2011
08.28

DPB以外に対するマクロライド少量持続療法

COPDではどうなんだ?というのがNEJMに出ています。

Azithromycin for Prevention of Exacerbations of COPD
N Engl J Med 2011;365:689-98.

COPD急性増悪は生命の危機に関わります。急性憎悪をきたすと30日死亡率は心筋梗塞よりも高い、とも言われており、また肺機能をガクッと落としQOLも下げる非常に怖い疾患。なので、急性憎悪を防ぐのがとても大事なのですが、まだ急性憎悪の原因というのは全てはっきりしたわけではありません。

また、マクロライド系抗菌薬はいろいろな炎症性気道疾患がある患者に利益があるとされているのは周知の事実です。免疫調節作用、抗炎症作用、抗菌作用を有しているためとされています。

この論文では、アジスロマイシンによってCOPD増悪の頻度が低下するかどうかを検討しています。対象となった患者さんはCOPD増悪リスクは高いけれども、聴覚障害・安静時頻脈がなく補正QT間隔延長リスクもないCOPD患者さんです。
 
標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を投与する群とプラセボを投与する群にランダムに割付。初回のCOPD急性増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群で266日(95%CI 227-313)であり、プラセボ群では174日(95% CI 143-215)でした(P<0.001)。COPD急性増悪の頻度は、アジスロマイシン群で患者年あたり1.48回、プラセボ群では1.83回(P=0.01)。前者のCOPD急性増悪の発生HR0.73という結果(95% CI 0.63-0.84)(P<0.001)。

St. George呼吸器質問票スコアの改善は、アジスロマイシン群のほうがプラセボ群よりも大きく(低下平均 [±SD] 2.8±12.8 vs 0.6±11.4、P=0.004)、最小の有意差である4以上の低下がみられた患者はアジスロマイシン群で43%、プラセボ群で36%でした(P=0.03)。

聴力低下はアジスロマイシン群で有意に多くみられています(25% 対 20%,P=0.04)。そして気道におけるマクロライド耐性菌は有意に上昇しましたが(81% 対 41%)、肺炎発症には関与しなかったとしています。



結論としては、安定したCOPD患者において、標準治療にアジスロマイシンを1年間毎日服用することでCOPD急性増悪の頻度が低下しQOLも改善したと著者らは述べています。少数の患者でやはり聴力低下が生じました。そして当然ながら、この試験によって病原微生物の薬剤耐性様式が変化する可能性もあることを付言してあります。
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2011
08.20

心房細動~AFFIRM研究、RACE研究、J-RHYTHM試験より~

 研修医の時にまとめたものです(山下先生と村川先生の本を参考にしていました、確か)。心房細動の最低限の治療について。

 この分野は日進月歩なので、1-2年前のこの知識が少し古くなっているかも知れません。大きなパラダイムシフトが無い限り、自分の心房細動治療はこのままupgradeされずに行くのだろうと思います。ご了承ください。。。また、以下にある治療法で生じた不都合などについては、一切の責任を負いかねますので...。決まり文句ですが。


★定義
初発心房細動:初めて心電図上心房細動が確認されたもの。心房細動の持続時間を問わない。
発作性心房細動:発症後7日以内に洞調律に復したもの。
持続性心房細動:発症後7日を超えて心房細動が持続しているもの。
永続性心房細動:電気的あるいは薬理学的に除細動不能のもの。

 心房細動はもはやcommon diseaseとなっているため、一般医でもコントロールできるようにしておく必要がある。

 心房細動の治療としては

①洞調律維持(心房細動を起こさせない:抗不整脈薬・アブレーション)
②心拍数調節(心房細動中の心拍数をコントロール:ジギタリス、β遮断薬、Ca拮抗薬など)

の2種類。しかし、どちらを選んでも同じ!

