべて下さい。

 Onsetで、痛みの始まりかたを把握します。いつ始まって、どのくらいの時間で痛みがピークになったのかを意識。ある一瞬を境に痛みがピークになるならsudden、数分~数十分でピークになるならacute、数十分から数時間ならsub-acute(or gradual)と捕えます。救急の現場ではこの3分類を徹底しましょう。救急では緊急性を第一にするので、特に痛みではこの3分類の区切りも結構細かく厳格になります。当然ですが、突然発症、いわゆるsudden onsetは”破れる詰まる”を必ず想定します。血管であれ腸管であれ腫瘍であれ、否定されるまでは破れたのか詰まったのかという緊急事態と考えましょう。これには捻転も含みますよ。

 ただし、acuteであってもこれらを否定することは出来ません。破れる時の痛みはハンパないので発症瞬間から強い痛みを呈することが多く、痛みの起こった瞬間に何をしていたかというのを患者さんが記憶していることも度々。しかし、特に詰まる系ではほんの少しだけ色合いが違うことも。血管の詰まりならその先の組織が虚血に陥り炎症となることで主な症状が出ます。ということは、炎症が始まってから痛みのピークになるまでは少し時間を要する可能性があるということが納得できると思います。壊死と炎症は一瞬にしては生じにくいんですね。腸管や尿管と言った管腔臓器内腔の詰まりでは、流れがせき止められることで内圧が上昇し、壁が伸展されます。この伸展による痛みがピークになるまでにはやはり時間を要すると言われるので、acuteだから”破れる詰まる”じゃないなと軽く除外してはいけません。病態生理を抑えると、何となく分かってきますね。

 Tierney先生のPearlにもこれを支持するものがあります。

”Though symptoms of aortic dissection are very similar to those of acute myocardial infarction, but the onset is abrupt; myocardial ischemia comes on over a matter of several minutes”

 ”大動脈解離の症状は心筋梗塞と酷似しているが、発症は突然である。心筋虚血は数分かけて症状が起こってくる”というものです。解離はベリッと血管が裂けるので、その裂ける痛みによってsudden onsetとなります。そして既にその時点でピークの痛みとなることが多いです。対して心筋梗塞は冠動脈の閉塞。閉塞して組織壊死になるまではほんの少し時間があり、痛みがどんどん増すまでにも若干の時間があり得ます。上記のPearlはこのことを指しています。

 Onsetに対する問診方法としては、患者さんには「いつから痛くなったんですか?」とまず聞きます。そして、より詳細に聞くために「痛くなった時、何してましたか?」「それまで痛くなかったのに、ある瞬間からいきなりドン!て来ました?」「痛いなーと思っているうちにどんどん強くなって、10分くらいしてたまらないような感じになりました?」と言った質問をします。このonsetは最重要項目なので、しつこいくらいに分類。患者さんが最初に言うまま『急に痛くなった』などとカルテに書いちゃあ、ダメ、絶対。

 「あれ、acuteってそんなに数分だったっけ?数週間とかだったような…」と思う人がいるかもしれません。上記の分単位は救急における見逃してはいけない疾患に重きを置いた分類です。致死的な疾患を除外出来た一般外来では、大まかに3週間以内を目安に急性とすることが多いです。絶対に3週間きっかりというわけではなく、ファジィではありますが。なので”acute”と言っても、医者の態度(1分1秒を争う状況にいるか否か)によって意味が異なります。

 Onsetの次に聞くのは順番通りのPalliative/Provocative(/Past)ではなく、Time courseという時間経過にします。OとTはセットだと考えましょう。”主訴・患者背景・病歴のOとT”、これで緊急性を主とした大まかな可能性の予測がつくものです。このTime courseで聞く所は、ずっと痛いのかそれとも痛い中にも和らぐ時間があるのか、痛みは軽くなっているのか強くなっているのか、という2点です。

 前者についてですが、腹痛で考えてみましょう。まず臓器には大きく分けて実質臓器と管腔臓器(血管は除きます)とがありますね。大きな違いは蠕動の有無。原因臓器が管腔臓器の場合、蠕動のため動く時にはやはり痛くなってきますし、逆に動いていない時は少し楽になります。臓器によって蠕動の周期が異なるので、痛みの波の時間間隔も参考になります。この蠕動痛にプラスして、時間経過と共に炎症による持続的な痛みも関与してきます。この炎症は、器質的・機能的閉塞機転や細菌・ウイルスによる臓器への侵襲が寄与します。閉塞機転によるものは、閉塞することで管腔内の流れが滞り、壁の伸展から虚血、炎症へとつながります。式にしてまとめてしまうと、こうなります。

管腔臓器の痛み=蠕動による痛み(周期的)+虚血・炎症による痛み(持続的)

 この様に考えると、以下のことが分かるかと思います。

1)虚血・炎症が起これば管腔臓器であっても持続的な痛みが強くなる
2)虚血・炎症が早期に起これば管腔臓器であっても初期から持続的な痛みを示す

 先の例で述べた尿路結石では閉塞から壁伸展・炎症までの時間が短いので発症がacuteの中でも早い時間帯となり、水腎症になるほど内圧が上がるのなら、その痛みは持続的になっていきます。胆石では、一時的な嵌頓によるものなら石が外れれば痛みは無くなりますが、胆嚢内圧が解除されずに上昇し続けると壁虚血から炎症が起こります。当然、細菌感染も生じてきてしまいます。炎症の度合いが強くなってくると管腔臓器とは言え持続痛の側面が強くなってくるというのは、単純性イレウスから絞扼性イレウスへの経過はまさにその好例と言えます。上腸間膜動脈閉塞では、血栓により動脈が突然閉塞しあっという間に腸管壊死となるため、発症はsudden~acute早期であり、痛みも持続的なものとなります。

 以上のことをかなり単純な図にしてみましょう。たしか学生の時のポリクリで教わった図で、なるほど納得したもの。ある程度は有名と思います。



 最初は蠕動による痛み。次第に内圧が上昇して虚血、そして炎症による持続痛がやって来ます。内圧が減じないと痛みは和らいできません。更に病態によって、その持続痛に至る時間は異なります。細かい病態は置いておいて、このような簡単なとらえ方をしておきましょう。

 対して、実質臓器が原因であれば、蠕動するものがないので周期性の痛みというものを示すことは少ないと経験的に示唆されています。例外はもちろんありますが、周期性の痛みは管腔臓器を示唆し、休まらない持続的な痛みは実質臓器、もしくは管腔臓器でも炎症が強くなっているものと考えましょう。前者の傷み、特に尿路結石は良い代表例ですが、その痛みなら患者さんは”痛くてもがく”状態です。動き回ることはしなくても見ていて身の置き所がない印象を受けます。後者の傷みなら逆に”痛くてもがけない”状態になることが多いです。

 少しPitfallとして紹介しますが、先ほど例に出した大動脈解離という疾患は、痛みが周期性を示すことがあります。この痛みは中膜が裂けることによるもの。中膜がバリバリっと裂けて、少し休んで、また裂けて、、、。こういう進み方をするので、裂ける時に激痛、休まった時はちょっと痛みが和らぐ、となります。なので、痛みに波があっても消化管以外に鑑別を持つことも必要になってきます。更にこの疾患はSIRSになるので発熱するしSpO2も下がるし、何とも非典型的なプレゼンテーションをします。しかも、”大動脈”だけでなくその分枝の解離、例えば腹腔動脈などの解離があるので、大動脈に解離を認めなくても分枝をきちんと追いかけましょう。

 さて、Time courseの後者。痛みは軽くなっているのか強くなっているのか。印象としては、軽くなるなら重症ではなさそう、強くなっていくならどんどん酷くなっている、というものがあると思います。確かにそういう場合が多いのも事実。先ほどの炎症の話もそういう解釈につながります。しかし、ここは注意が必要。痛みが軽くなってきているからと言って安心できない例があるからです。例えば、くも膜下出血でも脳室穿破したら脳圧が減弱して一時的に痛みが弱まります。消化管穿孔もそうですね。穴が開くことで内圧が下がってしばらくしたら痛みが軽くなることがあります。穴が開くというのは病態としては1ランク進みますが、内圧が下がるということに着目すると痛みが軽くなっていくこともあるという事実が分かります。こういうことを知っておいて、患者背景やOnsetで見逃してはいけない疾患を除外できなければ、詳しい検査に進むべきだと思います。

 このTime courseの問診は、持続痛か周期的疼痛かを上手く判別しましょう。「ずっと痛いですか?」と聞いたら大体全員「痛いです」と答えてしまいます。なので、「今よりも痛みが強い時/少しは楽な時がありましたか?」と聞きましょう。そして、答えがYesなら「強い痛みはどのくらい続きますか?大体で良いですけど、5分とか10分とか?」といった感じで周期を問うていきます。しかし、患者さんの中には痛くて痛くてどうしようもないので、余裕を持って答えてくれない人もいます。「いやいや、ずっとずっと」の様に。患者さんはどうしようもなく痛いので「悠長に聞かんで早く痛みを取ってくれよ」というのが本音かも。上手く聞き出せないなー、そんな時は、時間をおいて患者さんの顔をひっそり観察。しかめて唸っている時と、少しその顔が楽になる時とがあるなら、それは周期的なものと考えましょう。顔が楽になった時に「今、さっきよりも少し楽になりました?」と確かめます。あんまり鬼の首を取ったように「今楽になったでしょ?ねぇ、楽になったでしょ?」とか聞いたらイラッとしますよ。

 Time courseを聞く中で、さらっとQuality、痛みの性質についても問診してしまいます。どの様な痛みか。裂かれるような、刺されるような、ぎゅ~っとされるような、ムカムカするような、布団が乗っているような、などなど。「どんな痛みですか?」と最初に聞いておいて、上記のような例をいくつかこちらから提示するのが良いと思います。大まかな臓器のアタリをつけるために参考になります。ただ、心筋梗塞でも「胸やけがする」と訴える患者さんが特に女性でいるので、性質を絶対視してはいけません。

