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12.31

ブログ紹介

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皆々様。
平素より大変お世話になっております、m03a076dです。
ご来店いただき、まことに有難うございます。
このブログは、研修医や若手精神科医を対象にした話がちらほら出てきます。でもメインは自分の気になったことをちょろちょろっと記すこと。最近はやはり本業の精神科の話が多くなってしまっています。

気楽にご覧下さいませ☆ (this article: last update Aug. 1. 2017)


*このブログではたまに患者さんとの会話例が出ています。その時に記載している基本的な情報、たとえば年齢や性別や受診の時期など、これらはプライバシー保護のため改変しています。また複数の患者さんの情報や会話内容を意図的に混ぜています*


☆思い立ってしでかしたこと
 はっと思ったらやはり実行。後悔することはあっても、いつかは懐かしい記憶となってくれるかもしれません。実行と言っても、他人様の迷惑にはならないようにしましょう。最近は名古屋な雰囲気を醸し出してます。

アポロチョコに捧げた情熱(ページの一番下の記事からお読み下さい)
ヒーターで焼き芋つくり(他にも焼いてます)
シュークリームの上手な食べ方~案~
大手コンビニのシュークリームを比べてみた
ジンギスカンのたれ比較
あんまきの比較
犬山城に行こうとしてみた
山崎川のさくら
スガキヤに行ってみた
熱田神宮のきしめんを食べてみた
豊川稲荷に行ってみた
のれそれを食べてみた
藤の花を見に津島公園に行ってみた
七夕まつりを見に一宮市に行ってみた
宇都宮の旅(餃子華厳の滝世界旅行
矢勝川の彼岸花
岡崎公園の桜とお団子
めんたいパークとこなめに行ってみた
愛知県のみたらし団子


☆鶴舞公園をお散歩
 名大病院の向かいは鶴舞公園というところで、さくら名所100選にもなっています。花菖蒲や紅葉なども綺麗で、四季を通じて楽しめる公園。

サクラ, ツツジやフジ, バラ, ハナショウブとアジサイ, ハス, 春の終わりから夏, 初冬その1, 初冬その2


☆コメダ珈琲店について少し
 名古屋在住なので、代表であるコメダ珈琲店へたまに行っています。その中でちょろっとご紹介をば。。。網羅的なものではなく、ピックアップする感じでございます。

blanc et noir, 豆菓子と有田焼, ○○ダさん…?, ピザと経済, みそカツサンド, 定番のハンバーガー, 期間限定ノワール, ジェリコを嗜む, アイスなココア, 夏はやっぱりかき氷, Ringoノワール, コメチキってやつ, バレンタインのチョコ祭り, 珈琲豆と小豆, ベリーノワールさん, たまご系, チョコ祭りその2, サマージュース, ケーキとどら焼き


☆名古屋大学医学部附属病院前期研修について
 自分の前期臨床研修先であった名大病院について、主観で眺めてみました。名大病院ってどんなとこ?と思っている方、少し参考にしてみて下さい。
 2015年5月に(4年ぶりに)少し手を加えました。2015年度からはたすき掛けも導入されたということで、隔世の感がありますね…。どんどんプログラムは良くなってきている感じがします。あとは研修医のやる気ですな。
 また、名大病院に限らず学生さんが病院見学をする際にどういった点を見ると良いか、ちょっとですが書いてみました。

・名大病院研修について→コチラ
・病院見学の際のポイント→コチラ


☆臨床研修はじめの一歩
 学生さんや研修医を対象としたレクチャー。その多くは救急外来や研修医相手の勉強会で話した内容から成っています。深くは立ち入らず、入門として・総論として。研修医の時に知っておきたい心構え的なものとお考え下さい。”診断学・感染症・輸液・検査項目(主に救急外来)・栄養療法”についてお話ししています。最後に輸液と栄養療法とに絡めて、SIRSについて名古屋大学医学部附属病院集中治療部教授である松田直之先生の考え方に触れてみようと思います。

・はじめに→コチラ
・診断推論→コチラ
・感染症診療の入り口→コチラ
・輸液の考え方ベーシック→コチラ
・検査項目の使い方→コチラ
・栄養療法の初歩→コチラ
・SIRSについて一つの記事→コチラ
・補足:生活の中の病歴→コチラ
・補足2:診察の強弱→コチラ
・補足3:デッサンという考え方→コチラ
・補足4:デング熱を例に鑑別を挙げるということ→コチラ
・補足5:曖昧性を許容する→コチラ
・補足6:身体診察の治療的意義→コチラ
・補足7:教育としての病歴と診察→コチラ
・補足8:風邪を診る→コチラ


☆研修医のためのテキスト紹介
 研修医が読む本は学生さんとはちょっと違います。プラクティカルなものを選んでみました。研修医や非専門医として、なので専門的なテキスト紹介ではありません。