 現時点のエビデンスでは、どちらの治療をしても生命予後、脳梗塞、心不全において有意差はない。

 では、心房細動患者をどう診ていくか。

『背景因子を捉える→脳梗塞を予防する→心房細動を治療する』という流れが最も合理的。

★まずは、背景因子
 心房細動自体をどう治療しても予後は同じ。大事なのは背景因子。

 背景因子としては、心不全、高血圧、糖尿病の3つが大事。これらの治療なくして脳梗塞予防、心房細動コントロールは出来ないと考える。

 高血圧に関しては、ACE阻害薬、ARBが心房細動の発症・再発を抑えることが報告されている(確定ではない)。またスタチンも同様の効果があると言われるため、脂質異常症があれば積極的に使っていく。

☆初発心房細動:紹介するのは
 心不全、脳梗塞を併発している心房細動は予後が悪い。発症初期でこれらがあれば、専門医レベルの治療を要する。

 心エコーを依頼できる環境なら、弁膜症と肥大型心筋症の検索のために一度施行してもらう。

心不全:労作性呼吸困難、浮腫、胸部Xpで心拡大やうっ血などなど
脳梗塞:神経症状

 それ以外は一般医が治療すべきもの。

 ちなみに、初発心房細動の約50%は再発しないと言われる(CARAF研究)。

☆経過中:紹介するのは
 器質的心疾患(弁膜症や肥大型心筋症)、コントロール出来ない高血圧、コントロール出来ない糖尿病、甲状腺機能亢進症を有する患者。これらの病態の治療目的に紹介する。

★次に、脳梗塞予防
 心房細動による脳梗塞は約50%が発症1年以内に死亡。

 発作性心房細動であろうと慢性心房細動であろうと、脳梗塞発症率に差はないとされる(ACTIVE-W研究)。よって、脳梗塞予防は必要。

 心房細動による脳梗塞は赤色血栓からのもの。よって、ワーファリン治療が現在では最も有効。アスピリンorアスピリン+クロピドグレルの投与はワーファリンに劣る。では、ワーファリンを用いて予防すべき患者は

CHADS2スコアで1点以上
 Congestive heart failure:1点
 Hypertension:1点
 Age(≧75y.o.):1点
 Diabetes Mellitus:1点
 Stroke/TIA:2点

 目標PT-INRは1.6-2.6(目標2.0)が妥当なところ。

 現在治験中*)のダビガトランという抗凝固薬は、ワーファリンと同等の効果があり、かつ出血のリスクが少ないとされ期待(Dabigatran versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation:NEJMより)。

*:研修医当時はダビガトラン(プラザキサ®)が治験真っ最中でした。これで納豆がみんな食べられるようになるんだねと同期の間で話していました。腎臓悪いと使えないですけどね。後は心血管リスクを上げるのでは?とも言われ始めました。

☆外来でのワーファリン導入
 一般成人なら2mg、高齢者なら1.5mgほどから開始し(医者によってはもっと少なめから始めることも)、2週間後or効き過ぎるかもと思えば1週間後にPT-INR測定。PT-INR1.5未満なら1mg増量(高齢者なら0.5mgのことも)。1.5-1.6なら0.5mg増量。これを2週間ごとに繰り返す。微調整は、PT-INRが2.6以上なら0.5mg減量。2回連続で1.6を下回ったら0.5mg増量。大体の患者は2-5mgで落ち着く。

 ワーファリンの副作用には、当然のことながら出血がある。ワーファリン治療下での脳内出血発生率は、約0.6%/yrとされる。この脳内出血を起こしやすいリスクを持っている患者(年齢、心不全、糖尿病、肝・腎疾患、初発心房細動)ではワーファリン導入はゆっくりと行う。

★最後に、心房細動の治療
①洞調律維持(心房細動を起こさせない:抗不整脈薬・アブレーション)
②心拍数調節(心房細動中の心拍数をコントロール:ジギタリス、β遮断薬、Ca拮抗薬など)

 どちらでも同じ。Patient-Basedに考えていく。動悸や息切れが酷いという訴えなら①を選択してみる価値はある。色々試してみて、どれが良かったか患者に聞いても良し。