 同じくRegionも同時に聞けます。痛い部位を確認しますが、ここで関連痛にも気を払いましょう。一番痛い所を聞いた後で「他にも痛い所ありますか?」と聞いてもなかなか答えは返ってきません。具体的にこちらから「右肩とか、首辺りとか、腰とか、太ももの内側とか」など、想定する鑑別疾患で関連痛を来すものを考えて聞いていきます。Open questionでは往々にして正しい返事は得られません。こちらからClosedで攻める必要があります。患者さんの痛いというところが関連痛の部位であることもあります。痛いところが本当に原因部位なのか、それとも関連痛部位なのか、それははっきりさせましょう。

 次はPalliative/Provocative(/Past)で、今の症状がどうすれば強くなるか、楽になるかです。カッコ書きのPastは自分が勝手に加えたものでして、以前にも同じような症状があったかということを聞きます。この増悪寛解因子も「どうすれば痛みが強くなりますか?」なんて聞かないで、こちらからどんどんアタックしていきます。もちろん、この段階ではある程度の鑑別疾患が浮かんでいるので、その疾患に特徴的な因子を聞いていきます。イレウスでは吐くことで少し痛みが弱まります。腹水が貯まると、仰向けよりも少し身体を起こした方が楽になりますし、急性膵炎では四つん這いで最も痛みが緩くなります。横隔膜近辺の疾患や胸膜に炎症が波及した場合は、深吸気で痛みが増悪することが知られています。胸痛でも食道破裂は嚥下により強い痛みが引き起こされます。こういうのは実際にその場でやってもらいましょう。「思いっきり息を吸って下さい」と言って、実際に痛みが強くなるか、「ちょっとうつ伏せになれますか」と聞いて患者さんをうつ伏せ気味にして痛みが弱まるかなどを見ます。

 Associated Symptomsはその他の症状。くどいようですが、これも基本的にはOpenではなくClosedです。聞くにしても絨毯爆撃でなく、鑑別疾患を想定してポイントポイントを絞って。腹痛では嘔吐はあるか?あるなら痛みよりも前に来たか後に来たかと言った順序など。虫垂炎では、嘔吐が痛みに先行することは珍しいと言われます。咽頭痛で重篤そうであれば、開口制限があるか、息苦しくないかなどを聞くことも必要です。

 以上が、”痛みのOPQRST”です。きちんとOとTという時間軸で鑑別をある程度の道筋に持って行きます。更に、特にPRSでは的を絞った問診。”患者さんは答えを知っている”とは良く言われますが、その答えを常に自発的に出してくれるとは限りません。ある程度はこちらが正しく道筋をつけなければならないのです。そして、問診では、症状が”ある”ということ、そして”ない”ということに分けられます。”ある”という陽性所見にばかり眼が行きがちですが、陰性所見も大事です。”ない”ことは重要でないことにはなりません。これは診察でも検査でも同じ。

 慣れないうちは現病歴が長くなるかもしれませんが、それは構いません。OPQRST通りに聞いて、もれなくということをまずは目指しましょう。鑑別疾患同士を見比べて違いについて理解が深まると、聞くべきところが分かって来ます。鑑別疾患群の中で、この疾患に見られやすい症状、この疾患には見られにくい症状などをピンポイントで攻め込むことが出来るようになると、カルテも短くなってきます。各鑑別疾患で、”ある”ことが特徴的な症状や、”ない”ことが特徴的な症状を押さえておくと、効率的な問診が出来ます。でも最初はきちんともらさず聞くことを目標にしましょう。自分は一時期カルテ、特に現病歴が長くなったんですが、研修2年間が終わりに近づくにつれて、ひゅーっと短くなって行きました。後輩からは「先輩これ聞いてないじゃないスか」と言われることもありましたが、ピンポイントに重要なところは押さえていたんですよ。

 後で学びますが、尤度比という言い方を使うと、陽性尤度比であれ陰性尤度比であれ、その値が高い所見とゼロに近い所見を効率良く捕える、ということになります。こういう視点を持ちながら鑑別診断を勉強していくと、聞くべきところが分かって来ます。

 更に、大事なのはとにかく患者さんに分かる言葉、出来れば日常生活に即した事柄で聞かなければいけません。そして、日常語には色んな意味があるということを理解しなければいけません。

 患者さんは日常世界に生きています。症状と言っても、1つ1つの症状がつながりを持っているとは自覚していません。バラバラな症状たちがあるだけです。対してこちらは日常世界と医学の世界の両者を生きています。日常世界から聞いた症状たちを、医学の世界でつなぎ合わせ、鑑別となる疾患群を想定していきます。そして、他の症状をまた日常の世界に還元して聞いていきます。この繰り返しによって問診はなされます。

 言葉。主訴を設定する際もそうでしたが、使う言葉には意味が複数含まれます。こちらの意図している意味がそのまま患者さんに伝わるとは限らず、逆もまたしかり。適切に変換して会話を行わねばなりません。専門語は使う人間のあいだで意味の不一致が起こらないようにほぼ一義的ですが、日常語は多くの意味を含みます。大げさに言うと、患者さんと私たちとでは異文化コミュニケーション(めちゃくちゃ大げさです)。

 この様に世界の違いを考えることで、患者さんから得られる情報と患者さんに伝える情報に敏感になれると思います。患者さんとの”あいだ”、そして自分の中にもある”あいだ”を意識しておきましょう。



 これまでお話ししてきた主訴の設定とそこからの鑑別疾患群の立て方もこの図の考え方、すなわち患者さんとの、そして私たちの中との情報の注意深いやりとりから成っています。ただ、いつもこの2階層モデルで図にしようとするとゴチャゴチャしてしまうので、これまではシンプルな2者間での図を示していました。今後もそちらの図で話を進めますが、こちら側には常に2つの階層がある、言い換えれば自分の中に”あいだ”がある、と考えましょう。

 こちら側の正しい鑑別疾患の知識、適切な誘導、平易な言葉。これらがクリアされて初めて問診は力を発揮します。そして、患者さんの他に同伴してきた人がいたら、その人からも情報を集めます。特に患者さんが高齢な場合、得てして質の高い病歴を得られません。疎通性の悪さは元々なのか、それとも何らかの疾患で意識障害となっているのかなど。側にいる人の意見が道標となることも多いです。複数の筋から確認を取りましょう。

 これまで痛み痛みと言ってきましたが、他の主訴はどうするの?と思ったかもしれません。しかしご安心あれ、ほとんどの主訴で必要な問診項目はこのOPQRSTに含まれているんです!OPQRSTの内容にある“痛み”を他の主訴に置き換えて患者さんに問診しましょう。そしたらアラ不思議、ほとんど漏れなく聞けてしまいます。なので研修医、特に1年次のうちは、現病歴はOPQRSTというゴロを中心に動くと良いですよ。慣れたらこのようなゴロを意識しなくても各主訴に対して必要なことを聞くことが出来るようになるんですけど、最初は特に意識して病歴を取るようにします。ですから、疾患の勉強をする時も、病歴についてはOPQRSTを頭に浮かべて整理すると実践に生きてきます。

 病棟など比較的問診に時間が取れる場合は、それほど急がなくても大丈夫です。ちょっとした所見でも見つけたいので、より日常生活の面を押し出していくのがポイント。可能なら一日の生活に即して聞くと良いかもしれません。朝起きて歯を磨いてトイレに行って着替えて朝ご飯の準備、食べている間のことも。買い物や仕事に行く時の交通手段について。以前と比べて不自由になったことを、一日の生活を追ってもらいながら患者さんに思い出してもらいます。特に神経疾患であれば、こういうところで小さな異常が出てきます。着替えに支障が出る、トイレが終わって立ち上がりづらくなっている、お箸の使い方が下手になった、自転車で良くふらつく、駅の階段を使わなくなったなどなど。日常生活の中には様々な負荷があるのです。それを上手く捕まえて聞くのが、問診上達への道となるんです。

 診察前確率についてまとめると、主訴と患者背景、現病歴から「見逃してはいけない疾患」と「良くある疾患」とのグループそれぞれの中で鑑別疾患群の確率を考えてみるということです。この中では“主訴”は出発点。そこからは知識として知っている鑑別疾患群が出てきます。“緊急性”と“有病率”、“年齢”と“個別性”、これらを鑑みて鑑別の順位付けです。そして病歴での“時間軸(OとT)”は特に緊急性を考慮する大きな重みとして存在し、他の項目はそれらに付加するものとして考えておきましょう。もちろん例外は常に存在するので、特徴的なものは押さえる必要があります。大事なのは、鑑別疾患ごとに特徴付ける要素があるということを常に意識して勉強すること。

 これら鑑別の1つの疾患に何%~何%と幅を持たせるのも良いと思います。そして、両グループを併せて大まかな確率を出してみます。ただし「見逃してはいけない疾患」は特別視して、それらの検証から入ろうという姿勢の方が安全。

 こうやってステップが進むにつれて、だんだん似顔絵が出来てくるんです。こちらは鑑別疾患群、換言すると容疑者たちの特徴を詳細に知っていることが前提。後は、患者さんから、犯人の顔の特徴をどんどん引き出して似顔絵を作っていきます。そして、自分の中にある容疑者の特徴と照らし合わせ。この繰り返しがある程度まで達成された時点で容疑者が絞れてきます。彼らの大まかな似顔絵が似ていたら、より細かな相違点を患者さんから聞いていく。どんどん相互作用が深まっていきます。患者さん側とこちら側との”あいだ”で鑑別はなされるものなんですね。「これ以上問診だけで絞りきれない」「恐らくこいつが犯人。他の角度からウラを取っておこう」と考えたら、次のステップ、診察と検査に進みます。診断推論はそういうイメージだと思ってもらえると分かりやすいかも。


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2011
12.17

躁病の急性期治療に用いる薬剤

 以前、うつ病に用いる抗うつ薬は何を選ぶべきかという内容の記事で引っ張った論文があります(Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis. The Lancet, Volume 373, Issue 9665, Pages 746 - 758, 28 February 2009)。その著者らが味を占めたのか、同じ手法であるMultiple Treatments Meta-analysisを用いて、今度は躁病の急性期治療で用いる薬剤で効果のあるものは何だろう?という解析に乗り出しました。それが、2011年Lancetのこの論文。

Comparative efficacy and acceptability of antimanic drugs in acute mania: a multiple-treatments meta-analysis. Lancet 2011; 378: 1306–15

 躁病の急性期治療は3週間という期間。有効性をYMRSで、忍容性を3週間での脱落で評価しました。有効性の対象になったのは63の研究(15673人)で、忍容性の対象は65の研究(15626人)という大きなもの。

