2011
11.27

感染症診療 Starter & Booster:第2回~青丸!グラム陽性球菌について

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 今回はGPCについてです。GPCの分類は、連鎖球菌グループ、ブドウ球菌グループが大きな分け方。肺炎球菌は連鎖球菌グループに属します。また、腸球菌も便宜上このグループに入れておきます。ですが、臨床的に有用なことから、更にその2グループからから薬剤耐性のグループも抽出しておきましょう。薬剤耐性にはペニシリン抵抗性肺炎球菌(PRSP)やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などが含まれます。治療薬選択に大きく影響するため、この第3のグループも意識。これらのグループの細かな知識や耐性菌については後々お話ししようと思います。まずは今のところは大枠をとらえましょう。

☆GPCの3分類
・連鎖球菌グループ
・ブドウ球菌グループ
・薬剤耐性グループ


 さて、GPCは大きく言えば皮膚や気道といった身体の表面に馴染みがあり、この部位にそれぞれ常在していると考えます。そしてその表面のバリアが崩れると、そこから感染を起こしてくるのです。逆に言うと、常在部位から遠く離れた場所は苦手としています。誰しも遠くに行くとちょっと寂しくなるもんですね。



 例えば、蜂窩織炎は皮膚のバリアが破れた時に、S. pyogenesS. aureusなどが縄張りである表皮からその近くに移動して起こします。気道も身体の表面なので、肺炎や副鼻腔炎も気道に住むS. pneumoniaeが主な原因菌です。GPCの勢いが強いと、頭の方へ行って髄膜炎を、血流に乗って心内膜炎などを引き起こします。もちろん例外もあり、腸球菌やS. bovisなどは後述のGNRと同様の場所に住んでますし、S. agalactiaeという奴は皮膚にもいるし直腸や女性生殖器にもいるし、あんまり節操ありません。こういうひねくれ野郎はどの世界にもいるのです。

 ただ、細菌にも更なる個性があり、感染を起こすのが得意な臓器はそれぞれ異なっているんです。S. pyogenesは肺に感染を起こすのが苦手。S. aureusも実は苦手な方で、彼らはCOPDやインフルエンザ感染など、大々的な損傷を足がかりにしないとなかなか感染できません。

 この個性や常在部位から離れた部位を苦手とする性格は、GPCに限らずどんな菌にもあります。常在部位・感染を起こしやすい部位・苦手な部位の3つは常に意識しましょう。細菌にも性格があるなんて知ると、少しは親しみが、沸かないですかね…。
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2011
11.27

診断推論 Starter & Booster:第2回~「主訴」の設定

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 前回は、初診時における鑑別の立て方と、受診を繰り返している時、ひいては入院精査の時における鑑別の立て方の構えをお話ししました。

 外来と病棟の立ち位置をそうやって理解した上で、今度は主訴を見てみます。診断の出発点は何と言っても主訴!患者さんから発せられる言葉として最初のもので、これをまず詳しく知っておく必要があります。”主訴なんてそんなしっかり勉強するところあるの?”と思うかもしれませんが、見てみると大事なことが分かってくるんですよ。患者さんにとって最もインパクトのあるのが主訴ですから、これは重要なのです。この主訴について学んでから、診断方法に触れて行きましょう。

 「お腹が痛い」「息が苦しい」などの言葉は、患者さんが最も辛い、最も気になっていることを患者さんの言葉、つまりは日常語で表現したもの。我々も主訴を大事にします。他に症状はあれど、それが最も強い。なので、患者さんを悩ます疾患も、最も強い症状と関連したものだろうと考えるのです。ここまでは良いかなと思います。

 主訴は日常語で述べたものです。ということは、それは”主観的な”主訴ということ。これと区別するものに医学的主訴がありまして、救急のマニュアルに載っている主訴がそうですね。お腹が痛い→腹痛、光がまぶしくて目が痛い→羞明など。我々は、患者さん側の世界の言葉を大切にしながらも、頭ではこちら側の言葉、専門語に変換して作業を進めています。