”総論”について, 各種マニュアル本, 心電図・循環器治療薬の本, 呼吸器内科の本, 感染症の本, 腎臓内科の本, 糖尿病のポケットガイド, 小児科外来の本, 皮膚科や創傷処置などの本, 精神科の本, 漢方薬の本, 非精神科医のための精神療法的な本, 超音波含め画像診断の本, 国試が終わって臨床研修開始までの間に, 『極論で語る』シリーズ, 診断ではなく帰せるかどうかの判断をするための入門本, カルテの書き方, 血の通った緩和ケア


☆風変わりな超音波
 もうエコーは心臓と腹部実質臓器のためだけじゃない!消化管・運動器・肺・眼球などなど、様々な分野へ応用可能です。その中でも消化管と肺について軽くまとめました。

消化管の超音波, 肺の超音波, 超音波を学ぶ時の心構え


☆研修医救急勉強会でのポイント
 名古屋大学医学部附属病院では月に1度、朝に研修医が救急勉強会をしていました。現在は他の科の先生がたが様々な勉強会を開いていて研修医が忙しくなったという理由で、廃止に…。

・Jolt accentuationを例にして診察や検査のセッティング→コチラ
・めまいについて→コチラ
・嘔気嘔吐の例→コチラ
・救急外来と入院での病歴の取り方→コチラ
・発熱と意識障害を例にして患者背景から絞る→コチラ
・勘違いしやすい痛みについて→コチラ
・侮りがたし、虫垂炎→コチラ
・DehydrationとVolume depletion→コチラ


☆精神科臨床はじめの一歩
 精神科医は精神科医でも、若手、特に1-2年目が身の丈に合った非侵襲的な接し方をするにはどうすれば良いか。そんな思いから、治療的態度・精神病理学的知識・分析的思考について10回+1回にわたって考えてみました。自分も若手なので、若手目線で。おまけとして初心者やご家族や患者さんに読みやすい本の紹介もしています。

・第0回:若手としての心構え→コチラ
・第1回:精神療法としての”あいだ”→コチラ
・第2回:”患者”になること→コチラ
・第3回:”症状”を考えてみよう→コチラ
・第4回:器質力動論的視点を持ってみる→コチラ
・第5回:精神発達論をちょっと体験→コチラ
・第6回:防衛機制って何なんだ?→コチラ
・第7回:人格構造という軸→コチラ
・第8回:支持的精神療法のススメ→コチラ
・第9回:役割から見えてくる”転移/逆転移”→コチラ
・第10回:ご家族とのお話→コチラ
----------
・統合失調症理解の入門本→コチラ
・うつ病/躁うつ病理解の入門本→コチラ
・認知症理解の入門本→コチラ


☆精神科臨床のワンフレーズ+α
 日常臨床で患者さんに送るちょっとした言葉を掲載。薬物治療をしっかりと行うことと前提としているため、構造化もしてませんし分析的な深い考察もしていません。裏を返せばどんな治療者でも使えるということになるでしょうか。支持的でちょっと背中を押すような、そんなフレーズ達。そして、フレーズに限らず精神科臨床での会話などもまとめました。

・神経が疲れた→コチラ
・困った時はお互い様→コチラ
・キーを回す→コチラ
・不安を不安として→コチラ
・つらさの代名詞→コチラ
・こころは水風船→コチラ
・回復の芽を摘まない→コチラ
・どちらを選んでも後悔する→コチラ
・医者と薬は松葉杖→コチラ
・ネガティブを大切に→コチラ
・医者はあきらめが悪い→コチラ
・病気の種→コチラ
・回り道の景色→コチラ
・歴史になること→コチラ
・失敗も大事→コチラ
・症状をガイドに→コチラ
・こころのお天気→コチラ
・飛行機とカサブタ→コチラ
・何もないのは平和のしるし→コチラ
---------------
・終診にする時→コチラ
・同じと特別→コチラ
・「でも」を使わないようにしてみる→コチラ
・「なんで?」も使わないようにしてみる→コチラ
・大丈夫という言葉→コチラ
・認知機能検査を始める前の言葉がけ→コチラ


☆精神医学ピックアップ
 記事の中から病態や向精神薬の関連で精神科1-2年次向きなものを選んでみました。ちょっと前にまとめたものは記載が甘いものも散見されますが、ご了承ください。

・統合失調症のグルタミン酸仮説と抗精神病薬の定型/非定型という分類→コチラ
・精神症状を来たす身体疾患→コチラ
・精神疾患と慢性炎症→コチラ
・神経障害性疼痛→コチラコチラ, コチラ
・ベンゾジアゼピン受容体作動薬→コチラ
・抗うつ薬のモノアミン再取り込み阻害/促進→コチラ
・向精神薬中断によるリバウンド症状→コチラ
・薬剤に精神療法を込める→コチラ
・悪性症候群→コチラ
・アルコール使用障害→コチラ
・デキストロメトルファン(メジコン)と精神疾患→コチラ
・口腔領域の疼痛性障害→コチラ