 対象となった薬剤は、以下の14種類。ただし、パリペリドンはリスペリドンと同じものとしてこの論文で扱っているため、実際は13種類です。日本で採用されているものにはカナ表記を施しました。

aripiprazole(アリピプラゾール、商品名エビリファイ®)
asenapine
carbamazepine(カルバマゼピン、商品名テグレトール®)
valproate(バルプロ酸、商品名デパケン®/セレニカ®)
gabapentin(ガバペンチン、商品名ガバペン®)
haloperidol(ハロペリドール、商品名セレネース®/リントン®)
lamotrigine(ラモトリギン、商品名ラミクタール®)
lithium(リチウム、商品名リーマス®)
olanzapine(オランザピン、商品名ジプレキサ®)
quetiapine(クエチアピン、商品名セロクエル®)
risperidone(リスペリドン、商品名リスパダール®)
paliperidone(パリペリドン、商品名インヴェガ®)
topiramate(トピラマート、商品名トピナ®)
ziprasidone



 この様な図(クリックすると拡大)で解説されているのですが、やっぱり分かりにくい。別の図を出してみましょう。



 要は、有効性と忍容性を併せて優れている順に挙げると、以下のようになりました。

risperidone(87%)
olanzapine(79%)
haloperidol(75%)
quetiapine(68%)

 鎮静作用のある薬剤が並ぶのは偶然?やはり気分安定薬よりも抗精神病薬の方が効果発現速いですね(これだけを見ると、アリピプラゾールは次点と言ったところでしょうか)。この中で、クエチアピンとハロペリドールを取り上げてみます。

 quetiapine(セロクエル®)は双極性障害のうつ病相に効果てきめんで頻用されますが、躁状態にも良いと言うのが分かりました。非常に優秀な薬剤だと思います。躁ならセロクエルよりもエビリファイかなと思っていましたが、効果としてはほぼ同等。恐るべし、セロクエル。。。躁状態への使い方としては早めにトントントンっと400mgまで増量することが勧められます。初日50mg、2日目100mg、3日目200mg、4日目300mg、そして5日目に400mgにまで増量。もしくは、初日200mg、2日目にもう400mgなんていう急速法もあるようです(自分は前者の方法で行っています)。うつ病相なら300mgを目標に使用します。ちなみにセロクエルは単極性うつ病の増強療法としても有用です。

 古豪のハロペリドール先生が喰い込んでくるのは面白いですね。。。有効性ではNo.1となっています。大体10mg/dayを使用した文献が多いとのこと。基本的には5-10mg/dayを使用し、効果薄ければ15mg/day辺りまで増量。自分はハロペリドールを真っ先に使うことはないのですが、個人的な経験からは液剤が良く効く印象です。使い過ぎると鬱転すらします。ちなみにハロペリドールは錠剤も細粒も液剤も静注薬も持効性筋注薬もあって、実はかなり使い勝手が良いお薬。EPSさえ出なければ、ですが。。。非定型の原型がこのお薬にありそうな気がして、上手く使いこなせるようになりたいですな。。。ちなみに、ハロペリドールの進化形とも言える(とMRさんがプッシュしてた)日本発の薬剤blonanserin(ブロナンセリン、商品名ロナセン®)は、躁症状に効くのでしょうか?世界的には使われていない薬剤なのでエビデンスを作る点ではちょっと弱いですけれども。。。作用するレセプターを見ると効く印象はありませんが。ホント幻聴妄想狙い撃ちって感じですもんね。

 ただ、この論文で使われているMTMという手法はどの程度信頼して良いかは不明です。アリピプラゾールとハロペリドールとを例に出してみましょう。プラセボとの対決ではどちらも有効性あり。アリピプラゾールとハロペリドールとのガチンコ対決では、アリピプラゾールの勝利。しかし、全体でのn、特にプラセボと比較した際のn(研究が対象にした患者さんの数)では圧倒的にハロペリドールの方が多く、それを勘案してハロペリドールがアリピプラゾールよりも優位な立場となっています。しかもハロペリドールとプラセボを比較した試験は古く、昔で言う躁状態と今のDSMで言う躁状態は異なる所もあるため、本当にアリピプラゾールがハロペリドールに劣るかは何とも言えないような気もします。ただ、アリピプラゾールを急性躁状態に使用する際は最初から18-24mgくらいの高用量で攻めて、かつバルプロ酸のoral loadingを噛ませるか抗不安薬を噛ませるかをした方が良いでしょう。聞いた話では、アリピプラゾールを躁病急性期に使っても効果発現が若干遅いのでそこが難点ということでした。自分は使ったことないので分かりませんが。

 気分安定薬の古参中の古参であるリーマス®老師は効果発現まで時間がかかるので急性期治療には残念ながら向かないです。しかし、うつ病相と躁病相の両方を予防出来て(うつ病相にはちょっと弱いですが)、かつ自殺予防のエビデンスもありますし、特に古典的な双極性障害には長期的に使いたい薬剤。ちなみに、イライラ型であるぷりぷりマニーにはデパケン®が有効でして、こちらも自殺予防のエビデンスありです。リーマスは、効く患者さんと効かない患者さんがいまして、反応予測因子を見て投与を考えます。良好因子には、以下のものがあります。

・多幸感、爽快感を伴う古典的躁病
・軽症、中等症の躁病
・双極性障害の家族歴
・躁病相の先行
・発症年齢が高い

 そして不良因子はこんな感じ。

・不快気分や抑うつ気分を持つ混合病相
・急速交代型
・気分と不調和の精神病症状を伴う重症躁病
・脳器質性障害の合併
・アルコール/物質乱用の合併
・頻回の病相
・うつ病相の先行

 この論文では急性期治療なので抗精神病薬大活躍で気分安定薬がちょっと後ろに退いていますが、いくら急性期とは言え、維持期のことも考えて最初から気分安定薬(古典的ならリーマス、イライラならデパケン、うつ病相メインや若年女性や体重増加が不利に働く患者さんならラミクタール®)も入れておいた方が良いように思います。抗精神病薬のみで双極性障害治療の維持が何とかなるのかはまだ不明。代謝系にも影響がありますし、自殺が増えるかも?とした論文もあるくらい(Bipolar pharmacotherapy and suicidal behavior: Part 3: Impact of antipsychotics. J Affect Disord. 2007 Nov;103(1-3):23-8. Epub 2007 Jun 29.)。気分障害の大家であるGhaemi先生も「抗精神病薬は気分安定薬たりえない」と仰っています。

 ということで、躁病の急性期治療についてでした。この論文は絶対視するものではありません。参考としてお考え下さい。
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2011
12.14

診断推論 Starter & Booster:第6回~病歴前確率を知る

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 前回は、感覚的に確率を意識してアプローチをしていきましょう、という流れで終了しました。

 今回は、その第一歩である、病歴前確率について。これは、現病歴を取る前に得られる情報から組み立てる確率のこと。その情報には、主訴は言うに及ばず、年齢、性別、既往歴、薬剤歴、社会歴、血圧や体温などの基本的なバイタル(救急外来ではバイタルはさっさと測るので、病歴前確率に含みました)、待合にいる患者さんの様子、診察室の椅子に座るまでの患者さんの動きなどなど、実に多くのものが含まれてきます。日本が世界に誇る健診歴も大事でして、患者さんの中には胆石があることを言わなかったり、HbA1c高値を放っておいたり、そんな人もいます。「健診で、胆嚢に石があるとか言われませんでした?」「健診で、血糖値が高いって言われてないですか?」などは状況によって聞かねばなりません。以上を一言にすると”主訴と患者背景”という言葉にまとめられるのではないでしょうか。話を聞く前に、内容によっては話を聞きながら、これらを出来るだけ集めておいて、鑑別疾患にある程度の順位付けをしていきます。それが、病歴前確率。

 鑑別疾患をずらずらっと羅列するのでは重み付けがなされておらず、かつ緊急性を加味していないため、臨床的な意識を正確には反映してくれません。言ってしまえば、使いモノにならん。一般的な可能性という点では”有病率”に則って順位が決まります。このレクチャーでさんざん出てきている”良くある疾患”という考え方は、この有病率を大きく反映させたもの。更に、臨床の現場では、有病率のみでなく「今ここにいる患者さんはどうなのか?」と想定することが大事。例えば、救急部を受診した頭痛患者でのくも膜下出血の有病率は1.0%前後と一般的には言われています。しかし、30歳の男性がいきなり頭に激痛が走って今も強くなっている、というのであれば、そんなパーセントを言ってられません。1にも2にもくも膜下出血!ぼけっとして見逃したら大変。この様に有病率は「良くある疾患」を想定する際には良いのですが、今目の前にしている患者さんに対しては「見逃してはいけない疾患」という緊急性も考慮する必要があるのです。緊急性のある疾患の有病率は低いので、有病率だけで攻めたら鑑別の上位には全く上がってきません。大動脈解離は胸痛の患者さんで疑わなくてはならない緊急疾患ですが、疾患としてはマレな部類です。有病率1本で行ったら鑑別の最下層に沈んだまま。それじゃあ救急外来はやっていけないですよね。
 
 まずは緊急性という軸と有病率という軸を以て、主訴から「見逃してはいけない疾患」「良くある疾患」という2つのグループを頭に思い浮かべることから始まります。良く救急のマニュアルに載っているアレです。この時点ではまだまだ「”普遍的な”見逃してはいけない疾患」と「”普遍的な”良くある疾患」の域を出ません。

 有病率は「良くある疾患」を意識させてくれますが、これからは、細かく見てみると役立つものがもう1つ抽出されます。それは、年齢分布。62歳の男性の頭痛で病歴が如何に偏頭痛らしくても、この年齢で初発の偏頭痛はまずありません。同じく75歳男性の側腹部痛であっても、尿路結石の既往がなければまずもってこの疾患ではありません。子どもの腹痛であれば、6ヶ月なら腸重積は外せませんし、7歳ならアレルギー性紫斑病が鑑別疾患に加わります。この様に、年齢分布を知っておくと信頼性の高い推測がなされます。除外に役立ちますし、年代に特徴的な疾患を鑑別の1つに加えることが出来るので、各種疾患における好発年齢と発症確率の極めて低い年齢とを覚えておくと良いと思います。他には性差も役立つものに加えて良いでしょう。男性に子宮外妊娠は絶対無いと言い切れますし、女性の群発頭痛は非常に珍しいものです。ただし、「見逃してはいけない疾患」に関しては、まさに見逃してはいけません。よって、年齢などでそれらしくなく、以降の診察や検査などでも所見がない場合でも、バッサリ否定してしまうよりは、”いったん保留”して他の疾患を探しに行くという、石橋を叩いてもまだ渡らない姿勢を取りましょう。「良くある疾患」に関しては、石橋を叩いたらすぐ渡っても差し支えないですが。ま、男性の妊娠とか女性の精巣捻転などは構造上あり得ない疾患です。疾患そのものは見逃しちゃいけませんけど。

