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12.31

ブログ紹介

*この記事は常にトップに出ます*
*最新記事は1つ下の記事になります*

皆々様。
平素より大変お世話になっております、m03a076dです。
ご来店いただき、まことに有難うございます。
このブログは、研修医や若手精神科医を対象にした話がちらほら出てきます。でもメインは自分の気になったことをちょろちょろっと記すこと。最近はやはり本業の精神科の話が多くなってしまっています。

気楽にご覧下さいませ☆ (this article: last update Sep 21. 2018)


*このブログではたまに患者さんとの会話例が出ています。その時に記載している基本的な情報、たとえば年齢や性別や受診の時期など、これらはプライバシー保護のため改変しています。また複数の患者さんの情報や会話内容を意図的に混ぜています*


☆思い立ってしでかしたこと
 はっと思ったらやはり実行。後悔することはあっても、いつかは懐かしい記憶となってくれるかもしれません。実行と言っても、他人様の迷惑にはならないようにしましょう。最近は名古屋な雰囲気を醸し出してます。

アポロチョコに捧げた情熱(ページの一番下の記事からお読み下さい)
ヒーターで焼き芋つくり(他にも焼いてます)
シュークリームの上手な食べ方~案~
大手コンビニのシュークリームを比べてみた
ジンギスカンのたれ比較
あんまきの比較
犬山城に行こうとしてみた
山崎川のさくら
スガキヤに行ってみた
熱田神宮のきしめんを食べてみた
豊川稲荷に行ってみた
のれそれを食べてみた
藤の花を見に津島公園に行ってみた
七夕まつりを見に一宮市に行ってみた
宇都宮の旅(餃子華厳の滝世界旅行
矢勝川の彼岸花
岡崎公園の桜とお団子
めんたいパークとこなめに行ってみた
愛知県のみたらし団子


☆鶴舞公園をお散歩
 名大病院の向かいは鶴舞公園というところで、さくら名所100選にもなっています。花菖蒲や紅葉なども綺麗で、四季を通じて楽しめる公園。

サクラ, ツツジやフジ, バラ, ハナショウブとアジサイ, ハス, 春の終わりから夏, 初冬その1, 初冬その2


☆コメダ珈琲店について少し
 名古屋在住なので、代表であるコメダ珈琲店へたまに行っています。その中でちょろっとご紹介をば。。。網羅的なものではなく、ピックアップする感じでございます。

blanc et noir, 豆菓子と有田焼, ○○ダさん…?, ピザと経済, みそカツサンド, 定番のハンバーガー, 期間限定ノワール, ジェリコを嗜む, アイスなココア, 夏はやっぱりかき氷, Ringoノワール, コメチキってやつ, バレンタインのチョコ祭り, 珈琲豆と小豆, ベリーノワールさん, たまご系, チョコ祭りその2, サマージュース, ケーキとどら焼き, シロノワールN.Y.チーズケーキ, コメダのモーニング


☆名古屋大学医学部附属病院前期研修について
 自分の前期臨床研修先であった名大病院について、主観で眺めてみました。名大病院ってどんなとこ?と思っている方、少し参考にしてみて下さい。
 2015年5月に(4年ぶりに)少し手を加えました。2015年度からはたすき掛けも導入されたということで、隔世の感がありますね…。どんどんプログラムは良くなってきている感じがします。あとは研修医のやる気ですな。
 また、名大病院に限らず学生さんが病院見学をする際にどういった点を見ると良いか、ちょっとですが書いてみました。

・名大病院研修について→コチラ
・病院見学の際のポイント→コチラ


☆臨床研修はじめの一歩
 学生さんや研修医を対象としたレクチャー。その多くは救急外来や研修医相手の勉強会で話した内容から成っています。深くは立ち入らず、入門として・総論として。研修医の時に知っておきたい心構え的なものとお考え下さい。”診断学・感染症・輸液・検査項目(主に救急外来)・栄養療法”についてお話ししています。最後に輸液と栄養療法とに絡めて、SIRSについて名古屋大学医学部附属病院集中治療部教授である松田直之先生の考え方に触れてみようと思います。

・はじめに→コチラ
・診断推論→コチラ
・感染症診療の入り口→コチラ
・輸液の考え方ベーシック→コチラ
・検査項目の使い方→コチラ
・栄養療法の初歩→コチラ
・SIRSについて一つの記事→コチラ
・補足:生活の中の病歴→コチラ
・補足2:診察の強弱→コチラ
・補足3:デッサンという考え方→コチラ
・補足4:デング熱を例に鑑別を挙げるということ→コチラ
・補足5:曖昧性を許容する→コチラ
・補足6:身体診察の治療的意義→コチラ
・補足7:教育としての病歴と診察→コチラ
・補足8:風邪を診る→コチラ


☆研修医のためのテキスト紹介
 研修医が読む本は学生さんとはちょっと違います。プラクティカルなものを選んでみました。研修医や非専門医として、なので専門的なテキスト紹介ではありません。

”総論”について, 各種マニュアル本, 心電図・循環器治療薬の本, 呼吸器内科の本, 感染症の本, 腎臓内科の本, 糖尿病のポケットガイド, 小児科外来の本, 皮膚科や創傷処置などの本, 精神科の本, 漢方薬の本, 非精神科医のための精神療法的な本, 超音波含め画像診断の本, 国試が終わって臨床研修開始までの間に, 『極論で語る』シリーズ, 診断ではなく帰せるかどうかの判断をするための入門本, カルテの書き方, 血の通った緩和ケア


☆風変わりな超音波
 もうエコーは心臓と腹部実質臓器のためだけじゃない!消化管・運動器・肺・眼球などなど、様々な分野へ応用可能です。その中でも消化管と肺について軽くまとめました。