☆漢方あれこれ
 自分は仮免レベルの漢方屋でもあるので、診療に良く使ってます。ちょっとした記事をポツポツ書いているので、ご紹介。

実証と虚証, 補気と補血, 陽と陰の配慮, 寒をとらえる, 陰虚を考慮, 虚熱を考える, 生薬の勉強, 消風散の生薬には…!, 釣藤鈎とは何なのか, 高血圧と頭痛に釣藤散, 補中益気湯で失敗, 視床痛には?, 喉の痛みに桔梗湯, 咳への対処, フラッシュバックに神田橋処方, 弛緩型神経因性膀胱はどうするか, 女性の手荒れに, 褥創治療の補助, チックの治療, 便秘にもどうぞ, 寒と水滞による痛みに, 清暑益気湯の生薬, 風邪の漢方薬, 腸間膜静脈硬化症, 起立性調節障害に, 漢方を服用する時間


☆お薬と偶像崇拝
 お薬の中には、キャラクターが存在するものも。イスラム文化圏では決して許されないこと(?)。可愛いのもいれば、変なのも。期間限定なのか?それともリストラされてしまったのか?と思うくらいにもはや姿を見かけなくなったキャラも。でも皆さんそれなりに頑張って製薬会社の看板背負ってるんですよね。自分が持っているものをご紹介していきます。なので精神科領域がどうしても多くなってしまうかも。

・ロナセンバード、ルーランバード、セレネースバード(大日本住友製薬)→コチラ
・ロナセンバード再び(大日本住友製薬)→コチラ
・がっちゃんと干支セトラ(大日本住友製薬)→コチラ
・メロペンギン(大日本住友製薬)→コチラ
・レオ(大日本住友製薬)→コチラ
・シナモロール(大塚製薬)→コチラ
・ムコさる君(大塚製薬)→コチラ
・豚さん(大塚製薬)→コチラ
・ひよこちゃん(大塚製薬)→コチラ
・ひつじさん→コチラ
・キティちゃん(ヤンセンファーマ、タケダ薬品、大日本住友製薬など)→コチラ
・おさかなさん(タケダ薬品)→コチラ
・大建中湯の羊、六君子湯のりっくん(ツムラ)→コチラ
・ジプレキサザイディスの可愛くないキャラ(イーライリリー)→コチラ
・パッキー君(グラクソスミスクラインの黒歴史?)→コチラ
・クマ野郎(エーザイ)→コチラ
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2017
09.16

舌の根が乾かぬうちに

Category: ★精神科生活
 2017年7月に、精神神経学会に(嫌々ながら?)行ってきましたというお話を記事にしました。そこでは


もう当分学会には出ないでおこうと固く決心


 と書いたのでありますが、何と11月に別の学会に行くことにしました!

 まさにタイトル通りではありますが、これは強制されてではなく、自らの意思で決めたのです…! なんと、そんな余力がまだあったとは。

 実はですね、今月に”日本てんかん学会”の会員となりました。会員になるには評議員や正会員の先生がたの推薦が必要なのですが、周りにそんな先生が全くおらず…。この交友関係の狭さが色々と不都合を生み出しているのは重々承知してますが、何ともはや。日本てんかん学会のHPには「そんなアナタ、まずは事務局にお電話を!」という内容の文言が記載されていたので、電話をかけたのであります。

 すると「推薦人の欄は空白にして、用紙にそれ以外を書いて送ってください。推薦人はこちらで探しておきます」とのこと。あ、そんなんで良いんやね…。で、晴れて会員になれたのです。

 ”てんかん”はもともと三大精神病の1つと言われておりました。精神科との縁は長く、古くは満田久敏先生の提唱した”非定型精神病”があります。てんかん、躁うつ病、統合失調症の”あいだ”にあるのが非定型精神病である、いやむしろ非定型精神病が中心であり、それら疾患は非定型精神病から派生しているような印象も一部にありました。とはいえその”てんかん”は立派な器質疾患だということが判明し、精神疾患から外れた経緯があります。そこからてんかんの診療は神経内科がメインとなり、精神科はあまり携わらなくなりました。精神科は、常に不確定な疾患を診る科なんだなぁと実感。器質因が判明すれば精神疾患から外れるんですもんね。ただ、非定型精神病と思しき症状を認める患者さんは無きにしもあらずで、興味深いところです。

 さて、そのてんかんの中には精神疾患と紛らわしい症状を認めるものもありまして、側頭葉てんかんや前頭葉てんかんがその好例です。何もガクガク全身が震えるのだけがてんかんではありません。最近は認知症との鑑別でも話題ですね(認知症がてんかんのリスクファクターでもありますが…)。もちろん、てんかん患者さんの精神症状やPNES(心因性非てんかん発作)は精神科医がしっかり携わるべきものだと思っています。

