2009
04.28

帰る場所って?

Category: ★研修医生活
 いわゆる“帰る場所”とは何なのでしょう?「毎夜寝る場所」とも考えられます。「日常生活の大半を過ごす場所」とも言えそうです。

 自分の場合、前者と考えると概ね“寄宿舎”ということに。

 ですが、後者ですと完全に



“研修医室”



になります。


 名古屋大学医学部附属病院では、1年次の研修医室はちょっと環境がよろしくなく(古くて汚い)、学生が見学に来ても見せたくない部門No.1となっています(今日1人奈良から見学に来ましたけど)。用事があって訪ねた2年次の部屋は清潔感溢れていてとてもキレイ。

 でもねー、住めば都とは言ったもので、きったない部屋も妙に居心地が良くなってしまいました。寄宿舎には本当に寝るためだけに帰っています。最近は研修医室に泊まることも増えてきました…。その際、アンギオ室の術衣を借りて寝間着代りにしてることは秘密です。

 一応、室内の様子を1週間くらい前に撮りましたので、研修医が生活している空間をご覧下さい。



 ↑1年次15名の室内。ここの特徴として、歯科の研修医8名も一緒のお部屋なんです(写真には写ってませんが)。

 備品はネット環境にあるPCが3台(うち1台故障+1台虫の息)、電子カルテ記載用PCが2台、冷蔵庫1台、電子レンジ1台、映らないテレビ1台、プリンター2台、エアコン2台、ハロゲンヒーター1台、ソファ2つ。この前、大きなテーブルを1台よそから持って来ました。

 各個人に有線LANを設置しているということは残念ながらありませんが、共有のPCでUpToDateやDynaMedは使い放題!素晴らしいです(追:有線LANがO.K.になりました 2009/11/12)。



 ↑で、冷蔵庫の中。ビールばっかりというのはナイショです。丁度製薬会社の説明会で出たのが余ったから、1年数名で嬉々として持ち帰っただけです。いつもこんなにあるわけじゃないのよ!



 ↑冷凍庫は、完全に自分が私物化…。近くのイオン(24時間営業)に夜な夜な訪れ、半額になったお惣菜やお弁当を買って、冷凍庫に詰め込みます。仲間からはやや白眼視されてそうな。。。夕飯はここから引っ張り出して、レンジでチン!して食べてます。一人暮らしのダメな男の典型ですね。。。。。。



 ↑お菓子。皆で食べてます。買ってるのは自分(冷凍庫占拠してるお詫び)。



 ↑仮眠ソファ。疲れたらココに避難。自分は大体ここで寝てまして、代々洗濯されてなさそうなお布団と枕が疲労に溺れた身体を掬い上げてくれます。ただ、向かいの仮眠室を事務の人がお掃除してくれるらしく、綺麗になったら寝場所も交代。



 ↑自分の机。もはや机になってません。写真には写ってませんが、本が奥にもう1列あり、向かいの人の領土にやや侵攻してまして、ちょっとした攻防戦を繰り広げています。この2,3日は机にバナナをセットしてます。



 ↑ちなみにコレが自分の院内PHSです。これを持つと「医者になったな~」と最初は感じますが、今の段階で既に見たくもありません。。。呼び出し音が鳴ると電源ボタンを押してしまいたい衝動に駆られ、それを抑え込んでも今度は「とんでけー!」とばかりに遠くに放り投げたくなり…。



 とまぁ、お世辞にもキレイとは言えない研修医室ですが、1年次みんな仲良く研修してます。

 環境も大事だけど、やっぱり連帯意識ってのもそれ以上に重要だなと、今感じてます。

 学生の皆さんも研修病院を色々と考え中でしょう。でもマッチングで希望通り行かなくとも、信頼しあえる仲間がいれば素晴らしい研修が出来るんじゃないかな、と自分は楽観視してます。

 後は洗濯機とシャワーさえ研修医室に出来てくれれば本気で移住しそうです。


 でもって、30日の木曜日に、TBSの『朝ズバッ』が研修医の生活の取材に来ます。主に当直を撮るそうなので研修医室に入りはしないと思われますが、植村先生からは「見られる位には掃除しとくように」との御司令。冷蔵庫のビールが不安材料かしら(冷凍庫の中も?)。。。

 ちなみにその日の当直は自分ではありません。セーフ!