消化管の超音波, 肺の超音波, 超音波を学ぶ時の心構え


☆研修医救急勉強会でのポイント
 名古屋大学医学部附属病院では月に1度、朝に研修医が救急勉強会をしていました。現在は他の科の先生がたが様々な勉強会を開いていて研修医が忙しくなったという理由で、廃止に…。

・Jolt accentuationを例にして診察や検査のセッティング→コチラ
・めまいについて→コチラ
・嘔気嘔吐の例→コチラ
・救急外来と入院での病歴の取り方→コチラ
・発熱と意識障害を例にして患者背景から絞る→コチラ
・勘違いしやすい痛みについて→コチラ
・侮りがたし、虫垂炎→コチラ
・DehydrationとVolume depletion→コチラ


☆精神科臨床はじめの一歩
 精神科医は精神科医でも、若手、特に1-2年目が身の丈に合った非侵襲的な接し方をするにはどうすれば良いか。そんな思いから、治療的態度・精神病理学的知識・分析的思考について10回+1回にわたって考えてみました。自分も若手なので、若手目線で。おまけとして初心者やご家族や患者さんに読みやすい本の紹介もしています。

・第0回:若手としての心構え→コチラ
・第1回:精神療法としての”あいだ”→コチラ
・第2回:”患者”になること→コチラ
・第3回:”症状”を考えてみよう→コチラ
・第4回:器質力動論的視点を持ってみる→コチラ
・第5回:精神発達論をちょっと体験→コチラ
・第6回:防衛機制って何なんだ?→コチラ
・第7回:人格構造という軸→コチラ
・第8回:支持的精神療法のススメ→コチラ
・第9回:役割から見えてくる”転移/逆転移”→コチラ
・第10回:ご家族とのお話→コチラ
----------
・統合失調症理解の入門本→コチラ
・うつ病/躁うつ病理解の入門本→コチラ
・認知症理解の入門本→コチラ


☆精神科臨床のワンフレーズ+α
 日常臨床で患者さんに送るちょっとした言葉を掲載。薬物治療をしっかりと行うことと前提としているため、構造化もしてませんし分析的な深い考察もしていません。裏を返せばどんな治療者でも使えるということになるでしょうか。支持的でちょっと背中を押すような、そんなフレーズ達。そして、フレーズに限らず精神科臨床での会話などもまとめました。

1. 神経が疲れた→コチラ
2. 困った時はお互い様→コチラ
3. キーを回す→コチラ
4. 不安を不安として→コチラ
5. つらさの代名詞→コチラ
6. こころは水風船→コチラ
7. 回復の芽を摘まない→コチラ
8. どちらを選んでも後悔する→コチラ
9. 医者と薬は松葉杖→コチラ
10. ネガティブを大切に→コチラ
11. 医者はあきらめが悪い→コチラ
12. 病気の種→コチラ
13. 回り道の景色→コチラ
14. 歴史になること→コチラ
15. 失敗も大事→コチラ
16. 症状をガイドに→コチラ
17. こころのお天気→コチラ
18. 飛行機とカサブタ→コチラ
19. 何もないのは平和のしるし→コチラ
20. どんな思いがよぎりましたか?→コチラ
21. 揺らぎは自然→コチラ
22. 医者は慎重派→コチラ
23. ともにある→コチラ
24. 恩返しをしましょう→コチラ
25. 早く来てくれて良かったです→コチラ
26. それが王道ですよ→コチラ
27. 何ができるだろう→コチラ
---------------
・終診にする時→コチラ
・同じと特別→コチラ
・「でも」を使わないようにしてみる→コチラ
・「なんで?」も使わないようにしてみる→コチラ
・大丈夫という言葉→コチラ
・認知機能検査を始める前の言葉がけ→コチラ
・"心因" を説明する時→コチラ


☆精神医学ピックアップ
 記事の中から病態や向精神薬の関連で精神科1-2年次向きなものを選んでみました。ちょっと前にまとめたものは記載が甘いものも散見されますが、ご了承ください。

・統合失調症のグルタミン酸仮説と抗精神病薬の定型/非定型という分類→コチラ
・精神症状を来たす身体疾患→コチラ
・精神疾患と慢性炎症→コチラ
・神経障害性疼痛→コチラコチラ, コチラ
・ベンゾジアゼピン受容体作動薬→コチラ
・抗うつ薬のモノアミン再取り込み阻害/促進→コチラ
・向精神薬中断によるリバウンド症状→コチラ
・薬剤に精神療法を込める→コチラ
・悪性症候群→コチラ
・アルコール使用障害→コチラ
・デキストロメトルファン(メジコン)と精神疾患→コチラ
・口腔領域の疼痛性障害→コチラ
・多剤併用→コチラ


☆漢方あれこれ
 自分は仮免レベルの漢方屋でもあるので、診療に良く使ってます。ちょっとした記事をポツポツ書いているので、ご紹介。

実証と虚証, 補気と補血, 陽と陰の配慮, 寒をとらえる, 陰虚を考慮, 虚熱を考える, 生薬の勉強, 消風散の生薬には…!, 釣藤鈎とは何なのか, 高血圧と頭痛に釣藤散, 補中益気湯で失敗, 視床痛には?, 喉の痛みに桔梗湯, 咳への対処, フラッシュバックに神田橋処方, 弛緩型神経因性膀胱はどうするか, 女性の手荒れに, 褥創治療の補助, チックの治療, 便秘にもどうぞ, 寒と水滞による痛みに, 清暑益気湯の生薬, 風邪の漢方薬, 腸間膜静脈硬化症, 起立性調節障害に, 漢方を服用する時間


☆お薬と偶像崇拝
 お薬の中には、キャラクターが存在するものも。イスラム文化圏では決して許されないこと(?)。可愛いのもいれば、変なのも。期間限定なのか?それともリストラされてしまったのか?と思うくらいにもはや姿を見かけなくなったキャラも。でも皆さんそれなりに頑張って製薬会社の看板背負ってるんですよね。自分が持っているものをご紹介していきます。なので精神科領域がどうしても多くなってしまうかも。