 さらに、最近はてんかん患者さんのてんかんそのものの治療を新規ですることが多くなり、やっぱりてんかんとその薬剤についてしっかり知らねばいかんな、と思うに至ったのであります。”てんかんなら何でもバルプロ酸”なんていうのはいけません。ちょっと前に、病歴から複雑部分発作の二次性全般化と判断した患者さんが、その前の病院ではプライマリーな全般発作と考えられていた、なんてこともありまして。そうなると治療に用いる薬剤がちょっと変わってきます。ところが、てんかん診療をしっかり行なっている精神科医はあまり多くなく、周囲には全くいません(学会員が周りにいないし…)。

 よって、自分で色々勉強しているのですが、独学のみだとちょっと心細いんですよね、実は。漢方はみんな言ってることが異なる(良い意味でも悪い意味でも)ので、独学で大きなマイナスは少ないと思っています。でも、てんかんは自分の治療に疑心暗鬼となってしまいまして。自信がないんですよね。

 ということで、学会員になって、学会にも参加してみよう!と思ったのです。これまでは学会に参加する意義が分からなかったのですが


自信のない時、自分の現在位置を確かめるために


 と自分なりに考えました。「自分の行なっている治療はどうなんだろう?」「ちょっとしたコツってあるかな?」というのを探しに。精神疾患でも心細さはあるのですが、周囲にたくさん教えてくれる先生がいます。しかし、てんかんはそうでないため、学会に参加してみようと思いました。もちろん今は文献やUpToDateを見れば必要なことが書かれていますが、それに加えて”人から聞く””人が集まっている”ということで心細さを解消しようという目論見なのです(学会の内容だけで勉強なんてのはもちろんダメでしょう)。

 今年の日本てんかん学会学術集会は京都で、11月3-5日に行なわれます。ちょっと行って勉強してきますよ。観光じゃないですからね。本懐は勉強です、たぶん。あー、でも泊まるホテルが錦市場の近くなんですよねぇ・・・。これはヤバい。
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2017
09.09

事前確率とセットでね!

Category: ★研修医生活
 研修医の先生に論文を読んでもらって解説をしてますよーというお話を1つ前の記事でしました。その中で、時間がある時は事前確率の大切さを説くことがあります。もうすっかり尤度比の使い方も世の中に根付いたかと思っていたのですが、意外にもそうではないことに気づき、ちょっと解説するようにしました。自分が研修医の時は誰も教えてくれなかったしなぁ。

 例えば、この論文。

Antunez E, et al. Usefulness of CT and MR imaging in the diagnosis of acute Wernicke's encephalopathy. AJR Am J Roentgenol. 1998 Oct;171(4):1131-7. PMID: 9763009

 ここでは、Wernicke脳症に対するMRIの感度が53%、特異度が93%となっています。もっと感度が高いよ!とする論文もありますが、例としてこれを。研修医の先生にこの感度と特異度をどう思うか聞きますが、多くは「特異度が高いから診断に役立って、感度が低いから除外には向かない」と、バシッと答えてくれるのであります。感度や特異度というのは、例えば、感度80%の所見というのは”病気を持つ人”の80%に見られる所見だということを示します(Positive in desease)。いっぽう、特異度80%の所見というのは”健康な人(その病気を持たない人)”の80%に見られない所見だということを示します(Negative in health)。実は、自分はこの辺りをちょっと正確に理解していなかった時期があり、そのため過去の記事でも間違った記載が存在し、そこは修正を入れておきました。大事なので言い方を変えてお話しすると…

 感度とは、想定する病気を持っていると判明している人たち(患者さん)にその検査をした場合、どのくらいの割合で検査が陽性になるのか? という指標です。だからその病気を持っていない人(健康な人)にこの検査をしたらどうなるのかは、実は感度からだけでは分からないのです。健康な人でも陽性になる可能性が十分に考えられます(偽陽性)。

 特異度とは、想定する病気がないと判明している人たち(健康な人)にその検査をした場合、どのくらいの割合で検査が陰性になるのか? という指標です。だからその病気を持っている患者さんに検査をしたらどうなるのかは、実は特異度からだけでは分からないのです。患者さんでも陰性になる可能性が十分に考えられます(偽陰性)。

 そして、この感度と特異度は連動しているので、別々に見ると誤解を生むことがあります。特異度がものすごく高いけれども感度が著しく低い検査の有用性などは、盛んに指摘されていますね。感度5%、特異度98%の検査があったとして、それが陽性なら「特異度の高い検査が陽性! Rule Inだ!」と考えがちですが、決してそうではない。特異度はあくまで”病気がない人の中でその検査が陰性になる割合を示すもの”なのです。”特異度が高いからRule In” ”感度が高いからRule out” というのは、多くの場合はそれで問題ないことが多いのですが、実際はちょっと早計なのでございます! 感度と特異度は別個に考えてはいけない。自分は研修医の時、ここを完全に勘違いしておりました…。

 「あくまで病気がない人の中での話で、患者さんに当てはめられない??」と頭がこんがらがってきそうなので、要は感度と特異度っていうのは、単独ではなくつなげて考えねばならないのだと言うことにして、そのためのツールである”尤度比”のお話に移りましょう。