 そして、明日当直なので今日はしばらくしたら寄宿舎に帰ります。。。。

 この前の当直では患者さんがひっきりなしに来て、1時間も眠れなかった…。明日は来ませんよーに!昨日当直の人なんか、夜10時以降は1人も来なかったんですよ!うらやましー。





 追:↓本日の机。先週からは明らかな増悪傾向を示しています。



 ↓そして収まりきらず、精神科の本は共有の本棚へ転移。バナナも一緒。





 もう、完全な自由人かも。

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2009
04.23

移り行くt-PAの使い方

 脳梗塞の治療で名を馳せるt-PA。これはプラスミノゲンを限定分解し、プラスミンに活性化する役割を持ちます。そしてプラスミンはフィブリンを分解し、線溶へと導く。

 「カタマリ?のしてやんよ!」と息巻いたt-PAは鳴り物入りで脳梗塞治療に参入してきました。期待も強かったのですが、惜しいことに時間の制限があります。


発症後3時間


 これがt-PAを使えるリミットとされています。

 それ以降だと虚血性の血管障害などによる頭蓋内出血により死亡率が増加。

 しかし、中には発症後3時間以降の患者さんでも少なからず効くことがあるんです。ECASS1, ECASS2, ATLANTISなどの研究によると、有効例が約40%、増悪例が約10%、変化無しの例が約50%と3つのグループに分けられるそうです。では、その有効例はどんな人々なのでしょう?40%も効くんなら、見過ごす手はありません。
その謎に対してMRIを使った研究がありまして、その名前をDEFUSE studyといいます。

Magnetic resonance imaging profiles predict clinical response to early reperfusion: the diffusion and perfusion imaging evaluation for understanding stroke evolution (DEFUSE) study.

 そこではペナンブラに着目。

 ペナンブラとは、脳梗塞の周りで血流が低下しているものの、神経細胞は生きている部位を指し、画像で「PWI(灌流画像)での血流低下部位とDWI(拡散強調画像)での高信号域の差」と定義されています。DWIでの高信号域は、不可逆な部位を意味します。

 そしてPWIによる血流低下部位の体積がDWIによる高信号域の体積よりも20%以上大きい場合、


PWI-DWI mismatch陽性


としました(つまり、ギリ生きている細胞が多い、ということ)。これから「ミスマッチ陽性群」、「ミスマッチ陰性群」、さらにPWIやDWIによる評価で、血流低下部位や高信号域が非常に大きい症例を「Malignant MRI pattern群」として3群に分類し、その予後を調べました。対象患者は、北米や欧州の大学脳卒中センターに入院した脳卒中患者の74人。発症3-6時間後のtPA静注による治療の直前、および3-6時間後にMRIを撮りました。

 その結果、ミスマッチ陽性群ではt-PAによる血栓溶解は予後を有意に改善しました。ミスマッチ陰性群ではt-PAによる血栓溶解は予後に影響しないかむしろ悪化させ、さらにMalignant MRI patternの患者さんでは血栓溶解で厳しい出血合併症を来たすのでは、ということになりました。

 以上から分かることは、発症後3-6時間の症例でもPWI-DWIミスマッチ陽性群ではt-PAが有効!そしてPWI-DWIミスマッチ陰性群・Malignant MRI pattern群では、t-PAは再灌流障害を引き起こすことで予後が悪くなる、ということ。

