2010
12.24

音を聴くと、何かが分かる

Category: ★研修医生活
 聴診。皆さんは、聴診している時にどこを見ていますか?


「良いかぁ、聴診している時は頸静脈を見ろ!」

なんて上の先生から言われますが、聴診中に一度も見た試しはありません。

 他の人はどうしているのか??聞くと

「意識したことない」

が多数。ですよねー。。。

 自分は、眼を瞑って気合を集中させています。患者さんの斜め横に座り(大滝詠一みたいね)、眼を瞑り少し顔を下に向けて、じーっと。。。

 多分、眼を瞑っても瞑らなくても聴こえ方に違いはないんでしょうが、いつの間にか癖になってまして。

 その方法で良かったなと思うことはなかったのですが、やめときゃ良かったと思うことは一度。
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 子どもの患者さん。風邪っぽいということで救急外来受診。

 PAT問題なし。営業スマイルを浮かべながらお母さんから問診。そしてお母さんにだっこされたお子ちゃまの聴診。

 いつものように眼を瞑って聴きます。HRもRRもこの歳ならこんなもんでしょう、呼吸音も左右差ないし、変な音も聴こえないし。良いねーと思っていたら

ブオッ

という変な音が聴診器を介して耳に伝わりました。「ブオッ??何?何?」と思った次の瞬間


へっくちょ!


 くしゃみです。。。

 自分の髪と眼鏡と右顔面に少し冷たい液体が直線的に打ち付けられましたが、それが何かは想像にかたくありません。もうバイオハザードじゃありませんか。。。

 ブオッはくしゃみの前の息を吸った音だったのね。。。

 もうお母さんは

「きゃーせんせーっ!すいません!」

恐縮しております。顔を上げると、眼鏡に付いている水滴の向こう側に、鼻水だらっだらにして顔色ひとつ変えずにこちらを見据えているお子ちゃまが。何だその人の心を見透かすような、自分を憐れんでいるその2つの瞳は。

 看護師さんはすぐに髪と顔を拭いてくれたんですけど

「やだもー先生、大丈夫ー?www」

 笑いっ放し。

 多分、自分も第3者なら間違いなく笑ってるなーと思いながら、当事者であることの不幸を嘆きました。


結論:目を瞑るのはダメ


 でも癖でね、今でも眼ぇ瞑ってます。。。ブオッて聞こえたらすぐ逃げるよー。
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2010
12.16

プロカルシトニンよさらば?新規バイオマーカー花盛り

Cardiovascular and Inflammatory Biomarkers to Predict Short- and Long-Term Survival in Community-acquired Pneumonia
Results from the German Competence Network, CAPNETZ
Am J Respir Crit Care Med Vol 182. pp 1426–1434, 2010

 心不全の評価で有名になりつつあるMidregional proadrenomedulin(中央領域プロアドレノメデュリン:MR-proADM)を筆頭に、新規バイオマーカーが相次いで感染症の世界に参入しています。これらのマーカーで最も有効なのは何なのか?一つの回答となるスタディが市中肺炎(CAP)で行われました。

 このスタディの目的は、短期あるいは長期的なCAPの死亡率を予測するかどうか、となっています。

☆Methods
 728人のCAP患者 (59.0±18.2 歳) を登録。調べたマーカーは以下。
・midregional proadrenomedullin (MR-proADM)
・midregional proatrial natriuretic peptide (MR-proANP)
・proarginin-vasopressin (copeptin)
・proendothelin-1 (CT-proET-1)
・procalcitonin (PCT)
・C-reactive protein(CRP)
・white blood cell(WBC)count
 入院の適応はCRB-65によって決め、180日間のフォローアップを行いました。短期死亡率は最初の28日間におけるあらゆる原因による死亡、長期死亡率は29日目-180日目におけるあらゆる原因による死亡としてます。

☆Results
 短期死亡率は2.5%、長期死亡率は5.1%でした。

 入院時、CRB-65による重症度と各種マーカーは相関していました。28日以内、180日以内に死亡した患者ではCRB-65はより高いスコアであり、同様のことが新規バイオマーカーにも言えました。しかし、CRPとWBCは有意ではなかったとしています(P>0.05)。

Table 2



 28日間と180日間の生存において単変量Cox回帰モデルを用いると、各種マーカーのうちMR-proADMが抜きん出て良い指標でした。更に、MR-proADMとCRB-65を組み合わせるとより有用であったとしています。 

Table 3 



Figure 2



 共存症、CRB-65、MR-proADMを含んだ多変量モデルにおいて、長期生存を予測する上でMR-proADMは強力で独立したマーカーでした。

Table 4



 MR-proADMの値は0.959pmol/Lを超えると明らかにリスクが上昇しました。この値では、28日での死亡率を予測するための感度77.8%、特異度76.3%でした。生存可能性は、高リスク(>0.959pmol/L)では92.3%、低リスク(≦0.959pmol/L)では99.3%でした。

 180日では感度70.3%、特異度77.4%でした。同じく生存可能性は高リスクでは85.7%、低リスクでは98.0%でした。

☆Discussion
 新規マーカーのうちMR-proADMが最も優れたマーカー。そして、CRB-65にMR-proADMを組み合わせると28日、180日におけるアウトカムの予測値を強力に改善します。

