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ブログ紹介

*この記事は常にトップに出ます*
*最新記事は1つ下の記事になります*

皆々様。
平素より大変お世話になっております、m03a076dです。
ご来店いただき、まことに有難うございます。
このブログは、研修医や若手精神科医を対象にした話がちらほら出てきます。でもメインは自分の気になったことをちょろちょろっと記すこと。最近はやはり本業の精神科の話が多くなってしまっています。

気楽にご覧下さいませ☆ (this article: last update Jul 15. 2018)


*このブログではたまに患者さんとの会話例が出ています。その時に記載している基本的な情報、たとえば年齢や性別や受診の時期など、これらはプライバシー保護のため改変しています。また複数の患者さんの情報や会話内容を意図的に混ぜています*


☆思い立ってしでかしたこと
 はっと思ったらやはり実行。後悔することはあっても、いつかは懐かしい記憶となってくれるかもしれません。実行と言っても、他人様の迷惑にはならないようにしましょう。最近は名古屋な雰囲気を醸し出してます。

アポロチョコに捧げた情熱(ページの一番下の記事からお読み下さい)
ヒーターで焼き芋つくり(他にも焼いてます)
シュークリームの上手な食べ方~案~
大手コンビニのシュークリームを比べてみた
ジンギスカンのたれ比較
あんまきの比較
犬山城に行こうとしてみた
山崎川のさくら
スガキヤに行ってみた
熱田神宮のきしめんを食べてみた
豊川稲荷に行ってみた
のれそれを食べてみた
藤の花を見に津島公園に行ってみた
七夕まつりを見に一宮市に行ってみた
宇都宮の旅(餃子華厳の滝世界旅行
矢勝川の彼岸花
岡崎公園の桜とお団子
めんたいパークとこなめに行ってみた
愛知県のみたらし団子


☆鶴舞公園をお散歩
 名大病院の向かいは鶴舞公園というところで、さくら名所100選にもなっています。花菖蒲や紅葉なども綺麗で、四季を通じて楽しめる公園。

サクラ, ツツジやフジ, バラ, ハナショウブとアジサイ, ハス, 春の終わりから夏, 初冬その1, 初冬その2


☆コメダ珈琲店について少し
 名古屋在住なので、代表であるコメダ珈琲店へたまに行っています。その中でちょろっとご紹介をば。。。網羅的なものではなく、ピックアップする感じでございます。

blanc et noir, 豆菓子と有田焼, ○○ダさん…?, ピザと経済, みそカツサンド, 定番のハンバーガー, 期間限定ノワール, ジェリコを嗜む, アイスなココア, 夏はやっぱりかき氷, Ringoノワール, コメチキってやつ, バレンタインのチョコ祭り, 珈琲豆と小豆, ベリーノワールさん, たまご系, チョコ祭りその2, サマージュース, ケーキとどら焼き, シロノワールN.Y.チーズケーキ, コメダのモーニング


☆名古屋大学医学部附属病院前期研修について
 自分の前期臨床研修先であった名大病院について、主観で眺めてみました。名大病院ってどんなとこ?と思っている方、少し参考にしてみて下さい。
 2015年5月に(4年ぶりに)少し手を加えました。2015年度からはたすき掛けも導入されたということで、隔世の感がありますね…。どんどんプログラムは良くなってきている感じがします。あとは研修医のやる気ですな。
 また、名大病院に限らず学生さんが病院見学をする際にどういった点を見ると良いか、ちょっとですが書いてみました。

・名大病院研修について→コチラ
・病院見学の際のポイント→コチラ


☆臨床研修はじめの一歩
 学生さんや研修医を対象としたレクチャー。その多くは救急外来や研修医相手の勉強会で話した内容から成っています。深くは立ち入らず、入門として・総論として。研修医の時に知っておきたい心構え的なものとお考え下さい。”診断学・感染症・輸液・検査項目(主に救急外来)・栄養療法”についてお話ししています。最後に輸液と栄養療法とに絡めて、SIRSについて名古屋大学医学部附属病院集中治療部教授である松田直之先生の考え方に触れてみようと思います。

・はじめに→コチラ
・診断推論→コチラ
・感染症診療の入り口→コチラ
・輸液の考え方ベーシック→コチラ
・検査項目の使い方→コチラ
・栄養療法の初歩→コチラ
・SIRSについて一つの記事→コチラ
・補足:生活の中の病歴→コチラ
・補足2:診察の強弱→コチラ
・補足3:デッサンという考え方→コチラ
・補足4:デング熱を例に鑑別を挙げるということ→コチラ
・補足5:曖昧性を許容する→コチラ
・補足6:身体診察の治療的意義→コチラ
・補足7:教育としての病歴と診察→コチラ
・補足8:風邪を診る→コチラ


☆研修医のためのテキスト紹介
 研修医が読む本は学生さんとはちょっと違います。プラクティカルなものを選んでみました。研修医や非専門医として、なので専門的なテキスト紹介ではありません。

”総論”について, 各種マニュアル本, 心電図・循環器治療薬の本, 呼吸器内科の本, 感染症の本, 腎臓内科の本, 糖尿病のポケットガイド, 小児科外来の本, 皮膚科や創傷処置などの本, 精神科の本, 漢方薬の本, 非精神科医のための精神療法的な本, 超音波含め画像診断の本, 国試が終わって臨床研修開始までの間に, 『極論で語る』シリーズ, 診断ではなく帰せるかどうかの判断をするための入門本, カルテの書き方, 血の通った緩和ケア