 患者さんは何とかして主訴を話しますが、そこにはこちらの意図しない意味も含まれています。患者さんの使う言葉が、私たち医療者の使う言葉と意味が同じということは、保証されてないんです。よって、私たちはそれを適切なものに変換する必要性が出てきますが、その変換を誤ることもしばしば。主訴を正しく設定することが適切な鑑別診断を挙げる事への第一歩。それを踏み外さないようにすることが、大事なポイントなんです。主訴1つ見ても、随分と奥深いものですね。

 私たちが主訴の設定を誤ってしまう時。これには2つの形がありまして、以下に見ていきましょう。



 これらには常に気を付けましょう。それぞれ代表例を出してみますね。

 前者の代表例は「胃が痛い」。胃が痛いという患者さん側の言葉に引っ張られてしまうと、医者サイドの思考も患者さんの主観に左右されます。「胃が痛い」と言うのは「患者さんが想定する胃もしくは胃があると思っている場所が痛い」のであって、本当に臓器としての胃が痛みを発しているということではありません。私たちは「心窩部痛」や「左上腹部痛」と変換することで、患者さんの症状をより正確にとらえることが出来ます。そうすると胸部疾患にまで視線を広げられ、「胃が痛い」患者さんの心筋梗塞を見つけることも可能になるんです。他には「血を吐いた」なんていうのがありますね。果たしてそれは本当に医学的主訴で言う「吐血」なのか、それとも「喀血」なのか?「尿が出ない」というのも「尿閉」なのか「乏尿/無尿」なのか。患者さんの目から見た症状が同じようなものでも、何と鑑別が全く異なってきてしまうんです。

 後者の例は「意識がなくなって倒れた」というもの。失神なのか、けいれんなのか。鑑別は全く異なってきます。患者さんは発症当時を覚えていないので、こちらが聞いても限界があります。目撃者がいれば、その人に代弁してもらうことが一番でしょう。いなかった場合は、どっちかに決めつけず両方の線をひとまずは考えましょう。「倒れたみたいで、気付いたら誰かが救急車を呼んでくれてた」だと、はたしてどっち・・・?と悩みますね。誰かが見ていて「そういえば、頭をぐーっと横に向けながら倒れていきました」という言葉が得られたら、けいれんだろうなと察しがつきます。誰もいない場合は両方の線を考えながら、どっちかの証拠を探しに行きます。大事なのは「この主訴は漠然としていて情報が足りない」という事実に気づくこと。「倒れた=失神」というのは早計。もちろん意識を戻してからも何となく話の注意がそれるのであれば、それは意識障害となります。GCSやJCSでは軽微な意識障害は拾えないんですよ。精神科医はこういうところにうるさいです。

 まとめると、患者さんは今ある症状を伝えようとして、彼らの知識の中で言葉にして頑張って述べているのです。その言葉には様々な意味が含まれているため、その症状を適切に表しているとは限りません。私たちは、それを考慮する必要があるんです。第7回(診察前確率)の時にお話ししますが、患者さんは日常語の世界にいて、私たちはそれに加えて専門の世界を持っています。繰り返しますが、日常語というのは色んな意味を含んでいます。先の「胃が痛い」も「胃」という臓器を必ずしも指すとは限りません。対して専門語は殆ど一義的です。患者さんの訴えには様々な意味があり、それを私たちは専門語に解釈する。その際に正しい意味を推定しなければなりません。こんな感じで説明すると、何となく言葉が大事だなというような雰囲気が伝わってきたでしょうか。

 ただし、主観的な主訴も、患者さんの”生の声”を反映したもので一定の価値があります。医学的主訴に変換することでその特性が失われてしまうこともあるため、カルテにはきちんと主観的主訴も書きましょう。とらわれすぎるのはいけませんが、患者さんの姿を表したものでもあるため、完全に潰してしまうのは勿体ないと思います。そして、主観的主訴がとらえどころがなく、医学的主訴に置き換えられないというものもあります。自分は精神科医なので、患者さんの主訴で「居場所がない」とか「身体の中から頭のてっぺんにかけてスースーする」というような、こちらが「うーん」と考え込んでしまうものがしばしば。境界例とか自我障害のある患者さんはこのような訴え方をします。