 以前にもMR-proADMを用いたCAPのスタディは行われていますが、今回のスタディは180日間という長期死亡率をも評価しています。この点において、MR-proADMは最良のパフォーマンスを示しています。このマーカーに他のマーカーを組み合わせても有効ではありませんが、CRB-65を組み合わせることで予測の正確性が上昇するとしています。

 PCTは細菌感染の診断的マーカーであり抗菌薬治療のガイドに用いられます。しかし、長期死亡率を予測するものではありません。対して新規バイオマーカーは心不全でも上昇することが知られており、CAPによって心血管疾患や腎疾患が増悪した場合にもそれは当てはまります。更にADMには様々な作用があり、抗炎症作用や抗菌作用も有しています。こういったことが、今回の結果につながったかもしれません。

★ADMと敗血症
Mid-regional pro-adrenomedullin as a prognostic marker in sepsis: an observational study.
Christ-Crain M,et al. Crit Care. 2005;9(6):R816-24. Epub 2005 Nov 15.

Circulating precursor levels of endothelin-1 and adrenomedullin, two endothelium-derived, counteracting substances, in sepsis.
Schuetz P, et al. Endothelium. 2007 Nov-Dec;14(6):345-51.

 ADMは52のアミノ酸からなるペプチドで、CALC gene familyに属します。免疫調節、代謝作用、血管拡張作用、殺菌作用を有します。ADMそのものは血中から速やかに除去され、また結合蛋白によりマスクされてしまうため測定は非常に困難。よって、より安定したMR-proADMを測定します。敗血症では広く発現し大量に合成されます。エンドトキシンやproinflammatory cytokinesが多くの組織でADM遺伝子の発現をupregulateしています。敗血症では腎でのクリアランスが減少することも、血中濃度が上昇する一因とも言われています。

 APACHE II scoreと組み合わせることで予後の予測がより正確になる可能性があるとされています。

★個人的意見
 プロカルシトニンは細菌感染か否かの判定と、値を経時的に追うことで抗菌薬治療のガイドとしての役割に使う様になるのかしらと思ってます。

 重症度や予後については、MR-proADMがいちばんだと思います。このマーカーと臨床所見を組み合わせて治療介入をより強めるべきかとか、経時的に追跡するとどうなるのかとかは、まだ分かりません。

 CRPは使いようによっては有用という感じ。やWBCはアテにならないというのは、今回のスタディで改めて分かりました。

 でもこれらのマーカーの利用は、正しい問診と診察がベースにあってこそだというのは論ずるまでもありません。高価な検査であるMR-proADMが臨床情報とバイタルからなるCRB-65と同程度の有用性というところからも、それは伺えるでしょう。
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2010
12.10

ヘインズ神経科学という教科書

Category: ★本のお話
 神経科学、というと日本の医学部ではあまり聞きなれないところかもしれません。

 神経解剖や神経生理などなど、神経系全部乗せ!という分野。それを扱った教科書は日本語で書かれたものはあまりなく、あっても分野分野で薄い所が多いです。やはり頼るのは英語の本、もしくは訳書。

 学生の頃は”from neuron to brain”という古典的教科書を図書館でちょこちょこっと読んだ記憶があります(懐かしいなー)。3週間ちょっとで挫折しましたけど。。。

 で、今回紹介するのは「ヘインズ神経科学」。

 特徴は、綺麗なイラスト!そして、その綺麗なイラスト任せにしないできちんと説明してあるところ。親切なつくりです。

 欠点は探そうとして探すと、、、

多著者なので、統合性という点ではどうかしら(これはどの本にも言えます)。
電気生理の説明が少し弱いかもしれませんが、神経伝達の部分は「なるほど!」と思うところすごく多し。自分はもともと電気生理学理解がダメダメなので、それを差し引いてくださいまし。
神経系の発達は、自分には難しかったです。。。その分野を良く分かっていないので、ヘインズを読んでも適正な理解は出来ないのかなと思います。

 こんな感じ?

 他の分野は読んでて面白いと思わせてくれます。

 写真とグラフィックは数ある神経科学の本の中でも一番ではないでしょうか。これだけでも買う価値ありかもしれません。アトラスとしても使えてしまえそうな。。。


 ただし、お高い。。。かつハードカバー。。。


 原著は1万円しないんですが、この訳本は21000円とちょい高めの設定。学生時代にこの値段に手が出るか?と言われると、、、。

 でも日本語はなめらかで、ほとんどストレスは感じません。


 神経興味ないなーという学生さんには、「神経解剖カラーテキスト」とか「イラスト解剖学」の神経の章とか、サクっとまとまった教科書で良いかと。

 将来は神経内科、脳神経外科、もしくは神経の基礎研究!という学生さん。神経解剖、神経生理、神経薬理、アトラスなどなど数冊買うなら、質の高い「全部乗せ」のヘインズも候補の1冊にいかがでしょうか??

 同じ神経科学では、丸善から大御所「カールソン」が出てますし、西村書店からはその名もズバリ「神経科学」が出てます。この2冊とも自分はじっくりと読んでいないので良い比較は出来ません。あしからず。。。ただ、イラスト関連と訳の上手さは「ヘインズ」が一番かなと思います。

ヘインズ神経科学―その臨床応用ヘインズ神経科学―その臨床応用
(2008/12)
不明

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