☆風変わりな超音波
 もうエコーは心臓と腹部実質臓器のためだけじゃない!消化管・運動器・肺・眼球などなど、様々な分野へ応用可能です。その中でも消化管と肺について軽くまとめました。

消化管の超音波, 肺の超音波, 超音波を学ぶ時の心構え


☆研修医救急勉強会でのポイント
 名古屋大学医学部附属病院では月に1度、朝に研修医が救急勉強会をしていました。現在は他の科の先生がたが様々な勉強会を開いていて研修医が忙しくなったという理由で、廃止に…。

・Jolt accentuationを例にして診察や検査のセッティング→コチラ
・めまいについて→コチラ
・嘔気嘔吐の例→コチラ
・救急外来と入院での病歴の取り方→コチラ
・発熱と意識障害を例にして患者背景から絞る→コチラ
・勘違いしやすい痛みについて→コチラ
・侮りがたし、虫垂炎→コチラ
・DehydrationとVolume depletion→コチラ


☆精神科臨床はじめの一歩
 精神科医は精神科医でも、若手、特に1-2年目が身の丈に合った非侵襲的な接し方をするにはどうすれば良いか。そんな思いから、治療的態度・精神病理学的知識・分析的思考について10回+1回にわたって考えてみました。自分も若手なので、若手目線で。おまけとして初心者やご家族や患者さんに読みやすい本の紹介もしています。

・第0回:若手としての心構え→コチラ
・第1回:精神療法としての”あいだ”→コチラ
・第2回:”患者”になること→コチラ
・第3回:”症状”を考えてみよう→コチラ
・第4回:器質力動論的視点を持ってみる→コチラ
・第5回:精神発達論をちょっと体験→コチラ
・第6回:防衛機制って何なんだ?→コチラ
・第7回:人格構造という軸→コチラ
・第8回:支持的精神療法のススメ→コチラ
・第9回:役割から見えてくる”転移/逆転移”→コチラ
・第10回:ご家族とのお話→コチラ
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・統合失調症理解の入門本→コチラ
・うつ病/躁うつ病理解の入門本→コチラ
・認知症理解の入門本→コチラ


☆精神科臨床のワンフレーズ+α
 日常臨床で患者さんに送るちょっとした言葉を掲載。薬物治療をしっかりと行うことと前提としているため、構造化もしてませんし分析的な深い考察もしていません。裏を返せばどんな治療者でも使えるということになるでしょうか。支持的でちょっと背中を押すような、そんなフレーズ達。そして、フレーズに限らず精神科臨床での会話などもまとめました。

1. 神経が疲れた→コチラ
2. 困った時はお互い様→コチラ
3. キーを回す→コチラ
4. 不安を不安として→コチラ
5. つらさの代名詞→コチラ
6. こころは水風船→コチラ
7. 回復の芽を摘まない→コチラ
8. どちらを選んでも後悔する→コチラ
9. 医者と薬は松葉杖→コチラ
10. ネガティブを大切に→コチラ
11. 医者はあきらめが悪い→コチラ
12. 病気の種→コチラ
13. 回り道の景色→コチラ
14. 歴史になること→コチラ
15. 失敗も大事→コチラ
16. 症状をガイドに→コチラ
17. こころのお天気→コチラ
18. 飛行機とカサブタ→コチラ
19. 何もないのは平和のしるし→コチラ
20. どんな思いがよぎりましたか?→コチラ
21. 揺らぎは自然→コチラ
22. 医者は慎重派→コチラ
23. ともにある→コチラ
24. 恩返しをしましょう→コチラ
25. 早く来てくれて良かったです→コチラ
26. それが王道ですよ→コチラ
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・終診にする時→コチラ
・同じと特別→コチラ
・「でも」を使わないようにしてみる→コチラ
・「なんで?」も使わないようにしてみる→コチラ
・大丈夫という言葉→コチラ
・認知機能検査を始める前の言葉がけ→コチラ
・"心因" を説明する時→コチラ


☆精神医学ピックアップ
 記事の中から病態や向精神薬の関連で精神科1-2年次向きなものを選んでみました。ちょっと前にまとめたものは記載が甘いものも散見されますが、ご了承ください。

・統合失調症のグルタミン酸仮説と抗精神病薬の定型/非定型という分類→コチラ
・精神症状を来たす身体疾患→コチラ
・精神疾患と慢性炎症→コチラ
・神経障害性疼痛→コチラコチラ, コチラ
・ベンゾジアゼピン受容体作動薬→コチラ
・抗うつ薬のモノアミン再取り込み阻害/促進→コチラ
・向精神薬中断によるリバウンド症状→コチラ
・薬剤に精神療法を込める→コチラ
・悪性症候群→コチラ
・アルコール使用障害→コチラ
・デキストロメトルファン(メジコン)と精神疾患→コチラ
・口腔領域の疼痛性障害→コチラ
・多剤併用→コチラ