 このように、有病率は「良くある疾患」を挙げる際に役立ちますし、救急外来と言うセッティングは「見逃してはいけない疾患」を考える緊急性を意識するうってつけの場。年齢は各鑑別疾患の可能性を大まかに教えてくれるので、重視します。そして、既往歴、薬剤歴、社会歴などなど、言い換えると背景情報のうち患者さんから得られる年齢以外のものは、それを有している患者さんに特徴的な疾患を鑑別に挙げるor除外するヒント、つまりは個別性になってくれます。



 有病率と緊急性と年齢と個別性。患者さんに会うまでに、主訴からは「見逃してはいけない疾患」と「良くある疾患」の2つのグループを想起。その中であらかじめこれら4つの因子は覚えておくものです。そして、目の前の患者さんから年齢と個別性を聴取します。「有病率と緊急性は聞かないの?」と思うかもしれませんが、これは聞き取れるものではなく、疫学的知識・救急的知識の範疇に入ります。

 知識の上に患者さんから得られる年齢と個別性が乗ることで、ようやく「”普遍的な”見逃してはいけない疾患」と「”普遍的な”良くある疾患」から「”目の前の患者さんの”見逃してはいけない疾患」と「”目の前の患者さんの”良くある疾患」にカスタマイズされます。

 これら4つの因子が相まって、目の前の患者さんにおける鑑別疾患の順位が病歴聴取の前に付けられていくんです。やっぱり奥深い感じがしますね。患者さんからは、犯人と思われる似顔絵の大まかな輪郭をまず手に入れましょう。場合によっては大きな特徴がもたらされることもあり、それは犯人確定に役立ちますね。

 個別性という点での例を挙げましょう。例えば、咳という主訴でも、ACE阻害薬の服用歴が得られれば、それは鑑別の1つになります。意識障害で収縮期血圧が190と70とでは脳血管障害の鑑別順位が天と地ほどに違います。患者さんがお腹を押さえて苦しそうな表情でそろりそろりと歩いて入ってきたら、腹膜刺激徴候ありや…?と感じてやすやすと帰しちゃいけないなと考えます。風邪っぽくてもちょっと倦怠感が比較的強いかな?という患者さんなら急性肝炎がちらりと見えてきます。上の先生から良く言われたのは、インフルエンザシーズンで風邪とインフルエンザを見分けるポイントとして、待合の椅子で結構平気な顔をして座っているのが風邪で、耐えられず横になっているのがインフルエンザだ、なんてのもあります。

 まとめると、この病歴前確率の段階では、まず主訴から、緊急性のある「見逃してはいけない疾患」グループと、有病率を意識した「良くある疾患」グループを想定しつつ、年齢を用いて、それぞれにおいてある程度の順位付けをします。そして、個別性を俯瞰することで今ここの患者さんに特異的な状態を見出すことを重視しましょう。この疾患は外しちゃいけないな、この患者さんは簡単に帰しちゃいけないな、という印象を持つことが大事です。前の例で言うと、ACE阻害薬を服用しているという情報がなければなかなか咳の鑑別にそれが上がってくることはありませんしね。他には、開腹術の既往のある患者さんが腹痛を訴えたら、腸閉塞をまず考えます。膵臓周りをいじった手術既往のある患者さんの発熱なら、何はなくとも胆管炎を考えます。高齢者で心房細動を持っている患者さんの腹痛なら、やはり上腸間膜動脈閉塞は頭の片隅に常に置いてなければいけません。個別性って大事です。

 このように、病歴を取る前や取りながらでも下調べをしておくことで、基礎に何を持っているのかが明らかになります。それをヒントにして、特異的な鑑別疾患が浮上してくる、危険な香りを察知するということが出来るようになってきます。話を聞く前から、勝負は始まっているのです。言い方を変えると、現病歴のみでは患者さんの横断的な評価しか出来ません。こういった患者背景を加えることで膨らみが増し、病歴に幅を持たせることが出来るようになっちゃうんです。感覚的確率アプローチの第一歩は、鑑別疾患の有病率・緊急性・年齢分布・個別性を知るところが始まり。知ってないと聞き出せませんしね。その知識を入れて、患者さんから話を聞き出す。その情報の照合度合いで、感覚的な確率が決まってきます。


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2011
12.11

感染症診療 Starter & Booster:第6回~ひっそり隠れる!細胞内寄生菌について

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 MycoplasmaLegionellaを代表とする細胞内寄生菌については、細胞壁に作用するβ-ラクタム系が原則効かないということを知っておきましょう。なので当然、超広域で知られるカルバペネムは無効なんですよ。ペネム投与したから一安心、と言う訳ではないのでご注意を。選択する抗菌薬としては、細胞内の器官に働きかける薬剤が必要になってきますね。例えばマクロライド系やニューキノロン系、というもの。ちなみにLegionellaはGNRですが、細胞内寄生するのでここに分類しました。

 細胞内寄生菌による感染症だと、検体のグラム染色ではなかなかこのシャイな彼らの姿を捉えきれません。ゲホゲホ咳をして良い喀痰がとれて白血球も結構いるのに、菌だけは見えない。。。こういう時は、細胞内寄生菌かしら…?と頭を働かせることが出来ます。「見えないことで見えてくるものもある」なんて言うと格好良いかも?しれません。

 後は、比較的徐脈について一言。比較的徐脈を起こす菌はサルモネラやクラミジア、ブルセラなどなどがいます。これらの感染症でも必ず比較的徐脈になる訳でもなく、また薬剤熱などの感染症以外や感染症非感染症問わず中枢神経病変があれば比較的徐脈になることもあり、診断にすごく役立つかと言われると難しいところ。一つのきっかけにはなるかもしれません。そういったことを踏まえて診療しましょう。さて、比較的徐脈を起こすこれらの菌を別個に覚えておくと、ともすれば忘れがち。なので、感染症においては「細胞内寄生菌(特にグラム陰性の)が起こしやすい」と大づかみに覚えておくと良いですよ。なぜ細胞内寄生菌が起こしやすいのか、そして比較的徐脈の機序が何なのか、というのは残念ながら自分は寡聞にして知りません。。。


☆比較的徐脈の定義2つ

Cunhaによる定義
  体温   脈拍
 38.3℃  110以下
 38.9℃  120以下
 39.4℃  120以下
 40.1℃  130以下
 40.7℃  140以下
 41.1℃  150以下

McGeeによる定義
 脈拍が、体温(℃)×10-323 を下回ること
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2011
12.11

感染症診療 Starter & Booster:第5回~忘れちゃいけない!嫌気性菌について

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 さて、お次は嫌気性菌が登場します。ここで言う嫌気性菌は”偏性”嫌気性菌のことで、酸素が大嫌いな輩。こいつらもグラム染色で陽性/陰性・球菌/桿菌と分けることが出来ますが、多くのテキストではその分類はさて置き、常在を横隔膜の上下で分けています。

・横隔膜より上は、β-ラクタマーゼ非産生のPeptostreptococcusがメイン
・横隔膜より下は、β-ラクタマーゼ産生のBacteroides fragilisがメイン


 実はさっきのグラム陽性/陰性で分けたように、嫌気性菌でもグラム陽性の連中は口腔内(体表)に多く、グラム陰性の奴らは腸管内(体内)に多いんです。でもそういう分類をして詳しく知るって事はしていません。嫌気性菌には嫌気性菌用の抗菌薬がきちんとあり、また嫌気性菌による感染症は通常の菌の感染症とは一味違うので、菌を全てグラム染色で分けるよりは嫌気性菌として1つのグループにしましょう。そっちの方が臨床的に有用なんです。

 更にその中で抗菌薬を選択する際の目安として、上述のように横隔膜上下で分けます。β-ラクタマーゼというβ-ラクタム系の抗菌薬を分解する酵素があるんですが、その産生能がここで別れるので、使える抗菌薬が変わってきます。

 そして、感染形態と治療の大事なポイントがここで出てきます。

・混合感染
・膿瘍
・培養


 この3つ。順に説明していきます。

 一般的に感染症と言うのは原因菌が1つと想定しますが、嫌気性菌による感染症は混合感染で、嫌気性菌単独の感染ではなく色々な菌と混じって感染を起こすのです。当然、グラム染色でも色々な菌が見え、これをpolymicrobial patternと言います。色んな菌が見えたら嫌気性菌も絡んでいるかも?と考えることも出来ますね。

スライド4

 そして、膿瘍を作る点。膿瘍には抗菌薬が十分量到達しないので、治療は積極的に切開やドレナージを併用します。外科的な視点が必要になるんですね。
 
 最後に、培養でなかなか出てこないと言う点。血液培養なら話は別ですが、胆汁や腹水などを採取して培養に出しても、嫌気性菌はあまり顔を出してくれません。なので、培養で嫌気性菌が出なくても、臨床的に嫌気性菌が一枚かんでいるな、と思ったら嫌気性菌をカバーする抗菌薬は使用し続ける必要があるんです。

 今回は嫌気性菌について、ざらっと学んでみました。
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2011
12.11

診断推論 Starter & Booster:第5回~鑑別の感覚的確率アプローチ

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 前回は、鑑別の教科書的なアプローチとしてVINDICATE!!!+Pがあることを学び、そしてそれに基づいて鑑別が思い浮かばないという原理を探してみました。

 さて、こんな感じで鑑別疾患を把握したうえで診断へのプロセスに進みたいと思います。がしかし、ここで少しストップ!