・ロナセンバード、ルーランバード、セレネースバード(大日本住友製薬)→コチラ
・ロナセンバード再び(大日本住友製薬)→コチラ
・がっちゃんと干支セトラ(大日本住友製薬)→コチラ
・メロペンギン(大日本住友製薬)→コチラ
・レオ(大日本住友製薬)→コチラ
・シナモロール(大塚製薬)→コチラ
・ムコさる君(大塚製薬)→コチラ
・豚さん(大塚製薬)→コチラ
・ひよこちゃん(大塚製薬)→コチラ
・ひつじさん→コチラ
・キティちゃん(ヤンセンファーマ、タケダ薬品、大日本住友製薬など)→コチラ
・おさかなさん(タケダ薬品)→コチラ
・大建中湯の羊、六君子湯のりっくん(ツムラ)→コチラ
・ジプレキサザイディスの可愛くないキャラ(イーライリリー)→コチラ
・パッキー君(グラクソスミスクラインの黒歴史?)→コチラ
・クマ野郎(エーザイ)→コチラ
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2018
10.13

変わらないからこそ変われる

Category: ★精神科生活
 変わり続けることをやめない、だとか、変わることをやめた時に腐る、なんて言葉が巷にはあります。

 その多くは成功者の言葉であったり、熱血漢の言葉であったり。病気から回復した人の中からもそのような声が聞こえることもあるでしょう。確かに「まぁそうだなぁ」と思うことも事実。現状から何か変化をしなければ、その先に良い未来はないのかも、と考えてしまいます。

 しかし、病の中にいる人にとって、上記の言葉はちょっと侵襲的になることがあります。自己啓発本を読んで「よし! 死ぬこと以外かすり傷だ!」と思うことはまったく悪くありません。ただし、それを他の人たちにも熱く語るのは、その人たちの置かれた状況を考えていないことにもつながりかねません。

 彼らには、変わらなくてもいいことを保証する時期が必要です。

 そりゃあ、生命を持つ身体は刻一刻と変わるので「変わらないことは原理的にありえない」「変わらないのは時間が停止していることでしか達成されない」と言われてしまえばごもっともとしか言いようがないのですが、そういう話ではなく、考え方や行動など、その人としての意識。

 精神科に勤めていると、渦潮のような、刻一刻と変化する環境の中で、疲弊していく人たちがたくさんいます。そこで足を止めて休んでいる人に「変わらないと腐るぞ」と指摘するのは酷なこと。つらい時にわざわざ変わろうと思わなくて良い、羽根を休めて、その時間に憩うことも必要なのです。

 止まってからもう一度動くには、相応のエネルギーが必要です。それは、静摩擦と動摩擦を考えても一目瞭然。そのエネルギーを蓄えるために、まずは変わらなくても良いと保証します。そのゆとり、たるみ、が変化の基盤になるのです。特に医療者は、その診察の中で、変わらないことへの耐性が求められます。焦って変えようとしては、患者さんがこれまで経験した環境と同じになり、再演となるでしょう。変わらないことを繰り返すのは、医療者にとって苦痛ではあります。「この治療は正しいのだろうか」「ちょっとでも次回診察までには意欲が出ていてほしい」と思い、何かしらの変化がほしくなります。その焦りや欲求は、強引な薬剤増量や変更という形になるかもしれません。でも、この変わらないところを何とか持ちこたえるその過程が、とても重要でしょう。そのままで良いと言えること、それが大事。

 すなわち、変わらないことが変わることへの布石になっていきます。言ってしまえば、変わらないことの中にもう変化はあり、そうなるように医療者は診察を組んでいきます。

 "死ぬことかすり傷" は、成功者や病を抜けた人が後から振り返って思うこと。現在かすり傷をたくさん抱えている人は、とても痛いでしょう。身体を動かすと、さらに痛いでしょう。ある程度軽くなるまでじっとしておくことも必要です。また、"生きているがゆえの苦しみ" もあるでしょう。死ねないけれども生きているのもつらい、生きているからこそつらい。そんな状況、いくらでもあります。そんな人たちに「死ぬこと以外かすり傷だよ」と言えるでしょうか。それこそ、たくさんのかすり傷を与えてはいないでしょうか。

 苦しい時は足を休めましょう。それはいつかまた歩き出すための大いなる力になるのです。
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2018
10.07

便秘に使う薬剤

 10月はちょっと忙しい。打ち合わせで東京に行ったり、勉強会があったり、学会で横浜に行ったり、講演会があったり…。

 その講演会では便秘の漢方治療という複数名によるお話があり、その中で薬剤性便秘についての治療を自分が担当します。漢方についてはよく分からん!という先生方が対象なので、限られた方剤を、詳しく解説することなく紹介するというスタイル。

 まず、便秘と言えば2017年に『慢性便秘症診療ガイドライン』が発刊されました。しかしながら、これはエビデンスと言うには程遠い出来になっておりまして、"はじめに" には

・暫定的に本ガイドラインを作成
・迅速な作成を目指したため、Mindsの推奨するガイドラインの作成方法に準じたが、厳密に基づくものではない
・主に本領域に造詣が深い専門医の意見を基盤として作成されている

 ということが明記されています…。そんな急いで作らなくてもね…。しかも暫定的って。そして、"発刊によせて" というところで、このガイドラインの定めた慢性便秘の定義について以下のような苦言が述べられています。

・“十分量”の定義が曖昧
・“快適”の判断も主観的
・慢性便秘の病悩期間も明示されていない
・本書の「慢性便秘症」が、国際的な便秘症の診断と齟齬を生じる可能性がある