 他に主訴で言っておくことは、“困る主訴”というもの。それは「全身倦怠感」に代表される、鑑別になる疾患が多岐に渡ってしまい、「あんまりこの主訴役に立たないなぁ...」と思ってしまうものを指します。こういう時は、他に症状があるかどうかを聞きましょう。「頭が痛い」と言ったのなら、こちらから攻めた方が鑑別を絞りやすいのは言うまでもありません。このように主訴を置き換えて疾患に迫るという手段もあるんです。

 特に救急においては、適切な医学的主訴を設定する。これが第一歩です。そして、その主訴から想定できる鑑別疾患を挙げていくのです。犯人捜しに例えるなら「午前3時に牛丼屋の前にいた男性」という主訴からは「”吉野家”の前にいた」のか「”すき家”の前にいた」のか、これで随分と容疑者が異なってきますよね。私たちは捜査官、患者さんは被害者。犯人は疾患。容疑者が鑑別疾患と言うことになりましょう。まとめて図にするとこの様になります。まさに犯人捜しの第一歩という感じですね。


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2011
11.25

感染症診療 Starter & Booster:第1回~臨床的な細菌の分け方

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 細菌は大体グラム染色で分けられます。しかし、全てをそれで分けるのではなく、発症機序と治療も考慮に入れて分類した方が臨床上有用でしょう。ここでは、グラム染色によるものと、SPACE+αと呼ばれる院内感染に重要なグラム陰性桿菌、それにプラスして嫌気性菌と細胞内寄生菌に分けておきます。もっと細かく分けることもできますが、そうなると覚えきれなくなるので。出来るだけどの個所でも「原則」を意識して、大まかに考えるようにしていきます。

☆細菌の臨床的分類
・グラム染色の4分類
・SPACE+α
・嫌気性菌
・細胞内寄生菌


 グラム染色において、グラム陽性とは青く染まる菌、グラム陰性とは赤く染まる菌で、後者はP. aeruginosa(緑膿菌)やE. coli(大腸菌)をはじめ細胞壁の外に外膜を持つものです。細胞壁の構造の違いから、染色性に差が出てきます。グラム陽性(GP)/陰性(GN)と球菌(C)/桿菌(R)の組み合わせから4種類に分類されますが、日頃目にする頻度や重要性などを考えると臨床上重要なのはGPCGNRの2種類。染色上は、GPCは青くて丸い、GNRは赤くて長いものに見えます。今回のレクチャーでは細部に手を出しませんので、この大事な2種を押さえていきましょう。



 そして、細菌には彼らの住み心地の良い場所というのがあり、それぞれ縄張りのようなものを持っています。常在というやつですね。常在を語るには、細菌だけでなく人間側のことにも触れねばなりません。総じて、人間のバリア機構があるからこそ常在菌は常在菌であることが出来ます。ということは、そのバリア機構が破綻すると、彼らは深みへ侵入し原因菌へと変化します。ですから、常在菌を覚えることは感染原因菌を推定することにとっても役立ちます。特にGPCはその”バリア破綻”というのを意識に持つと良いでしょう。常在と感染とは表裏一体なのです。それに絡めて次回はGPCについてお話します。
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2011
11.25

診断推論 Starter & Booster:第1回~鑑別を行う場所

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 第0回に、救急外来に重きを置いてとお話ししましたが、場所によって診断のスタイルは異なるのか?と思うかもしれません。少し説明してみますね。

 診断というのを端的に言うと、主訴から引き出された鑑別疾患を、最終的に1つに絞り込む作業。その作業は、外来と病棟とではとらえ方が少々異なってくるんです。

 外来、特に救急外来や初診では「見逃してはいけない疾患(Critical & Curable)」と「良くある疾患(Common)」に的を絞って診断を手早く進めます。見逃してはいけない疾患はまさに名のごとしでして、見逃したら患者さんに大きな障害を与えてしまいます。良くある疾患は、頻度の高いもの。これを知らずにいたら診療が成り立ちません。この2つを知って臨む、裏を返すと、少々レア感があって見逃しても差し当たり大きな障害はないだろうなーという疾患は頭の中に浮かびません。なので、家族性地中海熱や慢性活動性EBウイルス感染症なんてのは最初から想定しないのです。言ってしまえば、割り切ったお付き合い。当然、問診や診察においてもTop to Bottomの出番はあまりなく、的を絞って想定した鑑別疾患に関連したところをテキパキと攻めます。ただし、「見逃してはいけない疾患」については泥臭くても良いので丹念に調べることが大事になってきますね。大丈夫と思って帰宅させたら...な事態に、というのは避けなければいけません。患者さんに害を与えることは、理想的にはあってはならないことなのです。