☆漢方あれこれ
 自分は仮免レベルの漢方屋でもあるので、診療に良く使ってます。ちょっとした記事をポツポツ書いているので、ご紹介。

実証と虚証, 補気と補血, 陽と陰の配慮, 寒をとらえる, 陰虚を考慮, 虚熱を考える, 生薬の勉強, 消風散の生薬には…!, 釣藤鈎とは何なのか, 高血圧と頭痛に釣藤散, 補中益気湯で失敗, 視床痛には?, 喉の痛みに桔梗湯, 咳への対処, フラッシュバックに神田橋処方, 弛緩型神経因性膀胱はどうするか, 女性の手荒れに, 褥創治療の補助, チックの治療, 便秘にもどうぞ, 寒と水滞による痛みに, 清暑益気湯の生薬, 風邪の漢方薬, 腸間膜静脈硬化症, 起立性調節障害に, 漢方を服用する時間


☆お薬と偶像崇拝
 お薬の中には、キャラクターが存在するものも。イスラム文化圏では決して許されないこと(?)。可愛いのもいれば、変なのも。期間限定なのか?それともリストラされてしまったのか?と思うくらいにもはや姿を見かけなくなったキャラも。でも皆さんそれなりに頑張って製薬会社の看板背負ってるんですよね。自分が持っているものをご紹介していきます。なので精神科領域がどうしても多くなってしまうかも。

・ロナセンバード、ルーランバード、セレネースバード(大日本住友製薬)→コチラ
・ロナセンバード再び(大日本住友製薬)→コチラ
・がっちゃんと干支セトラ(大日本住友製薬)→コチラ
・メロペンギン(大日本住友製薬)→コチラ
・レオ(大日本住友製薬)→コチラ
・シナモロール(大塚製薬)→コチラ
・ムコさる君(大塚製薬)→コチラ
・豚さん(大塚製薬)→コチラ
・ひよこちゃん(大塚製薬)→コチラ
・ひつじさん→コチラ
・キティちゃん(ヤンセンファーマ、タケダ薬品、大日本住友製薬など)→コチラ
・おさかなさん(タケダ薬品)→コチラ
・大建中湯の羊、六君子湯のりっくん(ツムラ)→コチラ
・ジプレキサザイディスの可愛くないキャラ(イーライリリー)→コチラ
・パッキー君(グラクソスミスクラインの黒歴史?)→コチラ
・クマ野郎(エーザイ)→コチラ
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2018
08.14

精神病性障害のレビュー

Lieberman JA, et al. Psychotic Disorders. N Engl J Med. 2018 Jul 19;379(3):270-280. PMID: 30021088

 NEJMで精神病性障害のレビューが出ていたことに気づいたため、読んでみました。コンパクトにまとまっていると思います。遺伝のところは自分の知識がなく、理解がうまく進みませんでしたが…。要所要所を訳したので、細かいところは飛ばしています。

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 PSYCHOSISという言葉は、ギリシャ語の "心が異常な状態" から来ており、臨床では様々な意味で用いられてきました。1980年以前は、生活を十分に送ることができないほどに精神的な機能が障害されている人々に対して使用されていましhた。DSM-IIIが発行された1980年以降、この用語は現実の判断が全体的に障害されていることを示すようになりました。すなわち、自分の内的な経験と周囲の外的な現実との区別がつかなくなることです。
 診断精度を上げるため1994年にDSM-IVが発行されましたが、そこでpsychosisは妄想、厳格、解体した思考、音連合、言葉のサラダ、エコラリア、異常な運動行動といった症状が特徴となる精神障害を指すようになったのです。
 現行のDSM-5において、精神病性障害は疾患ではなく臨床的な症候群であり、主に罹病期間、症状のプロフィール、気分症状のエピソードと精神病症状との関係性、そして原因によって、細分化されています。現在では、psychotic symptom (精神病症状) は認知機能や知覚の機能不全であり、それは主に幻覚妄想を指します。いっぽう、psychotic disorder (精神病性障害) は精神病症状を有する疾患の診断基準に該当する状態を指します (コメント:よって、精神病理学者のいう "統合失調症" と、DSM世代のいう "統合失調症" は異なるのでしょう。そして、精神病理学者のあいだでも "統合失調症" は異なるのでしょうね)
 Psychosis (精神病状態) は3つのグループに分類されます。特発性、他の医学的疾患 (身体疾患) によるもの、中毒性、です。原因が判明しており、それやその結果に対して直接的に治療がなされうるような状態は、特発性からは外れます。この分類は恣意的であり、精神病性障害についての私たちの知の限界を反映しており、研究によって病理的な基盤や原因が判明すれば変更されます (コメント:古くはてんかんが三大精神病のひとつでしたが、原因がハッキリと分かったため外れました。原因が分かったものはどんどん外されていき、結局、精神医学は謎なものを相手にし続けるものなのでしょうね)