 感度と特異度をがちゃがちゃ計算して出て来る”尤度比”ですが、研修医の先生に尋ねると

自分「感度と特異度をバラバラに見ると間違うから、尤度比にしてみようか。尤度比って知ってる?」
研修医「…」

 となることが稀ならずあり、尤度比をしっかり教えることも大事やなぁと考えるに至ったのであります。それが今回の記事をつくるきっかけになりました。計算してもらい数字を弾き出してもらうと、感度53%、特異度93%はだいたい

陽性尤度比:7.6
陰性尤度比:0.5

 となります。計算式は”陽性尤度比=感度÷(1-特異度)”であり、”陰性尤度比=(1-感度)÷特異度”です。尤度比というのは尤もらしさ(もっともらしさ)を示すものですが、英語の Likelihood Ratio の方が分かりやすいかもしれませんね。Likely な度合いを示します。陽性尤度比は”所見が陽性の時の尤もらしさ”を、陰性尤度比は”所見が陰性の時の尤もらしさ”を意味しています。尤度比が1というのは尤もらしさを全く動かしません。感度50%、特異度50%というやつですね。大まかな動き方は

10:尤もらしさぐぐっとup!
5:尤もらしさちょっとup
1:ピクリとも動かない
0.2:尤もらしさちょっとdown
0.1:尤もらしさぐぐっとdown!

 となります。例えば、陽性尤度比5、陰性尤度比0.1の検査があったとすると、その検査が陽性の時は、ある病気の尤もらしさがちょっとupし、陰性の時は尤もらしさがぐぐっとdownするということになります。

 「おー、尤度比は便利だな」と思うかもしれません。しかししかし、感度だけ、特異度だけで物事を見てはいけないのと同様に、尤度比だけで考えても間違いのモトになってしまいます(めんどくせぇ)。尤度比を運用するために欠かせないのが”事前確率”でして、「この検査をする前の段階で、患者さんがこの病気である確率はどれくらいだろう?」というのが代表例。この”見積もり”いかんによっては、尤度比のインパクトもだいぶ変わってきてしまいます。「尤度比だけで物事は決められない」と覚えておきましょう。

 役に立つのがノモグラム(nomogram)というもので、これを使うと事前確率の大切さがひしひしと伝わってくるのではないでしょうか。

nomogram.png

 ある検査を想定すると、左側のバーが検査前確率、真ん中のバーが尤度比、右側のバーが検査後確率。検査前確率と尤度比をつないだ線をぴーっと延長して右側のバーにぶつけると、検査後確率が判明するというスグレモノ。分かりやすいように、感度99%、特異度99%というものすごく優秀な検査を想定しましょう。ELISAによるHIV抗体検査が実はこれ以上に優秀な検査であり、確か国試の公衆衛生でも出てきたような?? で、この尤度比を計算すると、

陽性尤度比:99
陰性尤度比:0.01

 これはすごい! この検査が陽性なら必ずその病気をRule in、陰性なら必ずRule outにできそうな気がしてきます。しかし、ここでちょっと冷静になりましょう。検査前確率が0.1%というややレアな病気(鑑別でほぼ想定していない病気という意味)の場合はどうでしょうか。それでもそんなに興奮できるかどうか。

 とある病気の検査前確率0.1%という時、この陽性尤度比99という検査をしてばっちり陽性になった。さて本当に「この病気だ!」と言い切れるのか? nomogramを使ってみると…

nomogram 2

 なんと、検査後確率はほぼ10%なのです! ハイパーに優れた検査が陽性でも、こんな結果だなんて…。

 これから分かるように、検査(診察も)をする時は、「この患者さんがこの病気を持っている確率はどんなもんだろう?」という”見積もり”をできるだけ正確に行なう必要があるのです。このセッティングを疎かにして絨毯爆撃的に検査をしてしまったら、いざ陽性になった時にミスリードとなってしまいますし、陰性でも同じこと。

 では最初に戻り、Wernicke脳症に対するMRI(陽性尤度比:7.6、陰性尤度比:0.5)を見てみましょう。アルコール依存症で、ここ1ヶ月ほど食事もあまり摂取しておらず、そういえば歩き方が何となく変だな…と思った時、Wernicke脳症の検査前確率はかなり高そうです。80%と見積もってみましょう。「これはWernicke脳症っぽいなぁ。MRIだなこれは」と思って撮りました。結果は特に異常所見なし。さて、Wernicke脳症を否定できるかどうか。

 同じくnomogramを使うと…

nomogram 3

 あれ、検査後確率が80→70%程度に下がっただけ。全然否定できません! 検査前確率を50%と考えても、検査後確率は30%以上残っています。この例えをすると、研修医の先生は「おー」と感心してくれることが多くてですね、教え甲斐があるなぁと実感するのでございます。よって、闇雲に診察や検査をするのではなく、常にその一歩手前の確率、診察前確率や検査前確率といった事前確率をできるだけ正確に考えることが大切です。常に事前確率とセットで尤度比を考える、そこを忘れないようにしましょう。すなわち、検査をするなら問診と診察で、診察をするなら問診でそれぞれきちんと鑑別疾患の事前確率を想定しましょうね、ということなのです。