 どうでしょう、この鑑別のアプローチ法、確かに良く紹介はされています。でもちょっと実践的かどうかと言われると???VINDICATE!!!+Pというゴロを常に引っ張り出すということを考えると、何やら面倒くさそうな雰囲気が漂ってきます。ちょっと鑑別疾患が多くなりすぎるしクレバーではない、そんな感じがしませんか?絨毯爆撃的で、それを全部考えて問診と診察を、となると時間がいくらあっても足りません。救急外来で要求されるものには”迅速さ”というものがあります。その場で常にVINDICATE!!!+Pを意識するのは、救急外来では致命的。「良くある疾患」と「見逃してはいけない疾患」という考え方が薄まってしまいますし、いちいち「この主訴だと、Vでは、、、Iでは、、、Nでは、、、」と考えるのも時間のロス。じゃあ考えなくても良いように出来るだけ沢山の鑑別疾患が載っているマニュアル使えば救急外来でも良いんじゃないか、と思うかもしれません。

 網羅的の極みで有名なポケットマニュアルである"A Pocket Manual of Differential Diagnosis®"でChest Painの鑑別疾患を見てみましょう。すると、筋骨格系だけで13個の疾患が挙げられています!全て数えると何と70個以上…。Headacheの項目を見ても、70個以上あるんです。。。これを全て、なんてのはムリですね。

 つまり、系統アプローチのみだと網羅的であることが災いしてしまい、患者さんが押し寄せてくる忙しい現場ではなかなか有用性に乏しい印象なんです。何度も外来を重ねていたり入院したりしているのなら話は別で素晴らしい効力をを発揮しますが、救急外来という点を考えると困っちゃいます。どうしたら良いのか、解決法を考えてみましょう。

 1つの解決法は、そのアプローチを少し緩くすること。VINDICATE!!!+Pを常に意識するのは確かに辛い。なので、これは煮詰まった時に紐解くものとして、いつもは主訴から臓器を漠然と描いて代表的な鑑別疾患を想定し、かつ先述の2つの落とし穴を別個に確実に覚えておく。「主訴やその機序から解剖と病態を意識して鑑別疾患を挙げる」という表現をすると良さそうですね。こうすると確実性は少々薄くなりますけど、特に救急外来は鑑別疾患が最初から絞られているので、いちいちゴロを持って来なくてもあまり支障はなさそう。よって採用することとします。慣れてしまえば、主訴を聞いただけで「見逃してはいけない疾患」と「良くある疾患」をスラスラと言えるようになるものです。

 もう1つ上乗せする解決法は、新たな視点を持ち込むこと。主訴と解剖と病態のみで勝負しようとするから手に負えなくなります。他の情報をプラスすることで、より可能性の高い鑑別疾患を挙げて、それから更に絞って診断へ到着するということが出来るようになるんですよ。これは解決法というよりはVINDICATE!!!+Pでも行うことですが、VINDICATE!!!+Pをした上で他の情報をプラスしようと思うと、鑑別が多いだけに収集しなきゃいけない情報も多くなってしまいます。

 で、ここで言っている他の情報とは何か?診断へのプロセスを見てみることにします。それは

【主訴と患者背景→現病歴→診察→検査】

という順番を基本的に踏むことに尽きます。もちろん患者さんのバイタルが狂っていて全身状態が悪いのに「やっぱり病歴と診察してから検査だよな」と愚直なまでに考えて早期の治療介入を遅らせるということはしていけません。原則としてこの順番ということです。

 これまでは主訴しか見てきませんでしたが、ここに新しく患者背景、現病歴、診察、検査というステップが出てきました。臨床らしくなってきましたね。ある程度絞った鑑別疾患群において、ある程度絞った問診・診察・検査を行うことが大切になってきます。これらの視点を持ちこむことで、実践的な鑑別が行えるようになるのです。

 この様に鑑別を行っていく私たちは、例えるならば「似顔絵捜査官」と言えるでしょう。こちらは、主訴などから容疑者を何人か挙げている状態。後は患者さんから犯人とも言える疾患の顔がどういうものかを、背景を探ったり話を聞いたりなどして引き出していく。そのようにして、どの容疑者の顔が犯人と一番近いのか?それを辿っていくのが診断推論です。なので、こちらは主訴別の「容疑者リスト」を持っていなければいけません。容疑者の名前と、彼らがどの様な顔をしているのかの特徴を表したリストです。それと患者さんから引き出した容疑者の似顔絵と比べてみる。「絵合わせ」と言ってしまうと単純すぎるかもしれませんが。

 ここで、実践的なアプローチで意識したいのが、各ステップにおける鑑別疾患の「確率」。やっと出てきたこの言葉、自分のレクチャーでのキーワードです。こちらが想定する鑑別疾患群の中で、どれが患者さんの持っている疾患に最も近いか?各ステップでの確率を意識して、最終的に最上位に来た鑑別疾患が患者さんの持っている疾患であろうと考えるのです。鑑別疾患群での”重み付け”と言っても良いと思います。ただ、確率確率とは言っていますが、きちんと「この疾患の確率は67%、この疾患は12%、この疾患は、、、」と細かい数が出ると言う訳ではありません。可能性がどのくらいかな?という印象、変な言い方ですが、感覚的な確率、定性的な確率を意識してみるのです。なかなかファジィではありますね。なので、ほとんど常に不確実。この不確実性はしっかりと認識しておきましょう。言い方は悪いですが、私たちは”分の良い賭け”をしているようなもんです。その分の良さを出来るだけ上げていくのが各ステップだと言うと分かりやすいかも?

 主訴を聞いた段階では、漠然と鑑別疾患群が列挙されるだけ。順番を付けるにしても一般的な有病率の順になって、それだけじゃあさすがに臨床は厳しくなります。患者背景を組み込んで、病歴を聞きとって、診察と検査を行って。それらの総合所見を解釈するんです。それを先ほど言った各ステップにおける鑑別疾患の「確率」という考え方に照らし合わせてみましょう。ステップに分解すると「その時々での確率はどうなっているのかな?」「ここまでの重要情報はどういうのがあるんだろう?」と立ち止まって考えることが出来るんですよ。

 そのステップごとの確率に名前を付けておきます(この名前は、マッシー池田先生に倣っています)。主訴と患者背景の時点で得られる鑑別疾患の確率を「病歴前確率」とします。現病歴を聞いて得られる確率が「診察前確率」、診察をして得られる確率が「検査前確率」、検査をして得られる確率が「検査後確率」ということになります。ステップに区切り、それぞれにきちんと名前を付ける。こうするとそれぞれの段階で確率を考えるために少し立ち止まれます。各段階を意識して、確率を変動させていきましょう。これらは、常に患者さんとの相互作用でなされるものなんですよ。原則として、この分け方で鑑別疾患の順位を考えていくこととなります。


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2011
12.07

診断推論 Starter & Booster:第4回~系統アプローチから見るミスの原理

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 前回は、鑑別疾患を思い浮かべる際の教科書的なアプローチ法を学びました。こうして想定した鑑別疾患内で、私たちは色々あーでもないこーでもないと考えます。ということは、裏を返すと「思い浮かばない疾患は診断できない」という重大な事実に突き当たることに…。下腹部痛の鑑別からすっぽり精巣捻転が抜け落ちてたら、けいれんの鑑別から心室細動などの重篤な不整脈や低血糖を外していたら、、、それを疑いすらしません。ということは、到底その診断に辿りつけないのです。もちろん鑑別に挙げた以降でもミスはしますが、思い浮かばないと土俵にも上がれないのです。ちょっとこれは寂しいし厳しい。

 では、なぜ思い浮かばないのでしょう?もう一度これまでの鑑別の想定手順を振り返ってみることにします。



 思い浮かばないというミスをする。その最初の一手を見ようと矢印を逆に追っていくと

①:主訴→鑑別臓器
②:主訴→VINDICATE!!!+P

この2点に突き当たるかと思います。と言うことは、すなわち

①:主訴から見えづらい臓器がある
②:臓器別ではない鑑別疾患がある

と言いかえられます。それが「思い浮かばない」というミスの原因なんですね。例を見てみましょう。

 ①で挙げてみます。下腹部痛と言われるとどうしても思考が下腹部の臓器に閉じがちですが、男性生殖器疾患や腎盂腎炎、尿路結石も忘れてはいけませんし、鼠径・大腿・閉鎖孔の各種ヘルニアも外せない大事な疾患。また、先の例で挙げた腰痛では何と感染性心内膜炎が鑑別に挙がります。関連痛も怖く、肩の痛みという訴えだと視点が肩周辺にしか行きませんが、心臓や横隔膜周辺臓器にも着目です。また、嘔吐と言う主訴でも鑑別に心筋梗塞があるんです。これはBezold-Jarisch reflexと言って、心筋梗塞、特に下壁梗塞では迷走神経が刺激されることによって嘔吐や徐脈が生じると言われます。

 ②ですと、例えば腹痛ではDKAや副腎不全が鑑別に挙がってくるのです。意識障害では低血糖やアルコール、電解質異常なども思い浮かびますね。下腿浮腫で脚気なんていうのもあります。これは覚えようとしても、ついポッと抜けてしまいがち。意識して頭に焼き付けておきましょう。

 こういった落とし穴は要注意。①と②で想定しづらい「見逃してはいけない疾患」を重点的に覚えることが、ミスを少なくするポイントであります。

 そして、ミスの種類は主要なものに4つあります。前に述べた「主訴の思い違い」とここで出てきた「想起されない」ことの他に、「鑑別に挙げた以降の間違い」と「言葉の取り違え」というものもあります。「主訴の思い違い」は、スタート位置からして違うという状態。適切な主訴を設定しないと、それ以降グダグダになってしまいます。この前お話ししたヤツです。「想起されない」というのは今回のですね。3番目と4番目は、また後でお話しすることにしましょう。
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2011
12.04

抗うつ薬、どれを選ぶ???