 つ・ま・り、ペナンブラ領域(大きすぎない奴ね)のある患者さんなら、たとえ発症後3-6時間であっても治療効果が高いということを示しています。

 となると、発症後6時間以内でかつt-PAを積極的に使用している病院という条件下であれば、脳梗塞の患者さんにはCTだけでなく拡散強調も撮るべきとも言えそうです。

 ちなみにこの研究のサブ解析では、来院時の段階で大きなDWI volume(>90mL)、かつt-PAで再灌流を認めた場合に出血しやすいということになりました。

 その後、PWI-DWIミスマッチを調べず、単純に発症後4.5時間くらいでやってみたらどうなんよ?という研究が2008年の9月に2つ出ました。

 1つはLancetに出たもの。

SITS-ISTR study(the Safe Implementation of Treatments in Stroke (SITS), a prospective internet-based audit of the International Stroke Thrombolysis Registry (ISTR))

 ここでは、tPA治療を発症3時間後から4.5時間後に受けた患者664人と、現段階で認められている3時間以内に治療を受けた患者11865人を比較したんです。そうしたら、両者間での転帰に有意差がでなかったとのこと。

 もう1つは

Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke.

ECASS 3です。この研究結果は2008年9月25日の世界脳卒中会議で発表されて、同じくNEJMにも出ました。方法は、CTで脳出血や大きな脳梗塞を合併した例を除外した後に、患者をalteplase群とプラセボ群の2群にランダムに振り分けたというもの。

 結果としては821名がエントリーして418人がalteplase群に、403人がプラセボ群に割り振られました。alteplase群の平均投与時間は3時間 59分。予後良好群はalteplase群で有意に多く、今流行りのNNTは14となりました。副作用の怖い脳出血はalteplase群で高かったものの、死亡率はalteplase群とプラセボ群で有意差なし!そのほかの重篤な合併症も両群間で有意差は見られなかったんです。

 よって、3時間から4.5時間のt-PA投与では脳出血は増加するものの、有意に予後を改善するという結果になりました。おめでとう!

 これでもっと多くの人々がt-PAの恩恵を受け、回復していくのでしょう。ECASS3の結果を受けて、ヨーロッパ脳卒中会議等で現行のガイドラインの修正が検討されるそうです(日本はいつかしら?)。

 これらをまとめると


0-4.5時間ではt-PA投与可能。
4.5-6時間ではMRIを撮ってPWI-DWI mismatchが陽性であればt-PA投与可能


とするのが理想でしょうか。現時点ではまだ3時間以内の制限がかかっているので、臨床では使用できませんが、いずれコレに近い様なガイドラインが出来るのかもしれません。

 しかしながらt-PA投与までの猶予が増えたからといって「ゆっくりしていってね!!!」とお茶を患者さんに差し出すヒマが出来たかというとそういうことでもなく、早いに越したことはありません。




 ちなみに、このECASS 3を主導したドイツの先生は、t-PAのプロトコールを最初に作成したお方。彼が以前行ったヨーロッパのスタディは失敗していて、後発のアメリカさんが投与量をちょっと減らしたら成功してしまったという苦い経緯を持っています(日本もヨーロッパと同じ投与量で行って失敗しています)。

 だからこそ今回の4.5時間での成功は非常に嬉しいものだったらしく、脳卒中会議の発表の場ではNEJMを握りしめて「アメリカに勝ったぞ~!」とアピールしており、会場も珍しくスタンディングオベーション。白熱したものだったようです。

 研究者には意地の強さも必要だなと感じました。
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2009
04.17

慢性特発性分泌性下痢症

 慢性特発性分泌性下痢症(chronic idiopathic secretory diarrhea)という病気があります。病気自体の認知度も低いため有病率なども正確なものは分からず謎が多いのですが、慢性の下痢で悩んでいる患者さんに対して、ちょっと鑑別診断として入れておくべきかと思われます。ものの本によると、、、

starts suddenly, often after visits to nearby recreational areas, is frequently accompanied by acute weight loss, and persists for an average of 15 months before gradually improving.
It does not evolve into inflammatory bowel disease or irritable bowel syndrome.
Once patients recover, they resume normal health.
Management should consist of symptomatic relief with opiate antidiarrheals and reassurance that the disease will be self-limited.