 まさかこのようなことが書かれているとは…。何やら裏で大変そう。そして、治療薬に関して自分が思うところは

・ルビプロストンの推奨度が高すぎる
・ほぼ酸化Mgとルビプロストンの本
・費用対効果を考えていない

 に尽きるのではないでしょうか。

 すなわち、このガイドラインは

・急いで暫定的に作成
・エキスパートオピニオンが基盤
・そもそもの定義が主観的で期間も不明確
・ルビプロストンを推しすぎる

 というもの。これで3000円は高いなぁ…。しかしながら、弁護の余地はあります。

・日本ではポリエチレングリコール (PEG) がまだ販売されていない (2018年10月現在)
・便秘の治療薬そのものがエビデンスとして弱いものが多い

 こういった事情は加味しなければならないでしょう。漢方薬がガイドラインに載ったのも、ある意味エキスパートオピニオンが基盤だったからとも言えます。よって、今後は費用対効果を考慮した、よりブラッシュアップしたものが発刊されることを期待するのであります。

 さて、本題の薬剤による便秘に行きましょう。便秘を引き起こす薬剤は非常に多く、例えば鉄剤、制酸剤、Ca拮抗薬、オピオイド、鎮咳薬、利尿薬、抗がん剤、抗コリン薬、向精神薬などなど…。特に向精神薬はほとんどが便秘をもたらしてしまいます (例外はChE阻害薬や抗うつ薬のサートラリンなど)。精神科と便秘は切っても切れない関係で、長年入院している患者さんのほとんどには下剤が投与されています。

 薬剤性便秘の対処は、何といっても、まずは処方薬の見直し! 減らせるものは減らし、中止できればそれが最も良いのです。しかしオピオイドはそうもいかないですし、向精神薬も減らせない時期はあります。処方薬の見直し以外であれば、他の便秘と同様に、エビデンスとしては弱いものの、運動と水分と食物線維の3点セットが第一に来ます。線維については、普段の生活に取り入れるなら "オールブラン" や "フルーツグラノーラ" などのシリアル系が良いかもしれません。特に女性は鉄分も不足しがちであり、こういうシリアルは鉄が添加されていますしね。線維も摂り過ぎるとお腹が張って苦しくなるので、適量が推奨となりますが。

 そこまでやってから、便秘薬をしっかり使うことを考慮します。ただし、万能薬は存在しません。今回は、複数のガイドラインやレビューを参考にしてみます (Dis Colon Rectum. 2016 Jun;59(6):479-92. PMID: 27145304 Gastroenterology. 2013 Jan;144(1):211-7. PMID: 23261064 Visc Med. 2018 Apr;34(2):123-127. PMID: 29888241)。

 使用する順番としては、以下。

1. Bulk-forming laxatives (膨張性)

2. Osmotic laxatives (浸透圧性)

3. Stimulant laxatives (刺激性)

4. Other

 まずは1番の膨張性から。

●ポリカルボフィルCa (コロネルⓇ, ポリフルⓇ)
 1.5-3.0 g/day (or 1.0-2.0 g/day)
 1錠 (0.5 g) が15.3円! 安い! (3.0 g使うとちょっと高い?)
 適応病名は過敏性腸症候群
 多めの水で服用しよう!

●カルメロースNa (バルコーゼⓇ顆粒)
 バルコーゼ2.0-8.0 g/day (カルメロースNaとして1.5-6.0 g)
 1 gが6.2円! 激安!
 多めの水で服用しよう!

 次に2番の浸透圧性。

●酸化Mg (マグミットⓇ, マグラックスⓇ)
 これは激安! 500 mg錠で5.6円
 1.5 g/day前後で使用
 基本的には安心安全
 高齢者・腎機能低下では注意!
 とは言え、過剰に恐れてはならない

 この酸化Mgと高齢者の腎機能に関しては、探してみたら英語論文があるんですね (Geriatr Gerontol Int. 2016 May;16(5):600-5. PMID: 26081346 )。かなりnが少ないので参考程度でしょうけれども。以下の図の数字は中央値 (IQR) です。

腎機能とMgO

 eGFR<30ではやっぱり怖い。この文献では問題ありませんでしたが、eGFR<45でも何となく嫌な予感はします、個人的に。そういう点に気を付けて使用すれば決して悪い薬剤ではないので、適切に怖がって使うというのが大事。

●ソルビトール (原末, 経口液)
 これも激安! 原末1 gで1.34円!
 原末換算20-30 g/dayで使用 (1日1回)
 安すぎて査定されないことがほとんど
 個人的にはオススメ

●ラクツロース (モニラックⓇ, 原末とシロップ)
 十分量使用するとやや高価 原末1 gで6.4円
 10-20 g隔日投与で開始、20-40 g/dayまで
 主な適応は高アンモニア血症、産婦人科手術後の便秘
 乳糖不耐症には全く合わない
 ソルビトールと同じ効果 (実際にはややラクツロースが上) なのでソルビトールが安価でお得

●ポリエチレングリコール (モビコールⓇ)
 日本ではまだ販売されておらず、便秘治療がガラパゴス化している要因のひとつ (そろそろ発売?)
 EAファーマと持田製薬が承認取得
 これが販売されれば、日本の便秘治療が変わっていく、はず
 酸化Mgや刺激性緩下剤の使用がこれで減る?
 個人的に期待大!
 あとは薬価が気になるところ (まさかPEGに強気の値段設定はしませんよね…?)