●Psychosisの自然史
 最初に精神病症状が出現する年齢と症状の経過は、基礎となる障害によって様々です。統合失調症、双極性障害、精神病症状を伴ううつ病といった、もっともコモンな精神病性障害は20代から30代に発症します。いっぽう、妄想性障害は中年であり、アルツハイマー型認知症など神経変性疾患による精神病状態は老化していく間に始まります。薬物乱用や処方薬による精神病症状、SLEやてんかん発作や発熱など身体疾患 (とそれによる症状や所見) による精神病症状はどの年齢でも起こりうるものです。特発性ではなく二次的な精神病状態 (中毒性や身体疾患によるもの) を示唆する特徴は、機能が急激に低下すること、突然発症、頭痛・てんかん発作・幻視・幻臭・幻触の存在、精神病性障害の家族歴がないこと、です。
 特発性の精神病性障害、特に統合失調症と失調感情障害はたいていfig. 1のような経過をたどりますが、予測が難しく、症状の起こる頻度や数や型は障害によって異なり、また同じ障害でも患者さんごとによって異なります (コメント:統合失調症ひとつとっても、本当に千差万別です)

schz fig1

 精神病性障害の患者さんは様々な併存症や精神病状態から派生する影響を被る可能性があります。特に自殺企図 (生涯有病率34.5%)、物質乱用 (生涯有病率74%)、ホームレス化 (年有病率5%)、被虐待 (3年有病率38%)、暴力 (一般人口と比較してオッズは49-68%)がそうです。

●原因と病理学的特徴
精神病状態における神経伝達物質
 前頭前皮質、線条体、中脳、海馬におけるドパミンとグルタミン酸経路での神経伝達が変化しており、その変化が精神病症状の出現につながっています (fig. 2)。この病態生理モデルは、シナプスでのドパミンとグルタミン酸の過剰がシナプス後部への刺激を高め、それが精神病症状をもたらすという多くの研究に基づいています。GABA作動性抑制性介在ニューロンの欠損とNMDAグルタミン酸受容体の機能低下によって、グルタミン酸とドパミンによる神経系の抑制と興奮のバランスが乱れてしまいます。最近、グルタミン酸の合成や代謝を調節するメカニズム (グルタミン酸デヒドロゲナーゼの欠損) もまた関与している可能性が示唆されています。
 物質誘発性の精神病状態の中には、これら神経伝達物質のメカニズムを理解する際に参考となってきたものがあります。例えば、カンナビノイド-1受容体 (CB-1受容体) アゴニストを含むようなカンナビノイドが精神病状態をもたらし、またそのリスクにもなります。カンナビノイド受容体はシナプスでドパミンやグルタミン酸のトラフィッキングをガイドします。他には、合成カチノンである “bath salts” のようないわゆるデザイナードラッグはドパミンやセロトニンを強力に放出し、同様の精神病症状を引き起こします。
 ある種の精神病状態はセロトニン5-HT2A受容体の刺激によってもたらされます。LSD、メスカリン、シロシビンといった幻覚剤は非古典的な細胞内シグナル経路を選択的に活性化させることで (5-HT2A受容体のbiased stimulation)、使用した者に精神病症状と見紛うような状態をもたらします。精神病性障害の病態生理としてセロトニンや5-HT2A受容体が関与しているように思えます。しかし、その作用を持つ幻覚剤による障害は、アンフェタミンやNMDA受容体アンタゴニストといったグルタミン酸活性を高める精神刺激薬によって引き起こされる障害、そして特発性の精神病性障害とは質的に異なるものです。

schz fig2

fig. 2
ドパミン (青矢印)、グルタミン酸 (紫矢印)、GABA (緑矢印)
統合失調症や精神病症状を伴う気分障害は、海馬CA1部位の細胞へグルタミン酸を放出する神経の過剰な活動から生じると考えられています。海馬でのGABA作動性抑制性ニューロンの欠損とNMDA受容体の機能低下 (赤い☓印) が、これら疾患の主な原因とされています。シナプスでグルタミン酸が増加しても、介在ニューロンが活動を示しません。そのため、GABAの放出が少なくなり、錐体細胞を阻害できず、海馬から中脳腹側被蓋野や線条体側坐核へグルタミン酸がより放出されます。海馬の過活性は線条体へのドパミン放出を促します。それは、直接的には側坐核のレベルで、間接的には側坐核や前頭前皮質に投射する中脳ドパミンニューロンを刺激することでなされます。中脳ドパミンニューロンはさらに海馬への投射を介してドパミンとグルタミン酸の機能不全を促進します。精神病症状はこれらの経路に影響する非特発性の疾患でも生じることがあります。アルツハイマー病では、コリン作動性のシステムが働かなくなり、海馬のグルタミン酸作動性細胞や中脳のドパミン作動性細胞へのコリン作動性の阻害がダウンしてしまいます。


精神病状態の遺伝因子
 特発性の精神病性障害には、遺伝が強く関与しています。統合失調症や精神病症状を伴う双極性障害は一卵性双生児においてある種の遺伝子座 (座位) で約50%の一致が見られます。そして、患者さんの兄弟や親では同じ障害のリスクが一般人口の10-15倍にまで高くなります。精神病性障害の遺伝に特異的なマーカーや様式は同定されていませんが、2つの仮説が提唱されています。ひとつはcommon disease-common allele仮説であり、もうひとつはcommon disease-rare allele仮説です。前者によれば、浸透率の低いありふれた遺伝子が相加的に、そして同じような遺伝子とのepistasis (コメント:非対立遺伝子間の相互作用) によって、統合失調症や失調感情障害のリスクとなります (コメント:第一の仮説というのは、コモンな疾患は、頻度は多いけれども影響の少ない多型が積み重なってできているとするものです。ジャブが積み重なって相手がフラフラになるような?)。後者によれば、まれな遺伝やde novo変異やCNVであり、見られることは少ないいっぽうで浸透率が非常に高いというものです (コメント:珍しい技ですが威力の高い一撃必殺、クロスカウンターのような?)