 以上の様に、外来では治療可能性と緊急性を重要視するので、どうしても他の疾患群には手が届きません。消極的と言われるかもしれませんが、診断にかかる時間や検査コストなどを考慮すると、そのようにせざるを得ないところはあります。ただ、外来を繰り返しているという状況では、患者さんの持っている疾患が見つからない状況。すなわち徐々にレア感のある疾患にまで手を伸ばしていく必要はあるでしょう。

 対して病棟では、大抵は外来で「原因が分かりませんねぇ。ちょっと入院して調べてみましょうか」という状態です。ということは、どうしても珍しい疾患に思いを馳せますし、問診や診察はフルで行ってわずかな所見でも手がかりとして用います。検査もちょっと手の込んだものを必要とします。もちろん病棟でも新規発症の場合は緊急性を常に考慮することを忘れてはいけません。

 初診外来とそれ以降。2つの立場の違いは明確にしておく必要があります

 それを極端な図にするとこの様な感じに。左端が初診で、右に行くにつれて再診を繰り返し、最後は分からず入院精査ということを示しています。


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2011
11.23

診断推論 Starter & Booster:前座~症状と疾患

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 今回は前座です。症状が出現することや疾患として理解することにどの様な意味があるのか、を見て行きたいと思います。

 症状、はどの様にして生じるのか?ここで意識してほしいのは、症状というのは、原因と患者さんの生体機構との相互作用、もっと踏み込んで言うと、原因に対する患者さんの反応として生じると考えることです。そして疾患とは、原因と生体機構と症状の3つによって成立するものと言えます。疾患は、患者さんがいて初めて存在できるもの。肺炎球菌性肺炎であれば、大雑把に以下の様に考えられます。

原因:肺炎球菌の肺への侵入と、それを許すような脆弱性
生体機構:炎症と凝固
症状:発熱や咳・痰

 一言加えると、よく高齢者では肺炎でも咳がなくてただだるいだけ、ということがありますが、それは生体機構が弱っているために症状としての輪郭が定まらないことが挙げられます。裏を返すと、高齢者や免疫不全など、生体機構が適切に反応しない患者さんでは、症状がはっきりしなくても軽視してはいけない、ということも言えますね。



 さて、症状は相互作用から生じるものですが、その相互作用は一回性ではなく、原因が除去されない限り常に波打ちながら行われているものです。その相互作用が強くなっていく、弱くなっていく、それによって症状も変動していきます。症状同士や、症状の時間推移による変化など、それらのつながりは非常に大事。そして原因や生体機構も考慮する。言い方を変えれば、”相互作用”を動的に深く見て解釈することで、私たちはどういう疾患なのかを類推していきます。症状だけ見ても診断は難しいもの。原因や生体機構の低下なども色々探ってみなければ正確な診断、正確な診療は出来ないんです。



 診断は、具象を抽象に変換することでなされます。患者さんの目線からは、具体的な症状が自らに襲ってくるという形になります。「いったい何が起こっているのか?」つながりを欠いた1つ1つの症状が単独で攻撃してくる。これは迫害と言う形で不安を惹起させます。自分でその不安をかかえられなくなり、患者さんは医療機関を受診します。



 ここで私たちは、患者さんから言葉や態度などとして投げかけられる症状たちをリンクさせ、相互作用を見つめることで、疾患と言う抽象概念にまとめ上げ、かかえられる形にして患者さんに伝える。それにより迫害の不安を持ちこたえられるようになることへとつながります。