 症状も全て心房細動によるものとは限らない。また、心房細動が起こっていても症状がない時も。若年者では、症状と心房細動の一致度が高いと言われるので、若年者には①をトライしても良い。

 また、初発心房細動では患者が不安になっていることが多い。それでも『背景因子を捉える→脳梗塞を予防する→心房細動を治療する』の流れは崩さない。脳梗塞予防がきちんと出来るまでは、不安や症状に対してとりあえず②と精神安定薬(メイラックス®など)で対処。実際には、背景因子治療や脳梗塞予防を行っているうちに心房細動が停止することが多い。止まった場合は、脳梗塞予防まで行ない、抗不整脈薬は投与せず3-6ヶ月様子見。それで再発なければその時点で脳梗塞予防も中止する。

☆抗不整脈薬はどれを使う?
 抗不整脈薬は、使い始めたら長い下り坂を降りるような印象。Do No Harmの精神で臨む。心房細動で使うのはⅠ群。Ⅲ群には手を出さない。

*Ⅰ群(Naチャネル遮断薬)
ピルジカイニド(サンリズム®)、ジソピラミド(リスモダン®)、フレカイニド(タンボコール®)、シベンゾリン(シベノール®)、プロパフェノン(プロノン®)、アプリンジン(アスペノン®)、キニジン、プロカインアミド(アミサリン®)
*Ⅲ群(Kチャネル遮断薬)
アミオダロン(アンカロン®)、ベプリジル(ベプリコール®)、ソタロール(ソタコール®)

Ⅰ群のうち、代謝(腎or肝)、半減期(短or長)を考慮し2つほど知っておく。代表例は、ピルジカイニド(サンリズム®:腎・短)とフレカイニド(タンボコール®:肝・長)とアプリンジン(アスペノン®:肝・長)。

 サンリズム®なら100-150mg/day(75歳以上なら75mg/day以下に)、タンボコール®なら100-200mg/dayで。発作の起きる時間帯に一定の傾向があるなら発作時間帯に合わせて半減期の短いサンリズム®、発作時間帯がバラバラなら半減期の長いタンボコール®やアスペノン®を。

 心機能に不安があるなら特にアスペノン®が良い(20mg×2/day)。初心者が手を出していいお薬。Ⅰ群は心不全や器質的心疾患では禁忌(でもそういう患者は最初の方で専門医におくっているので、ここでは問題にならないはず)。アスペノン®は器質的心疾患があっても何とか使える。

☆心拍数の調節は?
 症状に乏しい、1年以上続いている慢性心房細動、抗不整脈薬を望まない患者、抗不整脈薬が無効、洞調律維持をするかどうか迷うけどとりあえず治療はしたい、などの時は心拍数調節の出番。

 目標心拍数をどこにするかは、実はエビデンスがない。ガイドラインでは安静時60-80/min、軽度運動時90-115/minとなっているが、経験則である。

 心房細動そのものの治療は、①でも②でも満足度を上げるためなので、最終的には症状や患者との相談で決める。NEJMにも、心拍数管理は緩やかでも転帰が変わらなかったという論文が出ている(Lenient versus Strict Rate Control in Patients with Atrial Fibrillation)。

 薬剤を大きく分けると、ジギタリス、β遮断薬、Ca拮抗薬の3種類。ジギタリスはRACE研究で予後不良因子の1つとなってしまっているので、あまり使いたくない。出番は血圧が低い時くらい?実際に使うのはβ遮断薬とCa拮抗薬であり、年齢で使い分け。

 若年者では活動量が大きく、薬物服用回数が少ない(症状に乏しければ1日2回以上の服薬はコンプライアンス上難しい)、半減期が長いことからβ1遮断薬を。メインテート®2.5mg/dayあるいはテノーミン®25mg/dayあたりから。

 高齢者では活動量が小さくなる、β遮断薬の半減期が予想以上に長くなってしまうということからCa拮抗薬のベラパミル(ワソラン®:微調整もしやすい)で開始。ワソラン®120mg/day(分3)あたりから。

