2010
11.21

アミノグリコシドの使い方

★アミノグリコシド、やればできる子

 最も古いクラスの抗菌薬の1つであるアミノグリコシド。スペクトラムが広くてより安全な抗菌薬が出てきている今、必要性はあるのか?

 アミノグリコシドの種類はStreptomyces spp.から作られたもの(streptomycin, neomycin, tobramycin)やMicoromonospora spp.から作られたもの(gentamicin)、そしてin vitroで合成されたもの(netilmicin, amikacin, arbekacin, isepamicin)がある。

 日常的な使われ方としては、ゲンタマイシンは高度耐性ではない腸球菌感染に対しβラクタムなどと共に用いられ、トブラマイシンやアミカシンはこのクラスで最も強力な抗緑膿菌活性を持つため、緑膿菌感染症に用いられる(アミカシンはゲンタマイシンやトブラマイシンよりも菌が産生する酵素に安定で、後2者に耐性の菌もアミカシンに感受性を示すことが多い)。アルベカシンは日本で作られ、抗MRSA薬として承認されている。

 アミノグリコシドは中性のpHで陽性荷電となり、外膜を障害する。そして酸素依存性に細胞膜から細胞内へ輸送される。30Sリボソームサブユニット内にある16SrRNAのaminoacyl siteに結合することで活性を持つ。迅速な殺菌能力を持ち、濃度依存性の作用を示すと共に、βラクタムや他の細胞壁作用型の抗菌薬とのシナジー効果を持つと言われている。

 さらに、強力なPAE(Post-Antibiotic Effect)を持つ。PAEの機序は不明であるが、これにより、血中から消失しても最長7.5時間まで菌の増殖を抑制し、それはグラム陰性桿菌とS. aureusで示されている。

 主な副作用は用量依存性の腎毒性と聴器毒性。腎毒性は近位尿細管細胞にアミノグリコシドが蓄積することによる。この蓄積は一定の濃度を超えると止まり、さらに投与間隔が広がることで尿細管腔内にアミノグリコシドが戻っていく。よって1日1回投与では腎毒性のリスクが低いとされている。腎毒性の出現は大体投与5-7日以降に見られる。聴器障害については、内耳の有毛細胞と三半規管の細胞が障害されることによる。どちらもかなり進行してからでないと気づかれにくい。1日1回投与によるリスク軽減は、報告によりまちまち。

 神経筋ブロック作用は稀だが重篤になりうる。神経筋の伝達を障害する病態や治療下で使用すると生じる。

 前述のように、アミノグリコシドは細胞内に入り30Sリボソームに結合することでタンパク合成を阻害する。しかし、30Sリボソームの活性部位内の結合部位は、同じアミノグリコシドでもそれぞれ異なる。よって、耐性は1回の獲得で全てのアミノグリコシドに対して得られるわけではない。さらに、治療中に耐性を持つことは、特に他の抗菌薬と共に用いられている時は稀である。

 腸球菌や嫌気性菌は低い濃度のアミノグリコシドに対してもともと耐性であるが、感受性のある菌は不活性化酵素を産生する形で耐性を得る。その酵素(acetyltransferase, phosphotransferase, nucleotidyltransferaseなど)はプラスミドにコードされた耐性遺伝子から作られる。他には排出ポンプ機能の亢進や16SrRNAの点突然変異などが耐性機構として見られる。

 アミノグリコシドの抗菌活性は、ほとんどが濃度依存性である。ピークの濃度が上昇することで抗菌効果が上がり、トラフ濃度が低下することで腎毒性の発生が抑えられる。よって、1日1回投与がベストな選択であると言える。しかし、菌種によって抗菌特性は異なってくる。例えばS.aureusでは濃度を2×MIC以上に上げたところで活性を改善することはできない。このような場合、ゲンタマイシンは時間依存性のメカニズムでその活性を発揮するようである。よって、ブドウ球菌による心内膜炎では1日複数回投与の方がより好ましい。現在のところ、アミノグリコシドはグラム陰性菌の感染に対しては1日1回、グラム陽性菌の感染に対しては1日複数回(2 or 3回)を選択すべきである。これはグラム陽性菌に対してのPAEが短いことによると言われる。
組織移行性では、脳脊髄液や胆道/気道の分泌物には浸透しづらく、対して尿中には良好な濃度上昇が見られる。

 現在、アミノグリコシドは重症感染症(敗血症、院内肺炎、複雑性尿路感染症、好気性グラム陰性桿菌による腹腔内感染症)のエンピリックな治療として他剤と併用して用いられている。しかし、長期間の治療が必要な場合、感受性が分かり次第アミノグリコシドからより毒性の低い抗菌薬に代えるべきである。

 多剤耐性菌の出現により、アミノグリコシドはポリミキシンと共に再評価されている。特にESBL-producing Enterobacteriaceae、Pseudomonas、Acinetobacterなどによる重症感染症において当てはまる。