 診断以降の診療では、患者さんの中には疾患が分かることにより”名付けの不安”が生じるでしょう。新たに知ったこの疾患はどういうものなのか、そして、それがどうなっていくのかという恐怖が出現します。ヴァイツゼッカーの言葉を借りるなら、だれもが「…かどうか」のうちで生きているのであり、「…であること」のうちで生きているのではない、ということです。診断も大事ですが、「その先自分はどうなるんだろう?」と患者さんは考え、今度はその不安を我々に投げかけてきます。それをいったん受け止め、そして持ちこたえられるような形にして返してあげる。そのように私たちは彼らを援助していくべきでしょうね。そこには疾患そのものを治療するということもありますし、患者さんにその疾患について知ってもらうということ、そして患者さんの抱く不安をしっかり受け止めて、展望を伝えるということも含まれます。ここが医者のワザの見せどころでして、不安という感情をしっかりと理解していくことが大切になります。無条件に形ばかりの共感をするのではなく、患者さんの過去・現在・未来を眺めて「こういう状況にあるあなたであるならば、不安になるのは無理からぬこと」と認証していくことが重要になってきます。疾患は患者さんありき。疾患を治療することは、患者さんがその不安をかかえられるようにすることでもあります。私たちは、患者さんのコンテイナー(かかえる立場)として優しく存在するべきです。

 今回はなにやら観念的な話になってしまいました。身体疾患には心理的背景というのは少なからず影響します。ここを考慮しないと患者さんはスッキリ治って行かない。。。でもまずは生物学的に正しい診断力というのを身に付けてからそこは勉強するところでしょうか。次からは普通に診断学について少しずつお話しします。次回は「鑑別を行う場所」について(第1回に続く)。
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2011
11.22

感染症診療 Starter & Booster:第0回~目次

 今回は感染症について。

 救急外来や病棟でも頻回に目にしますし、全科必須の知識ですね。感染症の診断総論を学ぶ前に、臨床微生物学についておさらいしておきましょう。微生物学と聞くと細かい知識を詰め込むのかと戦々恐々となるかもしれませんが、研修医の臨床において必要な知識は多くありませんのでご安心を。細菌の分類と、その住処を大まかに知ることから始めると良いでしょう。その後に抗菌薬を学んで、総論に進みましょう。


 各項目について記事にしていきます(ここではリンクを貼っていきます)。
・臨床的な細菌の分け方→コチラ
・青丸!グラム陽性球菌について→コチラ
・赤長!グラム陰性桿菌について→コチラ
・院内感染の原因!SPACE+αについて→コチラ
・忘れちゃいけない!嫌気性菌について→コチラ
・ひっそり隠れる!細胞内寄生菌について→コチラ
・常在菌と市中感染原因菌との関連→コチラ
・グラム染色での見え方と臨床的知識→コチラ
・補足:ブドウ球菌を血液培養のグラム染色で見てみると→コチラ
・抗菌薬について知っておくこと→コチラ
・耐性菌の怖さ→コチラ
・抗真菌薬について軽く→コチラ
・「カビ」を分類する→コチラ
・感染症診療の原則とは?→その1コチラ、その2コチラ

☆参考文献
レジデントのための感染症診療マニュアル(言うに及ばず)
感染症診療のロジック(大原則を知るために。超お勧めです)
抗菌薬の考え方、使い方(抗菌薬の基礎を臨床に即して学べます)
感染症入門レクチャーノーツ(常在菌と感染原因菌の関係を理解)
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2011
11.22

診断推論 Starter & Booster:第0回~目次

 今回は、診断推論。患者さんの病像からどう診断を組み立てていくか。全ての医者が行うことですが、あまり研修の最初にきちんと教えられることが多くない。学んだからと言ってすぐ実力が上がるわけではないので、軽視されがち。でもとっても大事なことなんです。その推理方法の1つを、救急外来に重きを置いてお話ししようかと思います。

 診断推論の枠組みは、疾患を診断する際のOSのようなもんです。研修医になったばかりの頃は、全く新品のパソコンと同じで、OSが入っていません。それがないとパソコンは正しく作動せず、研修医は診断にたどり着く術を知らないまま。ということで、まずそれを入れなければ。今日は自分の持っているOSについてお話しますが、それが絶対という訳でなく、他の先生はその先生のOSを持っています。今回のレクチャーはその中の1つだと思って、インストールするかどうかちょっと見てみて下さい。診断にはそれ用のOSがあって、輸液には輸液の、栄養には栄養のOSがあります。その基本概念、大きな目線での枠組みを頭に入れておくことがとっても大事。