 でもって刺激性。
 
●ビサコジル (内服薬はOTCのコーラックⓇのみ)
●ピコスルファートNa (ヨーピスⓇ, ラキソベロンⓇ)
●センノシド (プルゼニドⓇ)
 これらも非常に安い
 手順を踏んで正しく適切に使用すること
 慢性投与で低K血症、蛋白漏出性腸症などのリスク? (Ann Intern Med. 1968 Apr;68(4):839-52. PMID: 5642966)

 この刺激性緩下剤は色々注意がなされているものの、腸管の構造的/機能的な障害を来たすことは確認されておらず、発がん性があるという信頼できるデータはありません (J Clin Gastroenterol. 2003 May-Jun;36(5):386-9. PMID: 12702977)。耐性が起こることはコモンでなく、間違った使用はあるものの、依存性は確認されていないのです (Am J Gastroenterol. 2005 Jan;100(1):232-42. PMID: 15654804)。悪さが独り歩きしているような印象なので…。ただ、他の対策もせずにずーっと何年も処方しっぱなしというのは褒められたものではありません。言いたいのは、線維を適量摂取して、膨張性のものや浸透圧性のものを使って、それでも排便がなされないのなら、刺激性緩下剤は合理的な方法なんじゃないの?ということ。ただ、ここは意見が割れるでしょう。

 次はその他の緩下剤。新規に販売されたものですが、以下。

●ルビプロストン (アミティーザⓇ)
●リナクロチド (リンゼスⓇ)
●エロビキシバット (グーフィスⓇ)
 刺激性緩下剤でも良好にコントロールされない場合にこれらを使用する
 長期の安全性、嘔気の副作用、薬価という問題のため

 これら、といっても日本の慢性便秘症ガイドラインでは発刊時期の都合でルビプロストンのみですが、推奨度が高すぎると思うのです。ちなみにUpToDateを覗いてみると

It is best reserved for patients with severe constipation in whom other approaches have been unsuccessful.

 と述べられています。PEGがまだ販売されていないという事情はあるにせよ、新機序の下剤をほぼ第一選択のように処方すべきではありません。薬価の高さは無視できず、標準用量を用いればこれだけで1日200円前後にもなります。

・ルビプロストンは1カプセル (24 μg) で123円!
・リナクロチドは1錠(0.25 mg) で89.9円!
・エロビキシバットは1錠 (0.5mg) で105.8円!

 日々使う下剤にこの支出は、国としても困ります (標準用量は1日2カプセル or 2錠)。

 しかも、これらの効果が優れているわけでなく、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバット、ピコスルファートNa、ビサコジルなど (他は本邦未承認) をネットワークメタ解析した文献では、ビサコジル内服 (OTCのコーラックⓇ)がやや優れており、他は同等の効果でした (Gut. 2017 Sep;66(9):1611-1622. PMID: 27287486)。あらら。個人的な使用経験では、ルビプロストンよりもリナクロチドの方が強い感じですね (個人の感想です)。エロビキシバットはまだ使ったことなし。

 ここで、変化球的な緩下剤を1つ紹介 (適応外)。

●ミソプロストール (サイトテックⓇ)
 安い! 100 μg錠で18.8円!
 PGE1/2アナログ 小腸でcAMP産生を促す
 本来はNSAIDs長期投与時の胃潰瘍/十二指腸潰瘍を予防するためのもの
 200 μg/dayもしくは200μg隔日投与から開始し増量 (Aliment Pharmacol Ther. 1997 Dec;11(6):1059-66. PMID: 9663830)
 (添付文書の通常用量は800 μg/day)
 妊娠では禁忌

 さて、薬剤性便秘の中で特殊なのがオピオイド誘発性便秘 (OIC) です。オピオイド使用者の40-90%が便秘でして、薬剤性便秘の中で最も手強いのです (フェンタニル貼付剤がいくぶんマシ?)。しかもなかなか減量できません。これまでの手順を踏むことに変わりはないのですが、結構苦労します。そのOICを狙った緩下剤は長らく日本に存在しなかったのですが (メチルナルトレキソン, ナロキセゴール, 経口ナロキソン)、やっと承認されたものがあるのです。

●ナルデメジン (スインプロイクⓇ)
 0.2 mg錠で272.1円! 高い!
 オピオイド受容体アンタゴニスト

 では、OICに対して、このオピオイド受容体アンタゴニストとルビプロストンやリナクロチドの効果はどちらが強いのか。これは、オピオイド受容体アンタゴニストのほうが効果は強いようです (Clin Gastroenterol Hepatol. 2018 Oct;16(10):1569-1584.e2. PMID: 29374616)。OICは非常に不快なものなので、効果のあるものをしっかりと使って排便を促したいですね。

 で、ようやっと漢方の話。漢方は、未知のもの含めて種々の作用が混在している薬剤。新規薬剤と比較して廉価なものが多く、費用対効果も優れていると思います。少なくとも最初からルビプロストンを使うよりはよっぽど。使い勝手も良く個人的に頻用しています。使用するタイミングは、PEGが販売されるようになりその薬価も大したことなければ、浸透圧性の次の一手、となるでしょうか。

 便秘に使える漢方は適応外も含めればかなり多いのです。大黄を含むかどうかで分けてみると良いでしょうか。大黄がどうしても合わない、下痢をしてしまうという患者さんも多いので。

大黄を含む:大黄甘草湯、調胃承気湯、大承気湯、桃核承気湯、通導散、大柴胡湯、桂枝加芍薬大黄湯、三黄瀉心湯、麻子仁丸、潤腸湯などなど
大黄を含まない:加味逍遙散、大建中湯、桂枝加芍薬湯、小建中湯、補中益気湯などなど

 まだありますが、キリがないので。

 繰り返しになりますが、大黄を含むものは、どうしても合わない患者さんもいます。その時は大黄を含まないものを選択してみると良いでしょう。今回の講演で紹介するのは、大建中湯、加味逍遙散、麻子仁丸、潤腸湯、桃核承気湯。ちなみに、あえて防風通聖散は載せていませんが、これを“やせ薬”や“下剤”としてむやみに使ってはいけません! 多くの生薬からなり、肝機能障害などの副作用も多いのです。OTCでも販売されているので、やめてほしいなぁと思っています。構成生薬を見るととても複雑で、フィットする患者さんを探し出すのはとても大変。自分はほとんど処方しません。一貫堂の臓毒証体質に適すると言われてはいますが。