 ちなみに、McGee先生の本にはnomogramではなく以下のような足し算方式が載っており、それを眼にしたことのある研修医の先生もいるかもしれません。

0.1:-45%
0.2:-30%
0.5:-15%
1:動かず
2:+15%
5:+30%
10:+45%

 これは事前確率が10-90%、言い換えれば救急外来や一般外来の初期に鑑別に挙がってくるような病気の時に使うことができます。「この患者さん、肺炎の検査前確率は40%くらいかなぁ」と思った時に、陽性尤度比5の検査が陽性になったら、40+30で検査後確率は70%と考えることができます。「この病気の可能性はかなり低いなぁ」という時はnomogramを使用しましょう。

 ただし、検査前確率というのは”見積もり”なので、正確無比ではありません。患者さんの病歴や診察などから「この病気の確率はこんなもんかな…?」という感覚的な確率(言い方は変ですが)なのであります。よって、特に初期研修医1年目のうちは事前確率を”なさそう””あるかも””ありそう”の3段階くらいにまずは分けてみて、その上で尤度比を10、5、0.2、0.1くらいを目安にこれまた感覚的に検査後確率を推定していく、というやり方が良いのかなと思っています。もっと勉強して経験して種々の病気のゲシュタルト(岩田先生風に?)が分かってくると、患者さんの像とのつながり具合からもっと事前確率が細かく、例えば5段階くらいに分かれてくるようにも考えています。そうしたら、尤度比ももっと緻密に運用できるかもしれませんね。

 ということで、感度、特異度、尤度比のお話でした。これらだけで診断をしてはならず、常に一歩前の確率を考えましょう、というのがいちばん大事なところではありますが。
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2017
09.03

研修医の先生に読んでもらう論文をいくつか

Category: ★研修医生活
 自分が勤めている病院に研修医の先生が2週間やって来ることがあります。研修医の先生がいる病院に精神科がなく、それで精神科のタームの時だけこちらに来るというシステム。若い先生を見ると、昔の自分を思い出しますね。

 多くの研修医の先生は精神科に興味がないので、こちらも色々教えるというよりは「せん妄の対処は知っておこう!」くらいの立ち位置になります。しかもローテーションも2週間だし、出来ることは限られている。ちなみに精神科志望であればなおさら「今のうちに身体疾患の勉強をしておこう!」と言うことにしています。

 研修医の先生に一緒に診てもらう患者さんは他の先生がたが紹介しているので、自分は午前中に論文を何本か読んでもらって午後にその内容でお話をする、というスタイルにしています。座学も大切ですし、自分自身がリハビリ出勤なので省エネにしているというのも否めず。読んでもらう論文は大体決まっておりまして…

・Galvin R, et al. EFNS guidelines for diagnosis, therapy and prevention of Wernicke encephalopathy. Eur J Neurol. 2010 Dec;17(12):1408-18. PMID: 20642790

・Isenberg-Grzeda E, et al. Wernicke-Korsakoff syndrome in patients with cancer: a systematic review. Lancet Oncol. 2016 Apr;17(4):e142-8. PMID: 27300674

・Bhattacharyya S, et al. Antibiotic-associated encephalopathy. Neurology. 2016 Mar 8;86(10):963-71. PMID: 26888997

・Turrini A, et al. Not only limbs in atypical restless legs syndrome. Sleep Med Rev. 2017 Apr 4. pii: S1087-0792(17)30080-1. [Epub ahead of print] PMID: 28559087

 こんな感じ。人によって読むスピードは異なるので、全部読めなくてもO.K.です。あとは志望科によってそれと関係する論文を1つ付けるかどうか。

 これら論文を読んでもらう狙いとして

「Wernicke脳症を見逃すな!」
「がん患者さんのWernicke脳症だとモヤッとした症状もあるぞ!」
「抗菌薬で脳症が起きるぞ!」
「restless "legs" だけじゃないぞ!不定愁訴と片付ける前にちらっと疑え!」

 という強いメッセージがあるのです。精神科以外を志望しているのであれば、統合失調症の精神病理学とかを話してもあまり意味はないので、他の切り口にしているのでした。これら論文の内容を踏まえて研修医の先生に話す内容はですね…