 ただ、これからのお話を見ると分かるでしょうが、診断推論は非常にファジイ、曖昧なんです。OSという表現をしたため機械的でデジタルなものを期待しちゃうかもしれませんが、”推”論という言葉が示す通り、推し量ることにより診断するのです。この記事を読むことで、曖昧な中で何を頼りにすべきか、というのが少し分かっていただけるかと思います。その中で、診断に用いるものの有用性と限界性を学んでもらえたら、と感じています。

 そして、診断推論は多くは”言葉”によって構成されています。診断の中で最も重要なのが病歴という事実からもそれを確認できるでしょう。このレクチャーではその”言葉の重要性”にも重きを置いています。

 診断というのは超絶技巧を必要としません。アートではないのです。自分自身の中で再現性が保たれ、かつ他の研修医も出来るような普遍性のあることが求められます。ヒラメキや重箱の隅をつつくような知識はあったら面白いかも知れませんが、それは共有しづらいもの。地味で愚直かもしれないけれども、自分の中で納得がいき、そして他の人にも出来る。そんな診断というのが一番大切だと思います。

 今回紹介するのは、そのための第一歩だと思ってください。基本的な事項を共有できるように伝えられれば良いなと考えています。

 各項目について記事にしていきます(ここではリンクを貼っていきます)。
・前座:症状と疾患→コチラ
・鑑別を行う場所→コチラ
・「主訴」の設定→コチラ
・鑑別の系統アプローチ→コチラ
・系統アプローチから見るミスの原理→コチラ
・鑑別の感覚的確率アプローチ→コチラ
・病歴前確率を知る→コチラ
・診察前確率を知る→コチラ
・検査前確率と検査後確率を知る→コチラ
・感度と特異度、そして尤度比→コチラ
・まだあるミスの原理→コチラ
・疾患そのものを知ると言う大前提→コチラ


☆参考文献
誰も教えてくれなかった診断学(和書で初めてと言って良いくらい、診断学について分かりやすく書かれた本)
The Patient History(ティアニー先生が監修している問診の本)
考える技術(症例を用いて実際に考えることで、診断への道筋を学ぶ良書)
Learning Clinical Reasoning(薄めですが読むのは難しい。でも得るものたくさん)
クリニカル リーズニング ラーニング(上記の和訳。訳されていても難しい)
池田正行先生のサイト(ステップに区切る確率の考えを学びました)
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2011
11.18

Starter and Booster

 研修医はローテートの中で何を学ぶべきなのでしょう??

・冠動脈造影で何番が閉塞しているか?
・統合失調症患者の慢性期治療をどうするか?
・肝臓ダイナミックCTでの病巣鑑別?
・神経変性疾患の拡散テンソルの読み方?

 これらは専門医には必要な知識です。しかし、研修医はどの科の専門医でもありません。換言すると、全ての科への可能性を秘めている、となりましょう。ということは、、、


全科の医師が基礎として知っておくべきこと


 これを研修医は学ぶことになります。医師としての基盤とも言えますね。では、それは何なのか?

 個人的に、全科必携の知識は

1.診断学
2.感染症
3.輸液(Na代謝)
4.栄養

と思います。

 診断学は言うに非ず。これが全ての土台。医者を医者たらしめる思考回路です。

 感染症もとても大事。どんな科でも感染しない患者さんはいません。診断学の考え方が感染症の考え方を固めてくれるので、診断学を学んだ後に感染症を勉強すれば、見通しも立ってくるでしょう。ただ、感染症特異的な知識もあるので、そこは重点的に勉強。

 輸液もそうですね。輸液を行わず研修を終了する人もいないでしょう。輸液はいい加減にやらず、きちんと最初の理論を入れていくのがポイントです。

 栄養も大切。身体の基礎を作ってくれるのは栄養・食事です。これをないがしろにせずに頑張って勉強するのが患者さんのためになります(TNT講習会を受けた割に自分はあんまり栄養スキじゃないんですけどね…)。


 各疾患の治療やマネジメントはそのローテ先でしっかり学ぶことです。それ以前に、きちっとした診断技術、そしてマネジメント概念を知っておかないと、その場しのぎのスポット的な暗記にしかなりません。それじゃあもったいない。一本のスジを通して、後はその応用、という考え方をきちんと会得しましょう。