浸透率の低いコモンな遺伝子変異
 精神病性障害のリスクに関与する多くの遺伝子のうち、信頼性の高いものはごくわずかです。特発性の精神病性障害と関連のある遺伝子のうち、シナプスの神経伝達をコントロールするものがいくつか指摘されており、それは特にドパミンとグルタミン酸の経路に関わるものです。この関連性は現在の神経伝達物質の仮説と一致するものであり合理的ですが、確たるものとまでは言えません。最近の発見では、MHCの座位や補体といった免疫機能に関与する遺伝子が関連性を指摘されています。中枢神経において、MHC分子はミクログリアによるシナプス前終末の刈り込みを通して神経接続の発達を調節しており、神経回路やその機能の形成に影響を与えます (コメント:統合失調症ではシナプスの刈り込みが過剰に行なわれていることが指摘されています。対して自閉スペクトラム症では刈り込みが過少とも言われます)

浸透率の高いまれな遺伝子変異
 精神病性障害に関わるもっともコモンな遺伝子異常は染色体22q11.2の微小欠失です。これは22q11.2欠失症候群 (口蓋心臓顔面症候群やDiGeorge症候群とも言われます) を引き起こし、4000出生のうち1人に見られます。この疾患は心臓や顔面や四肢の異常を伴い、約25%の患者さんは統合失調症の症状や統合失調症様の特徴があり、特発性である統合失調症とはおおよそ区別がつきません。他にも浸透率や集団頻度に関して種々のCNVが報告されています。

精神病状態における神経発達の要因
 出生前の環境負因 (母体感染、薬剤毒性、栄養失調など) への曝露、出生時合併症、出生後外傷、発達の重要な時期における養育不全などが精神病性障害のリスクとなります。エフェクトサイズは小さいのですが、これら環境要因は遺伝要因と相互作用することもあれば、独立して影響を及ぼすこともあります。また、精神病性障害の表現型模写を生み出すこともあります。

精神病状態における自己免疫や炎症
 精神病状態のカテゴリーの中には、自己免疫疾患や炎症性疾患に伴って症状が発露するものもあります。自己抗体が脳の神経伝達機能、特にグルタミン酸系に障害をもたらします。このグループは臨床や研究において注目されています。

自己免疫疾患と精神病状態
 精神病症状はSLEなど中枢神経に影響を及ぼす自己免疫疾患で生じます。SLE患者さんの約30%において、NMDA受容体のNR2サブユニットのエピトープと反応するdsDNAに対する抗体が出現します。そして、実際に精神病症状が出現する患者さんもいるのです。

腫瘍による自己免疫症状
 統合失調症と似た症状は、ある種の自己免性脳炎の特徴でもあります。主に卵巣奇形腫によるものであり、組織内の異所性細胞がNMDA受容体を発現し、獲得免疫がそれへの抗体を産生します。この抗体が血液脳関門を通過し症状を生み出してしまいます。他の自己抗体も精神病状態をもたらすものの、この抗NMDA受容体脳炎ほどには確立されていません。

●診断
 様々な仮説はありますが、診断は臨床的になされるものであり、病歴や言葉、そして振る舞いなどに主に基づいています。画像や脳波、遺伝子型、血液検査などは初回エピソードで身体疾患によるものを疑った時になされます。しかし、精神病状態の個々の診断において、十分に有用なものは存在しません。

画像
 MRIやPETによって、精神病性障害の様々な異常所見が明らかになってきました。しかし、他のバイオマーカーと同様、信頼に足るレベルではなく臨床には使用されていません。

神経生理学的検査
 身体疾患が疑われる初回エピソードでは脳波は考慮されてもいいでしょう。精神病性障害でもある種の異常が指摘されていますが、これも臨床で使用できるものではありません。

血液検査
 梅毒検査は初回エピソードでは推奨されており、また全身性のウイルス感染の後に突然発症した場合、そして特発性の典型例から外れる年齢で発症した場合には、免疫状態も考慮すべきでしょう。