 アミノグリコシドはβラクタムなど他の抗菌薬と共に用いるべきであるとする考えが多い。確かに、アミノグリコシドと細胞壁活性を持つ抗菌薬との相互作用は実験室レベルでは何度も確認されている。Enterobacteriaceae, Pseudomonas, staphylococciに対してはβラクタムへの耐性を阻止するだろう。しかし、MRSAに対してglycopeptidesとの併用は、aminoglycoside acetyltransferaseやphosphotransferaseを誘導してしまい好ましくない。

 シナジーは確かに科学的には支持されている。だが、併用群とβラクタム単剤群での効果比較を行った最近のトライアルでは、併用群の価値を見いだせない状態が続いている。併用群は同等の効果を示すが副作用がより多く発生している。また、緑膿菌感染において併用群では耐性の出現や予後の点で優位性を示せていない。

 感染性心内膜炎の治療において、アミノグリコシドは長きに渡り頼みの綱とされている。現在のガイドラインではゲンタマイシンと細胞壁活性を持つ抗菌薬との併用が勧められている。だが、実験モデルやin vitroでは、viridans group streptococcusやstaphylococciによる心内膜炎におけるシナジー効果が確認されているものの、臨床において優位性はまだ証明されていない。一方、高度耐性ではない腸球菌による心内膜炎では、その可能性は示唆されている。

 ガイドラインにおいては、ゲンタマイシンを3mg/kg/dayで
①viridans group streptococcus:1日1回を2週間
②staphylococci:1日2-3回を自然弁で3-5日、人工弁で2週間
③高度耐性ではない腸球菌:1日3回を4-6週間(ペニシリンの治療期間)
④高度耐性の腸球菌:使用せず
⑤HACEK:使用せず
⑥培養陰性:1日3回自然弁でを4-6週間、人工弁で2週間
としている。

 多くの医師はアミノグリコシドを積極的には使用しない。その理由は、耐性の出現と毒性にあると言われる。だが、それは本当にほとんどの例でアミノグリコシドが魅力的ではないと言えるのだろうか。

 耐性について。SENTRY antimicrobial resistance surveillance programmeによると、アミノグリコシドは依然としてE.coli, K.pneumoniae, Enterobacter spp.といったグラム陰性のブドウ糖発酵菌に対して良い活性を持っている。感受性は、アミカシンには平均97.3%、ゲンタマイシンには90.6%、トブラマイシンには89.8%となっている。アミカシンを上回る感受性は、カルバペネムで認められるのみ。イセパマイシン(isepamicin)においては、さらに良好な活性を示すと言われている。

 アミノグリコシドの中には、現在最も脅威とされている3種のグラム陰性菌であるAcinetobacter baumannii, P.aeruginosa, ESBL-producing Enterobacteriaceae(E.coliやK.pneumoniae)に対し、in vitroでかなりの活性を持つものがある。ブドウ糖非発酵グラム陰性菌であるP.aeruginosaやAcinetobacter spp.などのアミカシンへの耐性は、世界のほとんどの地域で許容できる範囲。残念ながら、ゲンタマイシンやトブラマイシンはこれらに対して有効ではなくなってしまっている。

 臨床的に重要なのは、多剤耐性のグラム陰性菌の大部分に対して活性を保っている数少ないクラスの抗菌薬の1つにアミノグリコシドが含まれていることである(他にはカルバペネムやポリミキシンがある)。そして、将来はより脅威となってくるであろうStenotrophomonas maltophiliaに対しても非常に良い活性を示す。

 以上から、耐性に関してはほとんどのアミノグリコシドにおいて重大な問題とはなっておらず、また治療期間中の耐性の獲得も多くはない。

 毒性、特に腎毒性と聴器毒性について。大きなステップは腎機能のモニタリング戦略と1日1回投与法である。1日1回投与の安全性は、最近では重症患者でも示されてきている。尿細管細胞由来の酵素(alanine aminopeptidaseやN-acetyl-β-D-glucosaminidase)はアミノグリコシドによる腎障害の早期発見に対して高感度、高特異度を示す。面白いことに、サーカディアンリズム・タンパク摂取・低アルブミン血症がアミノグリコシドによる腎毒性と関連性があるとも言われている。聴器毒性に関しては遺伝的要素が絡んでいることが示唆されており、この副作用を克服することにつながるのではと期待されている。

Do we still need the aminoglycosides?
International Journal of Antimicrobial Agents: Volume 33, Issue 3, March 2009, Pages 201-205

Once –daily dosing of aminoglycosides: review and recommendations for clinical practice
J Antimicrob Chemother. 1997 Jun;39(6):677-86

Aminoglycosides
UpToDate

Infective Endocarditis: Diagnosis, Antimicrobial Therapy, and Management of Complications: A Statement for Healthcare Professionals From the Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis, and Kawasaki Disease, Council on Cardiovascular Disease in the Young, and the Councils on Clinical Cardiology, Stroke, and Cardiovascular Surgery and Anesthesia, American Heart Association: Endorsed by the Infectious Diseases Society of America
Circulation. 2005;111:e394-e434
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