 今回はこの4つについて、学部6年と研修医1年を対象にして、学生さんには研修医への準備、研修医には既知の点検にしてもらおうと思います。ただ、世にあまたある医学書を見ても分かるように、どの分野もそれ1つで1冊本が出ているくらいの分量があります。なので、どうしても細部までは説明できずに浅いところで切り上げざるを得ないというのはご了承を。。。

栄養や輸液は大体どの本も切り口は違えど似たような説明になってますので、自分のも何番煎じか分からないくらいに同じ様なお話になってしまうかもしれません。そこで、差別化というわけではありませんが、急性期という視点をこの2つに持ち込んでみようと思います。やっぱり維持期より急性期のマネジメントがハラハラするものですから、その全体的なイメージを持ってもらえればと思います。

 多くは後輩の研修医にレクチャーしたものに補足を加えたものです。少しずつ記事にしていきますので、お役立て下さい(これらがまとまった本が『こうすればうまくいく! 臨床研修はじめの一歩』というものです)。
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2011
11.12

シロとクロ

 名古屋を中心として、金沢や大阪、東京などにも脚を伸ばしている喫茶店に「コメダ珈琲店」というのがあります。

 スタバとかドトールとは違って、ゆっくり休んでコーヒーを飲む、いわゆる喫茶店です。

 ここにはいろんなメニューがあるんですが、有名なのが「シロノワール」という食べ物。バター香しいあったか甘口デニッシュの上にソフトクリームがうにゅうにゅと乗っているんです。

 この前写真を撮ったので、症例提示です。



 向かって左がシロノワール(590円)、右がミニシロノワール(390円)です。どちらもサクランボとメープルシロップが付いてきます。メープルはやはりミニの方が若干少なめ。値段設定は、薄給の身にはやや高めの印象。写真ではミニのソフトクリームがくたびれているように写っていますが、これはミニが先にテーブルに来てしまったためです。オリジナルのシロノワールを待っている間に少々溶けてしまいまして。デニッシュが温かいので、溶けるスピードは結構速めなんですよ。

 ミニではない本家のシロノワールは、食べていると後半がややきついかもしれません。やっぱり同じ味なので、甘いデニッシュと甘いソフトクリームの組み合わせは少々。。。趣向を変えようか、とメープルシロップをかけたら更に甘くなり。。。お漬け物が欲しくなります。1つで結構なカロリーでしょうね。お腹も十分な感じ。

 分け入っても分け入っても青い山ではありませんが、甘さ甘さが続きまして。ミニシロノワールの誕生した理由がなーんとなく分かる気がします。

 食べ方、という訳でもないですが、自分はシロノワールを食べる時、別のお皿にソフトクリームを移動させてからにしてます。さもないと最後辺りは、溶けたソフトクリームによって生じた沼によりデニッシュがひたひたになりまして、噛み締めるとじゅわーっと。液体化したアイスって甘さが倍増しますからね。これはボディブローです。なので、テキパキと食べるに尽きるかもしれません。喫茶店なのにゆっくり出来ないじゃん!という声は聞こえてきそうですが、食べた後にゆっくりしましょう。

 こうやって書くと美味しくないんじゃないかと思うかもしれませんが、非常に美味しいです。バターの香り、温かいデニッシュ、冷たいソフトクリーム。嫌う要素が見あたりません。温かくて冷たいのは、面白いですよ。

 ただ、温かさに慣れた歯に冷たいソフトクリームが接触するともの凄くズキッと染みて悶絶します。とは言ってもこれはシロノワールのせいではなくて自分の歯科的問題。。。

 シロノワール、特に甘党の方々は歓喜するのではないでしょうか。小食ならミニをお勧めします。これ食べて温かいコーヒー飲んで、ぐだっとする。良い休日の過ごし方のような気がします。残念ながら今日は外勤先の病院の日当直なのですが。

 さぼってないですよ。今はヒマな時間なんですよ。
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2011
11.08

誤ったEvidence

Category: ★本のお話
 各症候への、エビデンスに基づいた論理的な診断方法を学ぶために適した本「考える技術(Symptom to Diagnosis)」。

 以前にも紹介したことがありますが、研修医の皆さんは是非読んでみて下さいまし。しかも原著よりも和訳の方が優れています。訳注が適切になされており、和訳のお手本みたいなもの。

 しかし、誤植というものは付きもので、ふっと見た時に気づきました。



 これが第2版の表紙。

SECOND EDITION
SYMPTOM TO DIAGNOSIS
AN EVIDENCE-BASED GUIDE
考える技術
臨床的思考を分析する
【第2版】

と書かれています。

 では、背表紙に目を向けると


 ここで、「ん?」と思いました。気づきました??