 では、以下に紹介していきましょう。

●麻子仁丸 (ましにんがん)
●潤腸湯 (じゅんちょうとう)
 下剤漢方の第一選択と言っても良い
 比較的安く、どちらも就寝前に1-2包/dayから開始
 麻子仁丸は1包16.75円 潤腸湯は1包21.75円
 油成分を多く含み、グリセリンのような働きもする
 これらはClチャネルを活性化する (J Pharmacol Exp Ther. 2017 Jul;362(1):78-84. PMID: 28465373 J Nat Med. 2018 Jun;72(3):694-705. PMID: 29569221)

 この2剤は、どちらも穏やかに効いてくれます。基本的には麻子仁丸を使用して、それで下痢をする時に潤腸湯としますが、麻子仁丸の量を減らせばそれで対応可能です。しかも麻子仁丸は甘草を含まない利点があるのです。

 そして、麻子仁丸を4包/dayまで投与しても改善がなければどうするか? 自分の次の一手は以下

・麻子仁丸 2包+桃核承気湯 2-4包
・麻子仁丸 2包+大建中湯 4包
・麻子仁丸 2包+加味逍遙散 2-4包

 それぞれの方剤を見てみましょう。

●桃核承気湯 (とうかくじょうきとう)
 これも安い 1包で21.25円
 鎮静作用を持ち、イライラで眠れない便秘の人に使うことがある (熱証)
 “○○承気湯”を嘔気嘔吐のある時は用いないこと
 最初からこれを使うなら1包/day (就寝前) から開始
 甘草を1包あたり0.5 g含む

●大建中湯 (だいけんちゅうとう)
 これもまぁまぁ安い 1包で22.5円
 大黄を含まないので嫌な痛みが来ない
 お腹が冷えて張って痛むというのが使用の前提 (寒証)
 TRPV1チャネル、5-HT3受容体、ムスカリン受容体などに作用する (Tohoku J Exp Med. 2013 Aug;230(4):197-204. PMID: 23892797)
 イレウスに本当に効果があるかは不明 (Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 5;4:CD012271. PMID: 29619778 Ann Surg Treat Res. 2018 Jul;95(1):7-15. PMID: 29963534)

 大建中湯は盛んに使用されていますが、使われ過ぎじゃないか…?と思わなくもない。「甘草も含まず、構成生薬は食べ物みたいなものばかりだから安全」とは言えません。身体を温める作用が強いので、漫然と使用していると ”熱証” となってしまいます (日本東洋医学雑誌. 2017;68(2):123-126)。汎用されているので注意を!

●加味逍遙散 (かみしょうようさん)
 これはやや高い 1包で41.25円
 大黄を含まないので嫌な痛みが来ない
 イライラやのぼせが使用の前提 (熱証、といっても虚熱)
 長期の服用 (ほとんど4年以上) で腸間膜静脈硬化症をもたらす (World J Gastroenterol. 2014 May 14;20(18):5561-6. PMID: 24833888)

 加味逍遙散も良く使われますが、長期間の使用でまれに腸間膜静脈硬化症を来たします。こういう加味方を何年もずっとというのはちょっとどうなんだと自分は思いますが。熱を冷ますための "加味" なので、その熱が冷めたら方剤変更すべきでしょう。それを漫然と投与しているからこういうことになるんだと思います。ただ、逍遥散は医療用エキス製剤にないので、四逆散と当帰芍薬散を合わせて代用します。

 加味逍遙散は「ホントに?」と思うような記載があります。津田玄仙の『療治経験筆記』の中の

「大便の秘結して朝夕快く通ぜぬと云うもの、何れの病気にかぎらず、只此の方を用ゆべし。その中に大便能く通じて諸病も治すること多し。此れ逍遥散を用ゆる大事の秘事なりと云う医者あり」

 というもの。「便秘してたらこれ使え」というちょっと乱暴な…。津田玄仙はこの後「そんなこと言ってるけどねぇ。でもそういう患者さんがいてその言葉を思い出して使ったら良くなってびっくりした」と記載しています。

 そんなこんなで、今回の漢方まとめ。何だかあんまり考えていないようなフローチャートでお叱りを受けるかもしれませんが…。
 
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 今回挙げた漢方の中で、妊娠と授乳に使用しない方が良いのは、大黄を含むもの。そして、授乳は許容できるけれども妊娠に使用しない方が良いのは、牡丹皮を含む加味逍遙散。その他は許容範囲内でしょうか。でも実際に催奇形性を確かめたわけではないので、確証はありません。一応、長年の経験で、という感じ。

 ということで、最後のまとめ

・便秘は薬剤性含めて非常にコモン
・薬剤性なら原因薬剤の減量中止を
・治療では医療経済を勘案すべし
・新薬が優れているとは限らない
・漢方の中には比較的安価なものが多い
・とりあえず麻子仁丸!

 でした。こんな内容の話を、症例を交えながら20分で話すのです。間に合うの…?

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2018
09.29

また都会に!?

 10月はてんかん学会学術集会が横浜で行なわれ、それに行ってきます。しかもその帰りの日は夜に名古屋で講演会があり、喋らなくてはいけません。結構タイトなスケジュール。てんかん学会学術集会は最終日に "てんかん学研修セミナー" というのがあり、去年は参加しました。今年もそのつもりだったのですが、講演会を引き受けてしまったがためにセミナーを受けていると遅刻してしまうことが判明。しまった…。ということで、今年はスキップ。来年からまた受けよう…。

 そういえば、講演をするのも久々。今年は3月だったかしら、その時以来のような気がします。ちょっと去年が多かっただけですね。本来はポツポツというレベル。自分は精神科医なのですが、講演依頼は漢方ばっかりで。専門医でもなんでもないんですけどね…。純粋な精神科の講演なんて激レアですよ。もちろん依頼をいただくのは光栄なことなので、毎回しっかりと予備スライドをたくさんつくって準備をしてお話をさせてもらっています、はい。講演も基本的に1分に2~3スライドくらいのペースなので、お話しする分のスライドも多い。1スライド1テーマにしているし文字も大きいし。