●治療
薬剤治療
 約20の抗精神病薬が米国にはあり、全てがドパミンD2受容体に作用するものです。これらは様々な障害の精神病症状の治療に有用ですが、基礎疾患や薬剤の代謝や排泄などによって有効性は変わります。旧来の (定型、もしくは第1世代) 抗精神病薬は錐体外路症状を引き起こしやすく、新規の (非定型、もしくは第2世代) 抗精神病薬は代謝異常をより来たす傾向にあります。クロザピンは例外であり、錐体外路症状をほとんど引き起こさず、治療抵抗性に対して治療効果を示します。しかし、クロザピンは重篤な副作用があり、それらはけいれん発作 (約4%)、心筋炎 (約1%)、無顆粒球症 (約0.8%) などです。それゆえ、治療抵抗性への使用が主となっています。
 アドヒアランス向上のため持効性注射薬もありますが、臨床的な有用性に関するエビデンスは一貫していない (コメント:内服薬よりも優れているとは言えないとしたメタ解析があります。Schizophr Res. 2017 May;183:10-21. PMID: 27866695)。また、抗精神病薬への様々な付加療法が行なわれてきましたが、有効性は小さく、エビデンスは限られています。そして、同じことが抗精神病薬の多剤併用にも言えるのです。
 D2受容体への親和性を持たずに5-HT2A受容体アンタゴニストとして非常に強く働く薬剤 (ピマバンセリンなど) はドパミン置換療法を受けているパーキンソン病患者さんの精神病症状に有用かもしれません。パーキンソン病患者さんでは、抗精神病薬はパーキンソニズムを悪化させるため相対禁忌です。こういった5-HT2A受容体アンタゴニストは認知症に伴う精神病症状において臨床試験中です。しかし、統合失調症や統合失調感情障害や精神病症状を伴う気分障害などではD2受容体アンタゴニストよりも効果が弱いのです。精神病症状が身体疾患によるものであれば、治療は抗精神病薬の前にその疾患 (発熱、感染、電解質異常、代謝内分泌異常など) を治療すべきです。薬剤、特に抗コリン作用を持つものはせん妄や精神病状態の原因となります。

ニューロモデュレーション
 ECT, TMS, tDCS, DBSといった脳刺激は一定の障害における精神病症状に対して用いられてきました。
 幻聴に対しては有望な治療法とされています。最近ではtDCSが統合失調症の陰性症状や幻聴に効果を認めたという報告があります。
 DBSは現在パーキンソン病と治療抵抗性の強迫性障害に対してFDAから承認されており、治療抵抗性うつ病や特発性の精神病性障害についても効果が検討されています。

心理社会的アプローチ
 特に統合失調症について、SSTが研究されており、他には家族への心理教育も支持されています。また、CBTも幻聴や妄想による苦痛を和らげるとされています。

●将来に向けて
早期介入と予防
 現在の薬剤治療は疾患そのものに切り込むのではなく症状を緩和していると考えられています。しかし、病初期において、統合失調症や統合失調感情障害の初回エピソードの段階で治療することは再発を減らし、知能や機能の著しい低下を防ぎます。よって、構造的なサービスモデルであるCoordinated Specialty Careが治療向上のため進歩してきました。このモデルは薬剤治療と心理社会的治療、そして未診断の患者さんの発見や未治療期間の短縮のためのアウトリーチから成っています。
 NIMHはこのアプローチを前駆期に広げることを考えるようになりました。しかし、ハイリスク状態から発症する患者さんを同定する現行の診断基準では50%以上の偽陽性があり、より良い診断方法が確立されねばなりません (コメント:不必要な治療をしてしまいますし、患者さんやご家族にも大きな不安を与えるでしょう)。そして、増悪するのか、安定や一過性か、もしくは改善するのかなどを見極められる検査も必要でしょう。現在の治療は症状を改善させることは出来ますが、予防には至っていないのです。

画期的な治療
 遺伝子をターゲットにしたものが期待されており、エクソームシークエンスが必要となります。

●サマリー
 Psychosisは、ドパミンとグルタミン酸の神経伝達が調節不全となることで、認知や知覚といった機能が全体的に障害されることを反映しています。D2受容体アンタゴニストは特発性の精神病性障害や神経変性疾患に伴う精神病症状における薬剤治療の主流となっています。いっぽう、他の身体疾患や薬剤による精神症状に常に用いられるわけではありません。かなりの金額が投入されてきましたが、薬剤治療の新しい展開は残念ながらほとんど見られていません (コメント:それどころか、向精神薬の開発から撤退する企業が増えているのです!)。ニューロモデュレーション (DBS, TMS, tDCS) やCoordinated Specialty CareでのD2受容体アンタゴニストを用いた早期発見と介入の戦略は、症状の緩和そして疾患の進行そのものへも影響してくるでしょう。

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 以上です。抗精神病薬の開発は何だか頭打ちのような感じで、いまだにD2受容体アンタゴニストを超えるものは出てきていませんし、ハッキリとした増強療法もありません (メマンチンもしょぼいし、ミルタザピンはどうでしょうか。アロプリノールは少しマシかも?)。このことから、必然的に医療者の興味は早期発見と早期介入に向かっているような気もします。

 今後は、数回に分けて統合失調症の治療薬について記事にしていく予定 (7月の夏休みに読んだ文献を3つ)。
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2018
08.09

そういえば、もりもと先生っていたなぁ

 ここのところずっと暑気あたりで不調でした…。今日も20分ほどお昼に歩いただけでくらくらして頭が痛くなってくるし…。連日38度や39度が続いているので、もう大変です。名古屋からどこかへの移住を本気で考えねばなるまい…。週間天気予報で36度や35度を見ると、「あ!涼しい!」と思ってしまうほど、脳がおかしくなっています。落ち着け、35度でも暑いんだぞ。

 さて話は変わりまして、少し前、新幹線に乗ったら豊橋駅で降りるのをすっかり忘れ、浜松まで行ってしまったという内容の記事を書きました。その中で、大砂丘というブッセを買ったとお話ししましたが、その延長で、



ブッセと言えば "もりもと" の "雪鶴" である



 と豪語しました。みなさん、覚えておいででしょうか。そういう話をしたら食べたくなってしまって、成城石井に赴いて購入。バタークリームとハスカップクリームの2種類です。