 たまには精神科医らしい話を。ということで抗うつ薬についてお話ししようと思います。プライマリケアにもきっと役立つ、ような気がします。

 ただ、抗うつ薬は”モノアミン仮説”という仮説に基づいているということは頭に入れておきましょう。そう、仮説に過ぎないんです。今の抗うつ薬はしっかりとした病態生理に根ざした薬剤ではない、というのは覚えておかねばならない知識です。「精神科薬理が立脚しているものは、ともすれば脆いものなのではないか?」そんな風に常に思っておくことは、薬物に偏重しすぎないためにも重要だと思います。モノアミンの他にはHPA-axisの失調、そして慢性炎症というのを考えておく必要があるでしょう。

 かつ、”うつ病”というのは1つの疾患ではありません。精神医学は未熟で、患者さんの訴える症状によって”○○障害”と分類しています。身体医学であれば検査を行ない細部まで分かることが多いですが、精神医学はそれが現段階では出来ない。だから、訴える症状が”抑うつ”であり精神科的に”うつ病”としても、まだまだ”抑うつ症候群”であるとしか言えません。例えば、尿に血が混じる”血尿”というのがありますが、これは様々な身体疾患で生じます。しかし、精神科で言う”うつ病”は「あ、血尿が出てるから”血尿病”ですね」と言うくらいに大雑把なものだと自戒しておく必要があります。

 さて、そういうことを知った上で、うつ病に用いる抗うつ薬はどれが良いのか。最初に何を選ぶかは医師によって異なるかと思います。効果は「どれもこれも似たようなもんじゃないか?」と言われていますが、やはりこだわりはあるもの。今回は、新規抗うつ薬の効果と忍容性とを比較した有名な研究と、実際臨床ではどう選ぶのか、それとなかなか治らない時の増強療法についてお話しします。

☆MANGA Studyからは?

 「どれも似たような効果だろう」そう思われていた抗うつ薬ですが、2009年Lancetに掲載されたMANGA Study(Meta-Analysis of New Generation Antidepressants Study)という楽しそうな名前の研究が、それに一石を投じました。

Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis
The Lancet, Volume 373, Issue 9665, Pages 746 - 758, 28 February 2009

 この研究では、成人の単極性うつ病に対し、様々な抗うつ薬の効果と忍容性を見ています。研究の対象となった抗うつ薬は、以下の12種類。

bupropion
citalopram
duloxetine(デュロキセチン、商品名サインバルタ®)
escitalopram(エスシタロプラム、商品名レクサプロ®)
fluoxetine
fluvoxamine(フルボキサミン、商品名デプロメール®/ルボックス®)
milnacipran(ミルナシプラン、商品名トレドミン®)
mirtazapine(ミルタザピン、商品名リフレックス®/レメロン®)
paroxetine(パロキセチン、商品名パキシル®)
reboxetine
sertraline(サートラリンorセルトラリン、商品名ジェイゾロフト®)
venlafaxine

 日本で採用されているものにはカナ表記を施しました。

 研究内容は、117の試験(25928人)を解析し、用いた論文は各種薬剤のRCTのみ。効果はHDRSやMADRS、CGIと言った頻用される尺度を用い、治療脱落はどの様な理由のものでも含んでいます。解析手法は直接比較と間接比較の結果を統合したMultiple Treatments Meta-analysisというものを用いています。効果判定に用いた期間は8週間。急性期治療と考えて良いでしょう。



 この様な図(クリックすると拡大)で解説されているのですが、ちょっと分かりにくい。

 要は、効果の点ではmirtazapine、escitalopram、venlafaxine、sertralineが強く、忍容性ではescitalopramとsertralineが強い。ということで、両方のバランスを考えるとescitalopramかsertralineが良いですね、というものでした。アメリカではsertralineの後発品がじゃんじゃん出ているので、コストと言う点ではsertralineが良いんでしょう。

 ただこの研究に敢えて難クセを付けてみると。。。

 評価の高いsertraline(ジェイゾロフト®)ですが、日本では100mgまでしか使用できません。アメリカやヨーロッパでは200mgまで使用可能。そういうところから見ると、日本でジェイゾロフトにそこまでの効果が見られるかは少し疑問。忍容性については200mgでも高いため、そこは信じられますね。

 duloxetine(サインバルタ®)について。MANGA Studyではえらく不評となってますが、論文を読むと、60mgから始めた試験があったり、そもそもサインバルタを対象にした研究が8つしかなかったり、少し可哀相。きちんと20mgから(自分は、高齢者には脱カプセルして10mgから始めることもあります)ちょろちょろ増やしてあげればそれなりの忍容性になる予感。結構良い感じに効いてくれますから、サインバルタに関しては追試を待つ!という気分。

 8週間と言う急性期治療という点も気になります。mirtazapine(リフレックス®/レメロン®)は急性期の効果は確かに高いと思います。でも使っているとたまーに腰折れしてくる印象。副作用はどうでしょう。8週間経っていれば新たな副作用もそんなに出ないかもしれません。ただ、もう少し治療期間を延ばしていくと、ひょっとしたら上記のランクも変わるかもしれませんね。

 この前自分のいる医局の教授にこの試験のことを聞いてみたところ”間接的な比較をする解析方法もblack boxで評価のしようがありません。この結果は、多くのうちの「一つの情報」として、位置づけています”とのお返事を頂きました。後はPublication biasもありますしね、この論文を絶対視してはいけません。

 でもって、2011年に出た論文では「急性期や維持期において新規抗うつ薬の効果に差はない」としています(Gartlehner G, et al. Comparative benefits and harms of second-generation antidepressants for treating major depressive disorder: an updated meta-analysis. Ann Intern Med. 2011; 155(11): 772-85.)。精神科医は「ちょっと違うんじゃない?」と思いますが、特にプライマリケアにおいてはあまり効果の違いに敏感になり過ぎないほうがいいかもしれません。

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☆実際はどの様な選択を?

 効果に差があるとかないとか言われていますが、どんな抗うつ薬を選ぶかは”患者さんの抑うつ以外の症状”にも目を配るというのが良いかと思います。うつ病なのにいったん抑うつ気分から目を離すというのは奇妙かもしれませんが、自分の抗うつ薬の選び方は


・不眠
・食欲不振(体重減少)
・疼痛
・心的水準の低下(妄想レベルまで行っているか?)
・焦燥
・薬剤相互作用


といった症状を目安に選んでいます。代表的な処方を考えると。。。

1.不眠と食思不振が目立てば、まずはリフレックス
2.疼痛があれば、サインバルタかリフレックス
3.うつ病の2次妄想があるなら、サインバルタ
4.焦燥が強ければ、SSRIやSNRIは使わない。更に抗うつ薬にセロクエルなどの抗精神病薬を一時期のみプラス
5.色々他に薬剤を服用していたら、リフレックス、レクサプロ、(サインバルタ、ジェイゾロフト)

と言う感じ(あくまでも参考ですが)。投与初期の副作用の吐き気止めとして、患者さんに六君子湯や半夏厚朴湯を噛ませて処方することが多いですが、モサプリド(ガスモチン®)を投与する先生もいます。六君子湯は補気剤で、半夏厚朴湯は理気剤ですね。患者さんの状態で補気をメインに据えたいなと思ったら六君子湯で、理気をメインにと考えたら半夏厚朴湯にしています。ただ、これらの漢方はいずれも身体を乾かすので、そこには注意を。リフレックスは吐き気を逆に抑えてくれるので、リフレックスを出す時はそれらを噛ませません。

 細かい受容体の話は自分が眠くなるので抜きにして、、、。1番と2番について。リフレックスには制吐作用・疼痛緩和作用・睡眠作用・食欲増進作用があります。睡眠作用は、ベンゾジアゼピンのようにただただおりゃっと寝かすというものではなくて、睡眠の質を良くしてくれます。抗うつでなく睡眠狙いで処方するなら、7.5-15mgが適切な量でしょう。サインバルタにも疼痛緩和作用があります。うつ病の患者さんには疼痛を訴える方もおり、そういう時にこの2剤は適任。癌性疼痛への鎮痛補助としても使われます。ちなみにリフレックスとオランザピン(ジプレキサ®)の制吐作用は、抗がん剤による嘔気やアリピプラゾール(エビリファイ®)による嘔気に対して効果を示し、特にジプレキサが色々な受容体に関与して嘔気を抑えるので有用。

 疼痛については、他のSSRIもその緩和作用を持ちますが、新規抗うつ薬の中ではサインバルタがトップ。NNTが5か6くらい。こういった抗うつ薬は痛みを調節する神経の働きを強めるため、疼痛緩和に働きます。旧世代も含めるとアミトリプチリン(トリプタノール®)が最も効果が高く、NNTが3となっています。やはり三環系は強い。

 5番に関しては、自分はリエゾンも行っているので、薬剤相互作用、特に抗がん剤との作用には気を張らねばいけません。抗がん剤とオピオイドについて言えば、P糖蛋白(P-glycoprotein:PGP)とCYPの阻害に注意し、あまりにも阻害が強い薬剤は使用しないのが良いでしょう。となると、パキシルとかデプロメールはちょっと使いづらい。P糖蛋白についてはパキシルとジェイゾロフトがかなり阻害します(デプロメールも?)。なので、化学療法を行う癌患者さんに用いる抗うつ薬は両者に干渉しないリフレックスが多いかと思います(ジェイゾロフトを使ってタクロリムス血中濃度が跳ね上がった経験はありませんが…)。今は相互作用のほとんどないレクサプロも使えるようになったので、これも含めて良いかもしれませんね。ただレクサプロは2012年6月からQT延長を持つ患者さんに禁忌となったのでご注意を。他に使うならば、milnacipran(トレドミン®)やsulpiride(スルピリド:ドグマチール®)が相互作用と言う点では安心。でもトレドミンは日本の用量では心許ない感じで馬力がないですね。。。200mgまで使えば何とか効果は出てくると思いますが。大きな手術をした後の患者さんではリフレックスに耐えられないという患者さんがいます。そういう時はドグマチールを少し使っていく、ということもアリかもしれません。抗精神病薬を使うこともありますが、癌の治療だとどうしてもステロイドとインスリンというのがちらつくため、クエチアピン(セロクエル®)とジプレキサ®に手を出しにくいところがあります。難しい。。。