 拡大。



 EVIDENCEが、、、、



EBIDENCEに!!



 本には、特に訳モノには誤植は良くありますが、表紙の段階からコケてたというのは初めて見ました。

 「臨床的思考を分折する」とか「臨床的思孝を分析する」と副題を付けてあげたくなります。



 大丈夫かしらね...。
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2011
11.05

喘息と抑うつ

 良く読むCHESTから、思春期の喘息とdepressionとの関連について。

Salma Bahreinian, et al.
Depression Is More Common in Girls With Nonatopic Asthma
CHEST 2011; 140(5):1138–1145

 喘息は小児においてdepressionを合併するリスクを上昇させる可能性が指摘されています。これを検証した論文。殆どabstractしか読んでませんが。。。

 この試験はカナダで行われました。11-14歳の小児で、小児アレルギー医により喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎と診断された患者さん。

 カテゴリーを4つに分類しています。

atopic asthma
nonatopic asthma
atopy-no asthma
no atopy or asthma

 抑うつ症状は、the Children’s Depression Inventory-Short Form(CDI-S)により調査。これはDSM-IVに則っており、depressionとはスコア2点以上のものと定義されました。データはロジスティック回帰モデルを使用して、喘息に対する小児のdepressionの尤度を解析しています。

 結果ですが、非アトピーもしくは非アレルギー性喘息の女児は抑うつ症状が健常女児の3倍であったとしています(OR, 2.84; 95% CI, 1.00-8.10; OR, 3.47; 95% CI, 1.30-9.25, respectively)。

 更に、女児では腹囲が10cm増加するにつれて、39% から56%のdepression発症の増加となりました。

 男児では、喘息や腹囲はdepressionとは関連しなかったとしています。

 結論は、喘息合併の女児や過体重の女児をみたときには抑うつ症状がないかどうか確認、合併している場合には治療すべきである、とのこと。



 自分はこのCDI-Sというのを寡聞にして知りません。どのくらいのパワーを持つものなのか知らない上で言うのも気がひけますが、このスコアがカットオフ以上で即depressionと診断するのはちょっと機械的すぎる印象があります(たぶんこの論文、depressionはDSMで言うmajor depressive disorderだと思いますが)。

 DSM自体機械的ですが、どうなんでしょう。この質問紙で閾値を超えたら、一度精神科医に診てもらうというワンクッションを入れても良いような気もします。このCDI-Sが恐ろしいほどの力を持っているものであれば、その限りではないのでしょうが。。。
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追加情報
 CDI-Sの本家であるCDIについては、clinical evidenceに以下の記載がありました。

Self-report questionnaire (administrator may read aloud while child fills in) consisting of 27 items. For each item, the child chooses one of 3 statements describing how they have felt over the previous 2 weeks. Covers most DSM criteria for depressive disorder. Can be used as a depression screening instrument, a confirmatory diagnostic tool, and a measure of treatment response in children. Variable test–retest reliability (0.38–0.87) but sound internal consistency (0.59–0.88).
Items scored on a scale of 0 (least difficulties) to 2 (greatest difficulties). An aggregate score (range 0–54) of 11 or greater is associated with depressive disorder (sensitivity 0.67, specificity 0.60). Items load onto 5 factors: dysphoric mood, acting out, loss of personal and social interest, self-depreciation, and vegetative symptoms.

 uptodateにはこの様に書かれていました。

•Diagnosis should be based upon a formal clinical interview with the adolescent that is supplemented by information from parents and teachers. Standardized instruments such as the Beck Depression Inventory (BDI) , the Child Depression Inventory (CDI), or the Reynolds Adolescent Depression Scale (RADS) are useful as screening tools and to monitor functioning, but they should not be used as the basis for diagnosis.

 感度特異度の点や、診断のために用いるべきではないという記載からすると、CDIでアタリを付けて専門医による診察へ、という流れが良いような気もします。
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