 ハスカップはシベリア原産だそうで、日本では北海道に生きております (本州では高山植物としてごく一部)。お菓子関係では三星さんの "よいとまけ" が最も有名だと思いますが、自分はあんまりコレ好きじゃなくてですね…。甘みが強すぎて苦手なのです。もうちょっと甘みを抑えて酸っぱさを効かせた方がハスカップらしくて良いのでは…。

 ”もりもと” もハスカップのスイーツを展開しており、クッキーやらゼリーやらを作っています。その中の一つが、今回紹介する "雪鶴" というブッセ。

 手のひらサイズ。とても地味な包装。

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 開封しても、うーん、地味だな。

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 割ってみますか。

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 特に奇を衒ったところはありませんが、ハスカップの色がとても鮮やかですね。着色料を使わずにこの色。

 味は懐かしいあの味。昔食べたなぁという思い出補正は否めないのでしょうが、美味しい。バタークリームの方はバターの適度な塩分が、軽い甘さのブッセと合います。ハスカップの方はスッキリとした酸味で、さわやか。バター→ハスカップの順番で、両方を半分ずつ食べるのがベストと言えましょう。

 ということで、ちょっと地味なお菓子ですが、美味しいのでお試しを。成城石井で買うと1つ税込みで160円だった記憶。
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2018
07.28

ケアをひらきましょう

Category: ★本のお話
 医学書院さんの個性的なラインナップに『シリーズ ケアをひらく』というのがあります。どれもこれもエッジが効いているというか何というか、バラエティにも富んでいますし、読んでいて素直に面白い!のです。この "素直に面白い" という感覚って結構大事だなと思っておりまして、そういうシリーズをバンバン出してくれるのはとてもありがたいですね。そしてその多くは専門的な知識がなくても大丈夫。

 このシリーズは全部読んで!と言っても良いのかもしれませんが、優先順位として精神科医、特に若手の先生にまず読んでほしいものが、中井久夫先生の『こんなとき私はどうしてきたか』と、小澤勲先生の『ケアってなんだろう』の2冊です、個人的に。

 前者は、言わずとしれた大御所・中井先生の本。優しい (易しい) 文体ながらも中井先生の真骨頂とも言うべき内容が随所に入っています。特に患者さんに対しての言葉の使い方、セリフの言い回しなどがいきいきと語られており、中井先生の本の中でこれがいちばん実践的なのではないか…?とも思います。この本は別に自分がお勧めしなくても精神科医であれば読むものでしょう (圧迫)。

 後者は、認知症のケアで有名な小澤勲先生。2008年、すなわちこの本が出版されてから2年後に70歳で亡くなっていることもあってか、最近の若い精神科医の中には小澤先生を知らない人も多く、ちょっと残念。自分は学生の頃に神経内科の教授から岩波新書の『痴呆を生きるということ』『認知症とは何か』という本を勧められて読んで「こんな先生がいるんだ…!」と衝撃を受けた記憶があります。その中に超カッコいい言葉がありまして



"痴呆の悲惨と光明をともに見据えるために、また、生と死のあわいを生きるすさまじさと、その末に生まれる透き通るような明るさを伝えるために、この一文を書く。彼らに少しでも報い、彼らの思いを世に伝えるために"



 この熱さが何ともたまらないのです (自分も若かったので、強烈に印象に残りました)。そして、その神経内科の教授に対しても「いつも訳わからん感じだし学生に対して厳しいし何なんやろな」と思っていたのですが、「こういう本を学生に勧めてくれるなんて、この先生はやっぱり患者さんのことをしっかりと思っているやなぁ」と反省したのであります。この場を借りて謝罪を (遅い)。

 この『ケアってなんだろう』という本の中でも小澤先生は "自分たちの出来ることはごくわずか、でもそれをしないわけにはいかない" という内容のご発言をされていて、常に臨床家として生きていた情熱を感じずにはいられません。しかしながら、その情熱さだけであれば、辟易してしまうこともあるでしょう。振り回されてしまうこともあるでしょう。小澤先生は冷静さをも併せ持っており、例えば『ケアってなんだろう』の "そもそも他者の「物語を読む」などというのは、僭越で傲慢なことです。「物語」が忘れたい思い出にふれると、傷つけてしまうこともあります" という文章にそれが現れています。物語を読むのは、少しだけやさしくなるためなのです。それ以上の介入は "腹を探られる" ことになるでしょう。ナラティブナラティブと声高に叫ぶ人たちを見ると、ちょっと自分は鼻白んでしまいます。

 この『ケアってなんだろう』は主に対談集ではありますが、小澤先生の認知症患者さんとの関わりの総まとめ的なものであり、小澤先生の入門、というか精神科医療の入門としてぜひ読んでいただきたいなぁと思います。認知症に限らず、精神疾患を持つ患者さんへの接し方の大きなヒントになってくれるのではないでしょうか。滝川一廣先生とともに、自分のあこがれの先生でもあります。できれば一度お話を聞いてみたかった。