 3番はエビデンスなしですが。。。他のSSRIやNaSSAに比べるとサインバルタは罪業妄想や特に心気妄想なんかに効いてくれる印象があります。そのレベルのうつ病であればラモトリギン(ラミクタール®)を最初から追加することが多く、それでもダメならサインバルタをアモキサン®とかアナフラニール®点滴に切り替えを、といったところでしょうか。妄想が強いからって抗精神病薬をすぐに入れるかどうか?入れることが多いですが、妄想だから抗精神病薬というような対応ではなく、重症のうつなので、それを改善するための増強と考えるべきかもしれません。モーズレイのガイドラインには、精神病性うつにはミフェプリストンが良いって書いてましたね(日本に無いですが)。この妄想っていうのはどんな精神疾患でも重度になれば生じるものです。プライマリケアの先生の中は「幻覚妄想って言ったら統合失調症」というように考えているかたもいらっしゃいますが、そんなに簡単ではありません。統合失調症に比較的特異的とされる一級症状というのも、名づけたシュナイダー先生が「他の病気が否定されたら、初めて”控えめに”統合失調症と診断せよ」と言っているくらい。決め打ちは出来ませんよ。統合失調症に認められやすい妄想やうつ病に認められやすい妄想というのも確かにあり、精神科医はそれも判断材料にします。でも単純には決められない。どんな精神疾患でも重度になれば幻覚妄想状態になるのだ、というのを知っておきましょう(ジャネ的な考え。心的水準や心的エネルギーという発想を持つと理解しやすい)。

 4番の抗精神病薬をプラスするというのは、増強の1つ。抗うつ薬は効果発現まで少し時間がかかるので、焦燥が強くてそれまで待てんなぁと思ったら、鎮静作用とそれなりの抗うつ作用を有するセロクエルやジプレキサを少し噛ませることがあります。抗精神病薬は効果発現速いですし。また、抗うつ薬が焦燥をかえって強めてしまうことも示唆されているため、鎮静作用を持つ抗精神病薬のみでまずは落ち着くまでしのぐことも。サインバルタにはジプレキサ、リフレックスにはセロクエルをを噛ませることが多いです。ジプレキサの5-HT2c受容体阻害作用とセロクエルの代謝物によるNET/NAT阻害作用を考えると、それぞれ増強として作用が被らない方が良いかなと思ってこのセレクト。臨床的にどう違いがあるかは分かりかねますが、薬理的には、ということで自分はこんな感じで選んでます。SSRIはセロトニンをメインに増やしますが、これが焦燥感にあまりよろしくないこともありこういう患者さんにSSRIをぽんと出すことはしません。煽ってしまうかもという意識は持っていた方が良いでしょう。

 何もなければ、忍容性の高さと離脱のしやすさからまずはジェイゾロフトやサインバルタを使うことが多いでしょうか。やっぱりまずは脱落なく飲み続けてもらうことが大事。レクサプロは発売されたばかりで、まだ処方日数の上限が14日間。2012年8月頃にはそれが解禁になるため、そうなるとレクサプロの処方が全国的に増える予感。また、STAR*Dでもそうでしたが、三環系や四環系を最初から使うことは自分はしません。ただし、セロトニンを増やすということが怖い時(焦燥感・希死念慮)は、ノルアドレナリンにより作用するアンプリット®とかルジオミール®とかがちらつきます。。。しかも精神病院に紹介される患者さんは重度のこともあり、既に様々な抗うつ薬がトライされている過去を持つことが多いです。そういう時は三環系を最初から使用することも選択肢でしょう。

 また、リエゾン領域では、特に高齢者に対してのリフレックスが大当たりすることがあります。半量の7.5mgから出すようにしてますが、それでスパーンと良くなって、一週間経つか経たないかという時点から笑うようになったり食べ出したり病棟歩けるようになったり、主科の先生や看護師さんから驚かれることも。高齢者のリフレックスへの反応は眼を見張るものがあります。ただ弱っている患者さんだと副作用が強く出過ぎて「もうあの薬はこりごり」と言われてしまう可能性も。後はリフレックスで悪夢を見ることがあり(mirtazapine induced nightmare)、それで嫌われてしまうことがあります。注意したいのが、認知症の患者さん。特にFTD(前頭側頭型認知症)に抗うつ薬を投与すると攻撃性がいきなり高まりますし、レビー小体型認知症に使うと副作用が半端無く出てしまいます。ここは慎重に。リフレックスがせん妄を誘発するのではないかという報告もあるようですし。

 デプロメールは薬剤相互作用があり、パキシルは薬剤相互作用もあって副作用もちょくちょく出るので、自分はあんまり使いません(しかもパキシルはクセがあって止めにくい)。デプロメールは効果がマイルドで、逆に言えば余計なことをしないというのはあります。強迫性障害にはデプロメールが判で押したように使われますが、実際の効き目はどうなんでしょうね?300mgまで上げて、後はリスパダール®との相性が良いのでそれを併用することで強迫がとれてくることが多いようです。自分は強迫にデプロメールを使うことはほとんどないですが。さっき出てきたトレドミンは相互作用が殆ど無くて良いお薬なんですが、いかんせん日本で許される用量が少ない(使うなら200mgまで行きましょう!)。。。マイルド過ぎてあまり改善しないです。

 これもさっき出てきましたが、ドグマチールはそもそも抗うつ薬ではないですし、アメリカでは承認されていない薬剤。だから悪い、とは言いませんが、高プロラクチン血症になったり、高齢者では100mgや150mgという少量でもパーキンソン症状が出てしまいます(内科の先生はドグマチール好きですね)。使いこなせれば良い薬剤なのでしょうが。。。相互作用と言う点では安心して良いので、先述のように弱っている患者さんへのリエゾン領域で30-50mgという少量を使うならば、食欲も少し出るし良いかもしれません。迷ったらとりあえずドグマチールを出して次の受診までもたせるということもあるようで。”中高年女性の軽いうつ”や”心気的な訴えの多い中高年患者さん”に良いようです。せいぜい50mgくらいまで。前述の様に100mgとか150mgだと意外に錐体外路症状が出ます。ここ注意。精神科医でも”こんな量じゃ出ねぇよ”と思っている先生がたまにいますが、しっかりと出るので覚えておきましょう。

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☆増強療法

 抗うつ薬を使ってもなかなかスッキリ治らない患者さんももちろんいます。そういう時はSSRI・SNRI・NaSSA間で一回クラスチェンジ。SSRIの中で変えても構わないと思います。化学的には同じSSRIでもかなり構造式が異なるので、それを見るとSSRI間での変更も意味あるのかなと言う感じがします。あくまでもそんな感じがするだけですが。

 ちょっと例を出してみると、上から順にフルボキサミン、セルトラリン(サートラリン)、エスシタロプラム。かなり異なることが分かりますね。SSRIとは言え別物なんじゃないかしらと思ってしまいます。
ふるぼ

せると
えすし

 さて、そのクラスチェンジでぱっとしなければ以下の増強を(使用量はアメリカさんのもの)。

・T3製剤(チロナミン®:25-50μg)
・アリピプラゾール(エビリファイ®:5-20mg)
・クエチアピン(セロクエル®:300-600mg)
・オランザピン(ジプレキサ®:2.5-5mg)

 多くは適応外使用であることを付記しておきます。

 こういったaugmentationを行うと、ぐぐっとひと押し出来ます。STAR*Dではリチウム(リーマス®)の増強もありましたが、効果発現の遅さと血中濃度の測定を行わなければいけないという点がやや面倒で安全性の面でも不安。MSAやアルツハイマーに使う際にはオートファジーが注目されていますが、精神科領域ではどうなのでしょう。抗うつ薬への増強という点ではエビデンスがしっかりしてますが、それも三環系についてのものが多いですね。チロナミンは有効性がクローズアップされていますが、必ず甲状腺機能をモニタリングしましょう。その有効性というのも、やはり三環系に付加したものが多いです。セロクエルやエビリファイは使いやすい。焦燥が強ければセロクエルは良い選択肢です。用量は双極性障害に対するデータでは300mgと600mgとでは有意差なしですが、中には600mgに上げてから効果がドンっと出てくる患者さんもいます。うつ病には150mgでも良いでしょう。個人的にはうつ病への増強にはエビリファイがお勧めで、日本人なら1.5-6mgの付加で十分な印象で、2013年くらいには適応が取れます。臨床試験が行われていないためエビデンスはないですが、ペロスピロン(ルーラン®)の増強も自分は好きです。1-4mgを就寝前に加えると、強迫的なところや強い不安感が和らぎます(代謝産物であるID-15036の強力な5-HT2A受容体阻害を狙っています)。「カリフォルニアロケット燃料」と言って、SSRIやSNRIにNaSSAであるリフレックスを追加する方法もありますが、どうなんでしょう??作用機序が違うため理論的には確かにセロトニンとノルアドレナリンを爆上げしてもおかしくない。効くという論文もありNICEやSTAR*Dでも取り上げられています。特にサインバルタとリフレックスの併用はノルアドレナリンと少しながらドパミンを2つの機序から増やす方向に働きますね。試す価値はありそうでして、三環系に移る前には一度トライした方が良いかも。他にサインバルタと相性の良いのは先述のジプレキサでしょうか。これもググンっと前頭葉でドパミンを上げてくれます。また、三環系や四環系は奥行きのある薬剤でして、セロトニンとノルアドレナリンだけでは説明の付かない効果を示してくれ、年配の先生は上手く使っている印象。SSRIにちょろっとだけルジオミールやトリプタノールを足してぐっと良くなる患者さんもいますし。そこは年の功だなーと思ってしまいます。自分は三環系使いこなせないので。旧世代とSSRI以降の抗うつ薬との併用は経験豊かな医師に限って許されるような気もします。ただ、抗うつ薬同士や抗精神病薬の増強療法はセロトニン症候群という副作用が多くなるため処方する時は注意。

 他は、しっかりしたエビデンスはないものの亜鉛の増強で神経保護をしたり、ω-3脂肪酸やアスピリンの増強で抗炎症作用(NF-κBをブロック)を期待したりなど、うつの病態を多軸で眺めてみるのも良いですね。抗ステロイドの視点もこれからは重要になってくるんでしょう。個人的にはラモトリギン(ラミクタール®)の増強によってグルタミン酸のバランスを整えるのが好きです。NMDA受容体を攻めるメマンチン(メマリー®)はどうなんでしょうね。

 後は、カリフォルニアロケットを「どうなんでしょう??」と疑問符を付けておいてナンですが、エビデンス的に最も怪しいと言われ続けている漢方を、自分は併用することもあります。増強というわけではないですが、ちょっとしたスパイス代わりに。もちろんこれを主剤に据える気はありません。希死念慮ばりばりのうつ病や幻聴・妄想に漢方だけで立ち向かうなんてのは超ナンセンスだと思います。とりあえず処方する典型的な例を出すと