★とりあえずのバイタル安定発作性心房細動治療(QRS幅が狭いものに限る)
*3-step treatment!
 第1に、患者の全体像を把握。心不全があるか、その他背景因子となる高血圧、糖尿病、脳梗塞の既往、あるいは甲状腺機能亢進症を思わせる症状があるかをチェック。第2に、CHADS2スコアを見て脳梗塞のリスクを評価。第3に症状を取り除くための薬物治療(洞調律維持、心拍数調節)。

*背景因子なし+リスクなし→停止させる
 経口でサンリズム®100mgを頓服してもらって1時間待つ(止まるのは50%ほど)。その後もう1度ECG検査。止まっていたら頓用として処方(pill-in-the-pocket療法)に。止まっていなければ諦める。患者の不安強ければ心拍数調節(β遮断薬やワソラン®)(+精神安定薬)を。翌日もう1度来てもらってECG再検。ほとんどは自然停止している。

*症状の軽い患者、背景因子が多い、スコア2点以上、発症時間のはっきりしない患者→焦って止めない
 心拍数高ければワソラン®120mg/day分3あるいはβ遮断薬(メインテート®2.5mg/day分1あるいはテノーミン®25mg/day分1)を処方して翌日受診。ほとんどが自然停止している。若年ならβ遮断薬、高齢者ならワソラン®を選択する方向に。

*発作対処後
 まず背景因子を探ってそれを是正。スコア1点以上なら血圧是正の後ワーファリンを。

*発作予防
 上記薬剤を頓服として持たせて、何もしないでどうなるか?を観察。「発作があったら来てね」と。

*抗不整脈薬の継続投与
 症状や患者の要望次第。薬剤の半減期を考え、発作の起きる時間帯に一定の傾向がある場合には、その時間帯に合わせてサンリズム®100-150mg/day(75歳以上なら75mg/day以下に)、発作時間帯がバラバラならタンボコール®100-200mg/dayに。心疾患なきこと前提。

*静注をする必要はないが、もしすることになったら
 フレカイニド(タンボコール®)50mgを生食で10mLに希釈し2mL/minで(2Aまで)。
 ピルジカイニド(サンリズム®)なら50mgを生食で10mLに希釈し5分で(2Aまで)。
 ジソピラミド(リスモダンP®)なら50mgを生食で10mLに希釈し5分で(2Aまで)。
 シベンゾリン(シベノール®)なら70mgを生食で10mLに希釈し5分で(2Aまで)。

 1つの静注抗不整脈薬で停止に失敗したら、続けて他剤を試みることは、血行動態や催不整脈作用の面で望ましくない。
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2011
08.16

胸水の培養はどうする?

 胸水を血液培養ボトルに入れて培養すべき?というのは、よく話題になります。これについて、1つの回答を示した論文がこちら。

Blood culture bottle culture of pleural fluid in pleural infection
Thorax 2011;66:658-662

 胸腔内感染症はよくみられますが、特にグラム陰性菌、ブドウ球菌、嫌気性菌混合感染による場合は30%以上の疾病率死亡率とされています。

 通常の胸水培養は40%で陰性となってしまうので、その場合は広域で押し続けなければいけません。そのうち偽膜性腸炎になったり、広域でも逃している菌があったり、良くあるのは投与量や投与間隔が不適切で十分に効力が出なかったり。。。

 起因菌がつかめれば、こちらはホッとします。そこで、血液培養ボトルに胸水を入れて培養陽性率が上がるかどうか?を調べています。胸腔内感染者において、好気性/嫌気性の血液培養ボトルにベッドサイドで2ml、5ml、10mlの胸水を注入。

 結果は、通常培養に血液培養ボトルを加えることで、病原菌の同定率が37.7%から58.5%へ上昇しました(difference 20.8%, 95% CI difference8.9% to 20.8%, p<0.001)。

 血液培養の場合と異なり、注入量に関して差は見られませんでした。

 結論は、胸水を血液培養ボトルに注入することで、通常培養に加えて病原菌同定率が上昇する、というもの。

 皆さんも、血液培養ボトルを活用しましょう。

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