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 Wernicke脳症はとても見逃されており、有名な3徴は16%にしか見られない。国試的には「Wernicke脳症といえばアルコール依存症、アルコール依存症といえばWernicke脳症」であるが、決してそれだけでない。アルコール依存症以外でも見られることは覚えておくべきであり、その内訳では、がん患者さん(特に血液腫瘍や消化管腫瘍)、消化管手術、妊娠悪阻、飢餓(神経性やせ症も注意)でアルコール依存症以外において発症するWernicke脳症の50%以上を占める。そして、がん患者さんでは頭痛、無気力、脱力といった ”モヤッとした” 症状を来たすことがある。「がんだし無気力にもなるよなぁ」「がんだしあまり動かず寝ているとアタマも痛くなるよなぁ」と過剰に了解することなく、「ひょっとしたらWernicke…?」と考えてまず治療をしてみるというのも大事。検査はMRIが有名だが、感度や特異度はスタディによってまちまちで、基本的にはRule inのために用いる補助と考えておこう。よって、所見がなくても治療してみるという勇気も必要。治療にはビタミンB1の経静脈的投与が行われるが、安価でありゆっくり投与すれば大きな副作用も大きなものはないので、疑ったら治療開始の気持ちで。ただ、投与量や投与期間にコンセンサスはない。

 抗菌薬の副作用で脳症が起きることもある。これらは大きく3つのグループに分けられる。開始後数日で発症し、けいれんやミオクローヌスが多く生じ脳波異常も見られやすいグループが1つ。これはペニシリン系とセフェム系に多く、特にセフェム系は腎機能が悪いと起こりやすい(セフェピムは特に有名)。別のグループは精神病症状が多いもので、これも開始後数日で発症する。脳波は異常がそれほど多くなく、プロカインペニシリン、スルホンアミド、キノロン、マクロライドで生じやすい。精神病症状だからと言ってすぐ精神科に!ではなく、これら抗菌薬を使用していればそれによる脳症かを考えよう(だから精神科医もそのことを知っておく必要がある)。別のグループはメトロニダゾールによるもので、投与後数週間してから発症する。小脳症状が多く、脳波は非特異的異常所見を示し、MRIでも異常所見(小脳歯状核がT2強調で高信号、脳梁膨大部が拡散強調で高信号)が見られる。最近、日本でも偽膜性腸炎(CDAD)の治療薬として経口のメトロニダゾールが承認されたので、こういった例が増えるかも? イソニアジドはいずれのグループにも入らない。発症は数週から数ヶ月で、精神病症状がコモン。脳波は異常を示すが非特異的である。

 Restless legs syndrome(RLS)は見逃されやすい疾患であるが、"legs" ではなく腕、他にも会陰部や膀胱、腹部、後背部、顔や口など様々な部位にも生じることが分かってきた。IRLSSGの診断基準は以下だが、それを身体の各部位に当てはめて疑うことが大切である。「変な症状だな。不定愁訴か」と括ってしまう前に、鑑別を考えよう。ドパミンアゴニストで速やかに改善することが多い(でもフェリチン低値なら鉄剤投与が優先かな…)。

IRLSSG 診断基準
1: 脚を動かしたくてたまらない衝動と不快感
2: 安静時に悪化
3: 脚の運動により不快感が軽減ないし消失
4: 夕方から夜に悪化
5: これらの特徴を持つ症状が,他の疾患・習慣的行動で説明できない

 ちなみに、日本語では”むずむず脚症候群”というが、”むずむず”では引っ掛けられないことが多い。”ちくちく””そわそわ””虫が這うような””お布団を蹴っ飛ばしたくなるような感じ””落ち着かない”など様々な訴えである。まさに"restless"なので、”むずむず”に引っ張られないように! 後は、「落ち着かないから眠れない」のではなく、「眠れないから落ち着かない」と患者さんは考えることがある。そうなると患者さんは「眠れない」としか言わないので、こちらから積極的に問うことが大事。

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 と、このような感じ。どれも精神科以外で遭遇しやすいので、こういう知識を入れておくのはムダではない、はず(覚えておいてくれれば)。こういった論文の中には検査方法の感度や特異度も記載されているものがある(Wernicke脳症に対するMRIなど)ので、時間があれば尤度比のお話もしています。今度はそれを記事にしようかな?

 そう言えば、以前は名古屋大学で研修医の先生がた相手に朝の勉強会を行なっていたんですが、他の科も勉強会をすることが多くなったそうで、研修医の先生から「朝は忙しいから夜にしてくれ」と言われ、しょうがないなーと思って夜にずらしたは良いけれども今度は「夜に集まるのは困難です」と言われ、何と2015年の7月(だったかな?)を最後に中止に追い込まれた苦々しい過去があります…。その時は「随分と身勝手な研修医だな…」と実は怒っていたんですが、まぁでも魅力のある面白い勉強会ならみんな来てくれていたんだろうと思うと、まだまだ自分も勉強不足だなと(今になってようやく)考えております。教えるっていうのは難しいものですね。
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2017
08.29

机をコンコン

Category: ★精神科生活
 精神科で患者さんを診ていると「ドキドキしてきて、それで息が詰まる様な感じがして、死んじゃうんじゃないかとふと怖くなってしまいます」という人がたくさんいます。精神症状であれば、それは”パニック発作” と呼ばれます(てんかんはきちんと除外しましょう)。ただ、この ”ドキドキ” はクセモノでして「本当に不整脈だったらどうするの?」ということになりかねません。特に心房細動はきちんと拾い上げておきたいところ。