 自分は精神疾患の患者さんを診る時、"症状は苦しいものであるけれども、患者さんが何とかそれで頑張ってやって来た証でもある""患者さんなりにこの苦しい世の中を生き抜いてきたのだ" という目線を持つように心がけています。そして、その苦しさでまた生きていかねばならない患者さんに対していくばくかのお手伝いをするのが医療者の役割なのだとも思います。一人ひとりの患者さんに対して、どのようなお手伝いが良いのかは具体的であり一般に還元されないものでしょう。「こうすればうまくいく!」というわけにはいきません。オーダーメイドのものを患者さんと一緒に悩んでつくっていく、もしくは解決がなされず悩むだけかもしれません、でもそのような一緒に何かをするという過程がケアには大事なのかもしれない、とも考えます (流行語で言うとネガティブ・ケイパビリティでしょうか)。「一人で悩むより二人で悩もう。その時間の積み重ねは無駄にはならないし、うまく行けば希望につながるかもしれないよ」という気持ちにもなってきます。小澤先生の本を読むと、根本的な解決の見えない状況でも何とかこらえてやっていこう、そんな気持ちになれます。

 このシリーズはどれもこれも「なるほどなー」と思わせるもので、最近ですと國分功一郎先生の『中動態の世界』も素敵なのですが、これは専門的な知識がちょっと必要かもしれません。この中動態は精神科と相性が良いような気もしますね。受動と能動との "あいだ" で、私と患者さんとの思いは色づいていくのでしょう。
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2018
07.24

引退後の生活を思う

 タイトルは「まだ気が早いよ!」と怒られそうですが、自分は本気で今の職業を早めに辞めようと思っています。医者は定年がないので80を超えても現役です!という先生もいますし、精神科であれば老医からありがたい言葉をいただくとそれだけで良くなってしまうような気もします。お寺の和尚さんのような存在? そういうのもひとつの生き方ですが、今の仕事を60超えてまでやりたいかと言われると「もちろん!」と即答はしかねます。つまらないわけではないのです。自分なりにまじめにやってるつもりですし、そうでないと患者さんにも失礼ですし。

 でも、可能であれば、60歳くらいで引退する気満々。経済的な余裕ができたらもっと早くてもかまいません。そして余生を趣味に生きたいのです。趣味と言っても何をしたいの? と思われるかもしれませんが、願わくは



もう一度大学で勉強してみたい!



 のです。これ、年々その気持ちが強くなっているのであります。もう一度医学部に行くとかいうワケの分からないことではないですよ。ちなみに自分は浪人生活をしていたので、今でもたまに医学部を受ける夢を見ます。しかも在学している医学部を辞めて他の大学の医学部を受けるとかいう正気の沙汰ではない夢。夢から醒めて「あぁ、夢でよかった…」とホッとします。

 行きたい学部って、文学部なんですよねー。自分は高校2年までは文系も良いんじゃないかと思っていましたし (数学が苦手だったのもありますが…)。

 古典文学にどっぷり浸かりたいし、それを勉強して残りの人生を過ごしたいのです。大学って学ぶところですし、若い人だけじゃなくてもっと中高年が行っても良いんだと思います。しかも大学の教授はその道のプロ中のプロですから、そういう人にどんどん質問できるって、すごいことです。大学が終わってから気づきますね、そういうのって…。

 そういう話を家族にしてみるんですが「そんなことができるのか?」と言われます。

 まずは60歳で辞めてもその後のお金をどうするのだという点が指摘されます。ごもっともであるし、それが最大のネック。年金なんてもらえるのか、もらえたとしても75歳とか80歳とか、そんな年になってからでしょうし。自分は身体の調子も良くないしBMIも低いため早めに死ぬと思いますが (そんなことを言う奴ほど長生きするのか…?)、それにしてもお金の不安は残ります。医者といえども勤務医で時間をセーブして働いていると、そんなにお給料は高くないのです。もちろん平均収入以上はいただいていますが、早めに引退するには非常に心もとない。貯めておかないと。

 そして、試験に受かるほどの学力が残存しているとも思えないという、かなりグサッとくる点も。なぜなら、自分の記憶力が今ですら下降しているから、なのです。そのため、新しく勉強してもどんどん忘れてしまうのではないか? と言われます。買い物に行っても前日に買った野菜をまた買ってしまうし、冷蔵庫の中は正直なところ同じようなものがゴロゴロしています…。以前にも記事にしたか覚えていませんが、白菜1/4を買って、数日後にまた1/4を買って冷蔵庫を見てびっくりして、そのまた数日後に1/4を買ってしまってまたまた冷蔵庫を見て驚き。あやうく1個になるところでした。本も同じのを買ってしまうし、特に今は長編小説が読めなくなりました。読んでいくうちに忘れてしまい、また戻って、というのを繰り返して一向に進まない。なので、短編しか読めないのです。それで文学部が大丈夫なのかという不安もありますが、何にせよ今ですらこんなボロボロなので、50歳や60歳になったらそれはもう恐ろしいことになりそう。そして、仕事を辞めたらもっと認知機能低下に拍車がかかりそうだとも言われます。うーむ、全く反論できない。受験するんだったら学士入学にするつもりですが、それでも試験はあるし。

 ま、しかし1回きりの人生なので、余裕があったら早めに仕事を辞めて勉強しなおしたい!と切に切に願っていまして。いろんなことを知っていくのは、本当に素敵なことなのです。

 だから、だから宝くじよ当たってくれ! 7億とは言わないよ! 5億! 5億で良いから! (結局そこか!)
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