 前にもちょっと記事にした覚えはありますが、まさか自分が大勢の前で話すことになるとは、昔は想像だにしませんでした。大学受験の時は面接のない大学をあえて選んで、話をするのを極力回避していましたし。一度だけ面接ありの大学を受けたことがあるんですが、もうあがってあがって、ひどいもんでした。こうやって今は講演会でお話をすることも増えましたが、親からも「まさかお前が話をするなんて…」と驚かれます。社交不安症と言われてもおかしくないくらいにひどかったのですが、人って変わるもんだなぁ。

 何が良かったんでしょうね。結局は慣れたということと、講演を「もうイヤだわ…。しくしく」と思うのを通り越して「自分を売り込むチャンスやな」と思えるようになったのと、あとは「緊張してもいいから伝える内容だけはきちんと伝えよう」と考えるようになったこと、かな? でも今でも座ってピンマイクというのは苦手で、基本的には立ってマイクを持ってというスタイルにしています (長時間だとさすがに座りますが)。手をじっと机や膝に置いておくと自分の場合は身体もこころも緊張するのが分かって、手は動かすかマイクを持つようにするかになりました。理想的には、歩き回りながらお話できればいちばんリラックスできます。多動か…?

 しかし、教授の前でのプレゼンはダメだ…。この前は超久々にその機会があって大学の医局に行ったのですが、もうメタメタですよ。順番待ちの最中も落ち着かなくて座れないし、汗をかくわ手は冷えてくるわ、これって四逆散の証じゃないかと思っていました。根本的なところではまだまだ話すのが苦手なんだろうな、緊張しがちなのだろうなと実感したのであります。何十人~百人よりも、教授一人の方がインパクトが大きい。さすがでござった。

 そんなこんなで10月は学会に行くくらいで後は行事らしいものもないかしらんと思っていたら、10月14日に再び因縁の東京に行くこととなりました。場所は東大ではないのでひと安心…? パッと行って話し合いをしてお昼過ぎにはパッと帰ろうと思っています。東京は怖いところだ。あ、でもお土産は何かじっくりと選んでから帰ろうかな…?
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2018
09.25

キャンパス大移動

 9月23日は、東京大学で "オープンダイアローグと中動態の世界" というシンポジウムを聞きに行きました。13時~16時40分のあいだ。自分としてはかなりの意気込みを見せており、12時前には大学に到着して開場を待とうという気持ちでいたのです。なぜなら、定員450人のところ満員御礼!ということで、視力の悪い自分としては前の席を確保してしっかりと見ておこうと思ったのであります。

 8時29分のこだまに乗り、11時過ぎには東京駅に到着。そこのほんのり屋でおむすびを食べることに。というか、東京に行くと大体ここでお昼を食べているような。

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 鮭のおむすび! 美味しい。値段は高いけれども (270円…)。

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 で、腹ごなしも済んだことだし、いざ東大。案内の地図によると、正門をくぐって13号館の1323号室で行なわれる、とのこと。いやー、このままなら本当に一番乗りかも、ひょっとして。

 東大の正門。

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 安田講堂。

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 こんな感じのところもあるのか。ずっと続きそうな。

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 13号館をきょろきょろと探すと、見つけたのが




工学部13号館




 「工学部…?」と疑問に思うも、演者の國分功一郎先生は東工大で哲学を教えているから、別に工学部でもおかしくはないか、と了解。しかし、450人が入るような大きさの建物とは思えず。「別の13号館があるのかな…?」と思ってさらに彷徨い探してみるも、見つからず。「おっかしーなぁ」と、キャンパスに立てられている地図と持っている案内の地図を見比べてみると、あれ? 案内の地図に書かれているのが




駒場キャンパス、だと…?




 そして、ここは




本郷キャンパス…?




 その瞬間、一気に汗が吹き出してきて、「やばい…!」と。そうなのです、この大事な時に限ってキャンパスを間違えてしまったのです…。

 東大って言えばこのキャンパスしか知らないし、そもそも東大なんて縁もないし恐れ多いし、行ったことあるのも河合臨床哲学シンポジウムくらいだし (それは本郷キャンパスなのです)。あ、今年は行ければ行きたい。毎年12月上旬に河合臨床哲学シンポジウムがあるんですよねー。て、そんな余裕は今ないし。案内の地図に赤門が記載されていないのも変だなーと思ってたけど、「ははぁ、有名すぎるからあえて記載していないんだな。さすが東大」とこれも勝手な了解をしていたし! そもそも正門とか安田講堂とかのんきに写真撮ってる場合じゃないよ! ていうか工学部13号館ってやっぱりおかしいよ! 演者が東工大だからって工学部の建物で哲学と医学のシンポジウムするわけないじゃん! などいろいろなことが頭の中をぐるぐる。

 キャンパスにシンポジウムの案内が全然なくて「あれ?」と思っていたら、こんなことだったとは。そこから大急ぎで駒場キャンパスまでの道のりを調べ、電車に。ゲルマン民族なみの移動です。また乗り換えがあって面倒、これが。

本郷三丁目→(丸の内線)→赤坂見附→(銀座線)→渋谷→(井の頭線各駅停車)→駒場東大前

 という順で行けと私のガラケーが教えている。赤坂見附だなんて、吉田拓郎の "地下鉄に乗って" ではないかと一瞬考えましたが、口ずさむ余裕は一切なし。よし! ギリギリ13時には間に合うか!

 すべてがダッシュで進んでいきました。しかし、人間焦ってはよろしくなく、渋谷で井の頭線にまさに飛び乗った瞬間に気づいたのが



快速に乗ってしまった…



 無残に過ぎゆく駒場東大前…。「何だよー、東大は各駅停車かよー」とどうにもならないこの時間。そして降りたのは下北沢。人生初だよ、こんなところに降りたの。そこでまたなぜそんな選択をしたのか不明ですが、「よし、もうタクシーで行こう!」と下北沢の改札を降りる。

 想像していたのは、改札を降りたら客待ちのタクシーが停まっている姿。しかし、実際は細い道路をたくさんの歩行者が行き交う光景。下北沢ってこういうところなの? と思いながらタクシーを探して走る。すると、幸運なことに1台のタクシーが来るではありませんか! しかも空車!