 大抵は患者さんも内科に行って「心電図はとったんですけど異常なしと言われました」と話します。でも、発作性の不整脈はそれが出ている時に心電図をとらないと姿を現さず、何も症状がない時に心電図をとっても有用性に乏しいのが歯がゆいですね。

 もちろん、不整脈を持っている人がパニック障害を持っていることもありますし、逆もまた然り。これはてんかんにも言えるでしょう。てんかん発作とPNES(心因性非てんかん発作)の両方を持っている患者さんは少なくないと聞きます。しかも、不安があると心血管疾患のリスクが高まるとも言われます(Am J Cardiol. 2016 Aug 15;118(4):511-9. PMID: 27324160)。このメタアナリシスでは心房細動のリスクは有意に高くはなかったとしていますが、信頼区間の幅も大きく、何とも言えないところ。

 このように、不安は心血管疾患のリスクになるため、「パニック障害だから不整脈や狭心症ではない」とは決して割り切れない。でも、割り切れないことばかりを強調してしまうのもいけないでしょう。それは ”考えないこと” につながってしまいます。その部分をできるだけ分けようとする、それでもちょっと「??」と思うのであれば、その時に併存というのもあるかも…と考えるに至るのがセオリーでしょうか。分けられるところまでは分けようとする努力が大切。イージーに考えてしまってはいけません。

 そんなこんなで、ドキドキがして大変ということで受診する患者さんに対し、自分は不整脈を見つけるために ”机コンコン” をします。

自分「○○さんのドキドキがどんな感じか教えてもらいたいんですけど、ドキドキって色々ありましてね」

 と前置きして、机をコンコンします。最初は

コン  コン  コン  コン  コン…

 これは60-70/minくらいの速さで規則正しく叩いています。患者さんが「これです」と言ったら、それは動悸 ”感” と言うべきものでしょう。次は

コンコンコンコンコンコン

 100-120/minくらいの速さで規則正しく叩いたもの。これだと洞頻脈かな? と思います。150/minを上回る速さであれば、洞性ではないだろうなと察しが付きます。次は

コン  コン      コン  コン…

 ブロックで一拍抜けるものを示しています。次は

コン  コンコン    コン  コン…

 期外収縮。もちろん3連発とかもありますが、実際にやるのは2連発くらいで後は口頭で「今は2回続きましたけど、もっと多く続くものもあるんですよ」とお話ししています。次は

コン  ココン コン    コン  コン

 バラバラに机をコンコンしていますが、これが心房細動。「こんな風にバラバラなのもあるんですよ」と一言。

 これくらいの例を出して、あとは患者さんに「実際に今度ドキドキしたら、自分の手首に指を当てて脈を見てみてくださいね」とお伝え。脈の触れ方も教えておきます。こうすると、ドキドキ出現時の状況が分かります。

 これは、ドキドキの原因が不整脈かどうかを知るためにもなりますが、実際に脈を見てドキドキを判断するということを通して、患者さん自身が症状にとらわれないようにするためでもあります。症状の外に立ってドキドキを観察する眼を持つ、ということ。ちょっとした科学者を目指してもらいます。そして、頸動脈ではなく手首の脈(橈骨動脈)にしているのは、手首は自分の眼で見ることが出来るからなんです。まさに”観察”出来ますね。頸動脈は手で押さえてもそこを見ることが出来ないので。あとは、視点を心臓という臓器から手首にスライドさせる意味もあります。心臓にアタマが行ってしまうと、良い考えには結びつきませんよね。

 これを狙って、自分は机コンコンを日々行なっている、ということでございました。机コンコンの診察の最後は「次の診察で、ドキドキがどういうのだったかを私に教えて下さいね」とお願いします。ここにも隠れたポイントがあって、医者から「教えて下さいね」と頼まれるのは患者さんにとって少し意外さを産みます。医者が教えるのではなく、患者さんが教える。ここに患者さんが主体的に症状と関わっていくための種まきがなされているのでありました。効果のほどは知りませんが(おい)。あとは、患者さんの方から医者に物事を言いやすい雰囲気にするという効果も期待されます。

 ちなみに、上室性頻拍であればバルサルバ手技を教えることがありますが、”息こらえ” ってどう伝えるかが難しいと聞きます。そんな時はですね、患者さんにまだふくらましていない風船をイメージしてもらって

自分「口を閉じながら、イメージした風船を持って口に近づけて、ふくらませるように頑張ってみてください」

 と自分でやりながらお話しします。そうするとより伝わりやすいかな? どこかの本に書いてあった気がしたんですが、忘れてしまいました…。このバルサルバ手技は成功率の低さで有名なものの、この手技を半坐位で15秒行なった後に仰臥位にして45度の下肢挙上をすると、成功率が17→43%にアップするしたという報告があります(Lancet. 2015 Oct 31;386(10005):1747-53. PMID: 26314489)。こういう研究、良いですねぇ(BMJ的だけどLancetに載ったんですね)。
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