・気虚状態に食思不振があれば六君子湯など
・何となくやる気が出なくて筋肉が重く感じるという時には補中益気湯
・ヒステリー球や、咽頭から胸部にかけて異常感覚があれば半夏厚朴湯
・げっぷや消化器症状が多ければ半夏瀉心湯
・真面目な人で耐えてめげずに頑張っている感じなら柴胡桂枝乾姜湯
・身体症状が色々あり、自分はイライラに気付かずこっちをイライラさせるような感じなら加味逍遥散
・身体症状が色々あり、さらに背景に”怒り”を感じるのなら抑肝散と加味逍遥散の併せ技
・疲れている女性ならまずは当帰芍薬散、もう一押し欲しいなら柴胡剤(特に柴胡桂枝乾姜湯)を上乗せ
・自分では体力がないと自覚してない場合が多く、妙に我慢強くて低空飛行している人なら人参湯を、女性なら当帰芍薬散を上乗せしても良い
・万年カゼのような人なら参蘇飲
・涙もろい・生あくびが多い、悲しみに浸かりすぎて自分が見えなくなっているのなら甘麦大棗湯
・くそ真面目な人の強い緊張感や身体化、悪夢が強いなら桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡加竜骨牡蛎湯
・生理によって症状が悪化するなら当帰芍薬散や桂枝茯苓丸
・生理前のイライラなら抑肝散や加味逍遥散や芎帰調血飲
・生理前に精神症状がどんっと来て生理になるとピタっと止まる人なら芎帰調血飲
・対人関係でのストレスが多く”私っていじめられているの”的な感じなら抑肝散加陳皮半夏
・雨の日に調子が悪くなって頭痛やらむくみやらなら半夏白朮天麻湯
・イライラな気持ちがあるなら四逆散
・論理が通用せず不安を抱えて医者に食い下がる人、自分の力で論理的に解決しない人なら加味帰脾湯

という口訣じみたものを、証を見ながらちょこちょこと選んで使います。自分の勤めている病院はエビデンス重視なので、少し自分の様な漢方屋は立場が狭いですが。。。でも特に女性は生理で症状変化する患者さんが多いので、当帰芍薬散などは重宝してます。漢方は自分もまだまだ若輩者で、五臓とかは良く分からない理論だなと思ってしまいます。陰・陽と熱・寒を考えて、おまけに腹診、そして「お?」と思うような症状の存在をキーとして漢方を選んでしまっているので、一発で当たるのは難しい。。。でも次から次に手があるのが漢方の良いところ。試行錯誤しながら患者さんと一緒に選ぶ感じになっていく感じになるので、患者さん自身も治療に参加するというのが良いのかなと思います。ちょっと精神療法的な関与にもなる。もちろん副作用もあるので、大きな間違いを起こさないような選び方を心がけてはいます。特に肝障害と間質性肺炎には眼を凝らしましょう。後は甘草の偽性アルドステロン症ですね。特に芍薬甘草湯や甘麦大棗湯は漫然と1日3回使うと低K血症になるので、要注意。漢方同士を併用するときも、甘草が被っていないか確認しましょう。甘草の1日量が2.5mgを超えるとダメです。でもそれ以内なら良いかと言うとそうでもなく、自分の同期や後輩は抑肝散5.0-7.5gの服用で低K血症になったと話していました。認知症の高齢者には抑肝散が”とりあえず”的に漫然と投与されていますが、低K血症には十分注意しましょう。かなり多いようです。

→後になって見直すとこの漢方薬の選び方は雑だと思いました。最近は山本巌先生の処方例に準じて組み立てることが多いです(2012年11月13日記載)。



 抗うつ薬の選び方と増強。以上のような事を考えて行っています。増強を必要とするような患者さんなら、プライマリケアの先生方は遠慮せずに信頼できる精神科に紹介して下さい(患者さんが「精神科」を嫌がらなければ、ですが…)。また、「うつ病」と診断する前に、必ず

この患者さんは双極性障害ではないか?

と疑って下さい。抗うつ薬の使用は双極性障害を否定してからというのが鉄則になります。ただ、疑いすぎると今度は双極性障害の過剰診断となってしまい、アメリカではそれが問題視されています。。。特に”治療抵抗性”や”イライラが強い”というだけで双極スペクトラムだーとか混合病相だーとか言って飛びつく精神科医がいるので、過剰診断は要注意。ちょっと前は発達障害の過剰診断がありましたし、何とも精神科の診断というのは不確かなものだなと実感しています。

 個人的には、”単極性”として紹介された患者さんにはしっかりと双極性の病歴を聞き直し、”双極性”として紹介された患者さんにはそう診断された経緯を聞き直す様にしています。これをすることで、双極の過剰診断例や過少診断例の両方に視点を持てるようになるかと。”過剰診断が多い、いや過少診断が多い”という問題はあくまで精神科医の平均をとったもので、これを理解しましょう。各々の精神科医がしっかりと自分というものを持って、かつ過去の診断例についてはまっさらな目で眺めてもう一度診断するのが適切。もともと双極性障害を過剰診断している傾向のある医師が「最近の医者は過少診断しているよ」という論文を読むことで”ここんとこはやはり過少診断という流れか、ふむ。もっとしっかり拾ってやるぜ”と息巻いてしまったら、過剰診断にアクセルが更にかかります。逆もまたしかり。単極性うつへのまずい治療の逃げ口が”双極性障害”という診断変更になってしまうことは避けなければいけません。
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2011
12.03

感染症診療 Starter & Booster:第4回~院内感染の原因!SPACE+αについて

目次→コチラ

 院内感染を起こすGNRも知っておきましょう。免疫抑制の患者さんの大敵で、覚え方は各菌の頭文字をとってSPACE+αです。

Serratia marcescens
Pseudomonas aeruginosa
Acinetobacter
Citrobacter
Enterobacter

+α:Burkholderia cepacia, Stenotrophomonas maltophilia

 この中では、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)が特に警戒すべき、にっくき相手です。叩きのめしてやりたいわー。院内感染ではまずこの菌が感染に関わっているかどうか?を考えましょう。更に、P. aeruginosaAcinetobacterBurkholderia cepaciaStenotrophomonas maltophiliaの4種はブドウ糖非発酵であり、嫌気下では上手く発育できません。偏性嫌気性菌とは全く以て正反対の奴らです。この知識は少し大事で、血液培養で陽性判定となった際に役立つ知識。
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2011
12.03

感染症診療 Starter & Booster:第3回~赤長!グラム陰性桿菌について

目次→コチラ

 前回は細菌の臨床分類とGPCについて学んできました。今回はGNRについてです。表面が好きなGPCに対し、GNRは腸管、身体の中が好きです。ここで大野博司先生の分類を引用します(感染症入門レクチャーノーツより)。

☆GNRの4分類
・消化管(咽頭~大腸)に常在し、消化管に近接する臓器に感染症を起こすGNR:いわゆる腸内細菌科~横隔膜上下で更に2種に分ける
・外部から侵入し消化管内に感染症を起こすGNR
・院内感染で問題となるGNR(SPACE+α)
・バイオテロ、人畜共通感染症を起こすGNR


 まずは一番上のEnterobacteriaceae(腸内細菌科)に強くなることが第一歩。先ほど言った住み心地に出てきたGNRはここの種類を指します。横隔膜の上下で2種に分けるのは

・横隔膜より上に住んでいる菌は気道感染症を起こす
・横隔膜より下に住んでいる菌は肝胆道感染、腹腔内/骨盤内感染、尿路感染を起こす


という原則があるからです。大野先生の説明を借りると、彼らは消化管の近接臓器で”閉塞”が起こることで、その臓器に感染を起こします。GPCではバリア破綻を意識しましたが、GNRでは閉塞がキーワードになります。例えば、胆石により胆道が閉塞して胆嚢炎になるとか、PIDですと性行為感染症で子宮・膣での分泌物の流れが閉塞してしまうことによる、など。閉塞からバリア破綻が導かれると考えても差し支えありません。



 前回お話ししたように、GNRと一括りに言っても、その中で性格はみんな違います。常在部位・感染を起こしやすい部位・苦手な部位の3つは覚えておきましょう。
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2011
12.03

診断推論 Starter & Booster:第3回~鑑別疾患を想定する教科書的な方法(系統アプローチ)

目次→コチラ

 前回までに、鑑別の場所と主訴の設定を学びました。ここまでを理解して今回は鑑別疾患の挙げ方となりますが、現時点ではまだ網羅的な鑑別疾患の列挙という形を取ります。多くのテキストで挙げられており推奨される方法ではあります。しかし、異論はあるかと思われますが、これは教科書的、一見すると非現実的な方法であると考えています。とは言っても、一度はこのコテコテな方法に触れておきましょう。そこから見えてくるものがあります。

 主訴から鑑別疾患をどう想定するのか、いわゆる系統アプローチを見てみますね。

 順序としては、最初に主訴やその機序を広く解剖/臓器でとらえます。「腰痛」と言ったら、原因臓器として皮膚、筋骨格、神経、後腹膜臓器(十二指腸や膵臓、大動脈などなど)はまず浮かんでくると思います。「失神」は「脳血流の一過性の低下」という機序を把握すると原因臓器は心臓、肺、神経などは即座に出てきます。

 その次に、解剖と主訴に絡めてVINDICATE!!!+Pを持ってきます。このVINDICATE!!!+Pは病態カテゴリーを意識したゴロ。

Vascular (血管系)
Infection/Inflammation (感染症/炎症)
Neoplasm (良性・悪性新生物)
Degenerative/Deficiency (変性疾患/欠乏性疾患)
Intoxication (中毒)
Congenital (先天性)
Auto-immune/Allergy (自己免疫・膠原病/アレルギー)
Trauma (外傷)
Endocrinopathy (内分泌系)
!atrogenic (医原性)
!diopathic (特発性)
!nheritance (遺伝性)
Psychogenic (精神系)

 これらの頭文字を採ったものなんです。「うわ、多いなぁ…」と思うかもしれませんが、これを主訴と解剖の2つと絡めて鑑別疾患の想定を進めて行くんです。

 VINDICATE!!!+Pというゴロを媒介にすることで網羅性を高め鑑別の取りこぼしが少なくなる訳ですね。これが教科書的な方法です。


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