 タクシーに乗った時間は12時58分 (たしか)。開始までには間に合わないかもだけど、及第点だなと思ってひと安心。しかし、道は細く歩行者がゆっくり歩いているので、タクシーもゆっくり。


何なんやこれは…


 ついていない時はトコトンついていないのだ…。東大初体験者のしがちなミスをすべて経験したような気がする。

 やっと多少広めの道に出て駒場キャンパスに。きちんと案内の看板も立っていた! しかし写真を撮る余裕は一切なく走り過ぎる。見つけた13号館も広くて安心。

 結局着いたのは13時をとっくに過ぎてしまったけれど、幸いなことにはまだ開始されておらず (細かい説明がなされていた様子)、着席してちょっとしてから国分先生のお話が始まったのでした。良かったー。一番乗りするつもりが、まさかのビリ (推定) になるとは思いもせで。

 約4時間、面白く話を聞きました。しかし疲れた。話を聞いて疲れたのではなく、それ以前の行動で疲れた。もうおむすび食べてた頃がなつかしい。安田講堂をパシャリと撮っていた余裕はどこに。

 で、ぞろぞろと帰っていく風景を思い出したかのように一枚カメラに。
 
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 もうお土産を探すような体力的余裕もなく、定番すぎる "東京ばな奈" と "銀座のいちごケーキ"。

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 銀座のいちごケーキって、前は模様がいちごの絵じゃなかったでしたっけ。変わりましたよね (たぶんかなり前)。

 あ、そうだ。シンポジウムの内容ですよね。斎藤環先生のお話は外在化 (これも中動態と接点がありますね) がメインでしたが、それ自体はブリーフセラピーでよく行なわれているなーと。高木先生の "未来語りのダイアローグ" も、黒沢先生のタイムマシン心理療法的だなぁと思いました。しかし、それらが様々な人たちのダイアローグの中で動くというのが効果的なのでしょう。しかもそこで即興的に何かが生まれてくる。台本のない、誰も結末を知らない劇のような。精神分析では、患者さんがこころの台本を持っているとして、そこを治療者とともに探っていきますが、オープンダイアローグはその台本がないのですね。どうなるか分からない、でもその中で患者さんも治療者もシステムの一部として働くのだと思いました。あらかじめ合意形成なんてできないのだ、と斉藤先生がおっしゃっていましたが、まさにそうなのでしょう。

 責任についても、いったん免責されることで、そこから新たな責任、本来的な責任が湧き上がってくる、というのが強調されていました。現代の私たちの持つ "責任" というのは、"堕落した責任" なのだ、と。本来は決してそうではないのです。そこに絡んでの "意志"。能動/受動は「お前がやったのか」「お前がやらされたのか」と尋問をします。意志は、ある人に行為を所属させる (責任をもたせる) ことができます。こころの中で無からの創造が起こっていると仮定し、その人に責任を取らせるのです。しかし、純粋なゼロからの自発性などこころの中にあるのだろうか? というのがポイント。責任という言葉を考え直し、応答すべきことに応答すること、応答しなければならないと思って中動態的なプロセスが湧くこと、これが大事なのだということでした。

 やはり神の存在というのは大きかったのではないでしょうか。古代ギリシア (アリストテレスなどよりも前) には意志は存在しなかったという国分先生のご発言もありましたが、やはり神が登場して神への従属・神との対立という中で生まれたと思われる意志は、能動/受動というシステムで動くものなのです。古来のゾーエー/ビオスでは、現代でいう意志は不要だったはずです。ゾーエーという中動態のエンジンとも言えるような概念がそれを支えていたのでしょう。古代ギリシアや神の誕生というのを考えると、確かにハイデガーをもうちょっと深く知るべきでしょうし、そうだとすると木田元あたりとうまく合わせられないかしらん、と考えました。日本の言葉でいうと、みずから/おのづから に私自身としては注目。この2つの言葉が同居しているのが中動態なのではないか、とも思うのです。みずから行なったことが、おのづからみずからに作用してくるというのが中動態なのだとも言えるのでしょう (たぶん)。

 オープンダイアローグを考えると、精神科医や臨床心理士が診察室で患者さんが来るのを待つという今の医療システムは、無くなりはしないまでも今より縮小していくのかも? 患者さんのところにチームが行く、ということ自体がとても治療的ですよね。当日の話にはなかったですが、患者さんが来るのではなく、私たちが行くという転換。これは大きいと思いました。そして、その中でみんながシステムの一部 (患者中心ではない、とあえて言いましょう) となって新たな、予想だにしない多様な意見が立ち上がってくる。これが "効く" のかもしれません。私個人としては、このシステムを "あいだ" や "あわい" と呼びたい衝動に駆られますが。

 今回のシンポジウム、参加者みんな「おー」と感動したかも。この「おー」というのも中動態ですね、そういえば。だとすると西田幾多郎の純粋経験だってまさにそうだ! 色々と広がって面白い。広がったついでに私は、最近のわざとらしい "おもてなし" って大嫌いです。"もてなす/もてなされる" と明確に区別されて、それは「もてなしてやっている/もてなされて当然」という、人間の醜いことこの上ない感情が見え隠れします。"おもてなし" と強調された時点で、"おもてなし" は失われてしまっていると言えるでしょう。おもてなしは行為の中に自然と立ち現れるべきものなのです。

 という、最後にまじめな考え (参加したので) を述べましたが、やっぱりキャンパスの間違いはとても焦るし疲れるというのが正直な感想です。

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