とのこと。"often after visits to nearby recreational areas"っていうところから感染症っぽい雰囲気が出ているのですが、15ヶ月も続くなんて感染らしくない。

 体重減少+慢性下痢の組み合わせは結構怖いですが、ヒストリーがある程度特徴的なので、うまく診断できると医者も患者さんも安心ですね。実際の臨床では、



何か下痢がずっと続いてるし体重も激減だし、腫瘍かな~内分泌系かな~と思って検査しても意外に全部シロ。ひょっとして下剤乱用とか?でも患者さんは苦しんでるし、失感情症や精神的ストレスなどの心身症っぽい雰囲気にも欠ける。何だろう…。でも下痢続きじゃあQOLも低いし、とりあえず下痢を止めようかしら。と薬出してもナカナカ止まらない。結構シビアな印象。検査の絨毯爆撃しても捕まらないし。どーしたら良いんだろう、と思ってたら何か少し良くなってきて治ってしまった。。。何なのコレ。



といった感じが多いようです。

 治療でオピオイドという強力な武器を使っていますが、これは抗コリン薬なんかでは止まらないかららしいです。Colestipol{コレスチポール:商品名はコレスチド(Colestid)}などの胆汁排泄型高脂血症治療薬も有効なのでは、とされています。



 世の中には色んな疾患があるもんですね…。
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2009
04.06

さくら、きれい

 日本さくら名所100選というものがあります。誰かが何らかの基準に基づいて作成した100ヶ所の桜の名所。自分に関連した場所で言うと、北海道に2つ、新潟には3つあります。特に新潟県上越市の高田公園は4000本ほどの桜があり、日本三大夜桜の1つにも数えられています。

 現在住んでいる名古屋市はどうなのかしらと思い調べてみると、ここには100選のうち2ヶ所が存在することが判明(愛知県全体では4ヶ所)。1つは鶴舞公園という、名古屋大学医学部附属病院の前にある公園。100選なの?と若干フシギな感のあるところです。。。フツーに地下鉄乗る際に通ってますが、まさかランクインしていたとは…。結構キレイなことは確かですが。

 ですが、今回ご紹介するのは、もう1つの100選、山崎川四季の道。川沿いに、全長2km以上に渡り680本の桜が川の流れを囲む回廊を作っています。素晴らしいのは、ここは宴会禁止であること。桜を純粋に愛でるための名所なのです。夜は一部ライトアップされ、お昼とは異なる顔、ぞっとする美しさを見せてくれます。

 2009年4月4日、某国からミサイル並みの破壊力を有する衛星が発射されるはずだった日に行ってきました。それも昼と夜の2回。仮に名古屋にその衛星(笑)が落ちたら死ぬので、どうせ息絶えるなら桜の前でと、誰かさんの真似、、、ということでは決してなく、4日が満開ということで行っただけです(結局5日に発射されましたね)。天気が悪かったというのがちょっと残念でしたが、新潟ではいつもの風景。馴れてます。

 クリックすると別ウィンドウで拡大表示されるようにしてみましたので、大きめの画像でお楽しみ下さい(ウィンドウはドラッグで拡げる必要があります)。



~お昼~
☆続く桜






☆やや近づき





☆お芋の香りに誘われて



☆構成要素も




☆川から臨んで




☆ヒマかしら



☆沿道にて




☆何故か河村たかし議員



☆眼を落とすのもアリ



~夜~
☆誘うような美しさ






☆近づくのも怖い




 以前は記事で桜をご紹介した時は色々と言葉を並べ立てたこともありました。言葉で修飾するという事は、存在にお化粧を施すようなものです。でも、お化粧は元々キレイな顔にした場合、返ってマイナスに働くことになります。衰えを化かすためのものですから。イメージを変える、という手段に於いては別ではありますが。

 桜だってそうですね。あえて言葉を塗らずとも、その素晴らしさは万人がココロで理解できます。言葉では伝えられない、素の感覚はとてもとても美しいもの。そう思うようになりました。

 でも、化粧なんて、って言うと「女心が分からん野郎だ!」とか「オヤジくせぇ!」などという声が聞こえてきそうなので、この辺で撤退します。。。わー聞こえない聞こえない。
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