2006
07.28

現代社会のひずみ



 公衆衛生の授業の一環として、老人ホーム(緑樹苑というところ)へ行って参りました。

 そこは、自分を驚愕させるに足るほど想像とはかけ離れており、認知症患者が9割を占める施設。入所者の方々とお話でもしよう、と軽く考えていた小生にとって、この認知症による意思疎通の困難さは、最後まで解消されることのない、厚い壁のように聳え立つものでした。

 先日(といっても結構前ですが)、その施設実習のレポートを提出したので、駄文ながらそれをアップしたいと思います。眼前に広がる高齢社会の現状を、少しでも知って下されば幸いです。


1)実習した施設の概要
 緑樹苑は介護老人保健施設(老健)である。本施設の特徴は、医療ケアと生活サービスを一体的に提供でき(総合的・一体的サービス)、家庭的雰囲気を保ち、リハビリなどにより家庭復帰を目指し、自立支援を促し、地域や家庭との結びつきを重視したものと言える。

 提供しているサービスは、入所サービス100床、短期入所サービス8床、通所サービス12床。内容としては、社会復帰(家庭)のための作業や社会訓練の実施、日常の程度の医療、日常生活のお世話がある。ただし、必要以上に手助けするのは入所者の持っている能力を減衰させるとの考えであり、家庭復帰を目指す本施設の姿勢が伺われる。

 本施設の入所者は58歳から100歳までおり、かつ8~9割が認知症患者である。ほぼ満床状態であり、特養の待機者も多いと聞いた。

2)それを踏まえ、現在の老健の問題点
 老健は施設と在宅介護をつなぐ中間施設だが、特養の一時待機所になっている面があり入所期間が長期化するなど、その役割自体が揺らいでいる。

 目的の在宅復帰は3割程度とされる。2005年に医療経済研究機構が老健を対象に実施した調査によると、医療・リハビリ共に在宅での対応が可能な入所者は16%にも上る。しかし「家庭の事情」などで在宅に戻れず、「ついのすみか」である特養への入所を待つケースが少なくない(全国の特養待機者は約38万人)。また、老健の入所期間は原則3か月ごとに見直されるため、老健を転々とする渡り鳥のような待機者も珍しくない。家族の介護努力が足りないと言った批判もあるが、この介護と言うものは「キレイゴト」では済まないのである。

3)解決案と医師の役割
 これからの療養病床削減で、特養待機者が今まで以上に老健に押し寄せてくる。利用者のニーズに合わせて、中間施設という老健のあり方も見直すべきであろう。特養化を図る(低減制が廃止になったので長期入所が可能)、本来の目的である家庭復帰を重視する(日帰り介護や訪問看護など、退所後のケアを充実させる)といった様々なパターンが考えられる。

 医師の役割。最重要なのは認知症対策であろう。認知症患者は、変わりゆく自分を分かっているだけでなく、とても辛い事だと認識している。そこが認知症の残酷な点でもある。早期発見、精神的なケア、現在盛んに進んでいる抗認知症薬の開発など、患者さんを陰になり日向になり包み込む必要があると思われる。
 ある認知症患者の手記を紹介し、結びとしたい。我々は彼らの恐怖、切なさ、淡い心をしっかりと心に留めて進まなければならない。

題:長生きしても良い
最近物忘れをするように成った 物忘れは悪い事です 情けない事です 物忘れは人にめいはくかける事はない だけどいやです 思ふように言われないから 思う事が言われぬのが悪い事です 早く死にたいです それほど物忘れはつらいです 物忘れするのはもうどうしようもないがどうする事も出来ない どうする事も出来ない自分は早く死にたいと思います 思う事ができないから 物忘れする以前は思う事が出来た 畑仕事その他なんでも出来た 田麦ほり あでぬり シロかき その他 何かこなくても やる気があっても何をして良いかわからない する事を言ってもらったらまだやれる 何もする事がないから死んでも良いと思ふ する事があればまだまだ長生きしても良い

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